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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外182 工房での対策会議

「おはようございます。お待たせしました」
「やあ、テオ君」
「これは境界公。ご無事でお戻りになられたようで何よりですわ」

 フォレスタニアとシルンの執務をみんなで終わらせて工房に顔を出すと、アルフレッドやオフィーリア、ビオラ、エルハーム姫、タルコット、シンディー、それに迷宮商会店主のミリアム、と。工房の面々が明るく挨拶してくる。今日は天気もいいし暖かいから、中庭にテーブルを出して、そこに魔道具を持ってきたりして談笑していたようだ。こちらの面々も再会と朝の挨拶を返す。

「コマチさんやツバキさんに工房の設備や、今まで作ったものを見てもらっていたんだ」
「いやあ……素晴らしいです。ブライトウェルト工房の魔道具は芸術品ですね!」

 と、コマチはもう傍目から分かるほど上機嫌な印象だ。何故かシーカーを抱えていて、頭を撫でたりしているが。
 コマチの隣にはミリアムとビオラ。それから肩にトビネズミの守護獣、ラムリヤを乗せたエルハーム姫。全員機嫌良くにこにことしていた。

「中々盛り上がっていたようですね」

 尋ねると職人の面々がそれぞれに頷く。

「そうですね。コマチさんからヒタカの刀作りの製法を詳しく聞くことができましたので」
「私は飛行装置を見せていただきまして」
「本当、凄い変形機構ですよね。飛行装置の形式もそうですが。職人として冥利に尽きます」
「それで今度、工房お抱えの鍛冶師や、南区の親方ともお話ができるということになりました。マクスウェルさんやイグニスさんを作った技術とか……もう興味が尽きません……!」

 と、エルハーム姫、ミリアム、ビオラ、コマチが答える。

「ああ。そういうことでしたか」

 それぞれに嬉しい初顔合わせになった、というわけだ。

「コマチさんは刀鍛冶の技法もご存じなのですね」
「専門ではないので恐縮ですが、冶金技術は私の仕事にも関わってくるところがありますので」

 グレイスの言葉に答えるコマチ。なるほどな。確かに、ああいう絡繰りを作るなら色んな知識は必要だろう。

「これで、ヒタカ風の刀作りが大きく前に進みます。後は得られた製法や知識を総合して、昇華させたいところではあるのですが」

 エルハーム姫が言う。バハルザードとヴェルドガル、それにヒタカノクニの刀鍛冶の技術、知識を結集して宝剣なり宝刀なりを作りたい、とエルハーム姫は考えているわけだ。

「魔道具として何かしらの効果が必要であれば、協力しますよ」
「ありがとうございます。私としては、父上の理想に沿うような形が良いな、とは思っているのですが……そうですね。何か考えを纏めておきたいと思います」
「うむ。工房で新しい武器が作られるとなると、我としても期待が高まるな」

 と、マクスウェルが核を明滅させてそんな風に言った。コマチもうんうんと頷く。

「ふふ、マクスウェルのように意思を持った刀剣というのも面白いかも知れませんね。ああ、けれど、テオドール様やアルフレッド様にお手間をかけさせてしまいますね」

 エルハーム姫は楽しそうにマクスウェルに答えるも、少し慌てたように首を横に振る。

「僕としては問題ありませんよ。今すぐの話というわけではありませんし」
「僕も同じく。面白そうだよね」

 と、アルフレッドが相好を崩す。
 ファリード王の理想に沿う形をと考えると……マクスウェルのように意思を持った刀剣というのは十分にありだろう。まあ、そこまで特殊だとファリード王の意向も確認しなければならないが。
 ともあれ、ファリード王は将来に渡ってのバハルザードの平和と安寧を願っているからな。意思の有無はどうなるかは分からないが、能力的には防御的な効果であるほうが喜ばれるかも知れない。

