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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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706 光の花と空中楽団

いつも拙作をお読み頂き、ありがとうございます。

今回のお話に合わせ、過去のお話にミスがありましたので
「317 花嫁衣装」及び「321 花と光の舞い」の描写を加筆修正しております。
詳細については活動報告をご覧下さい。


 婚礼の儀が終わったところで、練兵所に停泊させているシリウス号に乗り込む。
 甲板の縁や艦橋、船体、翼など、あちこちにテープ等で作ったリボン等による装飾を施されており、元々が白い流線型のフォルムなので、中々見た目にも華やかな印象だ。

 俺達は目立ちやすいよう甲板の先の方へ。メルヴィン王を初めとした、披露宴に出席する者達はシリウス号の中へ乗り込んでもらう。
 ウェディングドレス姿の皆は……明るい日の光の下だと更に映えるな。ヴェールが上げられて、みんなの顔が露わになって、本当に、綺麗だ。
 俺が視線を向けていることに気付くとみんなも笑みを向けてくる。

「――っと。みんなに見惚れていると話が進まないな。アルファ、頼む」

 少々思考を切り替える。
 みんなが席に着いたのをカドケウスで確認し、甲板に姿を見せているアルファに声をかけた。アルファが首を縦に振り、ゆっくりとシリウス号が浮上を始めた。

 アルファの新しい器やマクスウェルの人形も完成している。迷宮核と連係すれば何時どこに、どんな魔物が出るかもコントロールできるようになったので、効率よく素材を収集して組み上げたというわけだ。
 アルファの新しい器は、金色の毛並みを持つ狼の姿だが、動力室の魔法陣の上に移動してもらうことで今まで同様にシリウス号をコントロールできるし、精神体として船の周辺に顕現することも可能、というわけだ。

 因みにアルファがシリウス号にいなければシリウス号も起動しない。
 例外として……俺が動力室の魔法陣に入って魔力供給と術式制御を肩代わりしてやればアルファ不在でもシリウス号は動かせる。但し、それにはオリハルコンによる魔力の仲介が必要だし、船の制御術式の内容を知っていなければならないので、防犯上の問題とはならないだろう。

 さて。浮上したシリウス号はと言えば――真っ直ぐ月神殿には向かわず、のんびりと街の上空を移動し、街のみんなにお披露目をするという予定になっている。
 王城のある中央区から出て、大通りから見やすい位置、角度を計算に入れた上で低速、低空で飛んでいく、という手筈だ。

 シリウス号が浮かび上がったところで早速魔道具が起動する。シリウス号の船体周辺に光の粒や水の泡が浮かんで踊るように船体の周りを舞う。シリウス号を飾り立てた色とりどりのテープも風で舞い上がってたなびく。

「光が……花びらみたいに見えますね」

 グレイスがそれを見て微笑を浮かべた。

「うん。そういう調整をしてる」

 花嫁衣裳が当日まで見れなかったように、魔道具による演出もみんなには知らせていない。多少のサプライズがあった方が良いだろうということで。

 城壁を越えたところで、着飾ったセイレーンとハーピー達が飛んできて、シリウス号の周辺に随伴する形を取る。そのまま楽器を奏で、歌声が響いた。光の花びらの中を舞い踊るハーピー達と、空を泳ぐセイレーン達。
 みんなが演出に協力したいと言ってきてくれたので、飛行楽士隊としてシリウス号に随伴してもらうという段取りになっているのだ。

 楽しげな歌声と旋律。街中からもその光景に歓声が上がった。沿道に詰めかけた人達からのものだ。沿道、2階の窓や宿屋のテラス。思い思いの場所から見ている。屋根に登ったりしている者もいるが……まあ、怪我はしないで欲しいものだ。楽士隊の演奏に聞き惚れているのか歓声は控え目にしているようだが、結構な勢いで手を振っている者が多い。というわけでもこちらからも手を振り返す。

 このまま、街中を巡って最後に月神殿に向かう。西区では船上から見物という者もいるな。船乗りなどは役得とでも言うようにマストの上に登ったりしているし……。

「みんなも元気みたい」

 イルムヒルトが嬉しそうに顔を綻ばせる。
 孤児院の子供達が、サンドラ院長と一緒に嬉しそうにこちらに手を振っている。みんなで手を振り返すと、子供達は嬉しそうに大きく両手を振って跳び上がったりしていた。

「ん。イザベラとドロシー発見」

 と、シーラ。沿道の人波の中から見つけ出すあたりは流石と言える。
 シーラが手を振る方向へ視線を向けながら俺も手を振る。
 イザベラとドロシーは――ああ、俺も見つけることができた。2人とも楽しそうに笑みを浮かべながらこちらに手を振っている。

 街中のあちこちを巡ると、ちらほらと知っている顔があった。南区にあるドワーフ職人の親方、冒険者ギルド等で見かけることのある冒険者達。商店の人達。魔人と戦った時に戦闘に加わっていた騎士や兵士。ペレスフォード学舎の生徒や教師、職員達。名前を知っている者、知らないが顔を覚えている者――様々だ。

