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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外108 転移港稼働

「これはテオドール公」
「お久しぶりです、エベルバート陛下」

 通信機でこちらの転移港が出来上がったことを各国に知らせる。
 向こう側にも転移用の設備を作る必要があるので、それぞれに建材等の準備を進めてもらっていたわけだ。各国から準備ができているという旨の連絡が返ってきたので、こちらもスケジュールを組んで、転移魔法で各地での建造に向かうことになった。

 魔法建築のためにあちこち向かうことになるが……まあ、1つ1つの建造は各国の王城に転移のための部屋を拡張したりといったことが主になるので、それほど大規模なものにはならない。
 最初はシルヴァトリアからということで、転移でヴィネスドーラへと飛び、まずエベルバート王と挨拶を交わす。エベルバート王は前に会った時より更に血色が良くなって、魔力も充実している感じだ。瘴気侵食も解消され、盟主の眠りを維持する必要もなくなり、随分と身体の調子も良くなってきている様子である。

「ご無沙汰しております、父上」
「お久しぶりです」
「うむ。そなた達も元気そうで何よりだ」

 同行してきたアドリアーナ姫とシャルロッテ、それからお祖父さん、ヴァレンティナもエベルバート王に挨拶をする。

「うむ。そうさな。土産話も聞きたいところではあるのだが……テオドール公は多忙ということはないのかな?」
「転移して各国に向かってすぐさま魔法建築をしてというのでは、些か慌ただしいかなと、時間的な余裕も取っておりますよ」

 笑みを浮かべてそう返すと、エベルバート王は相好を崩して頷いた。

「それは何よりだ。では、まず茶と菓子を用意させる故、のんびりとしていってくれ」

 というわけで、ヴィネスドーラ王城の貴賓室に通され、そこでみんなで茶を飲みながら談笑する形になった。

「飛行船の建造状況は、貨物船カイトス号の試験も終わり、順調に進んでおります」
「私は封印術の習得と鍛練を進めております。封印の巫女としては、共存の道を選んだ魔人の方々との交流にも今後は力を入れていきたいと考えています」

 アドリアーナ姫やシャルロッテが現在の状況についての説明をする。

「うむ。ザディアスめが行っていた研究もな……。魔人化の解除という目的に向けて活用されるのならばそれは正しき目的のために昇華されたと言える」

 エベルバート王はそう言って目を閉じ、一旦言葉を切る。

「魔法王国の王としてはな、どんな魔法であろうと目的を見誤らなければ平穏の助けになる、と余は信じておるのだ。無論、魔人であろうとも、平穏と共存を望むのならば、共に歩いていくこともできよう」

 そうだな……。魔人との共存に関してはオルディアについても重要な話であるのだろうが、イグナード王やオルディア自身に話をして良いかどうか、許可を貰っていないので今回はまだ伏せておこう。

 転移港が各国と繋がれば、一度各国首脳がタームウィルズに集まって会合が行われる予定になっている。その際、意向を確認しつつ調整してやれば良い。互いに知己を得てからの方が安心できる部分はあるだろうしな。



 そうして、暫しの談笑も一段落し、早速王城の一角で魔法建築を行うことになった。
 謁見の間よりも奥。指定された一角に魔法陣を刻み、魔石を埋め込んだ柱を立てて転移門を起動させる。

 行き来して転移門が作動していることをしっかり確認。

 これに各国の王がティエーラと契約魔法を交わすことで、平和と友好という目的に沿う限り転移門を使うことができる、という形になる。門を預かる王は自身が転移できる他、許可を与えた者にも転移門の使用が可能にできる、というわけだ。

 一方、グランティオスとエインフェウス、それにハーピー達の集落に関しては血筋による継承ではない。なので女王、獣王、族長の立場を持つ者が、ティエーラの生成した魔石を組み込んだ装飾品を継承することで契約継承の証明となる。

