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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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637 精霊の結集と協力

 さて。王城でのエルドレーネ女王とヴェラの話し合いは無事に終了した。
 みんなで昼食をとった後は、まずはハーピーの他の集落に連絡を取ってもらうということで、迷宮の入口に伝言役のハーピーを送っていき、それからみんなを連れて俺の家へと向かった。精霊王との話があるのでメルヴィン王やジョサイア王子達も一緒だ。

 精霊王も再封印が近付いている微妙な時期なので、王城に顕現することで封印の均衡に影響を与えたくないそうだ。そうなるとテフラやフローリアのように、タームウィルズにいる他の高位精霊の領域に顕現するというのが良いのだそうな。

 火精温泉はハーピー達が集まってから向かうということなので、俺の家で精霊王達との話をすることになったわけである。

「おお。テオドール」

 そうして皆で家へ向かうと、テフラがやって来ていた。

「こんにちは」
「うむ。元気そうで何よりだ。何やら精霊の力が高まっているようなのでな。丁度様子を見に来たところなのだ」
「ああ。精霊王の皆と、家で話をする予定なんだ」
「ふむ。なるほどな」

 俺の返答に、テフラが頷く。

「そうですね。精霊王の皆様も、既に遊戯室にお見えになっていますよ」

 セシリアが来客について教えてくれる。

「ありがとう、セシリア。それじゃあ、まず遊戯室に行ってから話をしようか」

 ヴェラ達とテフラは初対面だが、精霊王達も既に来ているようなので、全員揃ったところで紹介していくとしよう。
 皆で遊戯室へ向かうと、そこにはカードに興じている精霊王達とシオン達、フローリア、ラスノーテがいた。

「おっと。これで上がりじゃな」
「あー、負けちゃった」

 と、地の精霊王プロフィオンがにっこり笑って最後の札を山に捨て、風の精霊王ルスキニアの手元にジョーカーが残ったという場面である。丁度ババ抜きの勝負がついたところらしい。

「ああ、皆さん。お帰りなさい」

 マールがこちらを見て笑みを浮かべると、他の面々もこちらに気付いて挨拶をしてきた。

「ああ、テオドール。お邪魔しているぞ」
「おかえり!」
「はい。お待たせしました」

 というわけで、まずは初対面の面々を紹介してしまう。
 ヴェラ達と精霊王を俺から紹介すると、早速ヴェラは精霊王達への礼を口にする。

「我が一族の娘、ドミニクが故郷に帰れるように尽力してくれたと耳にしております。心より感謝致します」

 そう言ってヴェラとラモーナ、ドミニクとその肉親達が丁寧に頭を下げた。

「いや、こうやって面と向かって礼を言われると、中々こそばゆいものがあるな」
「うむ」

 火の精霊王ラケルドの言葉にプロフィオンが温厚そうな笑みで頷く。

「ありがとうございます、精霊王さま」
「うんっ」
「ふふ」

 にこにことしたリリーが舌足らずながらも丁寧にお礼を言うと、ルスキニアが明るく頷き、マールが表情を綻ばせる。そんなほのぼのとした空気に、みんなも和んでいるようだ。
 とまあ、高位精霊達が集まって中々に楽しげな雰囲気ではあるが、今日は他にも大事な打ち合わせが控えていたりするのだ。
 真剣な話をする前に、その平和な空気の余韻を楽しむように皆で席に着き、お茶を飲みながら菓子を摘まむ。
 そうして頃合いを見計らってメルヴィン王が口を開いた。

「さて。それでは再封印についての話をするとしようか」
「そうですね。必要なお話を済ませてしまいましょう」

 マールが頷き、緩んでいた空気も幾分か引き締まる。

「イグナシウス殿から儀式の手順については聞いておる。王城セオレムに宝珠を置き、余は王城の聖域にて儀式を執り行うという流れになる」
「うむ。我等は迷宮――精霊殿の奥にて力を高め、祭壇に置かれた宝珠に力を込め直す、というわけじゃな」
「私達はその際、精霊殿に篭る必要があります。元より高位精霊が戦うと影響が大きくなってしまうので、決戦の場となる砦や、タームウィルズの街中で私達が戦うことはできませんが……唯一力を振るえる場であった月光神殿の守りも難しい状況ですね」

 プロフィオンとマールが言う。月光神殿であれば他の精霊王が影響を抑え込んでくれるので力を振るえるということだったが、再封印のための儀式をしている間は月光神殿の防衛戦力は七賢者の遺した守護者だけ、ということになるわけだ。
 つまり、高位精霊達を戦力の当てにすることはできない。メルヴィン王は儀式の仕上げだけ執り行えば良いだけだから拘束時間は精霊王達よりは短いが、王城から動くわけにもいかない。
 儀式中のメルヴィン王のフォローはジョサイア王子や宰相のハワードが行っていく形だ。
 当のジョサイア王子はメルヴィン王の言葉に、真剣な面持ちで頷いている。

