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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外186 東国の転移門

「この部分はカヤオイと言いまして。ウラゴウを乗せて軒先を支えるためにあるのです」
「つまり、構造としてはこうなるわけですね」
「そうですそうです!」

 と言った調子でコマチから色々ヒタカの建築について説明を受けたり質問をしたりして、一から模型をパーツごとに組めるようになったところで魔法建築に取り掛かる。

 ちなみにカヤオイ、というのは茅負と表記するらしい。神社仏閣などの軒先を見上げると、四角い木材が規則正しい列を成して飛び出しているのがそれで、その上に乗るものが裏甲となる。更にその上に瓦屋根などの構造物を乗せていく感じだ。

 だが、それらの屋根についてはもう少し後回しだ。
 まずは肝心の転移門を設置してしまう。転移門に合わせる形で建物を作るからだ。
 みんなと共に魔石の粉末を用いて転移のための術式に必要となる魔法陣を描き、その周りに防御結界を構築していく。

「では、始めるわね」

 溝に敷き詰めた粉末で魔法陣が出来上がったところで、クラウディアがそれを起動させる。マジックサークルと同時に溝に光が走り、力が宿ったところでその上に建物の基礎を構築していくわけだ。

 石材で魔法陣を覆うように基礎を作ったところで、魔石を埋め込んだ石材の柱を立て、転移門を設置していく。
 転移門のモチーフはどうしようかと迷うところだが……帝に好きな植物やら動物やらを尋ねてみることした。

「ふむ。どちらしたものか。桜の花が好みではあるかな」
「では、転移門の表面の造形はこんな感じではどうでしょうか」

 と、土魔法の模型で、桜の木枝と花びらのモチーフで門柱のデザインを見せてみる。
 動物もいた方が賑やかで良いということで……鎌鼬や雷獣が桜の幹や枝に背中を預けて心地よさそうに眠っているところを表現してみる。

「おお。これは平和そうで良いのではないか? シズマ家の鎌鼬達も喜ぶだろう」
「では、この形で」

 実際にその意匠を反映させた転移門を設置する。
 その向こうに転移港の広場と似たような構造物を形成していく。そうしてそれを建築物で囲めば完成となるわけだが……。

「コルリス。ここに、転移港の広場の中央に作ったのと、同じような水晶の柱を作ってもらえるかな?」

 コルリスはふんふんと首を縦に動かし、前と同じように白い石材の石畳の中央に、水晶の柱を作り上げる。その根元に光の魔石を仕込んでやることで、水晶の柱が発光しているような演出ができる、というわけだ。

「綺麗ですね、ユラ様」
「本当ですねぇ」

 アカネとユラがそれを見て相好を崩す。
 まあ、これについては和洋問わない神秘的なインテリアという印象かな。照明にもなっていて一石二鳥だ。

 そうしてお堂の一階部分となる部分が出来上がったところで、周りの建物に着手する。
 柱を立てて、梁を通して屋根を作り、壁を塗る。壁と屋根瓦以外の仕事のほとんどが木魔法で事足りるだろう。
 木材からウッドゴーレムを作り出し、所定の位置に移動させてから必要な部品、形に変えることで作っていける。

 木材の形を整え、力のかかる向きを考えて強度を整え……木材同士をパズルのピースのような形状に形を整えて組み合わせることで、地震が起きても歪まない、外れないような工夫をしたりと、コマチから受けた説明を元に作っていく。
 ついでに木材に対して構造強化と耐火の術を用いることで、頑強かつ、火災にも強い仕様にしておく、と。

「西方の魔法建築か。できていく建物もそうだが、あの式神――いや、ゴーレム達の統制された動きと変化。見事なものだな」
「いやはや、術者としてはこうした卓越した技術が見られるというのは冥利につきますな」

 と、帝とタダクニがそんな風に話をして、ユラ達も嬉しそうに頷く。
 梁や屋根が終わった時点で諸々点検し、問題なさそうな事を確認してから、続いて壁作りだ。
 漆喰の壁は竹の格子で壁の基礎となる骨組みを作り、骨組みを元に土壁を形成し、その上に何度か配合を変えながら漆喰を塗っていく、という手順となる。幾度かに渡って漆喰を塗る事で、ムラのない、綺麗な白壁が出来上がる。

