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不仁不義の悪人

永禄十四年(1571年)  九月上旬      近江国高島郡安井川村    朽木藤綱




「久しいな、こうして兄弟四人、車座で飲むのは」

「某と兄上は一緒に飲む事が有りますが下の二人は結構忙しく飛び回っていますからな、なかなか」

直ぐ下の弟、成綱が首を横に振った。四人で車座に座り酒を飲む。各自の前には杯と徳利、漬物が置いてあるだけ。昔はこうしてよく飲んだ。


「已むを得ませぬ。街道の整備や買い付け、如何しても外に出る事が多い。京に居る頃は四人で良く飲みましたな」

「真に、しかし愚痴の多い酒だったような気がします。美味い酒では有りませんでした」

四人で顔を見合わせた。三人の顔に笑みは無い、己の顔にもないだろう。幕府に出仕している頃は先が見えず辛い日々が多かった。一口酒を飲んだ、今は素直に美味いと思える。


「上洛か、まさかこんな日が来るとは……」

「不思議な気がします。兄上は信じられますか」

成綱が儂に問い掛けてきた。他の二人もじっと儂を見ている。

「いや、信じられぬな。六角も朝倉も出来なかった事を朽木が行う。信じられるわけが無かろう」

弟三人が其々に頷いた。信じられるわけがない、それほどまでに三好は大きかった。今でも大きい。茄子の漬物を一切れ口に運んだ。箸は無い、手掴みだ。


この十年、世の移り変わりは激しい。六角、朝倉、浅井は滅びその領土は朽木の支配地になっている。朽木の領土は北陸から東海にまで及ぶ広大なものになった。そして越中から関東は上杉、濃尾は織田、いずれも朽木とは親しい勢力が治めている。殿が朽木の当主になって約二十年、誰が信じられよう。時々これは夢なのではないかと思う時が有る。もう一切れ漬物を口に入れた。


「あの当時、朽木が今の身代で有ったら如何だったでしょう?」

ぽつんと輝孝が呟いた。視線は杯に落としたままだ。義輝様の事を考えているのだろう。輝孝は義輝様と年が一番近かった。

「朽木の力を使って三好を打ち破り上洛を果たしただろう。だがその後は……」

皆で顔を見合わせた。


「義輝様は朽木の力を抑えにかかったであろうよ」

「しかし義輝様は殿を信じておられました」

「左衛門尉、義輝様がそう思われても周囲は如何思ったか……。危険と思ったのではないかな」

直綱の言葉に輝孝が顔を曇らせた。足利将軍家の力は弱い、幕府が諸国に影響力を発揮しようとすれば権威を保たなければならぬ。その為には突出した存在は邪魔だ。輝孝が盃の酒を一息に飲み干した。そしていささか乱暴に自ら酒を注ぐ。


「此度も同じでしょうか?」

輝孝が問い掛けてきた。

「同じだろう、畠山、北畠の事をみれば分かる。明らかに朽木の力を抑えようとしている。そして義昭様は義輝様ほど殿を御信じになられていない」

「殿はその辺りの事を良く理解しておられる。上洛に乗り気になれぬのも無理は無い。碌な事にならぬと見ているのだと思う」


弟達の声は暗い。殿は先日の大評定で不本意だとはっきり皆に言った。あれは上洛の時期だけではあるまい、上洛そのものに不満を持っているのだと思う。殿が上洛を行うのは三好を追い払う、それが狙いだ。上洛という名分で松永、畠山を動かして三好の力を分散させようとしている。そして波多野、一色の動きを抑えようとしている。義昭様の京への帰還など何処まで本気で考えておられるか……。


「兄上、もし上洛が上手く行けばその後の幕府の体制は?」

成綱が茄子を食べながら問い掛けてきた。

「殿、三好孫六郎殿、松永弾正殿、畠山修理亮殿が義昭様を支える事になるのだろうな。それに尾張の織田、越後の上杉が如何絡んでくるか……」

我ながら語尾が弱い。果たして殿が義昭様を支えるだろうか? 殿は義昭様、いや義輝様御存命の頃から幕府に不信を抱いておられた。その事は折に触れて隠す事無く口にされている。


