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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外76 戦士達に休息を

 王城に梱包した連中を預け、背後に繋がる情報を持っていると思われる副官についても伝えてくる。その際、メルヴィン王と共に魔法審問官のデレクが応対に出てきた。デレクは副官については任せて欲しいと言ってきた。

「――差し当たっては……イグナード陛下の国内滞在中の安全確保の意味合いを込めて、供の者達の潔白を証明するとしましょう。その後の事に関しましては……イグナード陛下の滞在中に、出来るだけ多くの情報を、とも考えております」

 そんなデレクの言葉に頷く。確かめる情報の優先順位については同意見だ。まず内通者が他にいないかを調べて身辺の安全確保することが最優先だろう。

「そうですね。僕もイグナード陛下の帰還に合わせて、エインフェウスに向かうことを考えて動きます。敵の背後が分かれば、誘拐作戦が失敗したことが伝わる前にシリウス号でこちらから向かって行って、対応を取ろうとするところに反撃を加えられるでしょうから」
「確かに、こちらとしても黒幕の目的がはっきりしなければオルディアを保護して終わりとはいくまいしな。それもまた、魔人との共存の道を築くため、と言える」

 メルヴィン王が俺の言葉に頷く。

「そうなります。末端がオルディア嬢の出自について知らされていなかったとしても、黒幕は知らないとは限りませんし……志を同じくするイグナード陛下とも、良好な関係を築いておきたいですから」

 例えば……黒幕がオルディアの能力を秘密裏に利用しようなどと考えていた場合、フォレスタニアで保護したとしても、またちょっかいを出してくる可能性がある。後々のことを考えればこちらから出向いてきっちり叩き潰してくる必要があるだろう。
 共闘する相手がイグナード王となれば、それが憂慮であったとしても後々に良い方向に働くだろうから、無駄になることもない。
 そう答えると、デレクは恭しく一礼してくる。

「私では荒事のお役には立てませんが……陰ながらテオドール公の御武運を祈っております」
「ありがとうございます。ですが、デレク殿には随分助けられていますよ」

 そう言ってこちらもデレクに一礼する。

「ふむ。下手人達については証人にもなるし、黒幕への揺さぶりをかける方法として利用もできるかも知れぬな。取り調べが終わればエインフェウスに出立する際に、イグナード王に連中を引き渡すというのが良いかも知れぬ。余としてはオルディアの出自を隠す意味でも、エインフェウスとの間での問題として、表沙汰にはしたくないと考えている」

 国内で色々画策されたところはあるが、事情が事情だから内々に処理という方向に落ち着くわけだ。確かに、メルヴィン王もイグナード王も、そちらの方が望ましい。両国間の関係にとってもプラスになる、というわけだ。

「分かりました。そのお言葉はイグナード陛下にお伝えしておきます。僕はこのままフォレスタニアで歓待に戻ろうかと考えています」
「恩人の娘に関する将来の気がかりが無くなれば、イグナード王にも歓待を心から楽しんで貰えよう。まあ……細々としたことはこちらに任せておくが良い」

 そう言ってメルヴィン王はにかっと笑うのであった。



 さてさて。オルディアとレギーナは外出できなかったというのもあるし、メルヴィン王も言っていたが、オルディアの先々の事について思い悩んでいたイグナード王も、状況が落ち着いた今となっては歓待を純粋に楽しめる心境になったのではないだろうか。メルヴィン王とのやり取りを伝えると、イグナード王からはかなり丁寧に感謝の言葉を述べられた。
 こちらとしても駆け引きの必要が無くなった分、余計なことを考えずに歓待できる。

 まずは予定していた通り、夕食の席でイグナード王とオルディア、レギーナを持て成す形だ。それが終われば植物園見学や温泉に行ったり、劇場に足を運んだりといった予定を立てている。

