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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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493表 海竜の咆哮

 ウォルドムの姿が変貌していく。
 額が割れて宝石のようなパーツが覗く。耳や手首、そして肩のあたりから鰭のような器官が迫り出し、背中側――腰のあたりから後ろに向かって魚の半身のように尾が伸びる。
 ……なるほど。その姿は確かに、人魚や半魚人達に似ていると言っていいだろう。眷属達とは違うし、人魚や半魚人達とも違うが……海洋に住まう魔物の一種と言われれば頷けるような姿だ。
 元々の人間部分は大きく変化しない。人魚の半身をそのまま尾にして人間の足を付け加えるならこうなる、といったところか。目の前に掲げた手の中に瘴気の渦が巻き――凝縮、硬化してトライデントとなる。

「オーベルクから話は聞いているぞ。人の身でありながらガルディニスらを下したとな。確かに難敵ではあろう。しかし、余に(まみ)えて、この水底より生きて帰れるとは思わぬことだな」

 ガルディニスのことは伝わっているか。それでも奴には気負ったところはない。どこまで情報が伝達されているかは気になるが……。ここで聞いても仕方のないことだ。
 ウロボロスを構えて魔力を高めていく。それを見たウォルドムは、目を見開きながら牙を剥き出して、好戦的な笑みを浮かべた。

 突撃したのはほとんど同時だ。勢いに乗せて突き出されるトライデントをウロボロスで受けて、回転させることで体勢を崩す。ウォルドムは力の流れに逆らわない。こちらの技に乗るように大きく動くと、逆さになったままでトライデントの逆端を跳ね上げてくる。
 後方に転身して回避。距離を開きながら凝縮した魔力を展開。奴から見れば身体の陰に隠れる角度で展開させた凝縮魔力の大剣で、横薙ぎの斬撃を見舞う。

 攻撃の性質と間合いの変化に、ウォルドムは対応して見せた。見えないように展開した凝縮魔力の斬撃を、トライデントできっちり受けている。しかし受け流すことまではできない。構わずに魔力を込めて気合と共に振り抜けば、ウォルドムが後ろに弾き飛ばされる。
 壁際に追い詰めたところに、マジックサークルを展開。

「ソリッドハンマー!」

 左右から2つの岩を、正面からは魔力のメイスで逃げ道を塞ぐような3点同時攻撃。
 猛烈な勢いで3つの鈍器が迫り、砕けるような音と共に壁をぶち抜く。間髪入れずに隣の区画へと追い縋るように突撃する。仲間達の戦っている場から遠ざけるためだ。霊廟の隣は――大きな回廊だった。

 壁から飛び出したところでトライデントが頬の横を掠める。反射的にシールドを展開しながら身体を逸らせば、そのままトライデントが真横に振り抜かれた。あっさりとシールドを両断してくる。体勢を立て直している時間はない。回転するトライデントの間合いから離れるように水流操作で真横に飛んで距離を取る。

 ウォルドムが回転させたトライデントを薙ぎ払えばそれだけで周囲に満ちる邪気と、奴の瘴気、そして水が混ざるように猛烈な渦となって迫って来る。
 身をかわす。回廊の柱ががりがりと削られて巻き上げられる。そこにトライデントを構えたウォルドムが突っ込んで来た。
 奴の攻撃は半端なシールドでは受けられない。きっちりとウロボロスで受け止め、回廊を並走するように切り結ぶ。

「くくくっ! 凝縮した魔力を武器と成すか! 余等の技に似ているではないか!」

 ソリッドハンマーとメイスの一撃は、全く堪えていないようだ。元より、俺とてこの程度でダメージになるとは思っていないが。
 ウロボロスで突きを繰り出しながら、トライデントの穂先と絡め合う。互いが互いの武器を絡め取って弾き飛ばそうとするかのような動き。しかし、本命は別だ。
 上に意識を散らしたところで――下段へ。足元を薙ぐように弧を描くような軌道で水の刃を放つ。ウォルドムは宙返りをするように反転して見せた。
 同時に何かが迫って来る。横方向に避ける。飛来したのは尾鰭だ。周囲の邪気を絡め取り、斬撃と化して床から壁へと断裂を刻む。ギロチンの刃のような重さと鋭さを持っていた。
 回避した勢いそのままに、回廊の床を滑るように距離を取る。