「身を引かれるのではありませぬか? 大体上洛後、義昭様は殿に如何なる恩賞を与えられるのです。殿の力を抑えようとするなら形だけの恩賞になるのは明白。殿はそのような事に騙される方では有りませぬぞ」

直綱の言う通りだ。殿は幕府のやり様を理由に幕政参加を避け幕府はむしろそれを望むかもしれない。だがその後に来るものは……。


朽木大膳大夫基綱。我らの長兄朽木宮内少輔晴綱の一人息子。近江の弱小国人衆に過ぎなかった朽木家を八カ国の支配者にした朽木家の当主。武将としても大国の領主としても比類なき力量を持っている。我ら四人にとっては甥ではある。だがどちらかと言えば甥と言うよりも主君という認識が強い。有能で時として冷酷な主君。


義昭様が殿を抑えるために使った畠山と北畠はどちらも排除された。北畠は義助様に通じたらしいがそれは殿が義助様の将軍宣下を認めた後だった。北畠は上手く嵌められたのではなかったか。だとすれば義助様将軍宣下は何かと朽木を抑えにかかる義昭様への意趣返しであり北畠への罠だった可能性が有る。


「しかし朝廷がそれを認めましょうか? 朝廷は殿を頼りにしておりますぞ」

「それが原因で朝廷と幕府の間が険悪になるやもしれぬ」

「幕府と朽木が対立する事も有り得よう」

弟達が懸念を口にした。皆深刻そうな表情をしている。


「或いはまた幕府から我らに文が来るようになるかもしれぬ」

幕府と繋がりの有る親族、家臣を使って大名を自分達の都合の良い様に使おうとする、幕府の常套手段だ。これまでにも何度も文が来た。その文は全て殿にお渡ししている。

「間違えるなよ。我らは朽木家の親族であり家臣なのだ、もう幕臣では無い。殿への御奉公を専一に考えよ」

三人が神妙な表情で頷いた。また鬱陶しく騒がしい日々が来るかもしれない。




永禄十四年(1571年)  九月上旬      近江国高島郡安井川村  清水山城  朽木惟綱




「戦支度が進んでおりますな」

「うむ、そうだな」

気の無さそうな返事だ。

「お気が進みませぬか?」

「そんなところだ。手伝い戦は気が進まぬ」

主、朽木大膳大夫が太い息を吐いた。やれやれではある。


「小夜も雪乃も段々腹が膨らんできた。年内には子が生まれる。また出産には立ち会えんだろう。酷い父親だ、生まれてきた子供の誰一人として出産に立ち会っていない。小夜も雪乃も如何思っているか……」