「おお……これはまた。何やら物珍しいものが多いが……ふむ。これは海の幸か。エインフェウスの都は内陸部だから、こういった物は口にする機会が少なくてな」

 運ばれてきた料理を見てイグナード王が感心したような声を漏らす。オルディアとレギーナも見た事のない料理ばかりで驚いてもらえているようではあるかな。

「そうですね。地理的なところを意識した部分はあります。珍しがってもらえるかなと、今日は海の幸を中心にしてみました」

 白米と蟹の味噌汁。白身魚のフライ。焼きウニであるとかサザエの網焼き、海老やホタテの入った茶碗蒸しといったメニューが並ぶ。そこに酸味の利いたさっぱりとした海草入りサラダ、各種果物といった具合だ。
 みんなのところに料理が行き渡ったところで晩餐の開始である。ゴーレムの楽団が魔法楽器で楽し気な音楽を奏で出す。

「おお。これは……」

 料理を食べたイグナード王の反応は――見た目にも分かりやすいものであった。色々な懸念も一先ずの解決をしているからか、表情にも分かりやすく表れているのだが……。
 何というか、魚介類系の料理を口にした時の耳と尻尾の反応がシーラとよく似ているのだ。このあたり、やはり猫科の獣人なのだなと思える部分である。

「これは……美味しいです」
「ああ……。海の幸って素晴らしいわ」

 と、オルディアとレギーナからも好評だ。

「食後に甘味も用意してあるので、楽しんで貰えたらと思います」

 イグナード王達を迎えるにあたり、デザートを試作してみたのだが……これらの反応も気になるところだ。出来上がりを試食してみたが食感や味も悪くないと思うのだが、お披露目はどんな具合になるだろうか。



「ああ。これは……美味しいです」

 スプーンでカラメルソースの掛かったプリンを口にしたアシュレイは上機嫌そうに頬を緩めていた。マルレーンと顔を見合わせて、にこにことしながら頷き合っている。
 食後のデザートはプリンである。牛乳、卵と砂糖で割とお手軽に作れる割に、見た目にも華やかで物珍しく、これに関しては――女性陣に大受けであった。

「程良く冷えているのね。確かに美味しいわ」
「そうね。これは気に入ったわ」

 ローズマリーやクラウディアもプリンを口に運んで少し驚いたような表情を浮かべる。2人ともストレートに感情を見せるのは苦手なほうではあるのだが、この反応は上々と受け取って良さそうだ。
 というか、甘い物は好評だな。冒険者向けの料理であるとか和食方面で色々作ってきたが、今後こういったデザート系のレパートリーを増やすのはありかも知れない。

「本当、のど越しも良いし……」
「味わいがまろやかで好きかも」
「牛乳と砂糖が入っているからですね。ソースの香ばしさと相まって……良い味です」
「ん。美味」

 ステファニアとイルムヒルト、グレイス、シーラと。このあたりの面々は直球で反応を返してくる感じだろうか。
 ちなみに数に余裕を持たせて作ったのでプリンのお代わりも自由である。使用人達も舌鼓を打っているはずだ。

 そして肝心の主賓であるイグナード王達はと言えば……しっかりプリンも完食してくれた。虎獣人であり武術の達人であるイグナード王が、こう、興味深そうにプリンを食べている姿は中々にギャップがあったけれど。



「――いや、堪能した。どの料理も実に美味だった」
「それは何よりです」

 夕食の席が一段落して、食後にお茶や炭酸飲料を飲みながら談笑といった感じの、のんびりとした時間を取る。いずれにせよ、温泉と劇場に関しては一般開放の時間が終わって貸し切りになるまでにまだ時間があるので、それまでは食後の休憩といったところだ。

 ゴーレム楽団に変わってイルムヒルトが楽器を手に取って、穏やかな音色を奏で、美しい歌声を響かせていた。オルディアとレギーナは目を閉じてイルムヒルトの歌声に耳を傾けているようだ。
 うん。色々準備しておいた甲斐もあるかな。もう少ししたら植物園の見学に出かけるとしよう。
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