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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外184 朝の国と夕暮れの国

 みんなの訓練は順調だ。ティールやオボロも空中戦装備を身に着け、早速シールドを蹴って空中を動く訓練をしていた。
 水中を高速で推進するための脚力はやはり大したもので、腹ばいになる形で足に闘気を纏い、シールドを蹴ってかっ飛んでいく様は弾丸のようだ。
 闘気と魔力、或いは魔道具を同時に扱うということで、まずは単純な形から反復練習してスムーズにこれらを扱えるように練習中というわけである。同時に空中移動の訓練にもなる。

「良いですね。ティールもこの分なら相当成長しそうな感じがあります」

 グレイスがその光景を見て笑みを浮かべる。

「そうだな。元々身体能力は高かったみたいだし」

 闘気も割と使い慣れてきた印象だ。
 ティールに故郷の事を色々聞いてみたが、何種類かの魔物は生息していても、普段は凶暴化した魔物がいないので外敵の危険はそこまで高くないそうだ。少なくとも、集団でいれば手出しはされないそうである。

 ティール達は体格も大きいが魔物であるから、割と小食だ。色々聞いてみれば魚等もティール達の生息域にはむしろ数が多く、寒いけれど豊かな海ではあるようだ。

 ただ、やはり時々危険な魔物が現れることがある、とのことで。

 星球儀で確認してみたところ、確かに南極付近の海にも魔力溜まりがあり、多分そこから凶暴化した魔物が育って流れてきているのだろう。
 ティールの望みとしては、そうして時々起こる有事に際して仲間達の防衛が出来れば、というわけである。

 一方で同様に訓練をしているオボロであるが、こちらは空中戦への参加ができるよう、立体的に動いて相手の行動を阻害する技術を身に着けたいとのことらしい。
 というわけでアクアゴーレムの身体表面に沿うように空中を螺旋状に駆け上がっていったりと、平面から立体へ対応できるように訓練を続けていたりする。

 オボロに対するアクアゴーレム達は、それぞれに異なった装備品を身に着けている造形だ。手に持っている武器や鎧等々の尖った部品等に引っかかったりして行動を阻害されないようにしなければならない。
 そうしたことにオボロが気を付けるのを前提とした上で、ゴーレムもオボロを捕まえようと連携して動いていくというわけだ。

 上下に逃げるかそれとも左右を選ぶか。ゴーレムにはそれぞれがもし人間であったら、という仮想の思考パターンで対処の仕方を変えており、がむしゃらに追いかけたり、先を読んだり、山勘に頼ったり、他より反応そのものが鋭かったりする。
 そういった個体差を見極めて回避をすることでオボロの判断力が試されるぎりぎりの難易度を構築していこうというわけである。

「オボロの訓練も、段々匙加減が分かってきたかな」
「これも魔道具の訓練にもなっているんですね」

 アシュレイの言葉に頷く。

「そうだね。こういう経験がそのまま魔道具の運用に流用できるようにするつもりでいる」

 そうして程々の所で休憩と交代を繰り返し、みんなの訓練も進めていく。水の弾幕を張ってそれを空中戦装備で回避する訓練。弾幕の中に着色した弾を織り交ぜ、可能であればその弾だけを撃墜する、といったような内容だ。空中機動を取りながら回避と反撃を的確に行うのが目的である。



 そうして連日訓練を続けていると、ある日の朝、通信機にヒタカのヨウキ帝から連絡が入った。記号での連絡ではあったが、その意味するところは転移設備の用地が確保できたので見に来てほしい、という意味合いだ。

 というわけでみんなに連絡が入ったことを伝えると、クラウディアが頷く。

「では、準備を整えてあちらに飛びましょうか」

 そうだな。転移門の片割れをあちらに設置し、契約魔法を用いてくる必要がある。

「転移門ですか。いやあ、何というか期待が高まりますね」

 と、コマチが笑みを浮かべた。コマチ達の魔道具作りは一段落しているようだ。

「もしよければ同行しますか? 今までの経験上、同行した方が転移魔法で戻ってくると、転移先の方々にも安心していただける傾向がありますので」
「ああ、それは良いですね。是非同行させて下さい!」

 提案すると、コマチが嬉しそうに立ち上がる。それを見たツバキも頷いて立ち上がった。

「では、私も同行しよう。鬼の里にも向かう、という話であったしな」

 そうだな。都だけでなく、御前やレイメイ、オリエ達のところにも向かう予定なので、ツバキが顔を見せておけば、安心してもらえるだろう。
 そんなわけで、必要な資材を準備し、クラウディアと共にみんなでヒタカへと飛ぶ。