「御方様も雪乃殿も殿の御気持ちは分かっておいででしょう。決してお二人を軽んじてはいないと。大体殿は新たな側室を迎えておりませぬぞ」

「側室の件は面倒なだけだからだ」

いかんな、話を変えた方が良かろう。それにしても兄上が御存命なら殿を上手く宥められたであろうに……。


「ところで、今日は一体何の御用で?」

「そうだな、大叔父上相手に愚痴っていても仕方ないな。今日来てもらったのは他でもない、土佐の件だ。土居近江守家忠という男から書状が届いた」

「土居近江守! なんと、土佐一条家では筆頭の老臣ですぞ。頭を丸めていて宗珊という法名が有ります。宗珊は何と?」

「長宗我部から頻りに文が来ているらしい。その事で少将から疑われていて困っていると書いて来た」

殿が書状を手文庫から取り出しこちらに差し出した。それを受け取り中を改めると確かに殿の言った事が書いてある。


「信じられませぬな。伊賀衆の調べでは宗珊は一条家の忠臣、裏切るなど有り得ませぬ。少将様も何を考えているのか」

殿が“ふむ”と鼻を鳴らした。

「その男、人望が有るのかな、大叔父上」

「有りますぞ、殿。智勇兼備の名将で宗珊が健在な間は一条家も安泰と言われる程の人物。当家を頼ったのも宗珊の考えだとか。裏切るなら当家を頼ろうなどとは言いますまい」

殿が少し首を右に傾けた。考える時の癖が出た。殿の考えを待とう。


「少将は歳は二十代後半だったな」

「はい」

「……大叔父上、少将は信じたのではなく信じたいのではないかな。人望のある宗珊が邪魔になった。そうは考えられぬか?」

「……」

「筆頭の老臣という事はこれまでにも何度か少将を諌めているのだろう。それが五月蠅くなった、我慢出来なくなった、何時までも子供扱いするなと思った。如何かな?」

「なるほど、自分が思う様に一条家を動かすには宗珊が邪魔だと。だから裏切ったと信じたいと」

殿が“うむ”と言って頷かれた。有り得るやもしれぬ。


「長宗我部宮内少輔の狙いも宗珊の寝返りでは無く少将に宗珊を誅殺させる事だろう。無二の忠臣を誅殺したとなれば家臣達の心が離れる。そうなれば調略もし易い。一条家はあっという間に崩壊しよう」

「なんと」

思わず声が出てしまった。殿が頷かれた。


「おそらく宮内少輔は少将は頼りない、などという噂を流しているのではないかと俺は思う。或いは一条家内部にそういう評価が有るのかもしれん。何年か前に伊予に攻め込んで負けておろう。それが影響しているとも考えられる。宮内少輔はその辺りを利用しようと考えたのではないかな」

長宗我部宮内少輔、そこまで考えての謀略か。なんとも恐ろしい事を考えるものよ。


「少将様に忠告なされては? 殿からの忠告なら受け入れましょう」

殿が首を横に振った。

「どうかな、むしろ反発するのではないかな。宗珊は殺されんかもしれんが発言は悉く無視されよう。それでは今度は宗珊が反発する」

「それは……」

「無能ではない様だが堪え性が無いとなると厄介だ。何でも自分ならと考えかねん、そして自分の思う様に動かそうとする。それを邪魔する者は敵だ。長宗我部宮内少輔はその辺りを見抜いて仕掛けているのだろう」

殿が“厄介な事になった”と吐いた。表情が渋い。


「殿、如何なされます?」

「さてな、手が浮かばん。調略で主君と臣下の間を切り裂くのは難しくは無いが修復するのは簡単ではない。どこかでしこりが残る」

「宗珊を隠居させては?」

「それでは少将を止める者が居なくなる」

「しかし少将様に殺されるよりはましでは有りませぬか?」

殿の表情が更に渋くなった。


「いっそ少将を隠居させるか。倅を当主に据え宗珊に後見させる。その方が良さそうだが……」

「それはまた思い切った事を」

「反対かな、大叔父上」

「いえ、荒療治では有りますが良き御思案かと思います。しかし少将様が納得されるかどうか。実権を離さぬのでは意味が有りませぬ」

殿が大きく息を吐いた。


「こちらで少将の身柄を預かるほかあるまい。武田の例も有る」

「なるほど、しかし少将様の奥方は大友の出ですが」

「面倒な事だ、……取り敢えず宗珊を此処へ呼ぼう。俺の考えが間違っているという可能性も有る。話を聞いてそれで如何するか決めよう」

「どのようにしてここへ? 口実が要りますぞ」

また殿が大きく息を吐いた。


「上洛戦に参加させよう。宗珊に兵二十人程を付けて寄越せとな。後々長宗我部との戦いに於いて幕府の印象が良くなるとでも少将に伝えれば嫌とは言うまい。兵糧はこちらで用意するから心配するなとでも言えば良かろう」

