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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外198 仙人捜索へ向けて

 夜間の昼食会後は、フォレスタニアの居城の中庭で魔力楽器を弄ってみたり、滑走場に出かけて遊んだりした。夜が明けて明るくなるのに合わせ、湖に小舟で出かけ、湖底の滞在設備を見に行ったり……みんなで遊んでから就寝、規則正しく夕方頃に起き出し、そうして諸々の予定を消化し、ヒタカからやってきた面々は一旦ヒタカへと帰る、ということになったのであった。

「実に楽しい時間を過ごさせてもらった」
「次は満月になる前にテオドール達が訪問してくるということになるかの。再会を心待ちにしておるぞ」
「はい。ヒタカノクニでお会いしましょう」

 転移港にてヨウキ帝や御前達と一時の別れの挨拶と、再会の約束を交わす。

「次に会う時は、将来の交流の話を深めていきたいところであるな」
「ああ。それは楽しみだ」

 見送りに来たメルヴィン王とヨウキ帝もしっかりと握手を交わす。同盟に関する話なども会話の中に上がっているようだ。

 ヴェルドガルからヒタカノクニへと帰る必要があるのは……ヨウキ帝やタダクニのように立場のある面々、それにイチエモンのように多忙な面々である。
 妖怪達については一帯の妖怪達を束ねている立場である御前や、眷属を束ねる立場であるレイメイとオリエも、あまり長く留守にしているわけにもいかないということもあり、しっかりと帰還する形だ。
 隣国の捜索前に自分達が不在でも問題が起こらないように調整をしておく、ということらしい。

 転移港で気軽に行き来できるということもあり基本的には帰還も滞在も自由ではあるので、まだこちらに残る者もいる。
 まあ、俺達も多忙という事もあり、観光で残るという者はいないが……ユラはもう少し残ってヴェルドガルとの魔法技術交流や魔道具開発などに参加する予定ではあるし、そうなればユラの護衛であるアカネと鎌鼬達も残る、ということになる。

「ではな。少々の間ではあるが、お前達もしっかりと学んでくるのだぞ」
「はい。オリエ様」

 と、ぴったり声を揃え、生真面目な表情でオリエに答える小蜘蛛達である。オリエはそんな小蜘蛛達の反応に満足げな笑みを浮かべて頷くと、それぞれの頭を撫でる。

 ツバキ、コマチ、オボロが滞在するのは今まで通り。それに加えて、新たに小蜘蛛達も俺達との連携精度を高めるためにこちらに残る、という話になっている。
 小蜘蛛達も仙人と巻物捜索の作戦に参加する。なので俺達との訓練に加わることで空中戦や戦い方に慣れておこう、というわけだ。それに加え、小蜘蛛達の糸が素材として必要なら提供してくれる、とのことであった。

 オリエは……眷属に対しては面倒見がいい。もしかすると小蜘蛛達が作戦に参加するという事で、信頼しつつも心配しているところがあるのかも知れないな。

「じゃあ、またな。随分楽しませてもらったぜ」
「またね!」
「今度また、遊びに来ますね」
「こっちにもまた来てくれよな。歓迎するからさ」
「人が多いところは苦手だが……フォレスタニアは、楽しかった」

 レイメイの言葉と共にシホさんが一礼し、豆腐小僧やろくろ首、河童、サトリといった面々が続々と挨拶してくる。ケウケゲンやらの喋れない面々もそれぞれ身振り手振りで別れの挨拶をしてくれた。動物組ともしっかりと抱擁したりと、ボディランゲージで別れを惜しんでいるようだ。
 俺も一礼を返して言う。

「そうですね。こちらからもまた遊びにいきますし、そちらからも気軽に来てください。またお会いしましょう」

 そうしてヒタカの面々は、都とマヨイガの屋敷――それぞれに繋がる転移門を通り、故郷へと帰っていった。妖怪達のバリエーションに富んだ賑やかな顔ぶれが帰っていくと、静かになって、若干物寂しくも感じてしまうが……。まあ、気持ちを切り替えていくとしよう。

