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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外60 フォレスタニアと買い物と

 そんなわけで、滑走所に遊びにいったり昼食を挟んで幻影劇の第2部、フォレスタニアに宿泊して一夜が明けてから第3部の上映会が行われた。

 アンゼルフ王はタームウィルズに来訪して迷宮に潜ったり、色々学んだりしていた。
 ヴェルドガルの文化や法制度等々に影響や感銘を受け、その後あちこちの旅を経て、仲間を連れて故郷へ帰る。

 幻影劇第2部はそんなアンゼルフ王の少年時代から青年時代にかけての話だ。
 タームウィルズでの修行や旅の道中で、後のドラフデニア王国の重鎮となる仲間達との出会いや交流が描かれる。
 それから後、故郷へ戻り圧政を目にして悪王打倒に立ち上がる、というわけだ。
 投獄されていた父親を助け出し、旗揚げを経て民衆を味方につけて、史実でも旗揚げからしばらくの間、小気味が良い快進撃が続くので、英雄譚として題材にし甲斐がある。

 アンゼルフ王の迷宮探索については……史実のアンゼルフ王や仲間達の能力を検証し、パーティー編成から考えると大体こんな感じになるだろうとシミュレートした内容だ。
 迷宮探索を淡々と進めるのも味気ないので、アンゼルフ王が采配を取って大部屋をつついてしまった探索者を助けつつの撤退戦など、見せ場を用意していたりする。

 幻影によって再現される迷宮。探索の緊張感や迷宮魔物との戦闘等はその場にパーティーの1人として参加しているような気分になってくる内容だ。勿論、360度どこを見回しても迷宮内部で、脇道の通路を覗けば迫ってくる魔物を登場人物より先に発見したりもできる。

 このあたりの演出は1部と同様。第2部、3部にかけて第1部と大きく違うのは、悪王打倒のための集団戦があること、だろうか。

 圧政をはねのけ、自分達の家族や友人を守るため、共に剣を取ろうと演説による士気の鼓舞を行うアンゼルフ王。一人一人立ち上がり、やがて周囲が歓声に包まれて。自分もその只中にいるような演出がなされている。

 その後の快進撃におけるアンゼルフ王と仲間達の奮闘や克己等、分かりやすく英雄的な活躍をしてもらっている。
 基本的に演出は熱く痛快に。そして疾走感のある方向でという感じだ。前世で見た映画やアニメ、ゲーム等々の演出を取り入れさせてもらっている。

 第2部は……ラスボス的な位置付けとして要衝を守る将軍を退け、決戦に勝利したアンゼルフ王が、その基盤を確固たるものにするまでがその内容となる。

 そこから後の出来事は第3部で語られる。
 皆に推されて王として即位する様子であるとか、アンゼルフ王の仲間であった魔術師との恋愛や結婚のエピソード。このあたりは割と史実の記録に忠実だ。仲間達の言動も記録に残っているのでそれらを劇中に反映させてもらっている。

 このドラフデニア王妃となる魔術師も……まあ何というか、中々面白い人物だ。言うなればツンデレな性格なので演出のしがいがある。

 悪王との最終決戦や、投降した将軍との交流を描いたり。その後冒険者ギルドを創立して国を立て直し、将軍と共に力を合わせて悪霊を退治したり……。

 正体が解らなかった悪霊の背景についても、悪王の残党が原因だと判明しているからな。演出面で色々やりやすくなったところはある。

 まあ……後々幻影劇を作りに取材に行った俺が、完成形の悪霊と戦うことになるという、作品外でのオチが付くわけだが……。ともあれ、そのおかげで悪王や魔術師の顔の造形やら性格も劇中に反映できたのは良かったとは思う。

