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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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536 境界都市の試食会

 というわけで……米の試食会ということでミシェルに水竜親子、更に精霊王達も含めて、家に案内することになった。勿論ステファニア姫達も一緒だ。
 精霊王達も知らない作物という点、それに俺の家を見たいということで、興味津々といった様子なのである。

「では、どうぞ」

 街中を馬車で移動し、俺の家へと案内する。

「お邪魔しまーす」

 と、精霊王にしては馴染みのある言葉を口にしながらルスキニアが玄関ホールへ入った。

「では、お邪魔する」
「すまぬな、大挙して訪問してしまう形になって」

 ラケルドとプロフィオンもそう言って家の中へと入る。

「いえ、お気になさらず」

 大挙か。うん。顕現していない精霊も活性化して大分賑やかなことになっているな。ラケルドとプロフィオンの後ろをちょこちょこと小走りでついてくるサラマンダーとノームの一団などは見ていて中々和むものがあるな。勿論、マールとルスキニアの周辺にもウンディーネやシルフ達が沢山いたりする。

「いらっしゃいませ」

 セシリアを始めとした使用人達が静かに頭を下げて出迎える。今日連れてくる客に関しては通信機で連絡済みなこともあって、みんな落ち着いたものだ。
 セシリアは使用人達の代表ではあるから失態を見せるわけにはいかないし、他の使用人達は元々迷宮でクラウディアの庇護の下に暮らしていたわけだから今更ではあるか。或いは、外の世界を知らないために精霊王と聞いてもピンと来ないのかも知れない。
 ともあれ、高位精霊であると分かっていて、無礼がなければそれで良いのだ。元々使用人としてきっちり教育されているし、フローリアやテフラとも普段から接しているから、そのあたりはみんな心得たものだろう。

「綺麗……」

 ラスノーテはシャンデリアを見て目を丸くし、ペルナスとインヴェルはそんな娘を微笑ましいものを見るように見守っているといった様子だ。
 馬車での移動中もそうだったが、ラスノーテに関しては目に映るもの全てが新鮮といった印象だ。特に長く生きている両親とは違って、陸地に上がるのはほとんど初めてに近いだろうしな。
 ペルナスとインヴェルもそこまで人間の暮らしには馴染みがなさそうなので、人化したことを含めて今の状況を楽しんでいるようにも見えるし。

「うう。タームウィルズに来てから色々と衝撃が……。温室を作っていただいた時点で予想をしておくべきだったのでしょうか」

 ミシェルはと言えば、そんなふうに呟いていた。
 温室作製を目の前で見ていたことと土魔法を得意としているだけに、俺の家が魔法建築であることにも気付いているようで、壁を隅から隅まで見回していたり、使用人達がみんな人化の術を使っていたりといった点に驚いたりと、まあ……こちらは真っ当に驚いている様子だ。

「どうぞ、こちらへ」

 といってみんなを奥へ案内する。

「試食会の準備は整っております」

 セシリアが笑みを浮かべる。
 家の奥からは美味しそうな匂いが漂っていた。現時点で用意できる米料理ということでフォルセトと相談し、白米に塩おにぎり、炒飯、貝やキノコの炊き込みご飯、ドリアといったメニューに加えて、煎餅などのお菓子も用意してあるのだ。

 やはりというか……列挙してみても思うが、米料理の試食会となると割合重いものが多い。そのあたりは少量ずつ食べてもらって、色々楽しんで貰うということで、バイキング形式の立食会という形にさせてもらった。

 中庭に向かうと、各種料理を盛りつけた大皿と取り皿などを並べたテーブルが用意してあって、後は各自好きなように食べられるという形だ。
 後はスープに焼き魚、カツ等々、米に合いそうな料理を用意してある。