 漆喰壁については西方でも存在している。メンテナンス性を考えて手順はヒタカ式に合わせるが、形成したり乾かしたり配合比を変えたりと言った作業はお手の物だ。きっちり作っていくとしよう。



 ――土魔法で屋根瓦を形成。屋根に配置していき、最後に魔除けの鬼瓦まで設置してやれば、転移門を内包した建物の出来上がりだ。六角屋根のお堂に繋がる扉を開き、中央の間に踏み込めばあちら側に飛べる、という寸法である。
 例によって契約魔法により、両国の王、或いはティエーラが転移を望まない場合は門の機能停止が可能という仕様になっている。

 それ以外の部分については……まだ家具類が運ばれていないところがあるがお堂の2階部分に監視できるような見渡しの良い作りの部屋があり、お堂に1階部分に接続している建物では警備や来客の寝泊まりができるよう、いくつかの部屋割りをしてある。

 入口部分は受付カウンターのような構造になっている。施設を利用する場合に、記帳等々ができるようにというわけだ。転移門を行き来するためにはどうしても人目に触れるようにしてある。

 さて。通信機によればタームウィルズの転移港でも、七家の長老が対となる転移門を設置してくれたところだ。あちら側の門柱の意匠についても、しっかり作ってこなければなるまい。
 実際に転移門を起動させ、タームウィルズとヒタカの都の間での行き来が可能な事を確認する。

 転移門を潜り、光に包まれると――そこは既にタームウィルズだった。明るい陽射し。タームウィルズ側は良い天気である。転移港の広間では、七家の長老達が俺の到着を待っていた、というように相好を崩して迎えてくれる。

「おお、テオドールか。待っておったぞ」
「はい。お待たせしました。転移門の意匠も決まりましたので、こちらの門も早速仕上げてしまおうかと」
「ほうほう。意匠が楽しみですな」

 そんな長老、エミールの言葉に笑みを返し、モチーフになったものを説明しつつ転移門を仕上げてから、またヒタカ側へトンボ返りをする。

「――どうやら動作は問題ないようです」
「では……私達の訪問は、妖怪達と予定を合わせるとしよう」

 動作確認はしたが、帝達はまだ実際には転移門は使わない。妖怪達とタイミングを合わせると、そんなふうに帝は言ってきた。妖怪達とは協力関係にあるからという帝からの意思表示でもある。

 というわけで帝達にとっては明日の朝。俺達にとってはタームウィルズの夕刻にあちらで訪問を迎える、ということになるだろう。

 まあ、迎える側としても帝達の訪問と妖怪達の訪問がバラバラになると二度歓待しなければならなくなって大変だからな。今は仙人と巻物関係で準備をしている真っ最中でもあるし。いずれにしてもユラは気軽にタームウィルズと行き来できるようになったので随分とにこにこしていて、傍目から見ても上機嫌なのが分かる。
 そんなユラの様子に表情を綻ばせ、アカネが俺に言う。

「しかしこれから、北東に飛んであちらでも魔法建築ですか。大変ですね」
「こちらでは夜も更けてきましたが、僕達からしてみるとまだまだ起きて一日が始まったばかりという感覚ですからね。魔力にはまだまだ余裕がありますし」
「なるほど。確かに……」
「妖怪達もこれからが活動の時間帯とも言えるからな。きっとテオドール殿の到着を心待ちにしているだろう」

 ツバキがそんな風に言った。
 そうだな。夜が更けてくれば帝達は休み、逆に妖怪達は活気付く、というわけだ。妖怪達のところにも、しっかりと転移門を設置してこなければなるまい。
いつも拙作をお読み頂き、ありがとうございます。

読者の皆様の応援のお陰で、書籍版境界迷宮と異界の魔術師、6巻の発売日を無事迎えることができました!
日々の応援、感想、いつも励みになっております。改めてお礼申し上げます。

今後ともウェブ版の更新共々頑張っていく所存ですので
これからもどうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m
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