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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外194 光る湖

「演奏も演出も……すごく綺麗でしたね、アカネ!」
「本当ですねえ、ユラ様! いや、感動しました」

 幾度かのアンコールに応え、拍手喝采に包まれたままで特別公演が終わる。ユラとアカネは拍手を送りつつも笑顔でそんな会話を交わしていた。

「いや、素晴らしいですね……! 卓越した魔法技術を惜しみなく人を楽しませるために注ぐ……。私もかくありたいものです!」
「ああ。コマチにとっては理想の体現みたいなものか」

 と、コマチも興奮冷めやらないと言った印象だ。ツバキとはすっかり仲良くなったようで、そんな風にコマチに受け答えしていた。

 そうして舞台が終わって、客席からエントランスホールに出て、先程の歌や演奏、演出の話でみんなが盛り上がっているところに、シーラやイルムヒルト達が着替えて戻ってくる。

「おお。素晴らしい公演であったのう!」

 と、御前が満面の笑顔で迎える。人、妖怪問わずに改めて暖かい雰囲気の中で拍手が起こった。

「ん。思い切り演奏できて楽しかった」
「ふふ。やっぱりみんなと一緒だと違って感じるわよね」

 シーラの言葉にイルムヒルトが肩を震わせる。

「えっと。初めまして。ハーピーのドミニクだよ」
「セイレーンのユスティアというの。よろしくね」
「ケンタウロスのシリルです。よろしくお願いします」

 3人ともヒタカの面々は初対面ということもあり、改めて種族も含めた自己紹介を行う。
 やや緊張していたようではあるが公演の反響もあり、みんな好意的な笑顔なのですぐにドミニク達にもぎこちなさが無くなっていった。元々他の種族とも色々交流や接点があったから、慣れているという部分もある。

「蛇の所に負けず劣らず多様な種族が集まってるんだな、ヴェルドガル王国は」
「どうして集まって舞台に立つことになったのかには興味があるな」

 レイメイの言葉にオリエがそう言って頷くと、ドミニク達は顔を見合わせて笑みを浮かべた。

「あたしとイルムとユスティアは、危ないところをテオ君に助けられた縁でだよね」
「そうそう。その後も色々助けてもらったものね。特にハーピーやセイレーンは歌や演奏を聴いてもらうのが生きがいみたいなところがあるし、劇場の事とか、故郷のみんなとまた会えるように手を尽くしてくれたりとか……本当、感謝してるわ」
「私達に関しては……隠れ里に住んでいたのですが、テオドール様達に外の世界に出るための橋渡しをしてもらいました。その縁でみんなと知り合ってですね。里での娯楽が演奏や踊りだったので……満月の度に公演に参加しています」

 と、劇場と5人組の成立の経緯を色々と語る。因みに、次のイルムヒルト達の公演は、満月より少し前倒しで予定されている。満月の日にはヒタカで予定があるからだ。

「こうして聞いてみると何だか懐かしい感じがしますね」
「タームウィルズに来てから、色々ありましたからね」

 グレイスとアシュレイがドミニク達の話を聞いてそんな風に頷き合う。マルレーンもにこにことしながらこくこくと首を縦に振っていた。

「ふうむ。テオドールや皆の話は興味が尽きぬな」
「それは確かに」

 御前の言葉にヨウキ帝や妖怪達も同意する。ティールも俺達と合流してからまだ日が浅いからか、聞きたい、と声を上げていた。

「あー。こっちで起きた事を話しておくのも、相互理解が深まる、のかな」

 魔人絡みの一件が解決したので、共闘するために情報共有する必要性というのも無くなってしまったからな。とはいえ、信頼関係の構築には色々詳らかにしておくというのは重要だろうとは思う。御前達の話もこちらは聞いているわけだし。

「まあ……私は自分の話題というのは気恥ずかしいものだけれど。これだけ人数がいるのだし。語りにくいところは誰かに補ってもらうのがいいかも知れないわね」

 と、クラウディアが言うと、ローズマリーも思うところがあるのか羽扇の向こうで静かに目を閉じていた。

「それじゃあ、フォレスタニアの居城に移動してから、かしら」
「まあ、劇場から劇場へというのは、少し鑑賞疲れしてしまいそうだものね」

 ステファニアの言葉に、ローズマリーも同意する。
 そうだな。幻影劇の鑑賞は少し一休みしてからが良いだろう。三部作で長丁場ではあるし、転移門があって気軽に来れるのだから、鑑賞に関しては日を跨いでも良いと思う。