「ああ。おかえり、テオ君」

 と、中庭に面した遊戯室からアルフレッドも顔を覗かせる。オフィーリアにビオラ、タルコットやシンディー。ジークムント老達やエルハーム姫と、工房組も全員揃っている感じである。
 更に、迷宮の訓練から帰って来たのか、シオン達3人も顔を見せる。リンドブルムとアルファも遊びに来ていたりとまた賑やかなことになっていた。
 工房組に関してはミシェルをこちらに呼ぶのと同時に、米の試食会をやるということで、声をかけておいたのだ。まあ、初対面の面々に関しては試食会をやりながら紹介をしていくことにしよう。



「――ただ炊いただけなのに、ふっくらしていてほのかに甘味があって美味しいですね」

 ミシェルは真剣な表情で白米をじっくりと咀嚼してそんな感想を口にした。

「米は……焼き魚と合うから好き」

 と、シーラは秋刀魚と白米の王道的な組み合わせを満喫しているようだ。ハルバロニスは米を主食としてきただけあって、口内調味の文化もある。
 米と一緒に合わせて食べる、というやり方をフォルセトやシオン達が広めてくれるので、俺としても有り難い限りだ。

「適度に粘り気があって……なのに水分でばらけて広がる。風味も一緒に広がって……不思議な感じですが、美味しいです」
「お米は私達の主食ですから。お酒やお菓子にも加工できますよ」
「麦に近い植物ならお酒になるというのも納得ですね」
「ということは……粉にしたら他の用途でも使えそうですね」

 ミシェルとフォルセト、それからグレイスとアシュレイは言葉を交わしながら真剣な表情で頷いている。料理に関する話、領地で作るかも知れない作物の話ということで用途に関してはグレイスやアシュレイも興味津々といったところだ。米粉からパンを作ったというのも聞いたことがあるが、小麦粉の代用としても色々使えそうな気もするな。

「私はこの、貝やキノコと一緒に炊いたものが好きだわ。風味が良いもの」
「そうね。これは……炒めてからチーズを乗せて焼いたのね」
「こちらも炒めたもののようですが、また印象が違いますね」

 ステファニア姫とアドリアーナ姫、エルハーム姫は炊き込みご飯に、ドリア、炒飯を食べ比べている様子だ。
 炊き込みご飯と炒飯はハルバロニスにも似たレシピがあったが、ドリアに関しては俺からの提案ということで作ってみた。米の味付けと乗せる物で色々バリエーションも出せるしな。

「塩と具だけの単純さでも美味しいわね」

 ローズマリーの言葉にマルレーンが笑みを浮かべてこくこくと頷く。こちらは並んで塩おにぎりを食べていたりする。ローズマリーは案外シンプルな物が好きなのかも知れない。

「人の料理というのは味わい深いものなのだな」
「人化の術を使うと、食べ物の味も変わると聞いてはいましたが……」
「美味しい……」

 水竜親子も一口ごとに感動している様子である。クラウディアやマールはそんな水竜親子の様子を見てどこか嬉しそうでもあるので、まあ、悪いことではあるまい。
 ともあれ、みんなも思い思いに米料理を楽しんでいるようで、概ね好評な印象であった。
 動物組も食事中である。ラヴィーネやベリウス、フラミア達は迷宮産の魔物の肉を丸かじりしている。その近くに陣取って米料理を食べているシャルロッテはご満悦といった様子だ。
 ラムリヤやエクレールは主人のところで魔力補給中ではあるが、コルリスはプロフィオンやルスキニアに鉱石を食べさせてもらったりしている。精霊王達にも可愛がられているのか、それとも面白がられているのか。

「いやあ、役得だなあ。手軽に食べられるようになった時が楽しみだね」
「実験が順調に行って、広まってくれればかな。栄養価も高いみたいだし保存もしやすいみたいだから、色々用途は多いと思うし」

 アルフレッドの言葉に頷いて答える。俺としても広まってくれたら嬉しいのだが。
 後は……やはり醤油と味噌か。
 迷宮にカノンビーンズという植物系の魔物もいたが……。あれは確か巨大な豆の化物だったはずだ。食用にもなる。
 あれを大豆代わりに使えたら豆の供給面に関しては問題ない……と思うんだがな。最大の問題である麹はあるのだし、一度狩りに行って実験してみるのも悪くないのではないだろうか。
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