挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
585/1086

565 港での再会

 そして、1日が過ぎ、2日が過ぎ。
 俺達が造船所で斥候ゴーレムの調子を見たり、訓練をしたりしていると港に船団が入ってきた。
 シルヴァトリアからの軍船だ。最初の船が港に到着すると、甲板にサーコートを纏った騎士と共に、グリフォンやヒポグリフ、ペガサスといった、飛行能力を持った幻獣が顔を覗かせる。
 何やら……エリオットの跨るサフィールに視線を送ってくる幻獣もいるようであるが。

「申し訳ない。彼らはシルヴァトリアの魔法騎士隊ですね。サフィールとも顔馴染みなのです」

 俺がリンドブルムの動きを止めると、エリオットもサフィールの動きを止めて苦笑をする。

「では、エリオット卿やサフィールにとっては友人との再会というわけですね。空中機動の訓練は一先ず中止にしましょうか」
「かたじけない。では、少々行って参ります」

 そう言ってエリオットは討魔騎士団に指示を出してから、サフィールと共に船に向かってゆっくりと離脱していく。すると、すぐに軍船の甲板からサフィールに応じるように幻獣達が飛び出してくる。
 甲板に居並ぶシルヴァトリアの魔法騎士や魔術師達も幻獣達の様子に、微笑ましいものを見るように笑みを浮かべている。
 エリオットは幻獣達が近付いてきたところでサフィールから降りて、自由に行動できるようにしてやる。

「仲良くするんだぞ」

 エリオットが言うとサフィールは嬉しそうに声を上げ、顔馴染みの幻獣達と空中を絡み合うように飛び回る。中々のはしゃぎぶりであるが。

「久しぶりだな。ええと、今はエリオットなんだったな」
「ああ、久しぶりだ、エギール」

 エリオット自身は甲板の騎士達のところに挨拶に行ったようだ。エリオットがベネディクトを名乗っていた頃の知り合いというわけだ。
 ふむ……。俺も挨拶に行ったほうが良さそうだな。

「俺もちょっと、挨拶に行ってくるよ。そうだな。挨拶回りになるかも知れないし、一旦訓練は中断で」
「ん。分かった」

 シーラが頷き、グレイスが俺に向かって微笑む。

「でしたら後片付けをした後、私達も挨拶に行ったほうが良さそうですね」
「ああ。そうかも。シリウス号の中にいるステファニア殿下にも」
「ええ。声をかけておくわ」

 ローズマリーが頷いた。
 みんなに頷いてからリンドブルムに声をかけると、ゆっくりとした速度で軍船に近付いていってくれる。
 こちらに視線が集まったので、リンドブルムから降りて、一礼した。

「初めまして、テオドール=ガートナーと申します」
「これは――異界大使殿でいらっしゃいましたか!」

 と、エギールを初めとしたシルヴァトリアの魔法騎士達が居住まいを正す。

「ああ、いえ。楽にして下さって結構ですよ。その、旧交を温めるのを邪魔したいわけではないので」
「いえ。テオドール卿にお会いできて光栄に存じます」

 魔法騎士達は敬礼を返してきた。魔法騎士だけではなく、魔術師達も敬礼をしてくる。こう、妙に揃って感動している節があるんだが。

「エベルバート陛下のお身体を癒し、王家と学連を救った英雄ですからね。加えて……ジークムント様の血縁でもありますし、無理もありません」

 エリオットが笑みを浮かべて言う。
 あー。シルヴァトリアではそういう扱いになってしまうわけか。エベルバート王やジークムント老への人望が、上乗せされているようなところがあるな。

「しかし、テオドール卿でいらっしゃったのなら、先程の空中の動きにも納得というところですな」
「いや全く」

 魔法騎士達はそんなことを言って頷いている。
 中々明るい性格の騎士達らしい。こちらに派遣してくるということは、精鋭であるのは間違いないのだろうけれど、人格面も考慮した上でということなのだろう。

