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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外153 妖怪達との友誼

 というわけでシリウス号の甲板にて、御前や妖怪達との親睦を深める時間を作る。
 とは言え、アヤツジ兄妹への迎撃が控えている現状では気を抜き過ぎるのもよろしくない。

 シリウス号全体を光魔法と風魔法のフィールドで覆い、迷彩偽装を施しつつ音や匂いが外部に漏れないよう遮断。配置したシーカー、ハイダー達の監視用モニターをチェックできるようにしたところで、改めて妖怪達に自己紹介だ。

「――ええと。長いのですが分解するとテオドールが名前で、ウィルクラウドとガートナーが姓。フォレスタニアは、僕が領主となってからの家名、及び領地の名となります」
「なるほど。ヒタカとは姓名の順序の他にも違いがあるのだな」
「今後西国と交流が生まれることを考えると、そういったお話は興味深いですね」
「確かに。失礼があってからでは大変です」

 と、名前について詳しく説明すると御前やユラ、アカネ達は勿論、妖怪達も感心するようにふんふんと頷いていた。
 グレイス達についても詳しい肩書きを含めて自己紹介していく。妻が複数ということで、御前は割と普通の反応だが、妖怪達は目を瞬かせたりと割と驚いている印象だった。

「グレイスと申します。種族としてはダンピーラとなりますが……ヒタカノクニではそれで通じるでしょうか」
「ふうむ。確かにそなたからは鬼族に近しいような少し違うような……不思議な気配を感じるのう」

 御前の言葉にグレイスは穏やかに微笑む。

「鬼族との共通点は分かりませんが……。私の場合はテオのお陰で種族の特性を抑えて、こうしてみんなと一緒に暮らせているところがあります」
「おお。テオドール殿とは良き伴侶なのであるな」
「はい」

 と、笑顔を向け合う2人。

「私はラミアのイルムヒルトと申します」

 イルムヒルトも人化の術を解いて挨拶をする。

「うむうむ。西方の友よ。テオドールから少しだけ話は聞いている。今後ともよろしく頼むぞ」
「こちらこそ」

 御前とにこやかに言葉を交わすイルムヒルト。イルムヒルトとしては御前との交流もそうなのだが、三味線を持って来ているろくろ首を見て音楽的な交流も楽しみにしている印象があるな。まあ、そちらについては互いに紹介が終わってからという形になるが。

「この方は――」
「イグニスよ。まあ、魔法生物は――こちらで言うと式神に近いわね」
「魔法生物にゴーレム……。西方の式神も気になりますが、魔物も気になりますな。妖怪とは少し違うようですが」
「そうですね。魔物は妖怪よりも野生動物的な性質が強いような気がします」
「ん。こっちとしても妖怪とか忍者とか色々気になる」

 コルリスやティールを興味深そうに見るタダクニの言葉に、何やらすねこすりを両手で抱えたシーラが言う。
 すねこすり達は相当動きが素早い。ヒットアンドアウェイが基本らしく自分達からは身体を擦りつけていくが相手からは触れられないように動いている、という印象ではあったが、シーラにかかれば割とあっさりと捕獲されてしまったようである。

 一際動きの素早い個体がシーラに突貫し、方向転換を見切られて流れるように抱き上げられた時はその技術に衝撃を受けたように目を丸くしていた。それを見た他の個体も大人しくなった感じだ。
 そんなわけですねこすり達はシーラの周辺に集まって来て身体を丸くしているところをマルレーンやアシュレイ、ユラ達に撫でられたりして、心地良さそうにしていた。うむ……。

 そんな和やかな光景を横目に微笑むステファニアやアカネである。ステファニアはコルリスに興味津々といった妖怪達にベリルモールの事や使い魔に関しての説明をしていた。
 コルリスが鉱石を食べるのを見て妖怪達が驚いている、というのは割と不思議な光景ではある。

