挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

863/1267

番外115 庭師頭改め

 庭師頭の動作試験に関してはどうやら問題無さそうだ。何回かの小規模な戦闘を経て石碑を見つけたので、クラウディアに負担をかけずとも迷宮入口に戻れるだろう。

「一旦このまま迷宮の外に出て、それから工房に戻ることにするよ」
「了解したわ」

 工房側でクラウディアが水晶板の隣に座っているカドケウスに向かって頷いた。
 コルリスを迷宮に連れて行った時と同様に、俺と庭師頭が一緒にいるところも、みんなに見せておいた方が周知の手間が省けるだろうしな。もしかすると、コルリスと一緒に迷宮に潜る、なんて場面も増えるかも知れないし。

 転界石は庭師頭も集めていたし、ゴーレム達にも回収させていたので、石碑から迷宮入口へと帰還する。ヘッドギアはもう外してもいいだろう。一体化していたシーカーを分離させ、今度は肩に乗せてやる。魔物達から回収した物資に関してはゴーレムに持たせているので、運搬用のゴーレムだけを残して他のゴーレム達は制御を解いて雪に戻しておく。

 そうして入り口前の地下広場に出る。大きなカボチャ頭の庭師頭は割と異彩を放つというか、異様な風体なので流石に目立つようで何事かと冒険者達の注目を集めているようだ。

「何だあれ……」
「カボチャ、か……? ん、隣にいるのは境界公じゃないか」
「魔法生物の実験か何かかな?」
「ああ、コルリスと同じ刺繍が――」

 といった冒険者達の噂話が聞こえてくる。うん。大体正解だ。あっさり納得と理解をされている気がするが、手間がかからないのでこれで良いとも言える。
 庭師頭は帽子を取って冒険者達に挨拶をしていた。吊られて冒険者達も庭師頭に挨拶をしてくる。まあ、後々の事を考えれば、これで噂が広まってくれるのは望むところだ。

 賓客を工房に待たせているので、素材を売ったり庭師頭を冒険者としてギルドに紹介したりするのは、また別の機会にしておこう。
 螺旋階段を登って神殿の巫女や神官達に挨拶をしつつ広場に出る、と、神殿入口のところでアウリアとペネロープに出会った。

「おお、テオドール」
「こんにちは」
「これは、お2人とも。こんにちは」

 2人に庭師頭と共に挨拶を返す。アウリアが手に炭酸飲料を持っているのはいつも通りという印象だが、ペネロープも炭酸飲料を手にしているな。アウリアがペネロープの分も買ってきた、というところかな?
 ペネロープは見つかってしまった、というようにはにかんだように笑っている。うん。せめてシーカーの視点では映らないように気を遣っておこう。

 2人とも俺の背後に控える庭師頭に興味津々といった様子だ。

「実はヴェルドガルに来訪している賓客の見学会も兼ねて新しい魔法生物の起動試験を行っていたのです。魔法生物というか、半分ゴーレムに近いところはあるのですが」
「ほほう。ということは、シーカーでお客人に映像を送っておるわけじゃな」
「カボチャのゴーレムですか。愛嬌がありますね」
「目と口が炎で光るので、迷宮の暗がりで見たらやや不安を招きそうなところはありますね。治癒や解毒の魔法も使えるので迷宮を巡回させた際に、他の冒険者の補助もできますが」
「ふむ。そうなると見た目に関しては慣れの問題かも知れんのう。コルリスと同様、冒険者達には周知しておこう」
「私達も神殿の皆に話を通して、礼拝に来た方に、お話をしておきますね」

 と、アウリアとペネロープ。2人に協力してもらえるのは有り難い話だな。アウリアは冒険者達から親しまれると同時に信頼されているし、ペネロープも月神殿の巫女頭としてタームウィルズの住人から信頼されている。

「ありがとうございます。工房で賓客に起動試験を見てもらっているので、一先ずこのまま工房に戻る予定なのですが……お2人のこの後の予定がなければ一緒にどうですか?」
「おお。それは面白そうじゃな」
「そうですね。時間はありますし、境界公やアウリア様と一緒ならみんなも安心してくれますので、ご一緒させて頂きます」

