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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外257 迎撃準備

 そうして似顔絵を得てサイロウ達の尋問を行い……明けて一日。
 スケジュールに従い、目を覚ましてすぐに文字通りの東奔西走と相成った。同時に、移動中の時間を無駄にしないためにも水晶板モニターで4太守と話をし、サイロウ達から得た情報も共有しておく。

「サイロウ達はショウエンの明かされていない裏事情に関しては、情報を多くは持っていないようですね。それでも幾つか判明した事はあります」

 と、ショウエン達が秘密主義で弟子達にも自分の技術目的等々の全容を伝えていないこと。術者たちを集めて研究等々しているので本腰を入れて動いていないという推測に裏付けが取れたこと。そして3人……高弟と呼ばれる面々がいる事などを新しく判明した事実として、4太守に伝える。

『ふむ。それでもこの短期間でかなりの情報を得られておりますな。確かに、使う術などが一気に解明されてしまえば対応もしやすくなったとは思うのですが』
『現状の作戦がショウエン側の動きに合致したものであると分かっているだけでも心強いものですな』

 シガ将軍が腕組みしてうんうんと頷き、ホウシンも笑う。
 そうだな。サイロウ達の尋問に関しては、核心にこそ至らなかったものの、有用な情報も多い。特に、盗賊団に関する情報に関してはかなり重要な情報を持っていたと言える。

 まあ……その得られた情報を元に更に質問を投げかけていくというのは……こちらの手札に読心があるとサイロウ達に理解されてしまうので、後はタームウィルズに転送して魔法審問で色々と情報を引き出してもらうしかないな。

 得られた情報についても色々と話をしていく。

「どうやら、この点に関してはサイロウ達を動かす折に色々と話をしていたようですね。ですので、次に盗賊団が動くとしたらガクスイ殿の領地。それもショウエン側との交渉期限とその結果に合わせて、というところまで判明しております」
『我が領地ですか……。しかし、使者達の動向を追っていけば――』
「盗賊団を捕捉できる可能性は大きいかと。そこで……更にその先を想定した作戦も立てました」

 これに関しては頭目を押さえなければ話が進まないのだが。それでも似顔絵と胸像は成功した時と失敗した時の、どちらのケースでも活用が可能だ。
 ショウエンの正当性に対する打撃として喧伝する旨等を説明すると、4太守はかなり乗り気な様子を見せた。

『その作戦は――良いですな。ショウエンは陰謀で他者を貶めて登り詰めた男』
『ですな。真実を明るみに出されて足元を揺らがされるというのは因果応報というものでしょう』
『私としても、その作戦に賛同致します』
『同じく。作戦成功のためにできることがあれば何でも協力致しましょう』

 と、満場一致で作戦協力してくれると、約束を取り付ける事ができた。

「ありがとうございます。再度訪問した折、似顔絵と胸像を届けていきます」
『道中お気をつけて』

 伝えるべき情報は伝えて共有した。4人の太守達もそれぞれするべき仕事がある。そう言って一旦通信会議を切り上げる。
 スケジュールは……順調に推移している。シガ将軍は元々開戦に向けての準備を進めていたが輸送を補助した方が将兵と兵糧の消費を抑えられるのは間違いない。それが終われば南西部――スウタイの領地にある余剰物資を受け取り、それを各陣営に分配できるよう態勢を整えておく、ということでも話が纏まっている。

 それからゴリョウ達からの報告書を纏めて、これも提出していくわけだが……。

「サトリの掴んだ情報だと、連中は首都と墓所に固まっているみたいだね」
「サイロウ達が動き出す前の時点では……そのようではあるな」

 と、サトリが頷く。

「そうなると……俺達の動きに関しては自由度が増すかな」
「首都や墓所に近付かなければ察知される心配も減る、というわけですね」
「一応そう見ているよ」

 グレイスの言葉に頷く。今までで隠蔽されたシリウス号を探知してきたのはザラディの予知とヴァルロスの全方位を探知する力技による合わせ技ぐらいのものだからな。
 この点に関しては……実績と目安にはなる。要するに、ショウエンらのいるところに近付かなければ安全度は高い、というところだ。