「以前にも言いましたが、決戦の最中に高位魔人が月光神殿に直接転移してくる可能性は高いように思います。連中にしてみれば千載一遇の好機ですからね」
「ルセリアージュやガルディニスも……直接精霊殿に攻め込んできましたからね」

 俺の言葉を受けて、グレイスが言う。封印が解かれているならば、連中は迷宮の狙った場所に飛んで来れる技術を持っている。恐らく、リネットから引き継いだ技術だ。
 そして、外堀を埋めるような余裕は向こうにもないから、最高の戦力を月光神殿に送り込んでくるだろうと予想をしている。

「精霊殿そのものの守りはどうなっておるのかの?」
「儀式に入れば活性化した精霊達が集まってくるからな。我等に害意を持つ者は精霊達が排除に動くが……精霊殿にも元々戦力がある。応戦することも、援軍を待つための時間稼ぎもできよう」
「うむ。ラザロも火の精霊殿に限らず、臨機応変に迎撃を行うと言っていた」

 アウリアが尋ねると、ラケルドとメルヴィン王が答えた。ラザロが精霊殿の守りに就いてくれるのなら、色々安心できるところはあるかな。

「ええと。風と地の精霊殿のガーゴイルやゴーレム達は、魔人との戦闘の折に結構な数を破壊したりされたりしてしまったのですが……」

 必要ならゴーレムの戦力を追加したりする必要があるが。

「それは問題ない。イグナシウス殿によれば儀式の際には精霊殿の他の戦力も動き出すし、ガーゴイルやゴーレム等の再生も進んでいるとのことだ。今は地の精霊殿に再生を早めるための術を施しておるそうだが、それもそろそろ終わると言っておったぞ」

 ……なるほど。それについてはしっかりとお礼を言っておこう。今日姿を見かけなかったのは、そういった仕事をしていたためか。となると、ラザロもその護衛だな。

「ふむ。精霊の見張りというのは有用であろうからの。マール殿達が動けないのであれば、北西の海域を風の精霊や水の精霊で見張り、その声を聞く役は、儂が請け負うとしよう」

 アウリアが言う。ああ。精霊王達は他の仕事で動けなくなるからな。精霊を用いて広範囲をカバーするにしても、アウリアの助力があると色々心強い。

「精霊達に見張りや連絡役を担ってもらうというのなら、我も少しは役に立てると思うぞ」
「それなら、私もかしら?」

 テフラが言うと、フローリアも笑みを浮かべる。

「それは心強いのう。使役していない精霊達も沢山協力してくれるじゃろうし」

 となれば……監視の目については問題ないな。どういうタイミングでベリオンドーラが動いてきても後手に回らずに動ける。タームウィルズの住民の避難も含めて、色々迅速に対応できるだろう。

「後は……瘴珠の移送時期か」
「それについては、精霊王の皆さんが精霊殿に篭るより前に動こうと思います。タームウィルズに残しておいて、儀式に影響が出てもなんですので」
「砦の封印塔に安置してしまえば、そうした懸念を減少させることはできるわね」

 ローズマリーが言う。対策として万全かは分からないが。まあやれることをやっておかなければな。

 そのまま、日程等々の確認をしていく。とは言え、以前話し合った時から大きな変更は無いが。ハーピー達の結集完了の予定日が2日後ということで、その日に予定が入った程度だ。

「では、僕は明日からは工房の仕事と訓練に戻ろうと思います。ハーピーとセイレーンの皆さんに、魔道具の使用感や呪歌、呪曲絡みの情報集め等々に手を貸して頂きたいのですが」

 元々、時間の許すかぎり魔道具や術式の開発をしたり、訓練をしたりという予定だったので、ハーピー達のことが増えてもやることは同じだったりする。

「ヴェラ様は他の族長達に事情を説明し、説得するというお仕事があります。私では不足でしょうか?」

 ラモーナが尋ねてくる。

「いえ。助かります」

 ラモーナはハーピーの戦士達を率いる立場ということもあり、呪歌も空中機動も得意なようだし、これ以上ないほどと言って良いだろう。

「それじゃあ、セイレーン代表として私もお手伝いするわ。工房に行けば良いのかしら?」
「はい。明日から、よろしくお願いします」

 マリオンの申し出に頷いて答える。うん。マリオンもセイレーン達の代表として申し分ない。
 何より、2人ともそれぞれの種族で立場のある人物なので、交流を深めておいて貰えると混成部隊の連係もスムーズになるだろう。
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