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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外248 戦いの合間の安息を

 朝――。目を覚ますと、まず目に飛び込んできたのは隣で眠るローズマリーと、ステファニアの寝顔であった。
 今日から忙しくなるということで、シリウス号にて一晩ゆっくり、みんなと一緒の時間を過ごした。

 こちらを向いて眠っているローズマリーは……俺とそっと手を重ねるような形で静かに寝息を立てていた。
 うむ……。ローズマリーは少し視線を合わせていると羽扇で口元を隠してしまったり視線を逸らしてしまったりするからな。こうしてじっくり顔を見られるというのはこういう無防備な時だけだったりするが。何というか……穏やかな笑顔だ。

 逆隣はステファニア。ステファニアは小首を傾げて俺の肩に頬を寄せるようにして眠っているが、何か楽しそうな夢を見ているようだ。むにゃむにゃと何事か動く口元には笑みが浮かんでいたりして。ステファニアの性格だと、何か冒険の夢のようなものを見ているというのも考えられるな。

 と、そうして布団の中で心地よいぬくもりと柔らかな香り、静かな時間に身を任せていると、グレイスが小さく声を上げて上体を起こした。

 グレイスは相変わらず、俺達の中では一番の早起きだ。こうして俺が偶々早く起きてしまったのでもない限り、みんなより早く起きて動き出す。
 もう使用人という立場ではないけれど、このあたりは長年の習慣だからそうするのが落ち着くのだと言っていた。まあ、出先では自分達の事は自分達でしなければならないという面もあるので、グレイスばかりに負担をかけないようにと、みんなで支度を分担する、という形で落ち着いているけれど。

 上体を起こしたグレイスは――俺と視線が合うと、みんなを起こさないように声を出さずに口元を動かす。おはようございます、と言っているようだ。俺も小さく頷いておはよう、と声に出さずに口元の動きで答えると、グレイスは楽しそうに微笑みを浮かべて頷いていた。

 そっと寝台を抜け出し、夜着の裾を揺らしながら鏡台へ向かう。そうして髪をブラシで梳かす。鏡台に向って腰かけるグレイスの後ろ姿。長い金色の髪がさらさらと、ブラシの動きに合わせて流れるように動いていた。

 次に目を覚ましたのはローズマリーだった。吐息を漏らすように声を上げ、薄く目を見開き――そうして視線が合う。ローズマリーはぴったりと上から手を重ねていることに気が付くと、そっとその手を離してから、上体を起こし、小さく咳払いをする。

「ん。おはよう、マリー」
「……ええと、おはよう」

 と、小さな声で挨拶をするとローズマリーも何事もなかった風で通すことにしたようで、目を閉じ、髪を手で整えながら小声で答えていた。やや頬は赤らんでいたけれど。

 そうしてローズマリーも寝台から抜け出す。グレイスとローズマリーが起き出したことで、気配を察したのかむっくりとシーラも身体を起こす。

「ん、おはよう。テオドール」
「おはよう、シーラ」

 シーラは大きく伸びをした後で寝台から跳躍した。寝台に反動も感じさせず、音もなく、離れた場所に着地し、身支度をするためにてくてくと歩いて行った。うむ。シーラと一緒に暮らしていると、こういうのも見慣れた風景である。

 アシュレイとマルレーンは……ローズマリーの眠っていた場所の隣で、まだ寝息を立てている。こう、仲良く抱き合ってすやすやと眠っているのが微笑ましい感じがある。
 セラフィナも、マルレーンの腕に抱かれる形で2人の間で眠っていたりして。

 シーラの眠っていた場所の向こうに、クラウディアとイルムヒルト。こちらも抱き合って眠っているが、どちらかというとイルムヒルトをクラウディアが受け止めるような恰好だ。イルムヒルトの安心したような寝顔が印象的である。

「ん、ん……」

 と、ステファニアが声を上げて目蓋を見開いた。

「おはよう、テオドール」

 視線が合うと横になったままで微笑んで朝の挨拶をしてくる。

「おはよう。よく眠れた?」
「ん……。何だか、変な夢を見たわ。大きくなったコルリスにみんなで乗って……空を飛んでどこかに遊びに行く夢だった、かしら? ふふ、少し子供っぽい夢かしらね」

