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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外109 同盟と交流と

「久しいな、エルハーム」
「はい、父様、母様。ご無沙汰しております」

 バハルザードからはファリード王とシェリティ王妃がやって来た。エルハーム姫が挨拶をすると2人は相好を崩す。
 俺とは先日転移門を作りに行った時に各国の王家の面々と顔を合わせているので、大仰な挨拶とはならなかったが、メルヴィン王とジョサイア王子、それに各国の関係者も出迎えに来ているということもあって、段々と居並ぶ面々が豪華で賑やかなことになってきている、という状況である。

 ハルバロニスから長老達がやってきて、その出迎えにフォルセトとシオン達が来ている。グランティオスからはエルドレーネ女王やセイレーンの族長達。その出迎えにロヴィーサ、といった具合だ。

 転移港の中庭の雰囲気が良いということで、全員揃うまでの間にそのまま顔を合わせて中庭を見たり初対面の面々同士自己紹介、という流れになっている。

「お初にお目にかかる。エインフェウス王国を預かる獣王、イグナードという」
「これはイグナード王。お噂はかねがね。ドラフデニア王国のレアンドルだ」

 と、イグナード王とレアンドル王が笑顔で握手を交わす。元々ドラフデニアとエインフェウスは大々的にではないものの、交易などの繋がりもあったからな。顔を合わせたら真っ先に挨拶という流れになるのも当然と言えば当然だ。

「獣人の国、か。妾の国は海の民の国。様々な氏族を内に抱えるという点では中々親近感が湧くのう」

 そう言ってエルドレーネ女王もイグナード王と挨拶をする。ハーピー達の氏族長であるヴェラも一緒だ。ヴェラの住んでいる場所は、地理的にヴェルドガル、ドラフデニア、エインフェウスの間にあるのでここで友好な関係を築けるというのは将来的にも安心というところか。
 ファリード王も気さくな調子で挨拶に行き、そしてそこにメルヴィン王とエベルバート王も……と、王同士で和やかな雰囲気である。

 そうしていると、そこに「おお……」という歓声が聞こえた。エスティータ達と共に、オーレリア女王がやって来たのだ。
 月の情報を知らない面々や初めてやってきた文官、側近にも、月から女王がやってくるとは伝えてあったからな。

「こんにちは、テオドール公。元気そうで何よりだわ」
「オーレリア陛下もお変わりないようで何よりです」

 というわけで、やって来たオーレリア女王を初対面の顔触れに紹介する。
 全員の顔合わせが終わったところで王城に向かうという流れだが、その前に転移港内の設備見学ということになった。特に港の迎賓館はみんな興味があるようで。建築に携わった者としては施設の案内をするべきだろう。

 中庭を一通り見て回ってから、迎賓館へと向かう。見た目は洋館ではあるのだが、転移港の迎賓館ということで、様々な国から様々な用事で人が訪れるのを想定している。必要な設備ということで談話室や会議室等も用意してある。

「少人数で話ができる談話室と、大人数での話が可能な会議室を用意しました。これらの部屋は風魔法による防音が魔道具で備え付けてあるので、必要に応じて用いることが可能です」
「ほほう……。会議室の壁にかけてある緑色のものは?」

 と、エルドレーネ女王が尋ねてくる。エルドレーネ女王に限らず、王達は興味津々といった様子だ。

「あれは……木板の表面に土魔法で薄く着色した石材を塗布し、金属板と貼り合わせたものになります。こうして表面に白墨で字を書いたり、布で拭くことで簡単に消したりできます。会議の議題を書いたり、出た意見を書き連ねたりといった用途に使えます。金属板と重なり合わせてありますので、磁石を用いて資料を張り付けたりもできますよ」

 要するに黒板だ。会議室ならこういったものも必要かなと思って、土魔法をこねくり回して作ってみた。
 白墨は元々あったので土魔法で石材の表面の質感、色合い等を黒板に近いものにし、書いたり消したりを容易にした。再現に凝ったので爪で引っ掻くと嫌な音や感触があるのも普通の黒板と同じであるが。
 実際に置いてあった白墨を手に取って、字を書いたり消したり、平らに加工した磁石を紙に挟んで貼り付けたりと実演して見せる。