 直接ゴリョウ達を北方の地方都市まで送っていって報告書を提出してもらい、そのまま回収、などという行動も可能だろう。まあ、ガクスイの領地からの報告は作戦上少し遅らせてもらうことになるが。



 そうしてあちこちを飛び回り、スウタイと共に南西部に出かけて物資を回収、分配したり似顔絵や胸像を各陣営に届けたりと……スケジュールに従って4太守の補助に回ったり、ゴリョウ達の報告書提出の手伝いを行ったりとシリウス号であちこち駆け廻ることになった。

 循環錬気で魔力を練り上げ、操船席からシリウス号の動力部に注ぐ。あちこちに輸送しているから浮遊炉にも負担があるし、速度もそれなりに出して移動しているから魔力の消費もそこそこではある。

 魔力の補給に関してはこまめに行い、いつでも戦闘に耐えられる程度の水準は維持しておく必要がある。
 まあ、シリウス号に関しては魔力変換装甲を持っているので、船体を殴って魔力変換したりといった事も可能である。魔術師ばかりが補給の負担をしなくてもいい、という利点があったりするので、それぞれの負担が減る様に魔力補給をしていたりするが。

「アルファとしては、やっぱりテオドール様の魔力補給が心地よさそうに見えますね」
「んー。そういうもんかな?」

 アシュレイの言葉に、アルファに視線を送ればにやりとした笑みを返してくる。どうやら肯定しているようだが。イルムヒルトも呪曲を奏でてしっかり魔力補給のサポートをしてくれていたりして。
 練り上げた魔力を注ぎ、きっちり魔力補給できたところで循環錬気を終える。

「どうぞ」
「ありがとう、グレイス」

 グレイスの持ってきてくれたマジックポーションを一息に煽る。決して味わって飲む代物ではないからだ。
 ん、むむ。やはり……作った本人としても美味いものであるとはお世辞にも言えないな……。飲み物の体をしているとはいえ、あくまで薬の類なので仕方がないといえばそうなのだが。特に……対魔人戦に備えて大量に作ったので効果第一で飲みやすさなどは全く考慮していない代物だったりする。

「マジックポーションは、味が良くない?」
「あー。体力回復のポーションに比べると、苦くて臭いが微妙かもね」

 俺の反応に、シーラが首を傾げて聞いてくる。シーラの嗅覚ならマジックポーションの臭いも届いているかも知れない。

「効果が下がらないのなら、味を改善する方向で考えたいところではあるわね」

 と、その味を知るローズマリーが苦笑していた。マルレーンもこくこくと頷いている。
 だが……独特の苦みの反面で体内の魔力がゆっくりと充実してきているのが分かる。
 これはこれで回数を重ねると、苦味が無いと物足りないような気がしないでもないかな。

「アルフレッドはこういう味だからこそ意識が冴えて良い、と言っていたわね……」

 と、ステファニアが少し困ったような笑顔で言っていた。ああうん。アルフレッドは確かにそう言っていたな。あれはあれで、繁忙期以外はしっかり休息も取るようにしているそうではあるが。

「魔力も回復してきた、かな。これならシリウス号も俺も、当分大丈夫」

 と、口の中の苦みを振り払うように、少しかぶりを振って言う。
 さて……。今現在、シリウス号はガクスイの領地に向かって移動中である。ショウエンからの返答期限が迫っているのだ。

 盗賊団を迎え撃つにあたり……会談の行われる周辺に監視網を広げたり、色々と準備しておくべきことがある。
 今度のショウエンの遣わしてくる使者についても――道士か否かというところも見なければいけないしな。ガクスイときっちり打ち合わせて仕事を進めていこう。
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