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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外181 仙人捜索に向けて

 王城での歓待ということで、頃合いを見計らって出かけることになった。王城の迎賓館に到着すると、みんなでテラス席に案内された。
 楽士隊の演奏を聴きながら、歓待が始まるのを待つわけだ。まだ時間が余っているのでティールについて少し詳しく見ていく。

 ティールについてであるが……迷宮に潜って戦ってと言うのも鍛錬になるだろうが、魔物ペンギンの体格、特性であるとか南極、水中戦というロケーションを想定した上でないと効果も半減だ。

 そういう視点でペンギンの特徴を見た場合、まず羽毛が非常に防水性、保温性に優れていることが挙げられる。
 ツヤツヤした光沢のある羽毛で、意外なほどに表面は硬質。しかしかなりの密度でふかふかしている部分もある。
 構造上内側に水を侵入させず、羽毛であるために保温効果も高い。そのおかげで、冷たい海や極寒の環境でも羽毛の中部や皮膚が水に濡れず、体温も奪われない、というわけだ。

「ティールは中々不思議な感触だな」
「本当ですねえ。水鳥には初めて触れますけど」

 と、言いつつ、にこにこ上機嫌でティールの背中に触れているシャルロッテとマルレーン、セラフィナである。ティールは撫でられながらも大人しくしていた。

 そのまま循環錬気で見てみれば、羽毛と脂肪の下は、相当量の筋肉の塊であるのが分かる。
 フリッパーについては問答無用な硬質さで、とにかく頑強な印象だ。これはフリッパー部分の骨が一枚の板状になっている事と無関係ではあるまい。

 通常の鳥類は飛ぶ事に特化しているので骨に至るまで軽量化されている。総じて鳥類は細くて脆い印象があるが、ティールはまるで正反対だ。
 非常に骨太で密度の高い、頑丈な骨格を持っているのが見て取れる。このあたりの頑丈さは……はっきり言えば人間以上のものだ。

 そんな骨が板状として詰まっているわけだからフリッパーが頑強なのも当然と言えよう。
 足の骨も発達している。これは泳ぐ事に特化しているからだろうし、陸上での活動も行っているからだろう。陸上で転んだり多少の落下も平気で耐えられるというわけだ。

 水中を泳ぐ時と、氷上を腹ばいで移動する際の機動力も特徴だ。
 これは羽や足による水中の推進力や、氷を蹴る時の脚力が相当優れているという事を意味している。これで氷を操る術まで持っているわけだから……想像以上に怪力で耐久力も高く、条件さえ整えてやれば俊敏に動ける魔物、というのが分かる。

 そうした分析結果はみんなにも口頭で伝えておく。魔道具作りや戦法の方向性を考えるにあたり、アイデアは広く募集した方が良い。

「案外、闘気を扱うのに向いているような気がしますね。まともに戦うだけでなく、逃げる際、守る際にも闘気が使えれば心強いですし」
「羽に鋭い氷の刃を作って、そこに闘気を纏ってすれ違いざまに切る、とか。回避を兼ねて攻撃できるなら、迂闊に近寄れない」

 というのがグレイスとシーラの感想である。確かに、それをするだけのポテンシャルはあるだろう。身体能力自体を高め、接近されても対抗する手段があるならそれだけでも有利になる。

「それもありかもね。近接で戦うなら氷の鎧を纏うとか、プロテクションで補強するのも重要になってくると思う」

 怪我をするのを避けるためだ。極寒の地で羽毛にダメージを受けると、戦いの場を乗り切っても寒さで致命的になりかねない。だから本来の強固さに加えて氷の鎧を闘気で強化すれば鉄壁だろう。

「危険性を減らす方向で考えるなら、遠距離攻撃でしょうか」
「集団戦を考えるというのはどうかしらね? 氷の弾幕の張り方を教えておく、とか」
「なら、ディフェンスフィールドの魔道具も良いのではないかしら?」