「某は伊賀衆に少将様と宗珊の関係を調べさせましょう。少し長宗我部の事に比重をかけ過ぎたようです」

「頼む、宗珊には俺から使者を出す。必ずここへ来いとな」

「はっ」


退出しようとすると殿が“大叔父上”と声をかけてきた。

「なかなか上手く行かぬな。来月の頭には土佐に向けて船を出す。琉球へは十一月には着くだろう。上手く行ってくれれば良いのだが……、そうでなければ何のために土佐に手を出したのか分からなくなる」

「そうですな」

「何か有ったら直ぐに報せてくれ。上洛が上手く行けば一条権大納言とも土佐の件で話をするつもりだ」

「承知しました」


上手く行かぬ、殿の沈痛な表情に胸が痛んだ。八カ国の太守となっても心安らぐ事が無い。伊勢の海を使って交易を広げようとしておいでだが土佐一条家が衰退すればそれにも影響が出る。少将様が殿の出兵中に無謀な戦をしなければ良いのだが宗珊が居らぬとなれば果たしてどうなるか……。場合によっては伊賀衆を使う事も考えねばなるまい。




永禄十四年(1571年) 十月上旬    近江国滋賀郡坂本村  坂本城 朽木基綱




朽木軍五万が坂本に集結している。ここで最後の軍議が開かれる事になった。大広間に大勢の武将が集まっている。北は能登から南は伊勢。志摩の海賊衆は既に紀伊水道で雑賀衆の水軍、商船を攻撃している筈だ。皆興奮している、無理もない。地方の大名が上洛なんて何年振りだ? 少なくとも二十年以上前だな、俺が生まれてからは無い筈だ。ちなみにこの場には土居宗珊もいる。土佐からギリギリで間に合った。


「三好軍ですが紀伊からは兵力を呼び寄せられなかったようです」

重蔵の報告にどよめきが起きた。当然だな、紀伊水道では九鬼、堀内が暴れている。海岸沿いの国人衆は外に出るのを嫌がっているのだ。それに紀伊の東には畠山が居る。畠山は今頃三好に奪われた紀伊の西半分に攻勢をかけているだろう。


「それと摂津では池田、伊丹がこちらに付きました。さらに丹波の波多野、丹後の一色も御味方に付いた事で三好勢は京の北方からも圧力を受けております」

摂津の池田、伊丹は三好に付けと言ってやったら慌てて朽木に付きますと言ってきた。どうやら恩賞の条件でも釣り上げたかったんだろう。俺が切り捨てた事で驚いた様だ。池田、伊丹を始めとして荒木、中川、摂津の国人衆は叛服常無い裏切りの常習犯だ。能力が有るのは認めるがとてもではないが信用は出来ない。今回は味方に付くとの事だが次はどうなるか。怪しいものだ。


だが摂津の池田、伊丹が味方に付いた事で朽木が圧倒的に優位だと周囲は判断したらしい。丹波の波多野、丹後の一色も義昭を支持すると旗幟を鮮明にした。もっとも波多野も一色も本気で三好と遣り合う気は無いんだろう。山城と丹波の境で睨みあっている。だが三好の兵力を引き付けてくれているんだから十分だ。問題は本願寺だが今の所動きは無い。顕如が一体何を考えているのか……。


「更に伊賀衆、甲賀衆の働きにより三好軍のかなりの兵が大和方面に引き寄せられています。現在朽木軍に対するのは山科に居る約三万となります。敵の大将は三好豊前守実休、それを三好日向守長逸が支えております」

大したもんだよ、波多野、一色に一万。奈良に三万、朽木に三万をぶつけてきた。百姓兵だけでは足りなくて浪人を雇い入れての決戦だ。流石山城、河内、和泉、摂津という先進地帯を押さえるだけの事は有る。金が有るな。おまけに三好豊前守実休、三好日向守長逸、敵は本気だ。兵数で優位だが油断は出来ない。


「聞いての通りだ。三好軍は周囲から攻められる不利な状況にある。我らの正面にも三万を配するのがやっとの状況だ。だが油断するな。三好はこれまで何度も苦境を切り抜けて畿内の覇者になったのだ。ここ一番での勝負強さは他者の追随を許さぬものが有る。気を弛めるな! 死力を尽くせ! 三好を京から追い払うのだ!」