 ペネロープが一緒にやってくるという事で、工房にいるマルレーンが嬉しそうな笑顔をカドケウスに向ける。
 というわけでアウリア、ペネロープ、庭師頭と共に工房へと向かうのであった。



「お帰りなさい、テオ」
「ん。ただいま」
「いやはや、良い物を見せてもらった」
「庭師頭は相当な動きをしていたな」

 と、工房へ戻るとグレイス達と共にモニター越しに見学していた王達が笑顔と拍手を以って迎えてくれる。

「戦闘中の動きに関しては元々の制御術式の出来が良かったという部分はありますね。敵味方の判別や連係の仕方には手を加えましたが」

 迷宮の庭師だったころには配下のカボチャに足止めをさせた上で纏めて焼き払うとか、そういうアルゴリズムも組まれていたからな。そういった剣呑な部分を削り、基本的に味方の安全を優先するように改造してある。

「子カボチャの庭師達はどうしようか? 予定通り?」

 アルフレッドが尋ねてくる。

「そうだなあ、庭師頭の起動試験は上手く行ったわけだし。折角指揮能力を持ってるんだから、色んな状況に対応できるようになる事を考えると、庭師達も何体か指揮できると相当な戦力になると思う」
「それじゃあ、残りの炎のメダルとカボチャを組み合わせて庭師達も動かせるようにしておこう」
「ああ。そっちの制御術式もできてる」
「まだ他にも特殊な能力を持っているのかしら?」

 オーレリア女王が首を傾げる。

「庭師頭ですからね。カボチャの庭師達の動きを指揮したり、召喚して頭数を増やしたりできるわけです」

 俺達が以前星球庭園に踏み込んだ際……庭師頭は大量の庭師達と一緒にいたが、同区画内にいた庭師達の戦力を召喚術で結集させてこちらに差し向けてきた、というわけだ。
 星球庭園の準ガーディアンであったベリウスとしては、庭師頭もまた同僚扱いになるのかも知れない。当のベリウスは――ラヴィーネやコルリス達と一緒に大人しく工房の庭の隅に座っていたが、庭師頭を見ながら軽く尻尾を振っていた。同僚がこっちの戦力になって嬉しい、のかも知れない。

 まあともかく、召喚術で一時的に頭数を増やして仕事を分担できるようになる、というのは戦略の幅が広がる上に、普段多くを連れ歩くわけではないから無駄が少ない。分身を作り出せるピエトロも対応力が高いしな。

 庭師達は飛行戦力である上にそれぞれ近接戦闘もできるし火炎弾も飛ばせると、数が多い割に優秀なところがある。庭師頭の迷宮探索でも力を発揮してくれるだろう。

「名前はどうするのかしら? 起動試験も上手く行ったわけだし、庭師頭のままでは不便よね」
「そうだなぁ」

 ローズマリーの言葉に腕組みする。例によって俺が名付けるのは既定路線であるようだ。
 まあ、魔法生物や精霊は名前を付けることで性質を固定したりという意味合いも出てくるから、単なる名付けだからと人任せにはできないところはあるかな。

 んー。名前、名前ね。
 ジャックオーランタンから取ってジャック、というのも些か安直な気がするな。
 迷宮から回収してこちら側の仲間になってくれるよう作り変えたということを踏まえ、ジャックから少し形を変えて……。

「ジェイクっていうのどうかな?」

 ジャックの変形みたいなものだが、元々の同僚であるベリウスの名付け方も、ケルベロスからの変形の方向で考えたものだからな。

「ん。呼びやすくて良い名前」
「よろしくお願いしますね、ジェイク」
「うむ。よろしく頼む、ジェイク」

 シーラとアシュレイ、それにマクスウェルもそんなふうに言って早速ジェイクと名前を呼んで挨拶をしていた。というわけで、庭師頭改め、ジェイクということで名前は纏まったのであった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