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番外313 ホウ国での再会

 そして……ホウ国を訪れる日がやってくる。

 時差があるのでヴェルドガルから昼前ののんびりした時間に向かうと――ホウ国では夕方ぐらいになるだろう。

 東西ともにあまり朝早くも夜遅くもない、のんびりとした時間帯に行動するのがよいだろうということで、各国と調整している。

 招待客の間に生じる時差による問題は魔道具で解決すれば良い、という寸法だ。

 というわけで予定されていた時刻に転移港へ向かうと、続々と関係者が集まってきた。


 俺達以外の同行者としては――まずヴェルドガル王国からは、メルヴィン王とジョサイア王子も今後の友好のために訪問する、ということになっている。騎士団からミルドレッドとメルセディアが中心となってしっかりと護衛についている。

 それから冒険者ギルド長アウリアと、ベリーネもカイ王子の即位に合わせてホウ国への挨拶に向かうというわけだ。実際の土地柄などを知っていないと支部を作るにしても助言がしにくいから、視察と見学の意味合いもあったりする。


「こうして気軽に異国への訪問ができる環境というのは良いものであるな」

「全くですな。今まで存在が知られていなかった東国……興味がつきませぬ」


 合流したメルヴィン王とアウリアは随分と上機嫌な様子である。

 時間を合わせたからか、4つの転移門からほとんど同時に光の柱が立ち昇る。それぞれ……ドラフデニアとエインフェウス、ヒタカノクニとマヨイガに繋がる転移門だ。


「おお、これはメルヴィン王、ジョサイア殿にテオドール公も揃い踏みとは」

「おお、レアンドル王。壮健なようで何よりだ」

「メルヴィン王もお変わりなく」

「お久しぶりです、レアンドル陛下」

「ああ。テオドールも元気そうで何よりだ」


 レアンドル王はにやりと楽しそうに笑う。ドラフデニア王国からはレアンドル王と一緒に、グリフォンのゼファードや宮廷魔術師の弟子であるペトラと、妖精の女王ロベリアも一緒にやってきた。ペトラは現在、ドラフデニアからヴェルドガルへ留学中であるが、一旦レアンドル王達を迎えに行ってきたらしい。


「おお、セラフィナ! 久しぶりよな!」

「ロベリアちゃん!」


 ロベリアはセラフィナと顔を合わせると、空中でハイタッチなどしている。妖精同士の友情というか何というか。

 リンドブルムとゼファードも、アケイレスの黒い悪霊を相手に一緒に肩を並べて飛んだ戦友であるからか、嬉しそうに声を上げて再会を喜び合っているようだ。


「くっく。中々賑やかな事になりそうであるな」


 そんな光景を見て笑うのはエインフェウスからやってきたイグナード王である。

 俺達と一緒にやってきたオルディア、レギーナ、イングウェイと顔を合わせて穏やかな表情で再会の挨拶を交わしていた。


「いやはや。気軽に外国に行って帰れるようになるとは。ヒタカの帝として都から離れられないものと思っていたが、変われば変わるものだな」


 ヒタカからは――ヨウキ帝とユラ、アカネ、イチエモン、タダクニという面々だ。ヨウキ帝はヒタカノクニを霊的な面で治めるという役割があるからか、あまり都から長期間離れられないという事情があるらしいが……それも転移港があれば、ある程度は解決してしまうというわけだ。にこにこと嬉しそうなヨウキ帝に、同行している面々も楽しそうに笑っている。


 ヒタカノクニの都からは落ち着いた顔触れだが……一方でマヨイガからの面々はかなり多い。レイメイとシホ、御前、オリエと……沢山の妖怪達がやってきたので転移港回りは中々にカオスな光景になっていた。


 コルリス達動物組が久しぶりに再会したケウケゲンと抱擁しあっていたりして再会を喜んでいたりするので、余計に賑やかというか何というか……よく分からない光景になっている。


 だが各国の王達としては妖怪達が遊びに来ることは聞いているからか、その光景に動じるでもなく、寧ろ楽しんでいる様にも見えた。度量が広いというか何というか。


 各々初顔合わせの面々もいるので、お互いに紹介したりする。


「そちらのお嬢さんは初対面だったかな?」


 そうやって紹介が進んでいくと、レアンドル王がエレナを見て首を傾げる。


「エレナ嬢です。ちょっとした事情があって、今現在フォレスタニアで客人として迎えています。魔法の心得もあるということで、工房の仕事も手伝ってもらっています」

「初めまして。エレナと申します」


 そう言ってエレナが作法に則り、古式ゆかしい挨拶をする。

 エレナとしては衣服の替えなどを買うにしても、普段使いとしてローブを新調する程度であまり散財しないように……或いは目立たないようにしている様子であったが、今日は集まる顔触れや目的も考慮したからかフォーマルなドレス姿だ。


