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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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614 迷宮砦

 井戸のみを残し、砦も何もかも取り払って更地にした後で――まずは地下部分を作っていく。
 ゴーレムとして土や岩盤を移動させ、地下部分を石化させて、構造強化を施していく。更に地下階の一番底の床に溝を作り、そこに粉末にした魔石を敷き詰めて魔法陣を描く。結界を作る下準備というところだ。

 その上に、除けた土や岩盤から作り出したゴーレム達を再形成。魔法陣を描いた床面に蓋をしつつ、地下部分の壁、柱を作っては構造強化を施していく。
 地下区画には、地下発令所、糧食を低温で備蓄しておく氷室や、武器庫などの倉庫類、更に昼間でも暗くできるので仮眠室、厨房や風呂等々の水回り。そして多目的に使える広間なども用意した。

 通路のあちこちに兵を潜ませておく小規模なスペースや、挟撃を行うための隠し部屋なども拵えておく。出口の頭上に兵士が待機できるスペースを作るとか……炎熱城砦やらで散々やられたからな。魔人達を砦の中に引き入れて倒そうとは考えていない。侵入者対策は主にベリオンドーラの魔物達への物、というところがある。あいつらは地上部隊、空中部隊がいて数も多いし、対魔人用の結界を乗り越えてこれるからな。

「ええと。コルリスに、ここから海まで――斜めに掘り進んで穴を繋いで欲しいのですが。現時点では海まで開通はさせなくても大丈夫です」
「分かったわ。伝えてみるわね」

 ステファニア姫が楽しそうに笑みを浮かべた。そうしてコルリスに伝わると、当人がこくんと頷いた。
 コルリスは早速地下部分の西側の壁から、海へと真っ直ぐに繋がる地下道を掘り進んでいった。
 地下道は、グランティオスの将兵も砦を使えるように、という目的を持っている。海中にも通じる、脱出用の地下道を作ってしまおうというわけである。出入りのセキュリティに関しても、一応色々とアイデアがあるから問題は無い。
 地下道はコルリスが戻ってきたら周囲を固めるなどして補強してやるとして、こちらはこちらで作業を進めていこう。

「セラフィナ、どうかな?」
「柱も太いし壁も厚いから、大丈夫だと思う」

 よし。強度は問題無い。では次だ。階段を作っていこう。狭い螺旋階段を形成していく。敵兵に侵入された場合、大人数で押しかけることができないようにというわけだ。
 螺旋階段の軸になる部分に、隠し小部屋を設置。これも挟撃用である。地上階までの階段を作ったら、続いて地下階の天井部分を作り上げていく。ゴーレム達が配置につくと、再形成して融合。天井へと変じていく。石化と構造強化でしっかり固めてやる。

「何と言う……。もう地下区画が出来上がってしまったわけですか」

 サイモン達はその光景に目を白黒させている。

「いえ。まだ扉などは作っていませんからね。後は、井戸周りの改造がまだです」
「ほう」

 井戸の水位は地下区画より下だが、汲み上げる場所は地上1階の高さにある。地下階で水を汲み上げられるようにしつつも、導水管で各階で水を使えるようにするというのが良いだろう。また、井戸水だけに頼らずとも済むように、水作製の魔道具なども用意してある。魔法を使えない兵士は魔力を余らせているわけで。潤沢に水が使えるようになるだろう。

 続いて地上部分だ。こちらも一旦ゴーレムに作り替えて浅く掘り返し、溝を作って広い範囲に魔法陣を描いていく。
 地下区画でもそうだったが、角度と距離を確認しながらの作業である。さながら地上絵を描いているような感覚だ。カドケウスに高空から確認してもらうことできちんと魔法陣が描けているか確認を取る。……どうやら問題は無さそうだ。

 溝を作り終えたら次は魔石の粉末をそこに撒いていく。
 こちらは手の空いているみんなとの共同作業である。暫く地道な作業を続けていたが、やがてそれも完了した。
 大量の魔石の粉末で線を引き終えたところで、魔法陣の端に立っているジークムント老に声をかけた。

「準備出来ました」
「うむ。では、結界を張ってしまうぞ」

 ジークムント老達がそれぞれの場所に立ってマジックサークルを展開すると、溝に撒かれた魔石の粉末が光を放つ。魔法陣全体に光が走り――そうして結界が形成された。対魔人用の結界である。これとは別に、外壁部分にも結界を作る予定ではあるが。
 溝を埋め、その上をゴーレムで固めて石畳を形成していく。さて……これで基礎――土台部分が完成した。この上に砦を作っていくというわけだ。

 西側は魔物に追われた者が逃げ込みやすく。平常時の宿泊施設や冒険者ギルド関係の設備を西側の一角に作る。厨房、風呂やトイレなどもそれぞれの設備に必要だと思われるので、それも作っていく。
 行商人が商いをできるような広場も作った。一般区画は基本的に窓が大きく、光がたっぷり差し込むよう開放的な見た目だ。まあ、あくまで平常時の姿ではあるが。有事にはこれらの窓は閉じられることになる。

 井戸付近。このあたりは一般区画と騎士団の砦を繋ぐエリアでもある。この近辺には月神殿の構造様式を取り入れる。祭壇と女神像。四大の精霊王を表すモニュメント。その他様々な様式を取り入れ、巫女や神官達の生活スペース等々、必要なものを作り上げていく。