 その身体に。武器に。手足に。周囲から集まって来る邪気を渦と化して巻き付けていく。
 なるほど。邪気を己の力と成すというわけだ。ガルディニスも信徒から力を集めていたようだが――海王を自称するだけのことはある。それに……眷属達に技を伝授したのもこいつだな。だが、その技術の完成度を今までの連中を参考にして考えるべきではあるまい。

 突き込んで来る。渦を纏った槍を転身して避ければ、背後の壁がドリルで貫かれたかのようにがっぽりと穴を穿たれた。
 止まらない。長大な槍を引き戻して矢継ぎ早に見舞ってくる。転身、転身。壁に、床に、天井に。幾つも幾つも穴が穿たれる。その中の1つを選んで反撃を敢行する。
 避け損ねてバランスを崩したように見せかけてやれば、それを見逃さず強めに突き込んできた。

 それを――ネメアとカペラの手足によってシールドを蹴り、身体をずらして避ける。魔法さえ使わない、予備動作を見せない回避だ。
 槍を引き戻す動作に合わせて、穂先の間合いの内側へ踏み込み、逆回転の渦をウロボロスに纏って渦の鎧に叩き付ける。激突の瞬間に魔力衝撃波を叩き込めば、奴の身体が後ろに下がった。

 距離が開く。ウォルドムは……珍しい物を見るような表情で、打たれた脇腹に軽く触れてから、にやりと笑った。駄目だな、今の一撃では。渦を相殺しても衝撃波の威力が減衰している。

 だが、こちらも渦を使えばまともに打ち合えるというのは分かった。いや、そうしなければ、触れた瞬間に巻き込まれて吹き飛ばされてしまうだろう。周囲の水を制御し、ウォルドムのものとは逆に回転する渦の鎧を纏う。
 その瞬間、周囲の水が前触れもなく動いた。踏み込もうとしていたのを勘だけで横に避ける。下方から氷の槍が突き上げた。

「今のは――」
「よく避けた! 素晴らしい反応速度だ!」

 ウォルドムは楽しげに笑う。片眼鏡ですら水が不自然に動くまで、術の起点が見えなかった。
 ルセリアージュのように瘴気をそこに展開させておいたわけではないし、魔眼の類でもない。となれば――邪気を操作してそこから術を使えるというわけか。
 この城――邪気に満ちた空間、その全てが奴にとってのマジックスレイブのようなものだ。
 だが、無尽蔵に使えるというわけではないだろう。奴が身に纏ったり氷の槍を作り出した分、回廊の邪気が薄れている。使った分を補充するように外から邪気が流れ込んできているが。

 あちらこちらから氷の槍を放ってくるが、当てるのが目的ではあるまい。俺の動きを制限するためだ。回避する空間を塞ぎながら突っ込んで来る。足を止めて迎え撃つ。
 そして――こちらのウロボロスの動きを抑えたところで、四方八方から氷の槍を叩き込んで来た。だが、この攻撃はシールドで受けても問題無い。弾き散らしながら、丁度脇を掠めていく氷の槍を逆に利用する。身に纏っている渦に巻き込み、スイングバイの要領で加速して奴の顔面目掛けてはね返してやった。

 視界が遮られるために顔には渦を纏えない。最も防御が薄い場所ではあるだろう。ウォルドムの頬を掠めていく氷の槍。崩れた体勢。

「おおおッ!」

 裂帛の気合を込めて、身体の動きと纏った渦を連動させて振り抜く。重い手応えが突き抜けるが、吹き飛ばない。一撃を食らうことを避けられないと悟ったか、尾鰭を床に突き刺すことで踏みとどまっている。しかし、穂先の内側の間合い――。柄を叩き付けるにも距離が近い。ならば何が来る?