 光に包まれ、俺達の姿はヒタカの都――巫女寮の中庭に飛んでいた。気温や湿度、明るさや天候等ががらりと変わる感覚。転移先がヒタカノクニだとそれが顕著だ。
 季節や気候に大きな差がある、ということではなく……タームウィルズは朝であったが、ヒタカは夕暮れぐらいの時刻だったからだ。
 こうして結構な時差があるので、双方にとって都合の良い時間というのがかなり絞られてきてしまうところがある。

「ああ、皆様。良くいらしてくださいました」
「お待ちしておりました」

 と、俺達の到着を待っていたユラとアカネが挨拶をしてくる。

「こんばんは、ですね。こちらの時間では」
「あちらではまだ朝、という話だったでしょうか? では、おはようございます、ですね」
「ふふ。不思議な感覚よね」

 そんな風に言ってユラが明るく笑い、イルムヒルトが肩を震わせる。そんなやり取りにみんなも楽しそうに相好を崩した。
 転移魔法ならではのやり取りかも知れないな、こういうのは。
 そうしてコマチやツバキ、オボロ達にもお帰りなさいと声をかけていた。

「ただ今戻りました。いやあ、シリウス号でヴェルドガル王国まで移動したのですが、こうして朝から夕方になると理屈を聞いていても不思議ですね。私達も生活時間の違いに慣れるまで、少し時間がかかりましたよ」
「そう、だな。転移魔法で気軽に行き来ができるようになると、慣らすのが大変そうだ」

 と、コマチとツバキがそんな風に言ってしみじみと頷き合う。そうだな。2人はシリウス号をかなり飛ばして移動したので、時差を結構感じたらしい。

「転移港に、眠りを取るための魔道具と眠気を取るための魔道具を常備しておくのがいいかも知れないわね」
「アルバートもヒタカに飛んできた時、時差に困っていたものね」

 ローズマリーが割と真剣な表情で言うと、ステファニアとマルレーンが苦笑する。
 実際それは必要かも知れない。催し物や式典等々色々な用事で行き来する事が想定されるし、仮に交渉事をするならばお互い意識のクリアな、ベストな状態で臨むべきだろう。生活時間を合わせるための手段を用意しておくのは重要だ。まあ、それは手が空いたときに用意しておくとして。

「では、早速ではありますが、用地まで案内致しますね。陛下やタダクニ様もそこで皆様の到着をお待ちしています」
「はい。よろしくお願いします」

 というわけで、ユラとアカネに案内される形で転移門の建設予定地へと向かう。前、俺達が都に来た時に作った力車に乗って移動する形だ。その道中で、アカネとユラが用地について教えてくれた。

「陰陽寮の近くに用地を確保しました。都に来たお客をもてなす為のお屋敷として使おうと新しく建造を進めていた場所で、立地や広さ等の利便性から見ても優れているというわけです」
「元々そういった、来客をお迎えする目的で使われていたお屋敷は都には別に存在しておりまして。もっと警備しやすい場所に、ということで新造していたのですが……ここはヴェルドガル王国の方々をお迎えするための専用の場所にしてしまおう、ということになったようですね」

 なるほど。ヒタカの都における迎賓館みたいなものだろうか。行き来もしやすく、陰陽寮の近くであれば警備もしやすい。元々の建物の目的にも沿っているというわけだ。

「その敷地内に転移門を作ればいい、というわけですね」
「そうなります」

 そうして都を進んでいき、やがて陰陽寮のすぐ隣の、大きな屋敷に到着する。
 門を潜って敷地に入ると、そこにはヨウキ帝とタダクニが待っていた。力車から降りて、顔を合わせると、ヨウキ帝が明るく挨拶をしてくる。

「これはテオドール殿。よくぞ参られた」
「これは陛下、タダクニ様。お待たせしてしまったようで」
「いやいや。本当に連絡してからすぐであったがな」
「転移魔法とは素晴らしいものですな」

 そんな風に二人は笑う。因みにイチエモンは満月までの諜報活動の真っ最中らしくて多忙で顔を出せない、との事である。
 さてさて。新造中ということで、まだ家屋で出来上がっていないところもあるようだ。建物の中を見せてもらい、どこか良さそうなところに転移門を作っていくとしよう。
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