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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外107 転移の祭壇

 目の前にあるのはタームウィルズと温泉街、造船所の縮小模型だ。そこに転移施設を加えれば完成予想図の全景となるわけだ。
 温泉街や造船所に合わせて丁度良い位置になるように調整して建造していく。バロールを打ち上げ、上空からの視点を参考に歩いて位置を合わせる。
 ……よし。ここが丁度施設の中心部となるはずだ。

「では――始めます」

 地面に手をついて魔力を拡散。土地に俺の魔力が充分に広がったところで、建造予定の敷地とその周辺をゴーレムに作り替えて起こしていく。まずは建造物を建てるための土台や基礎作りが必要だからだ。
 ゴーレム達を動かして土が剥き出しになった部分を固め、同時に地下部分にアルフレッドが導水管を敷設していく。下水管を作り、街の下水と繋ぐというわけだ。

 そうしてしっかりと地盤を固めたところで、先程起こしたゴーレム達を順番に石に作り替え、敷地に平らに敷き詰めていく。

 完成形としては――大きな円形祭壇のような広場の上に柱が立ち並び、その柱と柱の間に転移用のゲートが作られる、というものになる。
 神殿を意識したような作りではあるかな。祭壇外周にいくつかのゲートを向かい合うように作り、転移してくると円の広場に出る、というような形になる。
 円形祭壇の周りに水路や噴水、水のカーテンを張ったりして、夜間は光魔法で軽くライトアップするなどし、低コストに抑えつつも見た目をそれなりに幻想的に仕上げたい、と考えているが……さて、上手くいくかどうか。

 それに加え、敷地全体を外壁で囲む予定だ。壁の内側に円形祭壇。来客が滞在できる洋館、それから警備の兵士達が常駐できる詰め所を作る、ということになる。

 敷地の基礎部分に石を敷き詰めたところで、祭壇広場の土台となる石材に迷宮の力を借りるための溝を掘る。結界のための魔法陣を描くのと同じで、溝に魔石の粉末を敷き詰めるが、このあたりは月の民の技術である。
 七賢者が迷宮の一部を間借りして精霊殿を作ったのと、同系統の術式である。そういう背景もあって、かなり細かで複雑な魔法陣になった。

「この溝に、魔石の粉末を敷き詰めていけば良いのですね?」

 と、グレイスが尋ねてくる。みんなも手伝ってくれるというわけだ。

「うん。それじゃ、そっちの作業はみんなに頼んでも良いかな? アルフレッドと一緒に、祭壇周辺を少し作ってくるから」
「了解しました」

 というわけで……魔法陣を完成させる作業はみんなに任せ、俺は施設全体を整えてくる。石材をゴーレムに変えて、それを行列のように引き連れながら敷地内をあちこち仕上げていく。

 円形祭壇から階段を降りて真正面がタームウィルズになるわけだ。
 門に向かって石畳の道が続き、途中で広場を作ってそこに噴水。
 噴水広場の左右に迎賓館と詰め所が建造される。下水管はこれらの館と詰め所、両方に繋ぐ形だ。とりあえず、迎賓館と詰め所については建物の基礎部分だけ作っておけば問題有るまい。
 敷地内はまだ土地が余っているが――それらについてはちょっとした庭園になる予定だ。
 白い石で道を引き、アーチを作ったり水路を引いたりしていく。石畳の敷かれていない地面は場所に応じて芝生や花壇、生け垣になる予定である。

 こうした庭園のデザインについてはみんなと一緒にアイデアを練った。このあたりはみんなの方がセンスがいいからな。
 一応完成予想の幻影ではかなり壮麗な白亜の庭園という印象に仕上がったが。

「ええと。ここに光の魔石を埋め込む形になるのかな?」
「そうだね。そこから光を放てば水の幕全体に色がつくはずだから――」

 といった調子でアルフレッドと相談しながら祭壇回りの道や水路、アーチ等々、石材を使って作れるところを作ってから円形祭壇に戻る。

「お帰りなさい。こっちも出来上がりました」
「一応、確認してもらえるかしら?」

 と、アシュレイとイルムヒルトが笑顔で言う。溝の魔石の状態を一通り点検して頷く。

「うん。大丈夫みたいだ」
「それじゃあ、起動させるわ」

 クラウディアの足元からマジックサークルが広がると、溝の魔石が連動するように淡い光を放つ。問題無く魔法陣は起動。これで転移施設も迷宮の一部として組み込まれたわけだ。転移ゲートも迷宮の仕組みを利用したものである。つまりは――転移門を悪用するような緊急事態が起こった場合、ティエーラが機能を停止させることも可能というわけだ。