「これで大丈夫かな?」
「立派な神殿ね。その……女神像もタームウィルズに近いものにしてくれたみたいだし」
「んー。まあ、そういう話だったし」

 クラウディアに尋ねると様式としては問題ないとのことだ。神殿として力を発揮するには巫女や神官達が常駐して信仰の力を集めていく必要があるので、まだ形が整っただけではあるが、ここに巫女や神官達がやってきて祝福の力を高める助けとしては機能してくれるとのことらしい。

 女神像に関してはタームウィルズにあるようなものを、とクラウディアからはリクエストを受けていたのでそれに従った。まあ……俺がシュアスの女神像を作ると本人に似てきてしまう可能性もあるからな。

「姫様ならば普段のお姿のままでも問題無い、と私は思うのですが」
「いいのよ、これで」

 ヘルヴォルテの言葉に、クラウディアは頬を赤らめて目を閉じている。
 一般区画とは壁や扉で完全に分断される形で砦側を作っていく。砦の内部に分厚い壁と門を作り、あちこち侵入者対策の隠し部屋を形成。

「隠し部屋が多くて面白いわね」
「頭上からとか柱からとか……侵入する側は大変そうだわ」
「いやいや、全く」

 ステファニア姫とアドリアーナ姫、それにアウリアが楽しそうに隠し部屋の内部を覗いたりしているが、まあ、これはいつも通りだな。

 そうこうしていると、コルリスが戻ってきたようだ。地下階へと続く螺旋階段からひょっこりと顔を出す。

「お帰りなさい、コルリス」

 ステファニア姫が笑みを浮かべると、コルリスが手を振ってくる。
 うむ。これで地下道も手を付けていけるか。まあ、先に地上部分を仕上げてしまうことにしよう。

 普通、砦に必要なのは、侵入者対策の防衛設備、発令所、兵士達が生活する兵舎。武器庫に食糧庫、傷病兵を治療する医務室、風呂、厨房、トイレなどの生活に必要な設備、飛竜達の竜舎、外壁と監視塔等々といったところだ。
 これに、ベリオンドーラと魔人対策としての対空設備、瘴珠を安置する設備を設置していくという形になる。

 土魔法の模型に従い、それらを次々作っていく。ゴーレムやヒュージゴーレムを再形成し、固めて構造強化。セラフィナに強度に関してを尋ねながら只管作業に没頭していく。

 重要度の高い設備は砦の中心に。あちこち砦の中を巡って遠回りになるような構造にしつつも、いざ撤退する際は地下通路から逃げやすく。
 発令所もシリウス号の艦橋と同様モニターを設置し、伝声管を繋ぎ、リアルタイムで戦況を見ながら指示を出せるようなものにする予定だ。アルフレッドが早速発令所に色々と魔道具を持ち込んで準備を始めている。

「扉や壁を塞ぐのは、テオ君に任せても良いのかな?」

 と、アルフレッドがゴーレム用のメダルを満載した木箱を俺に見せてくる。

「ああ。そっちは大体の構造が出来たらやっておくよ」

「扉や壁の一部をゴーレム化ですか」

 エルハーム姫がメダルの山を見て呟くように言う。

「……ゴーレム化、ですと?」

 サイモンが怪訝そうな面持ちで尋ねて来たので、砦内部の構造についての話をする。

「そうですね。防衛側の兵士達は迅速に行き来することができるのに、敵は遠回りしなければならない通路であるとか、調べても分からない隠し部屋の入口などを作ったり、或いは順路を変えて侵入者の一団を堂々巡りをさせたりが可能になるというわけです」
「何という……」

 説明すると、サイモンが引き攣ったような笑みを浮かべた。

「やはり、主殿の作る物は面白いな」

 と、頭上からリンドブルムと共に巡回して魔物が現れないか見張っているマクスウェルが言った。
 ゴーレムを組み込むというのは賢者の学連の塔やクラウディアの居城からヒントを得たものだ。
 そのための制御術式はもうメダルに刻んである。討魔騎士団が樹氷の森で訓練をしていたせいで、メダルは潤沢にあるからな。ここで大盤振る舞いさせてもらう。メダルが破壊されない限り砦の構造を自動修復したりといったことも可能だ。
 従って、ここを守る者には利便性が高いが、侵入してきた者には迷宮のように機能する砦ということになる。

 矢や魔法、音響砲を撃つための覗き窓等々、外部に繋がる部分にも全てこれを用いる。一般区画も普段は外が見えて解放的だが、有事には外部との遮断が可能になるだろう。
 上階には直接高所から飛竜達が出撃、帰還できるように竜舎なども作っていく。まあ、かなり特殊な構造ではあるかな。リンドブルムも今回は一緒に来ているので、後で使い勝手を試してみよう。

 瘴珠の安置場所は、砦の中央ではなく、外側に分散させる形を取る。危険度が未知数なので爆弾かも知れないものを中枢に置くわけにはいかない。だから回収するなら手間取るように、分散させて安置するというわけだ。
 月女神や精霊の力を集め、それぞれ結界で縛る。予知で見破られることを承知で罠も仕掛ける。それで連中がどう出るか、というところだ。

 さてさて。砦本体が終わったら外壁と監視塔も作っていかないとな。監視塔には望遠の魔道具などを設置する予定だが……まあ、やることは多い。
 野営地にいる兵士達がすぐにこっちに戻って来れるよう、寝泊まりできる設備は優先的に作っておくとしよう。
 マジックポーションを一本開けて魔力を補充。一息入れて気合と魔力を入れ直してから、更にヒュージゴーレムを分解。再構成して砦の形成をしていく。
 とりあえずは、昼食までノンストップで作っていこう。マジックポーションも十分な量持って来ているしな。
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