「かああっ!」

 打ち下ろすように腕が動く。手首から袖のように生えていた鰭での斬撃を見舞ってくる。
 後方へ魔法を放ち、退路を塞ぐ氷の槍を衝撃波で打ち砕きながら離脱したが――左肩に熱い感覚があった。

 ……斬られたか。渦の鎧を纏っていたのだが。その上からでも攻撃を届かせてきた。キマイラコートやアルケニーの糸で編んだ防具を切り裂けるだけの威力を秘めているらしい。
 だが、深手ではない。動きに支障はない。凝縮した魔力を張り付けるようにして傷口を塞ぎ、それ以上の出血を防いでそのまま突っ込む。

 まだ――力が足りない。もっと。もっとだ。凝縮した魔力を纏った渦に乗せて、ウォルドムと切り結ぶ。トライデントを渦で逸らして体勢を崩して更に一撃を叩き込む。
 こちらが力を強めたと見るや、向こうも纏う渦の勢いを強めて来た。邪気で強化が足りなければ瘴気を注ぎ込むというわけだ。だが、少なくとも氷の槍は既に問題にならない。

 ミラージュボディでの分身。前触れ無しに上下に飛んで挟み込むような打撃を見舞う。通用しない。本体と分身を見切って、正確にトライデントで受け止めて来た。触れる邪気によってこちらの位置を探知して見切っているようだ。

 真っ向勝負。杖術対槍術。ぐるぐると水の中を舞い踊るように、互いの位置を入れ替えながら技を応酬する。絡め、払い、押さえ、踏み込んで切り込む。刺突と刺突をぶつけ、相手の得物を弾き飛ばすように手元で円を描く。斬撃と刺突、打撃の応酬。

 ウロボロスとトライデントが激突する度に金属音と衝撃波が放射状に飛び散る。互いの武器を払い、突き。頬を掠めていく邪気の渦と、僅かな痛み。
 浅い。問題無い。深く踏み込んできたウォルドムにカウンターを繰り出す。腕や尾の鰭による斬撃をネメアとカペラを使って左右に飛んで避けて、至近から掌底と共に火魔法による水中衝撃波を繰り出す。

 が、一瞬早く左腕で防御された。しかし無傷では済まない。後ろに飛び退らせるほどには効いたようだ。
 敵の予想を上回る威力を以って、左腕の鰭を破壊した。そこまでは良い。問題にすべきは、その異常な反応速度だ。魔法の起こりを異常な速度で察知してくる。周囲に満ちた邪気を、探知能力として利用しているということか。

「何という……素晴らしい技量か。どうやったのかは知らぬが、余は魔法ごと打ち込んで来る貴様の腕を斬り落とすつもりでいたのだぞ!」

 破壊された左腕の鰭を見たウォルドムは、寧ろ嬉しそうに表情を綻ばせる。
 ウォルドムの纏う渦の形が変わる。狭まる。1つ所に集まり、高速回転する水の戦輪となって――そこにウォルドムの光る鱗が混ぜ込まれた。背筋を走る怖気。勘に従って横に飛ぶ。直前までいた場所の背後――城の壁に無数の細かな傷が刻まれる。
 俺が先程見せた返し技と理屈は同じだ。水の戦輪で鱗を加速させて、弾丸として放つ。しかし、その威力と速度は相当なものだ。放たれる弾丸の速度が煌めく光にしか見えない。

「行け!」

 戦輪が意思を持つようにウォルドムから離れる。身に纏うではなく、戦輪を後衛に配置するというのは……何かの意図あってのものか。
 正面からはトライデントを構えて突っ込んで来る。矛を交えるこちらの動きに合わせるように戦輪が弾丸を撃ち放ってきた。
 刺突の隙を戦輪が補い、戦輪の射撃を避けたところにウォルドムが切り込んでくる。単体による波状攻撃。
 シールドを展開すれば、それを即座に察知して戦輪が位置を変えながら射撃を見舞ってくる。

