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境界迷宮と異界の魔術師 作者:小野崎えいじ
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番外247 コルティエーラの加護

 スケジュールを記した紙をプリントアウト――というか、生成する。
 迷宮核内部から抜け出て意識が肉体に戻ってくると、手に今まで持っていなかったはずの紙を持っていた。内容に間違いがないか、最終確認を行う。

「ん。大丈夫みたいだ」

 そう言って頷くと、クラウディアが尋ねてくる。

「もう良いの?」
「ああ。出来上がったよ」

 後は――折角タームウィルズに戻ってきたわけだし、少し知り合いのところに顔を出してからあちらへ戻ることにしよう。

 ということで、フォレスタニアの居城に移動する。正門に飛んで、そこから中に入っていくと、セシリアや迷宮村のみんなが穏やかな笑顔で迎えてくれた。

「これは旦那様。お帰りなさいませ」
「お帰りなさいませ、旦那様、クラウディア様」
「ええ。ただいま、みんな」

 と、クラウディアが迷宮村の皆を見て穏やかに笑う。

「ただいま。用があって戻ってきたんだけど、またすぐあっちに飛ばないといけないんだ」
「そうなのですか。フォレスタニアは平和で、特に異常はありませんよ。執務周りも今のところ決定事項を進めているだけなので問題ないかと」
「ん。ありがとう」

 セシリアの報告に頷く。
 どうしても俺がいないと進まない話、というのは通信機に連絡が入ってそれに解答。後に書類にサインなり押印という形になるが……今のところは大丈夫というわけだ。

「ゲオルグ様達ともお話をなさいますか?」
「そうだね。折角戻ってきたわけだし」

 そう答えるとアルケニーのクレアが頷いて、ゲオルグ達を呼びに行った。
 程無くしてゲオルグ達がエントランスにやってくる。

「おお、これはテオドール様。お帰りなさいませ」
「無事なようで何よりだ」

 ゲオルグとテスディロス、ウィンベルグ。それにフォレストバードのみんな。フォルセト、シャルロッテにオルディア、レギーナ……そしてティエーラが次々顔を出す。

「ただいま。迷宮に用があって、一旦戻ってきたんだけどね。あっちに向かう前にみんなに声をかけていこうかと思って」
「それは嬉しいですね。テオドール様や奥方様達がいらっしゃらないと、こう、フォレスタニアって感じがしないですから」

 と、ロビンがにやっと笑う。

「警備関係では特に異常は報告されておりません。相変わらず冒険者達や観光客で賑わっており、それに絡んだ揉め事ぐらいのものですな。テオドール様のお膝元故、それでも治安は概ね良い方かと」

 ゲオルグがそんな風に教えてくれた。
 これも前に報告を受けた通りだな。賑わいとそれに絡んだ小さなトラブルはあっても、それ以上の異常はなし、と。
 と、みんなと挨拶したり再会を喜んでいると――そこでティエーラがすっと一歩前に出てきた。そうして、俺の頬に触れる。

「え、えっと?」
「あっちの精霊達は……何やら、随分と荒っぽいようですね」
「ああ。夜の精霊を使役する魔道具を持っている術者と戦ったんだ。それで気配が残ってるのかな?」
「夜の精霊に限らず、全体的な性質も、確かに少し荒っぽいというお話はしていたわね」
「なるほど。そういうことでしたか。コルティエーラが封印されて……そういう荒ぶる精霊は数が少なくなったと思っていたのですが、場所や条件によっては活動が活発化する事もあるわけですね」

 俺とクラウディアの言葉に、ティエーラは納得するように頷いてそんなふうに呟く。そうして静かに微笑むと、傍らに浮かぶ宝珠――ティエーラの半身、コルティエーラと入れ替わるように一歩下がる。

「コルティエーラからあなたに、渡したいものがあるそうです。宝珠に触れてみてください」

 ティエーラの言葉に頷いて、浮かぶコルティエーラにそっと両手で触れる。ぼんやりとした魔力が宝珠から広がって俺の身体を包んでいく。何やら――とても大きな存在が背中を支えているような感覚。
 ティエーラが穏やかさを感じる雄大な力であるなら、コルティエーラのそれは非常に力強く、湧き立つような何か。
 四大精霊王の加護を宿した首飾りが輝きを増していく。

「これは――」
「一時的に、ではありますが、これで陰の性質を持つ者や、荒ぶる子達とも対話や制御がしやすくなるかと。コルティエーラはそういった性質を持つ精霊達にとっては元締めのようなものですからね」

