挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

954/1207

番外203 マヨイガでの再会

 ヒタカノクニから俺達を手伝ってくれる人員は、ユラとアカネ、それからイチエモンを部隊長として、侍と忍者、陰陽師の精鋭を集めた一部隊となる。
 ヨウキ帝はその性質上前線に出て動けないし、タダクニは都の守りの要でもあるので長期間は不在にできないというわけだ。

「すまぬな。本来なら国を挙げて将兵達を動員するのが筋なのかも知れぬが」
「いえ。秘密裡にという方針で動こうと決めたのは僕の方です。そうなると大規模過ぎても動きにくくなりますからね」

 隣国との関係を考えた場合も、現時点で正体不明である俺達はともかく、ヒタカからの人員は諜報部隊程度の規模にしておかないと言い訳も立たない。
 それにアヤツジ兄妹の一件が片付いたとはいえ、官職に穴が開いてしまった状態なので事後処理も大変だろうしな。大人数を動員する、というわけにもいくまい。

「ともかく、こちらでもできることは進めておく」
「はい。後程連絡します」

 そうして帝とタダクニ、武官や術師達に見送られる形で俺達はシリウス号に乗り込み、レイメイや御前達の待つ北東へ向かって出発したのであった。



 試作型通信機で現状についての連絡を入れつつ北東に向かってシリウス号は進んでいく。転移門を使って帝や御前達にもヒタカ語対応版の試作機を配ってあるからな。やむを得ず記号でやり取りしていた時に比べれば、圧倒的に多い情報量で事前の打ち合わせ等々ができるようになった。

 まあ、現状ではマヨイガに行けば改造ティアーズのモニター越しに双方向で会話もできるのだが、通信機の実地試験と試用も兼ねてと言ったところだ。通信機の扱い方にも慣れておいた方が良い。

「みんなの到着を楽しみにしてるってさ」

 と、オリエからの返信を伝えると、小蜘蛛達は顔を見合わせて嬉しそうに微笑みを向けあっていた。

「名前は決まった?」

 そう尋ねると、小蜘蛛達は頷く。

「ちゃんと決めた。でもまだ秘密」
「オリエ様も喜んでくれると良いな」
「変な名前にならないように、ユラちゃん達や、オボロにも相談した」

 そんな小蜘蛛達の言葉にユラとアカネは微笑み、ツバキは静かに笑う。コマチも嬉しそうに笑い、オボロも目を閉じて頷いていた。
 なるほど。ということはやはりヒタカ風の名前にした、ということなのだろう。オボロも言葉は通じるしリアクションはできるから相談役になれるというわけだな。
 具体的にどんな名前にしたかは……オリエに最初に伝えたい、と考えているのかも知れない。

 そんな小蜘蛛達の様子に、グレイス達も微笑ましそうに表情を緩める。
 やや和んだ雰囲気の中をシリウス号は進んでいく。やがて遠くにマヨイガが見えてくる。合流はここで行われる。
 シリウス号の速度を緩めながらマヨイガ近くに停泊させると、御前と妖怪達、オリエやレイメイが中庭に姿を見せ、正門のところまで迎えに出てきてくれる。

「おお、待っておったぞ」
「お待たせしました」

 甲板から降り立ち一礼する。御前達や妖怪達は明るい笑顔で迎えてくれた。オボロもすねこすりの同族達との再会を喜んでいる様子だ。
 オリエのところに小蜘蛛達も駆け寄っていく。

「魔力が強くなっているな。タームウィルズの滞在と訓練は、充実していたと見える」
「はい、オリエ様」
「ただ今戻りました」
「名前も決めてきました」
「うむ。そうだな。では、腰を落ち着けてから聞かせてもらうとしよう」

 オリエは小蜘蛛達の言葉に嬉しそうに相好を崩す。

「おう。また会えて嬉しいぜ」
「こちらこそ。この通り、巻物も現物を持ってきました」
「ああ。こっちの片割れはここに」

 と、レイメイとも言葉を交わし、互いの預かっている巻物を見せ合う。それからみんなもシリウス号を降りて、マヨイガの中へと向かいながら話を進める。

「どうでしょうか。現物を見た感じでは」
「問題は無さそうだな。元が一つだったってのは、文章の下から上への繋がりを見れば分かる部分もある。こいつは暗号化された術式のようだから……意味は通らずとも、これなら儀式も滞りなく行えそうだ。それと……転移を利用した交差儀式、だったか。お前さんの、その案なら正確な場所も割り出せるだろうな」