 そうして街中を巡って、シリウス号はやがて月神殿前の広場に辿り着く。
 沢山の知り合いがそこで俺達を待っていてくれた。コルリス達やマクスウェル達もここで待っていてくれたのだ。封爵の儀や婚礼の儀は、シーカー達を用いて親しい者達には中継していたりする。
 高度を下げてタラップを降ろし、みんなと共に広場に降りると、みんなが笑顔で迎えてくれて、祝福の言葉を口にしてくれる。

「封爵の儀も移動の時も、みんなの姿は……ちゃんと見た。後できちんと絵にするわ……」
「ふふ、楽しみですね」
「シグリッタ、頑張ってね!」

 シグリッタが言うとシオンとマルセスカが笑う。
 シグリッタの記憶力と画力があるために、シオン達も王城に呼ばれていたのだ。
 シオン達は婚礼の儀が終わった後はシリウス号には乗らず、一足先に月神殿に移動していたが……これも船外から俺達の姿を見て絵にするためということである。

「ああ、楽しみにしてる」
「ええ……任せて」

 と、シグリッタがにやっと笑った。

「おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう」

 フォレストバードのみんなが祝福の言葉を伝えに来てくれた。アウリアやオズワルド、ヘザーにベリーネ。冒険者ギルドのみんなも一緒だ。ベリーネも予定通り、こっちの冒険者ギルドに戻ってきたらしい。

「いやあ、めでたいのう」

 と、アウリア。にこにこと上機嫌な様子であったが、俺に言ってくる。

「ああ。この前の話はフォレストバード達には伝えてあるぞ」
「ありがとうございます」
「ええと、私達なんかで良いんですか?」

 ルシアンが尋ねてくる。この尋ね方をしてくるということは……フォレスタニアに来てくれることには乗り気らしい。

「いや、実力もあるし、冒険者への理解もあるし、何より信頼がおけるしで、こっちとしてもお願いしたいぐらいなんだけど、どうかな? 詳しいことは後で詰めるとして」
「それじゃあ……なあ」
「そうだな。こんなに良い話、他にないだろ」

 フォレストバード達は顔を見合わせ、そして頷くと声を揃えて言った。

「どうか、これからよろしくお願いします」
「うん。よろしく」

 笑みを浮かべて答える。めでたい話は重なっているほうが良いからな。この場で話も決まってしまった。

「御婚礼おめでとうございます。冒険者ギルドもフォレスタニアに出張所ができると耳にしました。素晴らしいことです」

 と、ベリーネも上機嫌な様子だ。

「思えば……私がこうしてここにいるのは、ベリーネさんのお陰ですね」

 アシュレイがお礼を言うと、ベリーネは静かに一礼し、そして言った。

「私は、何も。確かに最初のきっかけにはなったかも知れませんが、その後のことはケンネル様や、境界公や伯爵の御人徳によるものと存じております。どうか、末永くお幸せに」
「ありがとうございます」

 そうして……沢山の人達が代わる代わる祝福の言葉と挨拶をしに来てくれる。仕立屋のデイジー、錬金術師のベアトリス。迷宮商会のミリアムやドワーフの職人達。ハーピーやセイレーンの族長達……。

「うむ。何とも賑やかで素晴らしいことだ」

 と、マクスウェルがそんな中で核を明滅させながら言った。斧を携えた騎士の姿である。本体はあくまでも斧だが。
 イグニスと同系統の騎士人形である。五感リンクでマクスウェルが操れる仕様となっている。これで人に混ざっての日常生活から戦闘までこなせる、というわけだ。

 但し、鎧は少々デフォルメしてあって、威圧感をあまり感じさせない仕様になっている。兜のバイザーから楕円形の目がぼんやり光っていて、割と愛嬌がある感じだ。

 さてさて。挨拶に来る人の波は尽きないが、俺としても今回の婚礼の儀の主役として、話を進めないといけないところがあるので、頃合いを見て言った。

「この後は……みんなをフォレスタニアに招待して披露宴を行いたいなと考えています。ささやかではありますが、宴の席を設けたので楽しんで頂ければと思います。迷宮入口まで御足労頂けますか?」

 そう言うと広場に集まっていたみんなが頷いた。フォレスタニア居城の迎賓館で色々と料理や酒を用意していたりするのだ。

 かなりの大人数で迷宮に降りることになるが……行き先がフォレスタニアである以上は、特に問題無い。フォレスタニアからは迷宮入口に直接転移門で戻ることもできるからだ。
 地下20階分岐点の転移門も、このタイミングで稼働させることになるだろう。

 そうして迷宮入口まで降りて――そこからみんなでフォレスタニアの入口へと飛んだ。
 転移の際に発生する光が収まると、みんなの間から歓声ともどよめきともつかない声が漏れる。
 フォレスタニア入口の、塔の上に出たのだ。

「これがフォレスタニア……」
「綺麗――」

 目を丸くした人達の間から、そんな声が漏れる。いい反応がもらえて何よりだ。では、街を案内しながら城へと向かうことにしよう。
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