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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外55 フォレスタニア開発

「ああ。満喫させて貰った」
「……楽しかった……」

 とはアウリアとシグリッタの感想である。そんな2人の感想を聞いて、グレイスやマルレーンはにこにことしているし、シーラやマルセスカはうんうんと頷いていたりする。
 何というか……スケートリンクとアスレチックツリーで思う存分遊び倒した感があるな。安全確認や動作確認のために集まったのだが……盛り上がってしまった。まあ、もう充分遊べるということで。

 運動公園については更に安全装置を増設すれば一先ず完成だ。
 激突や落下対策の安全装置も含めて遊びの中に組み込む子供というのは出てきそうだが……それはそれで魔法に親しんでもらえるかなとも思うので、問題あるまい。
 後は実際の運営をどうするかなどの実務的な話になるか。

「というわけで、後はこの施設を実動させていきたいなと思っているのですが」
「ふむ。売店や従業員の問題もありますな。従業員を雇うまでは兵士に代役をさせることもできますが……」

 と、ゲオルグ。そうだな。警備も同時に行えるし一石二鳥ではあるが。

「炭酸飲料やかき氷等を販売していけば、売店もとりあえずは機能するかなとは思います。折角厨房もあるわけですし、何か軽食もとは考えていますが」
「となると、料理のできる者が必要になりますが」
「料理のできる人員なら心当たりもありますよ。まずは希望を募ってみないと、というところもありますが……従業員として交代制で仕事ができるだけの人員は集まるのではないかと見積もっています」

 まず、孤児院を近々卒院する予定の面々。サンドラ院長は色々実生活ができるように教育しているからな。それから、迷宮村の住民達も料理は得意分野だ。
 とりあえず、シフトが組めるぐらいに料理のできる人員、従業員を集めて、衛生関係についての講習を受けて貰えば軽食の提供もできるようになるだろう。

「従業員が滑走の仕方や遊具の使い方について説明できるようにしておく、というのも必要かしらね」

 と、ローズマリーが言った。そうだな。新しい施設や遊びなわけだし。

「後は、滑走場の周知ですかね。もう少ししたら一般に開放しようと思うので。とりあえず公園入口に立札を立てて告知をしておこうかと」
「そうじゃのう。それに関しては新しい物じゃし、儂らも安全確認に立ち会わせてもらった身としては、冒険者達に滑走場の内容を周知しておこうと思うのじゃが。丁度ギルドの支所も近くにあるし、冒険者達もここに何ができるのか気になっておる様子じゃったからな」
「ああ。それは助かります。公園内での行商や露店、屋台等も申請を出して貰えば許可しようと考えているのですが」
「それは良い案ですね。冒険者達を通して話が広まれば、遠からず申請や問い合わせが来ると思いますよ」

 アウリアとベリーネがにやりと笑う。
 冒険者達は依頼であちこち出掛けて色んな層と話をするからな。そこで話題の一環として運動公園の話が出れば、冒険者以外の面々にも広まるだろう。
 新しい施設ができれば人も集まる。そこに商人も集まって街の住人や貴族にも話が広まっていく、というわけだ。

 安全確認ができたところで、メルヴィン王にもお披露目して……それから口コミで情報が拡散する時間を見計らう間に、従業員の準備を進めておいて、と。
 色々考えると、やはり一般開放はもう少し先という形になるか。きちんとオープンさせられる態勢を整えていないのに見切り発車というわけにもいくまい。

「では、それらの申請や問い合わせについては、こちらで対応しましょう」

 と、ゲオルグが言った。

「運動公園自体は展望台等々ありますが、基本的には何の変哲もない公園なので、もう立ち入り制限を解除しても問題はないでしょう。一般開放までの間、滑走場と遊具場は施設の外から見てもらう、ということで」

 それで話題が広がるきっかけになれば、というところだな。実務と警備関係をゲオルグ達が行ってくれて、宣伝を冒険者ギルドが手伝ってくれるなら、俺は別の仕事もできる。有り難い話だ。



 運動公園の安全確認も終わってこれからの話も一段落したところで、王城に向かい、メルヴィン王に運動公園と滑走場が出来上がり、試運転として安全確認もした旨を報告した。
 それからお披露目の日取りを決めた上でブライトウェルト工房に向かった。魔道具の調整や増産、ワグナーの遺した資料を調べたり図書館の備品を解析したりと、執務以外の仕事が色々とあるからだ。

