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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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502 人魚達の魔法建築見学

 まずは基礎部分からだ。地面に手を付けて、地下深くへと魔力を浸透させていく。範囲が広いので循環させた魔力は使わず、ゆっくりと時間をかけて効果範囲を広げる。
 コルリスなどは土地の状態が変化していくのが解るらしく、座ったまま地面を見て目を瞬かせていた。

 ……良し。こんなところだろうか。十分に魔力を浸透させたところで土魔法と水魔法を用いて土地の状態を整え、建物の荷重がかかっても問題が起こらないよう改造していく。
 土地の改造が終われば、後はいつも通りに循環させた魔力を使って魔法建築して行けば良い。建築する洋館の形に合わせ、建物の土台となる基礎部分を形成していくわけだ。

 整地も終わったので十分な作業スペースも確保できた。続いては海岸からこっちに資材を運んできて、洋館建築に着手するわけだが。

「資材をこっちに運んで来ても大丈夫でしょうか?」
「ああ。助かります。では、手分けをして終わらせてしまいましょう」

 エリオットに答えて地面から立ち上がる。

「手伝います、先生」
「ありがとう」
「お安い御用です。その、魔法建築に関してはお手伝いできないので」

 シャルロッテを始め、ツリーハウスを見ていた面々も手伝いに集まってきた。
 というより、みんなも作業の手伝いをしたいようではあるのだが、魔法建築という作業がやや特殊なので、手持ち無沙汰だったらしい。運搬作業はその分、やる仕事も分かりやすいので、みんなやる気のようだ。

 エリオットがシリウス号に向かって手を挙げて合図を送ると、甲板にいたアルファが頷いて独りでにタラップが降りてくる。
 シリウス号に積み込んで一気に運んでしまおうというわけだ。というわけで……手が空いている者みんなで連れ立って海岸へ向かう。

 魔法と魔道具を含め、レビテーションを使える者が殆どなので作業はかなり手早く行われた。
 リンドブルムが珪砂の詰まった樽を足で掴んで甲板に運んで行ったり、石材を腕に山盛り抱えるようにコルリスが運んで行ったりと……動物組も仕事の手伝いをしてくれているようだ。
 ラムリヤは砂浜の砂を操って、フラミアはその尻尾で資材を持ち上げて……といった具合に、中々器用なものである。

「これはテオドール殿」

 と、そこにウェルテスと共に、グランティオスの民達が海から姿を見せた。グランティオスやアイアノスから、将兵達が祝勝の宴参加希望の面々を引率してきたようだ。将兵の他に、マーメイド、セイレーン、それに子供達が砂浜に上がってきたり、波間に顔を覗かせたりしている。

「ああ、ウェルテス卿」
「作業の手を止めさせてしまって申し訳ない」

 ウェルテスは静かに一礼する。

「いえ。東側の入り江に滞在できる場所を作ったので、今はのんびりと島の中央部で建築を進めようとしていたところなのです」
「そうでしたか。資材の運搬でしたら、我等も作業を手伝いましょう」
「ありがとうございます。子供達には入り江で休んでいてもらいますか? 案内しますが」

 そう言うと、ウェルテスは少し笑って首を横に振った。

「皆、テオドール殿の魔法建築を見たいと言っておりました。慈母像の修復の話が広まっているようですな。ですので……出来上がった部分は、後程の楽しみに取っておくとしましょう」
「解りました」

 と、苦笑して答えた。とりあえず宴は夕方ぐらいからということなので、それまでは魔法建築を見て時間を潰してもらうことにするか。



 グランティオスの民の陸上の移動は、人化の術を使える者は人の姿を取る。
 そうでない者はエルドレーネ女王がやっていたのと同じように水を操り、水の絨毯に乗って移動したりすることもできるらしい。そして、人化の術も使えず、水を操ることもできないという者は――親にしがみ付いたり、別の者の操る水の上に乗っかって移動するという具合だ。必要ならシリウス号の甲板で見物してもらっても良いけれど。

 ともかく、グランティオスの民がギャラリーに加わったが気にせず、洋館と庭園を作っていくことにしよう。資材を建築予定の現場に置けば準備完了だ。

「では、始めます」

 まずは、地下部分からかな。ここは緊急時の避難用スペースである。ゴーレム達が起き上がり、残った部分がそのまま地下スペースになっていく。
 給水管を通すための空間を確保。排水の為の溝を作り、トイレを作り、貯蔵庫を作る。地下スペースの天井を作り、壁や床、柱を構造強化で固めていく。

「うん。頑丈でいい感じ。これなら4階建てでも大丈夫かも」

 セラフィナが頷く。

「了解。じゃあ、続けていこう」

 続いて――マジックサークルを展開し、光の球体を生み出す。資材が球体の中に吸い込まれて、形成され直して、建物の形として広がっていく。
 シリウス号の外装を作った時の要領と同じだ。資材ごとに形成し直して建物にしていくわけだ。まずは建物の基礎部分を作り、そこから立体模型の通りに再現していけば良い。

