「ねーうんこしてもいい? よっちゃん」
「うるさいわねェ。勝手にすればいいじゃん」
良子はほんとうんざりしてならない。だいたい、食事中にそんなこと言うなんてこの人どういう神経してんだろなんて思う。
「ねーねーよっちゃーん。うんこしたーい」
「もう! 食事中にやめてよ!」
「ねーねー」
良子はだんだん殺したろかという気分になってきた。
「うんこしたーい。うんこしたーい」
「勝手にすりゃいいだろが! その前にメシを食え! メシを!」
達郎はさんまをかじりながら、歌い始めた。
「さんまをかじるとうんこが出ちゃうよ。さんまをかじるとうんこが出ちゃうよ」
良子はほんとにほんとにうざかった。こんなんじゃおちおちさんまを食うことができない。
「てめえ! たっちゃん! いいかげんにしろよ。やめろ。やめろ」
「みそ汁飲むとしっこが出ちゃうよ。みそ汁飲むとしっこが出ちゃうよ」
良子は殺すことに決心した。
まず、達郎にごはんをお椀ごとぶつけて、ひるんだすきにカウンターを決めることにした。
のだが、急に達郎が立ち上がった。
「な、なんなの!」
「うんこ出ちゃう」
「は?」
達郎は立ったままお尻を押さえてる。
「うんこが出ちゃう。うんこが出ちゃうよ」
「うわ。こら。てめえ。たっちゃん。よして。こんなとこで。やめて」
遅かった。
ぶりぶりぶり〜。
食卓はしばし静寂に包まれた。
そして、しばらくした後、達郎が立ったままわんわん泣き出した。
「わーん。わーん。うんこが出ちゃったよう。うんこが出ちゃったよう」
「ああ、もう。早くズボン脱ぎなさい」
「わーん。わーん」
達郎は明日国会で首相就任後初の所信表明演説をする。だから緊張していたのだ。しょうがないよ。(了)
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