「そ、そうですか? では、それも視野に入れてということで……。ですが、仰る通りまだ先の話ですね。今は仙術や巻物のお話、でしょうか」

 エルハーム姫は苦笑してそんな風に言った。

「そうですね。では、そっちのお話を進めていきましょうか」

 というわけで、みんなで腰を落ち着け、お茶を飲みながら、仙人と巻物の捜索や、敵が使うかも知れない術といった対策の話へと進んでいく。

「――キョウシを扱う術は……まあ、これに対策を施すのは確定として、他に何か予想されるものはありますか?」

 そう尋ねると、ツバキは少し思案した後に答える。

「……パオペエ、だろうか。これはあの国の……道士専用の魔道具と考えて貰っていい。頭領から聞いた話ではあるが、一般的な道具の形をしているのに不思議な力を備えていて、中にはかなり強力なものがあるとか」

 ――パオペエ……宝貝ね。キョンシーがいるなら、こっちも有るわけだ。

「道士専用……? 普通の魔道具とは違うのかな?」

 アルフレッドが首を傾げる。ツバキはその質問に頷く。

「普通の魔道具との違いは……道士の素養がない者がこれを使うと、能力を行使する前に力を吸い尽くされてしまうのだとか。だから道士や仙人が扱う武器、道具、という事になる。これは魔力の消費量が大きいか、或いは制御が難しい、ということなのだろうと解釈している」
「安全策を講じない代わりに、出力を上げた、みたいな感じでしょうか……?」
「あたしとしては、使用者の安全を考えないのはあまり好みの方向性ではありませんね」

 コマチが表情を曇らせ、ビオラも眉をひそめる。

「確かに……一歩間違えたら呪いの道具だな。気軽な悪用ができないような作りになっているのかも知れないけれど」

 西方で言うなら、一般人の魔力量で扱ったら一回で魔力枯渇を起こして昏倒してしまうような……そんな魔道具、というところだろうか?
 いくらなんでも燃費が悪すぎるから、一旦魔道具側に大きな魔力を供給して起動させる必要がある、と考えれば……まあ、コンセプトとしては分かる気もする。

「どんなものがあるのかしら?」
「……相手の名を呼んで、それに答えると内部の空間に吸い込んでしまう酒瓶……だったか瓢箪だったかがあるとか。これは頭領が戦った妖魔が持っていたという話だ」

 ローズマリーの言葉に、ツバキが答えた。ああ。西遊記のあれか。神仙のところから盗み出された道具……だったような。

「厄介そうだけど……それ自体は知っていれば対策も容易ね」
「戦闘中に相手から名指しで呼びかけられる、というのもあまり無い気がしますからね」

 クラウディアが目を閉じ、アシュレイが頷く。

「確かに……。実際にそういう状況があるかって考えたら、いかにも怪しいわね」

 イルムヒルトも眉根を寄せて同意する。
 事前にこの情報が得られたのは大きいか。
 まあ、妖魔の持ち物が敵の手に渡っていて、それが俺達に向けられる、なんてことがあるかどうかは置いておくとして。

「この場合は……一見して武器に見えないものが、とんでもない能力を持っていたりするってことに注意を向けるべきなのかな」
「そうなるな」
「ん。敵が戦場に持ち出してくる物なら全部に警戒する必要あり、と」

 シーラが言う。シーラも色々隠し武器を用いるわけだし、まあ、そういう類なら所有している物を見破るのは彼女の得意分野ではあるだろう。

「後は、あっちの国の魔道具は鹵獲しても、迂闊に起動させないことかな」
「どれぐらいの魔力を消費してから動くのか分からないですからね」
「鹵獲して使われない時点でよしとすべき、という事ね。確かに、自分の魔力への過信は禁物だわ」

 グレイスとステファニアが言うと、マルレーンを始め、みんなも真剣な表情で頷いた。
 そうなるな。解析が済んでいるなら条件を整えて活用する手もあるだろうが。

「けど誰にも使えるわけじゃないなら、敵が持ち出してくるにしても精鋭や信用のおける者しか所有していない、ってことになるかな」

 権力者が目を付けて蒐集していたとしても、実際に運用できる数はそう多くはないとは思うので、そのあたりは良い情報と言えよう。その分、持ち出してくる宝貝であるとかそれを扱う者は厄介そうではあるが。
 まあ、いずれにせよこちらの魔道具とは設計思想が異なる、という情報を得られたのは僥倖だ。

 何はともあれ、ツバキの話で分かったことから訓練に活かせるところは活かし、対策用魔道具が作れるものは作っていくとしよう。
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