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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外20 人形の舞

 ぬっぺふほふの調理は後程ということで探索に戻る。何度かの忍者や妖怪との小規模な遭遇と撃退を行いつつ進んでいくと、大きな山門があった。大部屋扱い、というべきなのだろうか。

「この向こう……何だか色々いそう」

 と、シーラが警告してくる。
 山門の向こうは迷宮魔物――いや、妖怪のたまり場になっているようで。

「この階層での敵の種類、強さを見てくるという意味では……突入しておいた方が良さそうですね」
「そうだな。それじゃあ……今回はこの大部屋を攻略をしたら撤収しようか。難易度的に浅めの階層相当とは言っても、大部屋は数で不利になるのは否めないから、油断はしないように」

 そう言うとみんなも俺を見て頷く。マルレーンが祈りの仕草を見せて祝福を発動させ、アシュレイとステファニアが防御陣地を構築するためのマジックサークルを展開したところで――山門を開いた。

 山門の奥は――大きな屋敷ではあるのだろうが、荒れ果てたあばら家といった印象だ。広い庭があるから大立ち回りをする分には苦労しないだろう。そんないかにもな場所に踏み込んだところで、母屋から何かの影が多数飛び出してくる。

 傘化けや絡繰りの下忍達は既に出会った連中だ。今度は絡繰り足軽と言えば良いのか。三角の帽子に胴鎧、槍を持った兵もいるようだが――。
 火炎を纏った車輪が飛び出して宙を舞う。憤怒の形相の男の顔が、空中からこちらを睨みつけてくる。あれは――輪入道か。
 輪入道の他にも飛行型の妖怪が複数いる。鳥のような顔に、ハサミの腕を持つ妖怪。網切りだな。

 それから……母屋の奥に能面を付けた白拍子のような、得体の知れない奴がいる。
 絡繰り人形なのは間違いないが、他より明らかに魔力反応が突出している。

「屋敷の奥――! ガーディアンがいるわ!」

 クラウディアの警告。あの白拍子か。この区画のガーディアンについてはまだ迷宮核による調整を加えていないからな。

「ステフ様!」
「ええ、アシュレイ!」

 アシュレイとステファニアが声を掛け合い、同時に術式を解放して防御陣地を構築する。多重のディフェンスフィールドを展開。山門を利用しながらラヴィーネとコルリスが更に氷壁と土壁を生やして後衛の防御を完璧なものにした。あっという間だ。後衛の防御は万全と言える。

「母屋の奥にいる仮面は俺が相手をする!」
「分かりました!」

 俺、グレイスとシーラ、イグニス、デュラハンにヘルヴォルテと前衛の面々が防御陣地から飛び出す。
 そこに妖怪や絡繰り共が殺到してくる。あっという間に地上、空中入り乱れての乱戦となった。
 輪入道にはグレイスが切り込む。身体ごと突撃してくるのを双斧で弾き飛ばせば、離れ際に放ってくる火炎を右に左に跳んで牽制する。
 輪入道は飛行型で突撃の威力も高く、火炎の威力も中々という――ガーディアンを除けばこの階層で見た中では最大の難敵かも知れない。
 傘化け達の集団にデュラハンが切り込み、力尽くで蹴散らしていく。真っ向からぶつかれば、力量的にはこちらが上だ。

 突っかけて来た絡繰り足軽の槍を、転身して避けながら、ウロボロスで薙ぎ払いを見舞えば足軽の頭部が吹き飛ばされる。
 律儀にも頭部に感覚系を集中しているのか、頭を失った足軽は慌てたように顔の辺りに手をやって、それから武器を投げ出すように両手を挙げて逃げ出す。しかし視界がないからか、柱に激突して転がってしまった。

「戦闘力を奪うだけなら頭部を破壊するだけでも問題無さそうだ!」
「分かった!」

 シーラが飛来する手裏剣を真珠剣で迎撃。反撃とばかり粘着糸を放って絡繰り忍者の顔面に張り付ける。感覚系を阻害するだけならばそれでも十分。
 次々と顔に粘着糸を浴びせられた下忍達は大混乱に陥って、何とか顔に張り付いた糸を剥がそうと転げまわっていたが、両手も離れなくなってしまい、そのまま先程の足軽のように迷走していた。

 両手のハサミを突き出して突撃してくる網切り達は――イグニスが押さえる。
 相性の問題だ。音も無く空を舞う網切りは機動力や隠密性に優れているように思えるが、イグニスの装甲を突破するのは至難だろう。防御陣地のお陰で後衛に強襲を仕掛けることはできないしな。