 そんなわけでみんなと共に広場から迷宮入口へ降り、フォレスタニアへと移動する。入り口の塔からの眺めに帝達や妖怪達から感動の声が漏れた。

「塔からの眺めは、昼と夜でまた結構変わるものだな」
「そうなんですか」

 そんなみんなの反応を見てツバキが漏らした言葉に、ユラが目を丸くする。

「昼は見晴らしが良くて、澄んだ湖や白いお城が綺麗で、すごく爽やか……と言う印象でしょうか? 夜はあちこちで明かりが揺れて……何だか幻想的な感じがします」

 と、コマチが感想を述べるとツバキも大体同じ印象だと頷く。
 フォレスタニアの景色は昼夜が迷宮外の時間帯と連動している。夜は当然暗くなるのだが、日中の光景とはまた違った雰囲気になる。

 夜空は映し出されたものなので満天の星空だったりする。街中や居城にはあちこち魔法の明かりが灯されて……夜の湖上に白い城が浮かんでいるようにも見える。
 湖にも海の民の滞在設備があるので、ぼんやりと水底に光が揺れていて、確かに幻想的な景色といえるだろう。

「明るい時間帯にまたここに来てみましょうか」
「そうですね。また来ましょう」

 アカネの提案に、ユラは嬉しそうに笑う。

 というわけで、浮石のエレベーターに乗って塔の下へ向かう。

「おお。こりゃ面白い仕掛けだな」
「西方の魔法とその文化か。うむ。素晴らしい」

 レイメイや御前の反応に、コマチは目を閉じてうんうんと頷いている。妖怪達も盛り上がっている様子だ。
 そうして浮石から降りて、運動公園や幻影劇場、冒険者ギルドの支部に神殿といった施設を案内しながら居城へと向かう。
 移動床の橋も、中々に面白がっている様子だ。

「運動公園に同じ仕組みの滑走場を用意していますよ。体力と魔力を同時に消費して鍛錬や健康促進になるように、という目的があったりします」
「それはまた興味深いでござるな」
「身体を動かすことを目的とした場、というのは重要かも知れませんな」
「まあ、普段から鍛えている方にはただの遊びにしかならないと思いますが。何といいますか……子供の頃から魔力を鍛錬する機会が増えれば、後々の人材育成にも繋がるかなと期待している部分はあります」
「うむ……。鍛錬は良い」

 タダクニやイチエモンに答える。ジンも鍛錬という言葉に反応して感心するように頷いていた。

「術者の後進育成か。ヒタカでも何か考えたいところではあるな」
「そうですな。帰ったら陰陽寮の者達と相談してみましょう」

 と、帝は色々触発されているようである。
 そうして橋を渡り切り、居城に到着する。一泊して帰る予定を組んでいるので、まずは各々部屋に案内してから、迎賓館のサロンに再度集まって話をしよう、ということになった。
 セシリア達が客を出迎え、そして各人を部屋に案内していく。

「おお。そなたが話に聞いていた西方の蜘蛛の一族か」

 と、オリエと小蜘蛛達が客を迎えに出てきたアルケニーのクレアを見かけて声をかけていた。

「は、初めまして。アルケニーのクレアと申します」

 クレアには一応オリエの事も話してあった。やや緊張しているようだが、オリエは上機嫌そうにクレアに接している。

「うむ。我はオリエという。ヒタカノクニの蜘蛛だ。こやつらは我が眷属である」

 小蜘蛛達が並んで後足で立ち上がり、ぺこりとお辞儀をするように挨拶をした。

「ふむ。変化した姿も見せておいた方が良いだろうな」

 と、オリエが言うと小蜘蛛達が繭でも纏うように糸玉を作りだし――子犬ぐらいのサイズだったそれが変化し内側から子供ぐらいの大きさに膨れ上がる。糸が吸い込まれるように消えていくと、和服を着た少女達がそこに佇んでいた。
 3人とも容姿がそっくりだ。三つ子、と言われても納得できる。

「私達はオリエ様の眷属にございます」
「よろしくお願いいたします」
「以後、お見知りおきを」

 と、3人揃って言葉を引き継ぐように言って、頭を下げる。呼吸がぴったり揃っている、という感じだ。三つ子と感じるのは、どうやら容姿だけではないようである。
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