 では更に祭壇部分を作っていこう。魔法陣の上に重ねるように石材を積んで、1段、2段と高くしていく。
 転移ゲートが作られる部分に柱を2本立て、そこに術式を刻んだ魔石を埋め込む。双方向で対となる門を作らなければならないので……例えばシルヴァトリアやバハルザード、グランティオスであるとか、向こう側に転移門の設備を作りに行く必要があるのだが、こちら側はこれで良いだろう。

 それから円形祭壇の中央が少し寂しいので、ここに飾りを作る予定でいる。中央部に光の魔石を組み込み、そこに水晶の柱を立てることで照明を兼ねた幻想的なインテリアを作るというわけだ。見た目だけなら丁度、クラウディアの領地――エンデウィルズで見たような代物である。

「それじゃ、ここに水晶の柱を立ててみよう」

 そう言ってステファニアを見やると、彼女は笑みを浮かべて頷いた。

「コルリス。頼めるかしら?」

 コルリスはステファニアの言葉にこくんと頷き、中央の台座の上に大きな水晶の柱を生やす。
 下から光を通されて――中々に綺麗なものだ。祭壇周辺の水路の縁から柱を立てて、ドーム状の屋根で祭壇全体を天井を覆えば、一先ずは転移施設そのものは完成である。
 ドーム状の天井にも幾つか光魔法の術式を刻んだ魔石と小さな水晶をセットでくっつけて、照明として祭壇の中を照らす。

「ん。明るいし、かっこいい」

 と、シーラが感想を口にするとマルレーンもにこにこ頷いた。
 うん。いかにも魔法的な設備という印象になった。柱にも細かな装飾を入れて、それっぽく仕上げていく。

 そこから用意された建材を利用して外壁を作っていく。ここまでの作業は魔法建築ということで北の街道に集まった見物人達に見られても構わなかったが……防犯対策に関しては見せるわけにはいかないからな。
 外壁が出来たらハイダーを何体か要所要所に埋め込んで、不審者の侵入や悪用に備えるというわけだ。

 後は――建物を立て、街中の水道橋を伸長してこちらにも水を引っ張って来れば俺達の仕事は終わりだ。庭園の花壇、生け垣、芝生の養生等は庭師がやってくれる。



「……ふむ。ここに花が植えられて――その道の脇を生垣が続く、と。日当たりも良いし悪くないわね」

 ローズマリーは、敷地内の道を歩いて色々と仕上がりを確認しているようだ。羽扇で口元を隠したまま時々頷いている。どうやら脳裏に庭園が完成した時の図を思い描いて、楽しんでいるようだな。

 上水道から水を引き、転移施設の外壁とタームウィルズの外壁を接続。門を作って市内と直接行き来できるようになった。
 二軒の洋館も建造し、迎賓館と詰め所も完成である。詰め所は、見た目的には壮麗で威圧感のないものになっている。迎賓館の対となって違和感のないデザインだ。
 詰め所には固定型の通信機を用意する。これで各国からの来訪に対し、事前に送迎等が備えられるようになるだろう。

「うむ。素晴らしい仕上がりではないか」
「これは――セオレムの建築様式を取り入れているのだね」

 あちこちの仕上がりを見て、メルヴィン王とジョサイア王子も笑みを浮かべている。

「そうですね。タームウィルズの公的な施設であり他国からの賓客が訪れてくる玄関口ですから。王城セオレムと共通した建築様式を以って迎えるのが良いのではないかと思いまして。水晶の照明に関しては、エンデウィルズを参考にしていますが――」

 と、説明すると、ジョサイア王子は感心したように頷きながら、あちこちの細かな装飾などを見て回っていた。
 これで後は諸国にこちら側の準備が整ったことを連絡し、対になる門を向こう側に作ってくれば転移施設を稼働できるようになるだろう。
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