 戦鎚を構えて突撃。回避しようとするその動きに合わせるよう、瞬間瞬間で魔力光を噴出して追い縋り、戦鎚と鉤爪の一撃を叩き込む。

 そしてグレイスと輪入道の空中戦――。
 闘気を纏った斧の一閃が、高速回転する輪入道に叩き込まれる。火花を散らし、押し切ったのはグレイスの方だった。吹っ飛ばされた輪入道の表情が驚愕に染まる。力負けするとは思っていなかったのだろう。
 入道が口から火炎を噴きかけるが、それも通じない。黒い闘気を纏ったグレイスがシールドを蹴って踏み込み、火炎を突破する。グレイスの闘気に触れた瞬間に、火炎の威力そのものが減衰しているのだ。新しいグレイスの力は攻防一体、相当強力な能力と言えよう。

 輪入道にグレイスを押しとどめる方法は無かった。あっという間に肉薄され、膨大な闘気を噴き上げるグレイスによって、真っ二つに叩き切られる。

 相性や力量を鑑みれば、戦況に不安はない。俺は俺で、自分の戦いに集中する。

 尚も立ち塞がる絡繰り足軽を粉砕して、屋敷の奥に座していた白拍子と対峙する。
 白拍子はゆっくりと立ち上がると、舞いでも見せるかのように身体を転身させる。長い袖が円を描くように動くと、寸前まで持っていなかったはずの長刀がその手に握られていた。能面も般若の面に何時の間にか変わっていて――その変化に驚く間も無く、猛烈な速度で踏み込んで来る。

「来いッ!」

 切り込んで来る長刀にウロボロスを合わせる。魔力――いや、連中の場合は妖力と言うべきかも知れない。妖しげな光を纏う長刀と切り結べば、竜杖との激突の度に火花が散った。
 間合いを保ちながら鋭い斬撃や巻き上げを見舞ってくるその動きは、明らかに武術を修めたそれだ。今まで見た足軽や忍者達とは一線を画している。

 ウロボロスで長刀を撥ね上げるも、白拍子はそれに逆らわず舞い踊るように後退する。袖から放たれた大量の護符が、俺の接近を阻むように空中に壁を作る。
 構わず切り込む。ウロボロスに魔力を込めて叩き込めば、重い手応えと共に障壁をぶち破ったような感触があった。

 護符障壁のその向こうで白拍子が縦横に印を切れば、術式の完成と同時に白光が走る。展開したマジックシールドに重い衝撃が走った。
 破邪の術か! 魔法に対して相性が良いらしく、術式の規模に比べてマジックシールドを貫通してくる威力が大きい。これは――。

「面白いッ!」

 こっちの魔法とは異なる技術体系と、それを普通に扱ってくる人形。絡繰り人形が後ろに飛ばされて即座に転身。シールドを蹴って牙を剥くように笑いながら突っ込む。白拍子の袖から放たれる無数の護符が弾丸のように迫る。
 ウロボロスとネメア、カペラで撃墜。肉薄した瞬間に、白拍子は更に長い紙を袖から放った。白い紙は放たれると同時に意思を持つかのように人型となり、そのまま打ち掛かってくる。

 紙の手足で切り付けるように攻撃を見舞ってくるそれをシールドで受け止め、白拍子本体からの長刀による同時攻撃をウロボロスで受け止める。
 今ッ!

 ウロボロスを手放して遠隔操作。込めた魔力で長刀を押さえ込ませながら間合いの内側へと踏み込む。こちらの突き出した掌底に護符による防御を合わせようとするが――!

「飛べッ!」

 こちらの動きの方が早い。奴の心臓部に掌底を叩き込んで魔力衝撃波を放てば白拍子が身体ごと後ろに吹っ飛んで転がる。
 武術は一線級。陰陽道のような術も使う。その代わり、耐久力は低めらしい。それとも、魔力衝撃波のような技が想定外なのか。魔力をコントロールしている核目掛けて魔力衝撃波を撃ち込んでやれば、それでもう立ち上がってくることは無かった。
 割れた面の向こうに、人形の骨組みが見えている。

 やはり……ガーディアン級とは言え、浅い階層のということなのだろう。多数の冒険者でしっかりと準備をしてかかれば撃破することも可能だと思われる。どうやらこの階層なら、人を呼び込む分には問題無さそうだな。では――このまま敵の掃討に移るとしよう。
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