 そう言って少し照れ臭そうに笑う。流石に……全員で乗れるほどの大きさはコルリスにはないから、ステファニアの夢の中では相当コルリスが巨大化していたと思われる。
 ステファニアは心地よさそうに伸びをすると、身体を起こした。
 両隣の2人が目を覚まして寝台から抜け出たところで、俺も起きることにした。

 そうして何人かが起き出したところで、朝の身支度を整える気配を感じたのか、アシュレイとマルレーンは、まだ少し眠そうな目をしながら身体を起こす。

「ああ、おはようございます」
「うん、おはよう。アシュレイ。マルレーンとセラフィナもね」
「ん……。おはよ、テオドール」

 目を覚ました3人に挨拶をする。アシュレイが嬉しそうに微笑み、マルレーンは少し寝ぼけまなこであったが、朝の挨拶をするとにっこりと微笑んでこくこくと頷く。セラフィナも目蓋の辺りをこすりながら挨拶を返してきた。
 2人で連れ立って起き出し、身支度を整えに向かう。セラフィナもマルレーンの腕に抱かれたままで一緒だ。

「んん……。いい朝ね、テオドール」

 クラウディアも目を覚ましたようだ。そちらに視線を向けると、そっとイルムヒルトの髪を撫でながらクラウディアが身体を起こしていた。

「おはよう、クラウディア」
「ええ。イルムヒルト。朝よ、起きて」

 そっとイルムヒルトを起こすクラウディア。

「ん、んん。おはよう……ございます、クラウディア様……。テオドール、も」
「おはよう、イルム」

 挨拶をするとイルムヒルトは横になったまま微笑む。心地よさそうでもあり、気だるげな様子にも見えるイルムヒルトだ。
 ラミアであるが故に朝は若干弱い、というのは相変わらずであるが……まあ、今は安心できる環境なので迅速に行動するという必要もないしな。

 そんなわけでみんな起き出したところで俺も着替えて身支度を整えに向かうのであった。



 そうして……シリウス号からみんなで都市内部にある香鶴楼に向かう。
 香鶴楼側に泊まった皆とも顔を合わせる。コウギョクが朝食も用意してくれていたので香鶴楼で腹ごしらえをする。それから予定の時刻になったのでゲンライやカイ王子達と共に、水晶板モニターで4人の太守達と顔を合わせる運びとなった。

「おはようございます」
「良い朝じゃな」

 と、ゲンライ、カイ王子と共に挨拶をする

『おお、おはようございます』
『良く晴れた良い朝ですな』
『おはようございます。む。良い天気ですか。こちらは曇っておりますが』
『おはようございます。ふむ。こういう話を聞くと離れた場所での会話という実感が湧きますな』

 ガクスイ、ホウシン、シガ将軍、スウタイ達から返答がある。

「西方の魔法技術の素晴らしさ、というわけですね」

 というカイ王子の言葉に4人は感じ入るように頷いている。さてさて。では、迷宮核の補助で作ったスケジュールについての話をするか。

「さて……。昨晩お話しした通り、日程表を作ってきました。読み上げるので紙に記録しておいていただけますか?」
『ふむ。それぞれの陣営に関わりのない部分は覚え書きという形にしないか、或いは暗号や符丁で書いた方が、どこかで誰かに見られても全体の動きを把握されずに良いかも知れませんな』

 俺がそう言うとガクスイがそんな風に提案してくる。

「そう、ですね。それは確かに。では、それぞれの陣営を訪れる日付と頃合いを書いていただき、そこに目的を符丁化したものを書き残してもらうというのはどうでしょうか?」
『おお。それならば安心ですな』

 同意が得られたところで、符丁を話し合って決め、日程を伝えていく。
 さて。これで日程に関しての情報共有もできるというわけだ。こちらの立てた予定に合わせてそれぞれの陣営にも準備を進めてもらうという形になるので、ここからは俺達だけでなく、各々の陣営も忙しくなるだろう。一つ一つの仕事をしっかりとこなしていくとしよう。
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