 先読みと勘で、避ける。避ける。水流操作とシールドを蹴る動き、ネメアとカペラの蹴り足を活用して弾丸の的を絞らせない。
 ウォルドムからは離れない。離れていても戦いにならない。近距離に留まって切り結ぶ。隙をつくように戦輪目掛けて水中衝撃波の爆裂弾を放てば、ウォルドムは戦輪を庇うように裏拳を打ち込むような動作で水を叩き、衝撃波同士をぶつけて爆裂弾を破壊してきた。

 この動き……。そうか。こいつはバトルメイジの特性を知っているわけだ。だから戦輪を至近での攻防に使うのではなく、援護させることで近接戦闘を有利に運べる状況を構築しようと考えたのだろう。

 互いの武器がぶつかって火花を散らす。先程同様。ウロボロスの角と穂先をぶつけ合って主導権を奪い合うような技術戦を行うが、俺の動きを要所要所で鱗の弾丸を用いて寸断してくる。弾丸の装填は俺と切り結びながらでもできるらしく、奴の尾から鱗が戦輪目掛けて吸い込まれていく。弾切れを期待することはできまい。

 奴の一撃を選び取り、いなして打撃を叩き込む。しかし浅い。槍と尾と鰭。そして鱗弾の波状攻撃があるために、あと一歩が踏み込めない。反撃とばかりに一瞬たりとも途切れることのない攻撃が繰り出される。
 ――歌。歌が聴こえる。聞き覚えのあるものだ。それはユスティアやドミニク達がよく歌っていた歌。セイレーン達の歌。浄化の呪歌。
 エルドレーネ女王と水守り達の浄化の魔法の効果を何倍にも高め、それらを旋律に乗せて――この城の奥にまで届かせている。

 眷属達の溜め込んだ邪気を払うように――セラフィナが歌声を集めて、イルムヒルトが矢に乗せて撃ち放つ。そんな光景をカドケウスが捉えている。
 親衛隊達の纏った邪気が風に吹き散らされるように吹き飛ばされ、シーラやシオン、イグニス達に切り崩されているのが見えた。イルムヒルトがユスティア達の想いを乗せて放つそれは、闇を掻き分ける光の波となって広がっていく。

 急速に城の中の邪気が薄れていく。奴もそれは分かっているのだろうが……焦ったような様子は見せない。
 薄れた分は瘴気で補い、戦力の低下を防いでいるようだ。そしてその間にも周囲に満ちる邪気が生物のように、集まって来ているのが分かる。あの、亀裂の淵から、俺と奴の戦う、この場へと。

 こちらの魔力も、十分に高まってはいる。体内魔力と、体外に纏った魔力と。しかし決め手となる一撃を叩き込む隙が無い。近接の打撃は波状攻撃で寸断され、魔法は術式の起こりを邪気で察知されてしまう。ならば、どうする。奴にとって有利な状況を覆し、切り崩すためには。城の外まで誘い出すか? それとも浄化の魔法が及ぶまで時間稼ぎをするか。

「来い――!」

 答えは――どちらも否だ。頭上に手を掲げて、俺の知っている歌に合わせるように詠唱を行えば――。
 廻る。俺の頭上で環境に満ちる魔力が渦を描いて回り出す。母さんの遺した術だ。周囲に満ちる魔力を集めて、利用するための術式。
 ウォルドムはこの城に満ちる邪気全てを自分の力として利用しているのだろうが、それならば俺にだって利用できるものはある。

 呪歌と呪曲は目的を同じとするものへ相乗効果を齎す。セイレーン達が歌っているのも、エルドレーネ女王達が浄化の魔法を用いているのも、ウォルドムを打倒し、邪気を払い、平穏な海を取り戻すためのものだ。
 そう。集まってくれば。魔力に触れれば解るさ。ウォルドムの打倒もそうだが、俺達の無事や勝利を祈ってくれている。城の外だけでなく、中で戦っているみんなだって気持ちは同じだ。ならば――この魔力を、味方として引き込めない道理がない。