 間取りは決まっている。石材が決められた形の通りに地面に広がっていく。そして、床、壁、壁の間の断熱材。柱に窓枠、天井――。応接室、客室、貴賓室に遊戯室、厨房、トイレに風呂――各部屋も1つずつ作っていく。

 必要な資材は、使うタイミングに応じてバロールがレビテーションで運んできてくれる。それを順繰りに用いていくだけだ。真鍮を蝶番に形成して木材を使って形成した窓枠に取り付けたり、或いはドアノブにしたり。
 避難用の隠し通路スペースも最初から用意してある。各階の廊下の端にある壁をずらして回転させてやれば、そこから地下室へ行けるというわけだ。

 洋館の外観や作りは南西部の気候に合わせて窓が小さめだったりする。白い石材を基本としており、城を小型にしたような印象があった。
 3階建ての、それなりに大きな建物だが……少しだけ予定に手を加え、屋上の一部にテラス席を作ろうと考えている。

 南西部の港町……ウィスネイア伯爵の屋敷と似た感じだな。あの屋上のテラスが良い感じだったので、予定変更できないものかと計算し、あまり使う資材の量に違いがないので取り入れさせてもらったというわけである。

 セラフィナと共に、安全かどうかを確認しながら1階部分が終わったところで、2階、3階と作っていく。そして最後に屋上部分。尖塔を作り、平なテラスを作り、手摺を作り――それら全ての工程を終えると、ギャラリーから拍手と歓声が巻き起こった。

「すごいっ!」
「魔法建築というのは……凄まじいものだな」

 子供達は目を輝かせ、大人達は目を丸くしてと、反応は様々ではあるが、グランティオスの民にも概ね好評な様子である。

「まあ、まだ珪砂から窓硝子を作っていく必要があるんですけどね」
「ああ。壁や床のように一気に形成してしまうと言うわけにはいかないわけですね」

 ロヴィーサが納得したと言うように頷く。

「そういうことです」

 窓ガラスは1枚1枚枠に合わせて作っていかないといけないので若干面倒だったりする。ガラスについては温室を作った時と同様、二重構造で防寒断熱の効果を高める形だ。

 それに、地下スペースから土砂を除けた関係で、それも資材として余ってしまっている。……ふむ。本館の隣に、コンサートホールでも作るか。海辺だけでなく、こちらでも歌を歌える施設があったほうが良いだろうからな。

 昼食の休憩などを挟みながら作業を進めていくとしよう。子供達が暇をしているようなら、ツリーハウスを見てもらうのも良いだろうし。

 館が終われば続いて庭園と港、灯台と釣り場だが……こちらについては、いずれも、そのほとんどが石材単一を基本としているので、そんなに手間ではない。港の作り方にしたところで、タームウィルズで造船所を一度作っているので、あれと似たような構造で良いはずだ。



「あちらに木の家を作ったのですね。リサ様の家みたいで素敵です」
「ふふっ」

 と、アシュレイが微笑み、マルレーンがこくこくと頷く。そんな2人の様子にグレイスが表情を綻ばせた。
 和気藹々とした空気の中、バスケットを開いて昼食だ。

「あれ。これは……」
「アルフレッドが試作品を持ってきたらしいのよね」
「折角だから作ってみたの」

 とローズマリーとクラウディアが教えてくれた。
 少し遅めの昼食はサンドイッチ――しかもカツサンドであった。どうやらアルフレッドがノンフライヤーの魔道具の試作品を持ってきたらしく、それを早速活用してカツサンドを作ったということのようだ。

「ん。美味しいよ」
「ありがとうございます」

 サンドイッチを齧ってその感想を述べるとグレイスが笑みを浮かべる。
 のんびりと日向ぼっこをしながらサンドイッチを齧り、茶を飲んで……休憩を挟んでから、作業の続きをしていく。

 窓ガラスを作って洋館の仕上げ。それが終われば庭園だ。庭園の真ん中に噴水を作り、その近くに東屋を作る。石を敷き詰めて庭園に道を作り、花壇を作っていった。……植え込みなどが入っていないので、このへんまだ殺風景だが、植物が入れば印象も変わるだろう。

「庭師については、私が手配をしましょう」
「承知しました。家具や植え込み等の予算についてはこちらにお任せを」

 公爵と大公が話を進めている。うむ。庭師に植え込み、家具や調度品等は2人に任せておけば良いだろう。

「ああ、そう言えば……。噴水の真ん中に、像を作ろうかと考えているのですが……。人魚像を作っても構いませんか?」
「無論だとも」

 尋ねるとエルドレーネ女王は上機嫌な様子で頷いた。慈母像をモデルにするというのも考えたのだが……グランティオスの民にとって思い入れのあるものだと、メンテナンスにも気を遣ってしまうからな。ここは普通の人魚像ということで良いだろう。
 慈母像を修復した時に、彫像についても色々勉強させてもらったから、それも反映していきたいものである。
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