 レイメイは手ごたえを確信しているのか、にやりと笑う。
 レイメイの儀式は光で方向を指し示す、という結果を齎すらしいが――それならば、ある程度離れた二点の座標で儀式を行えば、光の交差するところに巻物がある、という結論になる。
 都とマヨイガの二点間を転移港にて移動し、それぞれの場所に築いた儀式場で同じ儀式を行う。そうして星球儀上で光の交差する位置を確認してやれば、最後の巻物の片割れがある現在位置が正確に割り出せるというわけだ。

 後は、現地に飛んで情報収集を行い、状況に応じて仙人の捜索と合流を試みるか――或いは巻物最後の片割れが敵の手に落ちていた場合は、これを奪取する、ということになるだろう。儀式から移動までの間に巻物が移動する可能性はあるが、情報収集をするにしても最新の情報に基づいて動けるわけだし。

「明日の夜、ですか。道筋は見えているのにもどかしいものですね」

 ユラがそんな風に言うも、レイメイは目を閉じて不敵に笑う。

「ま、あいつも、そう簡単にやられるようなタマでもねえさ。そうして心配してもらえるってのは、ありがてえ話だがな」

 状況は分からないが……レイメイの豪快なところは不安を感じさせない空気がある。
 明日の夜まで足止めとなるので気を揉んでしまうところはあるが、確かに焦っても良いことはないからな。ユラもそんなレイメイの反応に、真剣な表情で頷いた。

 そうしてマヨイガの大広間に繋がる障子を開けば――そこに既に座布団が並べられていて。お茶と和菓子がお盆に乗せて用意してあったりする。
 マヨイガが用意してくれたものだ。淹れたてとばかりに湯気を立ち上らせるお茶と瑞々しい羊羹。

「うむ。便利なものよの」

 というわけで、みんなで腰を落ち着ける。

「さて。それでは……まずは――」

 小蜘蛛達に視線を向けると、揃って頷く。その反応を見て言葉を続ける。

「改めて、小蜘蛛達からの自己紹介と参りましょうか」
「うむ」

 オリエも相好を崩して頷く。小蜘蛛達は揃って立ち上がり、やや緊張した面持ちで名を名乗った。

「ええと。カリンです」
「レンゲと言います。ハスじゃなくて、レンゲソウの方からです」
「ユズにしました。どうかこれから、よろしくお願いします」

 そう言って三人は深々と頭を下げる。

「おお。植物の名前からか。うむ。良いのではないかな?」

 オリエがにっこりと笑うと、カリン達は顔を見合わせて表情を明るくした。アカネやツバキもそうだが、身近にそうした名前があったから影響を受けたところはあるかも知れないな。

「3人とも、春に咲く植物なのですね」
「ふむ。それは我が春が好きだからだろう。ふふん」

 アカネが共通点を見出すと、オリエがにやっと笑って言い当て、小蜘蛛達は嬉しそうにこくこくと首を縦に振る。

「いや、良いお話です……。どうでしょうか。それぞれの花を模した髪飾り等を作ってお贈りしたいな、なんて考えが浮かんだのですが」
「おお。それは良いな。我には細かな見分けもつくが、三つ子故に周囲は慣れるまで大変かも知れんしな」
「それ、嬉しい」
「コマチ、ありがと」
「糸が必要ならいつでも言ってね」

 小蜘蛛達の反応にコマチは照れたように笑って後頭部を掻いていた。

「では続いて、ヨウキ陛下から預かってきているものがあります」

 と、鎧やら衣類を収納しているつづらを背中に担いでいるリンドブルムとコルリスとティールに視線を向ける。
 それぞれ頷いて、口や爪で器用に蝶結びされた紐を解き、つづらを畳の上に丁寧に降ろしていた。
 畳の上に降ろされたつづらを、アシュレイとマルレーンがにこにこしながら開帳する。

「これは――隣国の衣服か」

 レイメイが興味深そうに言う。レイメイはあっちを訪問していたこともあるから、馴染みがあるだろう。

「鎧もあるのだな」
「はい。潜入用にと預かってきました」

 というわけで、隣国に同行する面々には好みのものを選んでもらうとしよう。同時に、儀式の手順や、隣国に潜入してからの事などをゆっくりと打ち合わせしていけば良いだろう。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