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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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633 二つの隠れ里より

 立ち話も何なので冒険者ギルドのオフィスに移動し、ドミニクの親戚達をアウリアや職員達に紹介する。

「おお、そうなると、ドミニクの里帰りは首尾よくいった、ということかの?」
「はい、アウリア様!」
「良かったですね、ドミニクさん」

 アウリアの質問に、ドミニクが嬉しそうに答える。アウリアやヘザーは我が事のように喜びを露わにし、オズワルドは目を閉じて頷いている。

「儂は、タームウィルズ冒険者ギルドの長をしておる、アウリアという者じゃ。よろしく頼むぞ」
「俺は副長のオズワルドだ。よろしく頼む」
「ヘザーと申します。よろしくお願いします」

 そう言ってアウリア達はドミニクの親戚達に握手を求める。

「おお……。これはご丁寧に」

 と、ドミニクの両親は恐縮しながらそれに応じていた。
 ヘザー以外の職員達もドミニクに祝福の言葉を掛けたり、ドミニクの親戚達に挨拶をしたりと和やかな雰囲気である。

「娘がどうしているのかと心配しておりましたが……このように暖かな方々と一緒であったとは」
「本当……安心しました」
「ね。お父さん、お母さん、言った通りでしょ」

 ドミニクは両親の様子に嬉しそうに微笑む。

「それに、我等までこうして暖かく迎えられるとは。もっと敬遠されてしまうものと、多少の覚悟をしていたのですが。過去には人間達に疎まれたこともあったと聞いていましたから」

 ハーピーの男達は人化の術を使えないそうなので、やや感情が分かりにくいところがあるが、その声色には感動したようなところが見えた。

「うむ。アウリア殿やヘザー殿は我を冒険者として勧誘してくれた御仁だからな」
「コルリスやフラミアも普段冒険者ギルドにはお世話になっているものね」

 マクスウェルがそれに同意するように核を明滅させ、ステファニア姫の言葉にコルリスとフラミアもふんふんと首を縦に動かしている。
 アウリアはそういう点では信頼のおける人物だとは思う。他種族が集まるタームウィルズの冒険者ギルドが上手く回っているのは、マクスウェルの言葉を借りるならアウリア達の懐が深いから、という事になるのだろう。

「いやはや、面と向かって言われると照れるのう」

 と、アウリアはコルリスの背中にぽんぽんと軽く触れながら笑っている。ヘザーはそんなアウリアの様子に苦笑しているが。

「それにしても、ハーピーの皆さんが集落からあまり出ないのは……そういった過去が理由ですか」
「そうですね。あくまでも理由の1つですが。それよりも私達には時折魔に堕ちる者も出て来てしまいますから。そういう点で言うと、そうした不和に理由が無かったとも言えません」
「少なくとも……精霊達が好むような場所で暮らしていれば、そういうことも起こりませんから。私達が集落をあまり出ないのは、そういった理由があるからです」

 なるほどな……。環境魔力による凶暴化は魔物達にとっては死活問題だ。
 グランティオスの場合は海中で暮らしているからか環境変化に敏感で、それを改善するための手段を生み出していた。
 一方でハーピー達は族長のヴェラのように精霊の動きを感知できる者が、集落に求められる条件を満たすような良い環境を見出し、そこで暮らすことで対策をしてきたというわけなのだろう。

 人里も精霊が少なかったりするからな。そういう意味ではハーピー達が避けるのも分かるし、外に出て行った者が伴侶を見つけてから里に戻ってくるというのも理由があってのこと、というわけだ。

 そういう視点で見て行くと、クラウディアの力が及んでいるタームウィルズは瘴珠のようなイレギュラーが混ざり込まなければ安心な環境とも言える。

「そうでしたか。魔に堕ちる理由というのは、幼少期の環境魔力の良し悪しに懸かってきますからね」
「そう、なのですか?」

 と、ハーピー達は俺の言葉に目を丸くしてる。
 ふむ。精霊を判断基準にしているが、直接的な原因や条件までは分かっていなかったということになるのかな。

「はい。タームウィルズ周辺に関しては、月女神の力が満ちているので環境魔力は良好と言えますね」
「おお……。それはまた、良いことを聞いてしまいました」
「リリーもここにいる分には安心ということですね」
「そうなります」

 俺が頷くと、リリーが嬉しそうにドミニクの手を握って、彼女を見上げて笑った。ドミニクもリリーの反応に表情を綻ばせる。

 どちらの暮らしの方が良いとも当人以外には言えないのだろうけれど、少なくともドミニクが日々を過ごしたり、ハーピー達が訪問してくる場所としては、タームウィルズの環境魔力は良好と言える。こういった情報もドミニクの家族達にとっては安心できる材料ではあるのかな。