 風の防壁を作り出す魔道具を作ったり、劇場用の幻影を納得のいくまで調整したり、椅子や机に刻まれている術式を、オリハルコンによる仲介で読み取って、紙に書き付けたりといった作業を進めていく。

「お茶がはいりました」
「うん。ありがとう」

 グレイスがティーカップを机の上に置いてくれる。
 ああ。うん。工房でみんなの淹れてくれたお茶を飲んだり焼き菓子を齧ったりしながら作業を進めるというのは、領主の仕事をする前からの日常なので、落ち着いて仕事ができる。ティーカップを傾け、

「図書館の備品は複製してから調整をしてやれば、滑走場の警備員代わりに置いても良いかも知れないな」
「それは面白そうだね」

 俺の言葉に、新しくアルフレッドが乗ってくる。

「うん。警備の目が届かなくても、机や椅子が子供の誘拐を防いだりできる」
「加えて夜間も警備ができると」

 そうだな。魔法生物やゴーレムなら不寝番も可能というか、それが真骨頂だ。
 加えて言うなら、通常時は家具や備品として振る舞って威圧感や警戒感を与えず、緊急時は戦力に変化する形となる。こう考えると、ワグナーの設計した図書館の備品達は無駄がなくて便利に思える。
 子供達の守りをと考えると、非殺傷で相手を無力化させる装備に特化させるというのが良いのかも知れない。例えば粘着性の物体を放出するだとか睡眠ガスを放つだとか。まあ、そのへんは追々考えるとして。

「んー。備品の術式に解析に関してはこんなところかな。後はワグナー公の遺した資料を見て、手を加えていけば何とかなると思う」

 書斎の奥にあった制御用の魔法陣を、また別の魔法生物に組み込む形で、古城外部でも制御や命令を可能にする。それが今考えている改造案である。

「こっちも魔道具の増産が完了したよ」
「了解。それじゃ、後で遊具に組み込んで来る」

 運動公園回りのやり残した仕事もそれで出来上がりだ。
 後は幻影劇場だな。ロベリア達、妖精の協力も取り付けているので、妖精女王の術式を使えば視覚や聴覚以外の感覚に対しても影響を与える事が可能になっている。
 そのあたりも含めて、幻影劇場の演出として上手く組み込んでいきたいものだ。



 そうして明くる日。幻影劇場関係の建材が揃っているということで、今度はそちらの建築に向かった。
 魔道具の調整、準備はまだだから、形だけできても上映はできないのだが……運動公園の話題を後押しする意味も込めて建物だけでも建築してしまおうという思惑があるのだ。

「何が始まるんだ?」
「境界公が魔法建築をなさるとか」
「昨日……いきなり公園やそこに建物ができたのも、境界公が作られたとか」
「へえ」

 とまあ、そんな噂話も聞こえてくる。
 というわけで、物見遊山の人集りができている中での魔法建築である。冒険者、行商人……色々集まっているが……吟遊詩人らしき者もいるな。妙に期待の眼差しを向けられている気がする。

 アドリアーナ姫から聞いた吟遊詩人絡みの話はどうやら本当らしい。まあ、今更どうこう言っても始まらないので、早速魔法建築を始めることにした。

「起きろ」

 建設予定地からゴーレムを起こし、まずは地下部分を作っていく。基本的な構造はタームウィルズの境界劇場や、月光島、ブロデリック侯爵領の劇場と似た感じなのでこのへんは慣れたものだ。楽屋と地下通路、上下水道の配管等の作業を進めていくと、集まっていた面々から歓声やどよめきが上がったりする。

 うん。もう少しだ。地下部分と骨組みを作って……そこから外壁さえ形成してしまえばもっと落ち着いて作業が出来る環境になるだろう。
 建材を光球の中で混ぜ合わせ、建物を形成していく。舞台があり、扇状に広がる座席がありという形も踏襲している。
 上映用のスクリーンがある以外は、普通の舞台劇や演奏も可能な構造だ。舞台から座席に至るまで、幻影の魔道具を組み込んだりはするけれど。
 建物さえできてしまえば、実際に魔道具を組み込んで幻影のテストもしやすくなる。公園、劇場と、頑張ってフォレスタニアの見所を増やしていくとしよう。
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