「これは……便利だな」
「会議だけでなく、講義等にも使えますね。作ってしまえば使用には魔法を用いる必要もありませんし」
「テオドールからそのようなものを作ったとは聞いていたが、実物を見るとこれは……。ペレスフォード学舎が欲しがりそうな品ではあるな」
「学連にも置きたいところではありますのう」

 メルヴィン王の言葉にお祖父さんが頷く。何というか……黒板を作ったのは思い付きの部分があったのだが予想以上の反応ではあるかな。必要ならキャスター付きで移動可能な黒板というのも有りかも知れない。談話室でも使えるしな。

 んー。だが、まだ作ったばかりなので迷宮商会の職人達にも作り方を教えていない。板に石材を定着させる魔道具をアルフレッドと一緒に作れば、生産も簡単になるだろうか。まあ、それは後でアルフレッドや迷宮商会の店主、ミリアムと打ち合わせておくとしよう。

 続けて迎賓館の館内を案内していく。会議室、談話室、食堂に客室等々……。基本的に客が立ち入る場所は全て防音仕様である。客室は空調付き、内風呂有りで賓客がゆっくり寛げる仕様となっている。
 ビリヤード台やダーツ等を置いたサロン兼遊戯室もあり、タームウィルズの俺の自宅を踏まえて作った部分はある。サロンと遊戯室で気軽に交流したり、滞在中に暇になったら時間を潰したりもできるという仕様だ。まだ配置されていないが、魔力楽器を組み込んで自動演奏する、などという、ジュークボックス的な魔道具の構想も考えていたりする。

 まあそもそも国賓であれば王城に滞在するのが常だから、どちらかと言うと王城からの迎えに来るまでの間、暑さ寒さを避けてのんびり寛いでもらうだとか、王の側近や使者が宿泊するのを想定している部分がある。だがまあ、王達の反応は上々ではある。気に入って貰えたなら何よりだ。



 というわけで転移港の設備等々の案内も終わり、そのままみんなで王城へと移動する。会合の前に来訪の歓迎ということで晩餐の席が設けられているのだ。
 王城の大広間にて食事と楽士の演奏を楽しんだりと歓待が行われる予定だ。

「いやはや。このようにそうそうたる顔触れを一度に迎える事になるとは。我が国の歴史に照らし合わせて見ても大変めでたく、名誉なことと言える。会合という名目はやや堅苦しくはあるが、互いの理解を深め、交流の場を持つ事でこの先々のルーンガルドにおける平穏の礎となれればこれ以上はあるまい」

 そんなメルヴィン王の言葉に、居並ぶ王達が静かに頷く。
 そうだな。会合とは言っても、転移港が完成したのを祝してみんなで集まり、交流を深めようというのがまず第一義だったりする。タームウィルズやフォレスタニア観光などもする予定になっていたりするし、転移港に慣れてもらうための気軽な集まりというのが実際のところだ。

 もっとも、エインフェウスに関しては今後の国交、外交にも関わってくるので、氏族長達は割と緊張していたりする様子ではあるが……。
 それと、イングウェイにも氏族長達にタームウィルズとフォレスタニアの滞在中に、見た事聞いた事、思ったことなど、忌憚なく話してもらえないかと頼んでいる。頼むついでに境界劇場や幻影劇場にも案内したりする予定だったりする。

「それでは、今日この日、この場所に集えた事を祝して乾杯といこう。我等が同盟と友情に乾杯を!」

 メルヴィン王が酒杯を掲げて朗らかな笑顔で言うと、王達も酒杯を掲げて応じる。

「乾杯!」

 そうして楽士達が音色を奏で出す。和やかで華やかな雰囲気のまま、王城での歓待の席は幕を開けたのであった。
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