 さてさて。この後はざっと考えて国外に……バハルザード、ハルバロニス、グランティオス、ハーピーの集落、ドラフデニア、エインフェウスに転移門を設置しなければならない。
 国内では東西南北に1つずつ。その内、東の1つはシルン伯爵領の魔力送信塔に。
 これにより国内の領主の移動と共に、オーレリア女王達のタームウィルズへの来訪が簡単になる、というわけだ。

 個々の魔法建築は大した規模ではないが、向かう場所が割と多いので順繰りに、そして確実に仕事をこなしていくとしよう。



「おお……。これが魔法建築か」
「ゴーレムが、まるで粘土か何かのようですな」

 数日かけてあちこち回って各国の面々と顔を合わせつつ、最後にエインフェウス王国の森の都、レステンベルグへと転移門の設置に向かった。

 イグナード王や氏族長達に見守られる形で、緑の王城の一角を改造し、転移門を設置する。部屋の壁をゴーレムに変え、代わりに補強用の柱を立てて。魔法陣を構築。魔石を埋め込み、転移門を構築。

 ゴーレム達が建物の一部へと姿を変えるその光景にイグナード王や氏族長達は随分と盛り上がっていた。因みに各国の王が転移門を間違えないように、門柱の装飾をそれぞれの国に合わせて変えていたりする。ドラフデニアならグリフォン、グランティオスなら人魚や魚、エインフェウスなら獅子、虎、狼……といった具合だ。

 氏族長達は装飾を覗き込んで「これはきっと初代獣王陛下ですな!」などと談笑している。

 そうして全ての工程が終わったところで転移門を起動させ、動作が正常か確認する。

「問題ないようです」

 と、転移門の動作確認も終わった旨をイグナード王に報告する。
 エインフェウスに関してはベルクフリッツからの聞き取りや事後処理など色々終わっていない事があるから最後にして欲しいと連絡があった。つまり、ここ数日の転移門設置の仕事も、これにて完了というわけだ。
 予定ではこのまま獣王と氏族長もタームウィルズに向かい、そのまま各国の王達も集まって来て会合の流れになるはずである。

「いやはや。各国にも転移門を設置したと聞いているが、手間をかけさせてしまったな。疲れてはおらぬか?」
「僕は大丈夫です。クラウディアは?」
「私も問題ないわ。日程に余裕を持たせてくれたものね」

 と、クラウディアが笑みを浮かべる。うん。魔力補給というか、循環錬気もしっかり行っていたしな。イグナード王は俺達の返答に軽い笑みを浮かべ、静かに頷く。

「うむ。儂からも話がある。ベルクフリッツの一件に関しては少し進捗があってな。それについてもそなた達に聞かせねばなるまいと思っていたところなのだ。そなた達のここ数日の多忙に応えられねば申し訳ないからな」
「それは何というか……ありがとうございます」
「まあ、立ち話も何だ。他の者を待たせても悪い。詳しい話はタームウィルズにてすることとしよう」
「そうですね。では、参りましょうか」

 というわけで、イグナード王や氏族長達と共に、転移門を潜る。

「おお……。これは……」

 というウラシールの声。
 水路を流れる水の音。円形祭壇の中央に水晶柱が輝きを放っている。

「ようこそ、ヴェルドガル王国へ。歓迎します」
「何とも美しい建物ですな。これも境界公がお作りになられたのですな」
「ありがとうございます。そうですね。気に入って頂けたなら嬉しいのですが」

 転移港の建物から外に出れば、そこは噴水と庭園。そして真正面に高く聳える王城セオレムがあった。
 氏族長達からおお、という歓声とどよめきが漏れる。
 植え込みなどはまだまだ完璧ではないが、白亜のアーチから流れる水のカーテンが光魔法でイルミネーションのように輝いたりと庭園そのものも楽しんで貰えているようである。

 中々に良い反応だ。この後各国の王を迎えることになるが、時間的にはもう少し余裕があるので、イグナード王や氏族長達が希望するのなら転移港内の中庭を見てもらうのもいいだろう。
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