 それと……明日はヴェラがエルドレーネ女王と会談するので、そのあたりのことについて何か参考になるような話を聞けるかも知れない。それについては今の内に通信機でエルドレーネ女王に聞いておくというのが良いだろう。グランティオスとしても、情報の開示ができる部分とできない部分というのはあるだろうし。

「ああ、そうだ。少し話は変わりますが……族長のヴェラさんもドミニクを守ってくれた件でギルドにお礼を言いたいと仰っていましたよ。やや急な話なのですが、明日ヴェラさんはエルドレーネ女王と会談する予定なので……そこに同席して頂くということは可能でしょうか? ご都合がつかないようであれば、改めてその機会を設けたいと思っているのですが」

 先程ヴェラに頼まれたことをアウリア達に伝えて、明日以降の予定について聞いてみる。

「ふむ。儂は問題ないが……オズワルドはどうじゃ?」
「俺も仕事は一段落している。問題無い」

 アウリアとオズワルドは都合がつく。後ドミニクやユスティアと親しくしているということで、ヘザーも同行するということになった。

「では、決まりですね。王城に連絡をしておきましょう。精霊王の皆さんもと思うのですが」

 そう言ってからマールに向き直る。マールは俺と視線が合うと、嬉しそうに微笑んだ。

「私達も呼んで下さるのですか?」
「今回の集落探しの立役者ですから。皆さん揃って王城に、と思うのですが」
「それじゃあ、皆にも声をかけておきますね。きっと喜ぶと思います」

 うん。これで明日については問題無いかな。



 ドミニクとユスティアが普段暮らしている冒険者ギルドの一室を家族達と一緒に見たり、普段している仕事についての説明を聞いたりしてから俺達は冒険者ギルドを後にした。
 ドミニクの親戚達も昨晩宴会、今日はシリウス号での移動にタームウィルズ訪問と、色々賑やかで目まぐるしい展開だったから、早めに腰を落ち着けたいという気持ちもあるだろう。
 ヴェラやラモーナ、職人達もタームウィルズを見て回るだろうし、今日のところは遊戯室で過ごしてもらう、というのが気楽に過ごせて良さそうだ。

 なので真っ直ぐ帰って家に案内することにした。自宅に向かい、客室に案内して荷物を置いてもらい、それから遊戯室へと通す。
 今日はドミニクとユスティアも俺の家に泊まりということで、ステファニア姫達とアウリアも泊まりではないが遊びに来ているし、中庭で使い魔の面々も寛いでいたりと、かなり賑やかなことになっている。

「――良かった。ちゃんと帰れたかなって、心配してたの」
「うんっ、ありがと!」

 今回の経緯を聞いたラスノーテが嬉しそうな表情を浮かべ、ドミニクが明るい笑顔で応える。
 セシリアやミハエラ、それに迷宮村の住民達も嬉しそうだ。特に迷宮村の面々はイルムヒルトの事もあったので、ユスティアやドミニクの件については他人事とは思えない部分もあったのだろう。

「しかし、色々な種族の方が集まっているのですな。高位精霊まで一緒に暮らしていらっしゃるとは……」

 ドミニクの家族や親戚達はやや戸惑っている様子だ。高位精霊――つまりフローリアはと言えば、膝の上にハーベスタの鉢植えを抱えたままで、ローズマリーとロックファンガスの栽培についての話をしているようである。

「私達は、迷宮の奥にある村で暮らしていたんです。事情があって、外に出ることになったんですが……ここでお仕事をさせてもらいながら、外について色んなことを学んだり、技能の訓練をしたりしてるんですよ」

 と、アルケニーのクレアがお茶を淹れながらハーピー達の疑問に答えるように、自分達の事について説明する。

「そうだったのですか」

 迷宮村の住人は炊事、洗濯、裁縫等々の家事全般や、農作業の知識等々は元々村で自給自足していたから、最初から高い水準にあるのだ。農作業に役立つ魔法を使える者達もいるしな。

 そしてそこに礼儀作法、読み書き計算からヴェルドガルの歴史、文化、習俗といった一般教養的知識、戦闘訓練に至るまで、セシリアとミハエラが惜しみなく色々教えているものだから……水準から考えるとどこに行っても働けるという人材にまで育っているという気がしないでもない。
 まあ、当人達としてはクラウディアの近くに一緒にいたいという思いもあるのだろうけれど。

「外の世界に明るくないというのは、私達も同じですね。もっと外のことに目を向けて、頑張らないといけないかも知れません」
「それは、私も、かも」
「僕達も頑張らないと」

 ハーピーの言葉にラスノーテやシオン達もしみじみと頷いている。
 ふむ。そういうことなら、今日はマルレーンからランタンを借りて、幻影も交えて色々な書物や物語の朗読などをするのも良いかも知れないな。映像を交えるのでイメージも掴みやすくて実用性もあるし、歓迎の持て成しとしては一風変わっていて楽しんで貰えるかなという気もするので。
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