 最終的にはその後のドラフデニア王国の治世、平穏と隆盛を語って劇終……となるわけだ。

「いやはや。満喫させてもらった……」

 というのは3部作を見終わってのレアンドル王の感想である。

 ドラフデニア王家にも関わる部分もあるし、劇に落とし込んでいく中で表現方法を考える事も多かったが……子孫であるレアンドル王にはかなり楽しんで貰えたようだ。一般公開前に修正するべき点等があればと伝えておいたが……表現回りも特に問題は無かったようである。
 まあ、基本的には娯楽作品を目指して作ったものだしな。

「ふむ。この出来だと何度も見に来る者が出てきそうではあるな」

 と、メルヴィン王が満足げに頷く。
 リピーターか。確かに、幻影劇ということで情報量が多いしな。
 劇そのものを気に入ってもらえたなら360度見えるものを可能な限り把握したいと、何度も同じ劇を見に来る客が出てきてもおかしくはないのかも知れない。

 アンゼルフ王の3部作については、日替わりで上映の時間帯を入れ変える形で各々の生活リズムに合わせて見に来れる。値段も比較的安価なのでリピーターにも優しい仕様ではあるかな。

「地上の歴史を垣間見れたようで面白いわ」
「確かに」

 オーレリア女王が言うとエルドレーネ女王も目を閉じて腕組みしながら頷く。

「劇ならではの演出を交えた部分はありますが」
「とは言え、取材もしっかりしているからな。そういう観点から見ても実に面白かった」

 と、レアンドル王が太鼓判を押してくれる。
 資料に無い部分を補う形で、逸脱しない程度にエンターテイメント性を詰め込んだりしているが……反応を見る限りだと中々好評だったように思える。

「だとしたら、協力してくれたペトラ殿や、貴重な資料を惜しまず見せて下さった陛下のお陰ではありますね」

 そう言うとペトラは随分と恐縮していた。レアンドル王はにやっと笑っていたが。
 貴重な資料――。アンゼルフ王は手記を残していたりするのだ。その記述により、タームウィルズに滞在している間、月神殿の神官や巫女とも交流を持っている事も分かっている。
 月女神の神託を聞いて感心していたりと、クラウディアの神託がアンゼルフ王に影響を与えた部分が確かにあったわけだ。
 実は……そのあたりも少しだけ劇中に組み込んでいたりして。
 当人であるクラウディアは……この点についての話になると恥ずかしがると思うので、自重しておこう。

 そんな調子で3部作の上映を終えて――お披露目も無事終わったので運動公園と滑走場、幻影劇場は今後一般に開放されていく形だ。
 招待客はフォレスタニアの城に泊まったり、湖に小舟で繰り出したり、火精温泉や境界劇場に足を運んだりと滞在中タームウィルズとフォレスタニアのあちこちに出かけて、休暇を満喫するという感じだ。
 歓待の一環ということで知り合いに試作型事務用品も送ったのだが……その流れで迷宮商会を見に行こうということになったのだが……。

「ほうほう。泡風呂用の魔道具に炭酸飲料を生成する魔道具……。うむ。これらは全部買っていきたいな」
「おお。カードやチェスも売っているのだな。む、ビリヤード台か」
「フライヤー……食材の持つ油を使って揚げるというものであったな。これも買おう」
「魔法の楽器とはまた……素晴らしい品ですな」

 と、各国の王様や貴族がこぞって色々発注したり買い物をしたりという状況になった。
 何せ顔触れが顔触れだからな。大人買いならぬ、王族買い、貴族買いというわけである。
 エリオット等は迷宮商会の商品にも馴染みがあるので割合落ち着いているが、テンションの上がっているVIPの様子に苦笑していたりする。

 まあ何というか。楽しんで貰えているようで何よりだ。

「迷宮商会の開発中の製品としては……海難事故が起きた際にアクアゴーレムを応用して作る小舟や浮きであるとか、使い魔との五感同調を利用した、感覚のある義手等も考えています」
「ほほう! それはまた素晴らしい……!」

 アルフレッドを交えてこれから作る予定の魔道具の話をすると、みんなして食い入るように話を聞いていた。このあたりは実用性の高い代物だからな。王侯貴族には興味のある内容だろうとは思う。
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