“おう”という喊声が上がった。

「出陣だ!」

立ち上がって大広間を出る、皆が後に続いた。大将の役やるのも疲れるわ。




永禄十四年(1571年) 十月上旬    山城国宇治郡山科   朽木基綱




山科に朽木軍、三好軍合わせて八万の兵が集まった。距離は未だ二キロ程離れているらしい。山科で戦うのは二度目だ。前回は両軍合わせても三万程だったが今回は倍以上だ。歴史では第一次山科の戦いは小手調べ、第二次山科の戦いは本気、そう書かれるんだろう。前回も本気だったんだけどな。


副将はイケメン明智十兵衛、まだちょっと違和感が有る。以前は五郎衛門と弾正だったからな。この二人に比べると少しインテリ臭が有る。嫌いじゃないんだよ、そういうの。だが慣れるまでもう少し時間がかかるだろう。その十兵衛は普段と変わらない姿を見せている。心強いね、流石だと思う。お、重蔵が来た。物見に出した八門が戻って来たか。


「殿、三好軍は三十町程離れた所に陣を敷いております」

三十町というと三キロ弱だな。

「そうか、こちらを待ち受けようと言うのだな」

「はっ、殿、手の者が少々気になる事を報せてきました」

「……気になる事?」

そんな言い方をしたら気になるじゃないか、重蔵。十兵衛、上野之助達が一体何だ? と言うような表情をしている。


「三好軍は足軽が主力で騎馬の姿は殆ど見えないと言っております」

「恐れる事は有るまい。騎馬ならともかく足軽では鉄砲隊の餌食だ」

十兵衛の言葉に皆が頷いた。その通りだ、鉄砲隊を潰すには遮二無二距離を詰めて隊の中に押し入り混乱させる必要が有る。つまり距離を詰める速さが要る。足軽ではその速さが得られない。しかし確かに気になるな、朽木相手に足軽主体? 百戦錬磨の三好らしくない。


「その足軽ですが妙な物を持っているそうです」

妙な物? 皆が顔を見合わせた。重蔵も困惑しているところを見ると判断が出来ないのだろう。

「竹を集め束ねた物を持っているとか」

皆が困惑している。だが俺には分かった。三好は竹束を用意したらしい。なるほど、足軽主体なわけだ。


「その報告した者から(じか)に聞きたい、呼べ」

「はっ」

直ぐに若い男が入って来て片膝を着いた。訊き辛いんだよな、俺も腰を下ろして目線を合わせた。八門の男が吃驚している。ちょっと楽しいけどヤンキー座りは甲冑姿だと結構辛いな。

「敵の陣中に入ったか?」

男が慌てて首を横に振った。重蔵が“これ! ちゃんと答えぬか!”と叱責したが俺が手を上げて止めた。


「竹を束ねたと言うが大きさはどのくらいだ?」

「されば高さは六尺、幅は一尺程かと。厚みは竹四本分程と見ました」

竹四本分、結構厚みが有るな。一尺は三十センチだから人間一人が隠れるくらいの大きさは有る。やはり竹束か。

「重そうだったか?」

「さあ、持ち運びに苦労しているようには……」

「見えなかったか」

「はっ、振り回している者も見受けました」

となると竹の中に粘土や石を入れているわけではないらしい。厚みで鉛玉を防ぐ、機動性重視か。何時かは来るとは思っていたが厄介な物を……。


「何人ぐらいそれを持っている?」

「……はっきりとは分かりかねますが」

「構わん、大体で良い」

「……全軍の三割以上は所持しているかと」

「約一万か」

「はっ」

「御苦労だったな、良く分かったぞ。下がって休め」

肩を叩いて労うと嬉しそうな表情を見せて下がっていった。流石は三好、手強いわ、勝てるかな? 自信が無くなってきた……。



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