 原初の精霊の半身……。荒ぶる精霊の力か。確かに、あっちの精霊は距離を置いている者もいたしな。

「――ありがとう、コルティエーラ」

 礼を言うと、コルティエーラを宿す宝珠は静かに発光して俺に答えたようだった。

「あちらの状況はどうなのですか? なんだか、大変そうに見えますが」

 フォルセトが尋ねてくる。

「んー。そうですね。やや精霊達の気性が荒いのは間違いないのですが、太守達の協力も得られて、混乱を収めるための道筋もついたかなと」

 魔人が活動していないようで、大規模結界関係があまり発達していないこと等、あちらの状況を掻い摘んで話す。

「魔人達がいない、というのは安心できる材料ではありますね」
「まあ……ショウエンが実はそうだった、とか言われても驚かないけどね」

 シャルロッテの言葉に答える。
 そうでなかったとしても、邪仙ともなれば気合を入れてかからないといけない相手というのは間違いないが。

「原初の宝貝、というのも気になりますね」
「そうね。そのへんも……情報が足りていない気がするわ」

 オルディアがそう言ってクラウディアが目を閉じて頷いていた。

「何にせよ、だ」

 と、テスディロス。

「我らの力が必要な時は、いつでも声をかけて欲しい。仮に敵が魔人であるなら尚の事ではあるな」
「ん。ありがとう、テスディロス」

 礼を言うと、テスディロスはにやりと笑う。
 そうして――。冒険者ギルドのアウリアや工房のみんな、お祖父さん達のところにも顔を出してから、王城セオレムへ向かい、隷属魔法を受けたサイロウ達を受け取って、そうして転移魔法で俺達は飛んだのであった。



「ただいま」
「お帰りなさい、テオ」

 光に包まれ――目を開ければ、そこはシリウス号の艦橋であった。グレイス達は俺とクラウディアが戻ってくるのを待っていてくれたようである。俺達が転移してきたところで、笑顔で迎えてくれた。
 コルリスやティール、リンドブルム、ラヴィーネにベリウス、オボロ。動物組も片手を上げたり尻尾を振ったり挨拶してくれたので、こちらも片手を上げて挨拶し返しておく。

「今、お茶を淹れますね」

 そうしてアシュレイが俺とクラウディアにお茶を淹れてくれる。

「ありがとう」

 礼を言うとアシュレイはにっこりと微笑む。

 ふむ。サイロウ達は拘束用ゴーレムを使って第2船倉に叩き込んでおくか。だが、サイロウ達はゴリョウ達と違って、好き好んでショウエンに従い無差別の破壊工作をしようとするような連中である。斟酌する必要もないし信用も置けないから、あまり自由は与えられないだろう。

 とりあえずは……しばらく大人しくしておいてもらうとしよう。
 蓋をされた状態で梱包されている連中に拘束用ゴーレムの核を埋め込むと――梱包された箱の四隅からゴーレムの足が生えて第2船倉へと独りでに向かっていった。最後に第2船倉に閂をかけるために、カドケウスが梱包された石箱の上にぴょんと飛び乗る。うむ。あれはあれでよしとして。

「日程はこの通り。タームウィルズやフォレスタニアの皆とも挨拶してきたよ。フォレスタニアは異常なし、だってさ」

 そう言って向こうであったことを話して聞かせる。

「みんなも元気そうね」

 ゲオルグやペネロープの話が出たところでステファニアやマルレーンがにっこりと笑う。

「コルティエーラの加護も気になる話ね」
「それは確かに興味があるわ」
「どうだろう。艦橋にまではそんなに精霊も入ってこないんだけど……」

 イルムヒルトが言うと、ローズマリーが興味深そうに頷く。

「何か違いは感じられる?」

 シーラが小首を傾げて尋ねてきたので周囲に目を向けてみる、と。椅子の下の物陰に、体育座りのような体制で潜んでいた黒い靄のような小さな精霊が、こちらに手を振ってくるのが見えた。

「んー。多分……だけど効果も出てるね」

 確か、あの類の精霊には前は興味を持たれながらも怖がられていた、という印象だったからな。コルティエーラの加護はしっかり効果が出ているようだ。
 これなら……環境魔力を取り込むことによる魔力循環の増強も効果が大きくなるかな。
 ともあれスケジュールもできたし、今日はゆっくり皆と過ごして、明日からの仕事に備えるとしよう。
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