「これは――!?」

 ウォルドムがその光景に目を見開き、憎悪を剥き出しにすると戦輪と共に突っ込んで来た。奴の背後にもドス黒い邪気が渦を巻いているのが見える。
 ――俺が呼んだものはもう1つ。外の戦いでの大勢は決した。もう、上に控えさせておく理由もない。

 トライデントを受け止める。戦輪が鱗の弾丸を放とうとした瞬間、直上から光弾となってバロールが戦輪の只中を突っ切り、その制御を乱した。ウォルドムの一撃は――戦輪での援護を前提とした動きであった。邪気が乱されているために感知能力も上手く働かなかったのか、一瞬回避が遅れる。

「飛べッ!」

 懐へと踏み込む動き。身体に纏った渦。体内で高めておいた魔力。全てを連動させてウォルドムの胸に向かって掌底を叩き込む。
 ――螺旋衝撃波。ねじ込むように魔力を一点で炸裂させると、ウォルドムの身体が回転しながら後方へと吹き飛ばされた。

「が、ああああっ!」

 壁を螺旋状に抉りながらも、尾と爪を使って無理矢理に回転を止める。ウォルドムの咆哮に呼応するように、その場で渦を巻いていた邪気がウォルドムのトライデントに纏わりつく。奴の瘴気と混ざり合い、巨大な竜巻と化した。城の建材が、触れた瞬間砂のように崩れ、散らされていく。そう。そうだろうな。俺との戦いでの切り札として用いるつもりだったのだろう。

 頭上に輝く魔力の渦を、ウロボロスに絡め取るように取り込み、体外に纏った魔力と混ぜ合わせるように魔力循環で増幅してやれば――それはまるで生き物のように、俺の周囲を舞った。

「忌々しい人魚共が! 諸共に散るがいい!」

 その力から人魚に起因するものだと感じ取ったのか、ウォルドムが咆哮する。
 トライデントの先端から巻き上がる黒い竜巻が、城を削り散らしながらこちらへ向かって倒れ込んで来た。そのまま城を砕き散らし、外にいる女王達も薙ぎ払う算段なのだろう。
 集めた魔力の塊の一部を使ってシールドを展開して受け止める。黒い竜巻を青白い光の盾が受け止めて、幾条もの紫電を散らす。余波で城の床が、壁が、砕け散っていく。めきめきと音を立てて、俺の腕にも重圧がかかる。ウロボロスが唸り声を上げた。

「はああああっ!」
「おおおおおッ!」

 押し合う。シールドへの力を注ぎながら、周囲を舞う魔力を制御していく。そして――次の瞬間。

「かはっ!」

 先程の螺旋衝撃波がウォルドムの体内にダメージを残していたのだろう。回復を待たずに大技を仕掛けたからか、血を吐いてウォルドムが胸を押さえる。均衡が、崩れた。
 今――。上に飛んで、杖の先に巨大なマジックサークルを展開する。

 その術の本質は単純明快。指向性を伴う音響の砲弾――幾重にも重なり合う超巨大な衝撃波だ。風魔法として分類されているが、音響弾は水の中でも問題無く機能する。

「咆えろッ!」

 ――第9階級風魔法ドラゴンズロアー。
 瞬間的に発生した巨大な圧力に、空間に満ちる海水が大きく歪んで崩壊。更なる衝撃波を生み出す。避けようとしたウォルドムは――間に合わない。
 顔の前で腕を交差して瘴気を集中させる。そして音響の砲弾というのも生易しい爆圧をまともに受け止めた。

 城の床を一瞬で砂塵へと変え海底深くまで抉り貫き、竜の咆哮はそれでも止むことはない。終わりがないと思える程の力の放射。びりびりと手の中で振動するウロボロス。グランティオス全域を鳴動させるほどの轟音の中、ウォルドム諸共に効果範囲内にある形あるもの全てを微塵に砕き散らす。最後に――瓦礫と砂塵の奥深くで一際大きな爆裂が生じて、竜の咆哮が収まった。
+注意+
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