「おお、テオドールとエリオットではないか!」

 続いて港に入ってきた船から姿を見せたのは、シルヴァトリア国王のエベルバート王だ。甲板に並んでいた魔法騎士と魔術師達が、敬礼を以って迎えた。

「これは陛下」
「お久しぶりです」

 エリオットと共に挨拶すると、エベルバート王は相好を崩した。

「うむ。余としてもそなた達が壮健で嬉しく思うぞ」
「その後、お身体のほうは如何でしょうか」
「侵食が浄化されたのでな。すこぶる調子は良い」

 と、エベルバート王が上機嫌な様子で言う。

「アドリアーナ殿下も、すぐそこにある造船所にいらっしゃいます。今、お声をかけて参ります」
「おお。そうであったか」

 と、そんな話をエベルバート王ともしていると、海の向こう――。南の方角からまたもや新たな船団が近付いてくるのが見えた。軍船というわけではないが、いずれも大きな船だ。

「少々失礼します」

 と、光魔法で景色を拡大して様子を見てみる。甲板に立っている人物には見覚えがあった。あれは――。



「おお、テオドールとエリオットではないか! 久しぶりだな!」

 見覚えのある人物というのは、バハルザード国王のファリード王本人であった。
 甲板に顔を出した面々も、共にカハール討伐に加わった者達が多い。歓声を以って迎えられた。

「これは、ファリード陛下。ご無沙汰しております」
「ああ。元気そうで何よりだ」

 ファリード王がやってきたということで、エベルバート王に続いてファリード王にもエリオットと共に挨拶をしに行く。
 王城からの迎えもやってきて、エベルバート王に挨拶していたから、あの場は任せて大丈夫だろう。

「もしや……バハルザード王国からの援軍というのは、陛下自らなのでしょうか」

 エベルバート王に関してはシルヴァトリアに俺達と一緒にシリウス号で移動することで戻る、ということになっているのだが、ファリード王の場合はな……。自分も矢面に立って戦うと言い出しかねない人物だし。

「そうしたいのはやまやまなのだがな。側近達には間違いなく戻ってくるようにと、口を酸っぱくして言われたよ。まあ、今のバハルザードの状況で、俺が国元を長い間留守にするわけにはいかないという理屈は分からなくもないが」

 俺の言葉に、ファリード王は残念そうにかぶりを振った。

「俺がヴェルドガル王国に足を運んだのは、メルヴィン王に助太刀の礼を言うためでもある。そして俺の命令で戦う戦士達が、何を守るためにそうするのかを自分の目で見ておかなければならぬからだな」
「なるほど……。そうでしたか」
「本当ならば、タームウィルズが落とされるようなことがあれば、その波は南方にも波及するであろうから、総力を以って魔人に当たるべきなのだが……」

 まあ……バハルザードの治安維持であるとか、受け入れるヴェルドガル側の糧食問題とか、色々あるからな。現実問題としてそういうわけにはいかないというところはある。
 ファリード王個人としては、一緒に戦えないことに本当に残念がっているようではあるが。
 ヴェルドガルとの友好、そして派遣する部隊の鼓舞。王としての矜持。色々理由はあるのだろうが、いずれもファリード王らしい考え方だとは思う。

「まあ、南方にファリード陛下が控えていて下さるというのは、心強くはありますね。負けるつもりはありませんが」

 そう言うと、ファリード王は俺の言葉に応じるようににやりと笑った。

「なるほど。後詰めというわけか。対魔人連合軍の勢力は北方のシルヴァトリア王国から、南方のバハルザードまで、広大であるからな」
「お父様」

 そうやってファリード王と話をしていると、みんながこちらに向かって飛んでくる。ステファニア姫達も一緒だ。

「ああ。エルハーム。姫達やテオドールの婚約者方も息災のようで何よりだ」
「はい。ご無沙汰をしております」
「お久しぶりです、ファリード陛下」

 そう言ってファリード王とみんなが再会の挨拶を交わす。マルレーンがスカートの裾を摘まんで丁寧に挨拶し、ファリード王が静かに頷く。

 ふむ。しかしまあ、到着の時間帯が被ってしまうというのは……。荷物の積み下ろしやら何やらで、港はかなり忙しいことになりそうだ。人が行き交ったりするので、中々捗らなくなるだろう。

 となると……造船所もスペースが空いているわけだし、船団の一部はあっちに移動してもらって、造船所から積荷や人員に降りてもらえば、効率的にはなるかな。

 一応ヴェルドガルにとっては、シリウス号や特殊部隊の使う軍港扱いなので、これの使用はメルヴィン王に打診してからということになる。
 通信機で連絡を取って、許可が降りたら……みんなで船団の誘導を行うとしよう。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