 これはアシュレイとローズマリー、クラウディアの案だ。

「ディフェンスフィールドで守りながら集団で弾幕、は良いかもね。捕食目的の外敵相手なら大体は追い払える気がする」
「後は……もしも接近されてしまった時のために、水や氷に着色する術を教えて身代わりを作る、とか?」
「寒い海なら、逆に熱湯を作って浴びせてみたり、なんていいかも知れないわ」
「音とか光で驚かせたりとか?」

 と、ステファニアとイルムヒルト、セラフィナも案を出してくれる。これは接敵されそうになった際の、防御的な対策だな。

「生息域に存在している魔物の探知方法や性質に合わせるのが良いのかな。そのへんはティールに聞いてから幻惑の種類を考えてみようか」
「オボロも動きを更に鋭くしたいそう」

 シーラの言葉に、オボロがこくんと頷いた。

「そうだな。オボロには俺達の訓練に付き合ってもらおうかな。近接戦の体捌きの訓練に慣れてもらえれば、お互い俊敏な動きができるようになっていく気がする」
「テオドール殿の訓練か。興味があるな」
「私は魔道具作りの方に……。是非お手伝いさせて下さい」

 ツバキとコマチが言う。

「そうですね。お二人にも加わってもらえるとより充実するかなと思いますし」

 そんな話をしていると、やがて王城での歓待も始まった。楽士のラッパが吹き鳴らされてメルヴィン王が塔のバルコニーに姿を現す。拍手と喝采。メルヴィン王は笑みを浮かべ、手を上げてそれに応じる。そうして歓声が収まるのを待って、声を響かせた。

「今宵は、喜ばしいことに、我が国に遥か東の国より客人が訪れている。新たなる友人達を迎え、これからの友誼と信頼を深めていきたいと余は望んでいる。その門出として相応しい夜となることを願い、ここに宴の席を開こう。共に飲み、食い、歌と音色を楽しんで絆を深めようではないか!」

 そうして酒杯を手に取り皆で乾杯する。楽士隊のラッパが高らかに吹き鳴らされ、魔術師隊の打ち上げる光の演出と共に飛竜隊、地竜隊と魔術師達による催し物が始まった。
 楽士隊の奏でる勇壮な音楽と、魔術師隊の操る光の粒の中を、曲芸のような機動で飛び回る竜騎士達の練度は実に見事だ。

「これは見事ですね……!」
「なるほどな……。この国の戦士たちは相当な訓練を積んでいるようだな」

 コマチとツバキもその光景に喝采を送る。オボロとティールも航空ショーに見入っている様子だ。ティールは特に、フリッパーをパタパタさせて楽しそうに見える。色々今後についての話もしていたから、思い悩むこともなくなって催し物を気兼ねなく楽しめるというわけだな。

 催し物が始まるのと同時にバルコニー席にも料理が色々と運ばれてくる。
 迷宮産の食材を使用した料理の数々。基本的には持て成しの意味も込めてタームウィルズの料理を主にしているようだが、その中にマンモスカツやエビフライも含まれていたりするのは若干恐縮だ。まあ、ヒタカでは披露しなかったから丁度良かったかも知れない。

 そうして催し物と料理を楽しみながら、夜は更けていくのであった。



 ――明けて一日。巻物絡みの仕事を進めていくためにも、朝早くから起き出して朝食を済ませ、それから執務をこなしてしまうことにした。
 フォレスタニアとシルン伯爵領。双方の執務をみんなで進めていこうというわけだ。手分けして書類を確認し、どんどん処理を進めていく。

 ツバキ達については朝食をとってから、アルフレッドと共に一足先に工房に向かってもらっている。設備や今まで作ったものを見てもらったり、装備品を作るための採寸などをしたりと、前もってやっておくことが色々あるからだ。

 執務が終わったら合流し、話し合って巻物探索と仙人救出に際しての対策を考えていこうということになっている。同時に訓練も進めていきたいところだ。
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