 鬼の里やマヨイガの屋敷に関してはモニターで見る限り異常はないようだ。レイメイも里に戻ったら通信機に連絡をくれる、とのことで。レイメイの所持している巻物の片割れに関しては満月までの防御も完璧と言えるだろう。俺も宝物庫に収められているからと安心しないで警戒はしておくが。

「さて。それじゃあ工房に行って仕事の続きをしようか。アルフレッドが試作品を見て欲しいってさ」

 そう言うと、みんなも俺の顔を見て頷くのであった。



「やあ、待ってたよ、テオ君」

 というわけでみんなと共に夕暮れの街を行き、ブライトウェルト工房へと向かう。

「通信機の改良ができたって?」
「そうだね。翻訳はまだだけど……一先ずヒタカノクニの文字は使えるようにしたつもりだよ」
「流石。仕事が早いな」
「まあ、その言葉は確認してもらって、文字が間違ってなかったらっていうことで」

 そう言ってアルフレッドが笑う。

「では、拝見します」

 と、コマチが改良を加えた試作型通信機を受け取り、文字盤から文字を入力して間違いがないか確かめていく。
 ヒタカには漢字、平仮名、片仮名に相当する文字の使い分けがある。
 とはいえ……変換機能は流石に時間や研究が足りないので一先ずは置いておき、仮名入力をとりあえず可能にした、という段階だ。

 電報のように文節ごとに区切って文字をやり取りすることで、同音異義語による伝達の混乱を避けたりといった工夫を、ユーザー側がする必要があるのだが……まあ、そのあたりは使用上の注意事項として伝えれば防止できるし、将来的には翻訳機能や文字変換機能も含めて、追々改善と追加をしていく予定ではある。

「基本的な文字に関しては大丈夫なようですね」

 と、コマチが試作型通信機の文字入力機能の確認を終える。入力した文面を、俺の通信機に送信。
 続いて、俺の通信機にしっかりとコマチの入力した通りに文章が表示されているかどうかを並べて確認していく。

 通信機のサーバー側の魔道具に追記をした形だ。入力さえできれば、ヒタカの文字を既存の通信機に送る事が可能である。最初から文字、記号等々にある程度の拡張性を持たせているからできる仕様ではあるな。

「――どうやら、良いようですね」

 一通りの確認を終えてコマチと頷く。
 コマチの入力した文章は、基本的な文字の種類を一文字ずつ規則的に入力した、という感じだな。要するにあいうえお順だ。

「テオ君はもう、ヒタカの文字の解読ができるのかい? 僕はまだ順序と形を忠実に再現しただけで色々曖昧な部分も多いんだけどね」
「んー。この文字なら基本的な種類は覚えたよ。後は発音と一致させていきたいところだけど……」

 そう答えるとアルフレッドは感心しながらも納得するように頷いていた。
 いやまあ……日本の仮名文字と置き換えるだけでも通じる部分が大きいというか、文法等々の違いも下地が最初からあるので受け入れやすかったというか。まあ、そんなところだ。

「あれで離れたところにいる相手とお話できる」
「面白い」
「オリエ様ともお話できたら楽しそう」

 と、小蜘蛛達が試作型通信機の動作試験を見ながらそんな風に言っていた。

「ええと、小蜘蛛さん達にはあたしと一緒に隣の部屋まで来てもらっても良いですか? 人化の術の時と、蜘蛛の姿の時に、両対応で魔道具を装着できるよう採寸しますので」
「わかりました」

 ビオラの言葉に小蜘蛛達がぞろぞろとついていく。3つ子で呼吸もぴったりだから内向きなのかと言えばそんなこともなく、対外的には反応は素直な印象ではあるな。
 グレイス達にしてみると微笑ましく映るらしく、隣の部屋に向かう小蜘蛛達を穏やかな笑みで見送っている。

 ちなみに、小蜘蛛達の名前はまだ考え中だそうで。次にオリエに会う時までに決める、とのことだ。

 さてさて。今日から出立の日までやる事は多い。
 ヒタカに対応した通信機、小蜘蛛達への魔道具、ティールやオボロの魔道具も仕上げつつ、どんどんみんなの訓練も進めていくとしよう。
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