「では――こちらの面々も紹介していくとしようか。では、そうだな。お主達からか」

 こちらの自己紹介が終わったところで、御前が集まった妖怪達を紹介してくれた。

「私はろくろ首と申します。以後お見知りおきを」

 そう言って伸ばした頭だけで一礼するろくろ首である。ろくろ首や二口女、一つ目の豆腐小僧に河童の親子といった、人型に近い面々は大体言葉を話せるようだ。一方で動物型や付喪神系統は言葉を話せないという者も多いようではある。
 そういった言葉を話せない面々は御前や河童、ろくろ首といった面々が紹介してくれる。
 そうした妖怪達の自己紹介を聞いてみると、種族名イコール個体名、というケースが多い印象がある。見た目と性質が一致していたりして分かりやすくはあるが。

 変わり種としては不可視で気配だけ存在しているという妖怪もいた。
 人の形をした魔力の塊は見えるものの、肉眼では何も見えない。しかし見えなくても何かがいる、という気配が伝わってくる。そういう妖怪なのだろう。

「人からはべとべとさんと呼ばれています」

 と、自己紹介してくれた。声は出せるらしい。

「噂は聞いたことがありますな。確か……夜道で気配や足音だけで人の後ろをついていって驚かせるという妖怪だったかと。道を譲ったり、道が暗い場合は提灯を貸すとお礼を言って気配も消えるのだとか」

 と、タダクニが教えてくれた。その傍らで魔力の塊がうんうんと頷いていたりする。
 なるほど……。実際に夜道で遭遇したら確かに肝を冷やすかも知れない。それでも実害は全然ないようではあるが。
 他にも森の中に釣瓶火もいるらしいが、平原では釣り下がる木が無くて来れないので伝言だけしておいたと河童が教えてくれた。

 それに化け狸や化け狐の類は割とヒタカではどこの地方にもいるそうで。ここいら一帯に住まう一族を代表して一頭ずつ話を聞きに来ているそうだ。
 幻術を操って人を化かすという点ではオルトナやフラミアとも似ているが、ヒタカの狐や狸は種類が違うようである。

「しかしここまで妖怪達から信用を得て、身近に接する事ができるとは」
「エインフェウス以上に顔触れが豊かですな。賑やかで良いことです」
「まあ、こやつらはこうして愉快な連中ではあるのだがな。全ての妖怪がこうだと思ってはいかんぞ」

 賑やかでバリエーション豊富な妖怪達の自己紹介が終わったところでタダクニやイングウェイがそんな感想を漏らすと御前が言った。

「荒ぶる精霊――。怨念や災いが形を成したような妖怪もいる、という事ね」
「その通りだ」

 クラウディアの言葉を御前が肯定する。確かに、あまり凶悪な性質を持った妖怪は居並ぶ面々の中にはいないようではある。
 ヒタカの鬼達はどうかと言えば……人間達の動向を気にせず、我関せずといった調子で暮らしているから、敵でも味方でもない中立の立場なのだろうが。

 さて。自己紹介が終われば親睦を深める流れだ。炭酸飲料やかき氷、綿あめ製造機等々の魔道具を持ってきてそれを振る舞ったり、食事がとれない面々であれば楽器演奏で交流を行っていく感じである。

 イルムヒルトとろくろ首がリュートと三味線を交換して奏でてみたり、二口女が髪でドラムスティックを握って叩いてみたり。
 セラフィナは早速妖怪達と仲良くなったのか、ケウケゲンの頭の上に乗せてもらったりしているようだ。まあ、妖精と妖怪は精霊に近いから、仲良くなれる下地は元々ありそうではあるしな。

「こういう術を持っていて……だから、絵に描いても良い?」

 シグリッタは気になる面々が多いのか、術のバリエーションを増やすためにモデルになって欲しいと妖怪達に頼んでいるようだ。本から動物を出しながら術の説明をしていた。
 依頼されている妖怪達もまんざらではなさそうな反応ではあるな。寧ろ乗り気らしく、シグリッタのところに集まっていたりする。

 みんなと御前、妖怪達も良好な関係を築いていけそうで何よりだ。これなら後は……アヤツジ兄妹を迎え撃つのに集中できそうだな。
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