 地味めなデザインと色合いなのは、やはりあまり目立たないようにという配慮なのだとは思うが、それと伝統的な作法等が相まって落ち着いた印象を与える。というか、実際これだけの面々を前にして気後れや緊張が無い様子なのは、場慣れしているからで間違いないだろう。

 レアンドル王もイグナード王もヨウキ帝も……そんなエレナの落ち着いた佇まいは好印象なのか、穏やかな笑顔で頷いていた。


「うむ。よろしく頼むぞ!」

「テオドールの客となれば我らにとっても友も同然であろう」


 と、御前やオリエは別の意味で緊張と無縁というか、既に上機嫌な様子である。


「おお、テルヒメ、オリエ! 元気そうじゃな!」

「アウリア。お主も元気そうで何よりよな!」


 何やらアウリアとも気軽な様子で挨拶をしあっているが……。ロベリアも一緒になって今度かき氷を一緒に食べにいこうとか何とか話をしている。うむ……。気が合いそうな顔触れだけにどこかで意気投合したようだが。


「いやはや。昔からの知り合いが一人増えたみたいな感覚になっちまうな」


 と、レイメイは御前達の様子に苦笑しているようである。

 エインフェウスのエルフの族長ウラシールも、アウリアから気さくに挨拶されて目を瞬かせたりしたものの、笑顔で挨拶を返していたりしていた。


 後は―――エレナにとっても……今回の同行で、何か得るものがあれば良いのだが。視線を向けると年齢の近いユラと笑顔で言葉を交わしているようだ。


「エレナさんは、ユラ様や、リン殿下とも仲良くなれそうな気がしますね」


 と、グレイスがその光景を見て微笑みを浮かべると、みんなもどこか嬉しそうに頷いていた。

 そうだな。事情を明かせるかどうか以前に、長い間を眠っていたのだ。友人は今の時代でも多ければ多い程良いに決まっている。


 まあ、そんなこんなで同行者も全員集まった。人数を数え、同行者の名簿と照らし合わせ、転移門を作るための資材があることも確認。


 結構な大所帯なので歓待する側としても結構大変だとは思うが……カイ王子の即位の儀式にこれだけの面々が列席したとなれば、ホウ国の新たな門出を祝うものとしても幸先の良いものになるのではないだろうか。


 というわけで、ホウ国に飛ぶ事になるわけだが、実はタームウィルズ側の転移港に対になる門は建造されているが、ホウ国側はまだだったりする。

 ホウ国側の用地も決まっているので、即位の儀式等が終わったら改めて魔法建築を行う、というわけだ。まあ、余興のようなところはあるか。

 なので、今回はクラウディアの転移魔法で纏めて飛ぶ、というわけだ。


「それじゃ行こうか」


 クラウディアに視線を向けると静かに頷く。


「ええ。それでは、魔法陣に入ってもらえるかしら」


 転移港の広場に予め描かれた魔法陣にみんなが入る。行先は――ホウ国の宮殿広場。月女神の祭壇前だ。人数が多いので、俺もクラウディアに協力する形で循環錬気を行い、魔力を増強する。

 術式が発動し、光に包まれてそれが収まると、ホウ国の宮殿の、見覚えのある広場に移動していた。夕暮れの――ホウ国である。

 カイ王子達は少し離れたところで待機していたらしい。

 リン王女の傍らにセイラン、コウギョクと麒麟。ゲンライに門弟達……4太守達にシュウゲツと、ホウ国の顔見知りが全員揃い踏みである。


「ようこそ、ホウ国へ。歓迎いたします」

「これはカイ殿下。お元気そうで何よりです」


 再会の挨拶をすると、カイ王子が穏やかに笑って迎えてくれる。

 互いに初対面の顔ぶれを紹介していく。同時に並行して人数がきちんと揃っているかも確認。

 うむ。全員問題なく転移完了している。


 即位の儀式は明日の予定だ。今日は……のんびりと歓迎の宴を楽しませてもらおう。

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