長島
永禄十三年(1570年) 三月上旬 伊勢国桑名郡長島村 願証寺 証意
「証意殿、国人衆達への呼び掛けは?」
「上手く行きませぬな。文は受け取るが返事は無い」
愚僧が答えると長井隼人正道利が面白く無さそうに顔を歪めた。
「朽木を懼れている……」
「如何にもその通り」
隼人正が息を吐いた。
「あの北畠が何も出来ずに降伏しましたからな、やはり影響は大きいか」
「皆うまうまと騙されました。まさか商人に米を買わせるとは……、そんな事は誰も考えませぬ」
他の大名達とは違う、朽木には何を仕出かすか分からぬ怖さが有る。叡山を焼き払い越前では根切りを行った。苛烈極まりない。伊勢では年に二度の遠征、そして米の買い占め。国人衆達も北畠もまんまと騙された。国人衆達が懼れるのも単純な力では無くその何を仕出かすか分からぬ怖さであろう。
「長野城、安濃津城を改修していると聞きますが」
「長野城は改修ですが安濃津城は改築です。一度破却して造り直している。余程に大がかりに造るようです」
「……」
「鳥屋尾石見守が大膳大夫に何故かと訊いたようです。北畠一族は降伏した、備えの城など不要の筈、敵視するのは理不尽だと」
隼人正が面白そうな笑みを浮かべている。
「それで、大膳大夫は何と?」
「長野から入れた側室に強請られたと」
隼人正が笑い出した。
「ぬけぬけと」
「真、ぬけぬけと言ったものです。唖然とする石見守に側室の愛らしさを楽しそうに延々と話し続けたとか。周りに控えていた家臣達は耐え切れずに噴出したと聞いています」
益々笑い声が大きくなった。……笑い終った。
「鳥屋尾石見守が抗議したのは拙かったかもしれませぬ」
「同感にござる」
「却って朽木に警戒心を募らせたと思います」
「如何にも」
長井隼人正が頷いた。何もせぬ方が大膳大夫の心に油断を生じさせたやもしれぬ。今となっては手遅れだが……、裏目に出た。
「それにしても十歳の娘に強請られて城造りとは。……朽木大膳大夫、女に弱いという話が有りましたかな」
「愚僧は聞いた事が有りませぬ」
「某もござらぬ、人を喰った男だ」
また二人で笑った。全くだ。未だ二十歳を過ぎたばかりだというのに朽木大膳大夫、強かさばかりを感じさせる。女に弱いなど無縁の男であろう。
「良くない報せは他にもあります。大湊の報せによれば北畠の一族の中には朽木に逆らうのは得策ならずと言い出す者が現れたとか」
「なんと! それは一体何者にござる」
隼人正が身を乗り出した。
「驚かれるな、隼人正殿。その仁の名は北畠右近大夫将監具房、北畠の当主」
「まさか……」
身を乗り出したまま呆然としている。
「元々父親の権中納言と上手く行っておりませぬ。権中納言の反朽木感情は強い、それに対する反発からかもしれませぬな……」
「……」
隼人正が首を横に振りながら大きく息を吐いた。右近大夫将監は酷く肥えた男で武辺には無縁の男らしい。その所為で剣の達人でもある父親の権中納言には疎んじられていた。北畠右近大夫将監が親朽木に転ずるとなれば家臣達の中にも親朽木を唱える者が出よう。仕掛けるのは早い方が良かろう、だが……。
「大湊にも同じ事が起きております」
「……と申されると」
「安濃津。城の改築だけでなく町造り、湊の整備も大規模に行っているようです。今のままでは大湊は安濃津に利を奪われる、そうなる前に大膳大夫に近付き関係を改善すべきだという者が会合衆の中に現れました……、商人は利を奪われるのを何よりも嫌がる。北からの荷が安濃津で止まる事を怖れているのでしょう」
隼人正が唸った。
「証意殿、安濃津には九鬼が居りましたな」
「いかにも、朽木、長野の援助を受けて水軍を整えています。志摩攻めの準備で有る事は衆目の一致するところ」
「志摩の海賊衆は?」
「怯えております、北畠はもう頼りになりませぬし安濃津に居る九鬼を攻める事も出来ませぬ。やれば朽木と長野を怒らせましょう。志摩に攻め込む口実を与えるだけの事。九鬼が攻めて来るのを待つしかありませぬ。そして撃ち払う、分の悪い戦です」
隼人正が首を横に振っている。
「朽木に降伏はしませぬか」
「分かりませぬ、しかし難しいでしょう。志摩の海賊衆は九鬼を追放しました。今降伏すれば九鬼の下に付く事になります。彼らは九鬼の報復を恐れているのです」
「……」
「それに朽木も心底の定かならぬ志摩の海賊を何処まで信用出来るか」
「やれやれですな」
朽木は伊勢攻略前に志摩の海賊衆に声をかけた。だが当時の海賊衆はそれを無視、応じたのは九鬼だけだったと聞く。海賊衆にしてみれば朽木の伊勢攻略が一年で終わるとは想像も出来なかったのであろう。
「勝てますかな、志摩の海賊衆は」
隼人正が窺うようにこちらを見ている。思わず目を伏せた。
「難しいと思います。安濃津では南蛮船も建造しています」
「真ですか?」
隼人正が目を瞠った。
「はい、敦賀、若狭から人が来ているようです。大筒、鉄砲も朽木から運び込まれています。九鬼は荒くれ者揃いの海賊衆でも一際気性の荒さで有名な男ですが大膳大夫には心服しています」
「……」
「大湊で朽木に味方しようという人間が出たのも九鬼の存在が有ります。九鬼が志摩に戻り敵に回ればどうなるか。大湊の商人は大きな打撃を受ける事になるでしょう」
「厄介な男ですな、大膳大夫も、九鬼も」
隼人正が嘆息を漏らした。
確かに厄介な男では有る。朽木は伊勢攻略後、大湊には何も要求せずに近江に戻った。その事で大湊は朽木を甘く見た。だが今ならば分かる。朽木は大湊を味方にしようとも説得しようとも考えていない。朽木は大湊を屈服させる事を望んでいる。そして着々と手を打っている。いずれその手は山田、宇治、桑名にも及ぶであろう。
「気性の激しい短気者、歳も若い故直ぐにも攻めてくるかと思ったのですが……」
「来ませんでしたな。城造りに街道の整備」
「嫌らしい事をします、少しずつこちらを締め上げて来る。国人衆達の反応が鈍いのも已むを得ませぬ」
「それだけこちらを怖れているとも言えましょう」
「だから怖いのです」
最後は呟く様な口調になった。長島を、いや伊勢を冷たい目で見据えている。気性が激しいのではない、むしろ冷酷で計算高いのだ。叡山を焼いたのも根切りも熱い感情ではない、冷たい計算から出ている。
「証意殿、そろそろお心を決められては?」
「兵を起こせと? しかし勝てましょうか?」
愚僧が問うと隼人正が首を横に振った。
「分かりませぬな。しかし時が過ぎれば勝ち目は小さくなりますぞ。国人衆の事は我らが動く事で同調する者が出る事を期待するしかありますまい。それに三河の事も有る。このままでは座したまま死ぬだけでござろう」
「三河ですか……」
愚僧の呟きに隼人正が頷いた。
三河では織田、徳川連合の前に一揆勢は劣勢に立たされている。伊勢の国人衆が動かぬ理由にはそれも有ろう。そして三河の一向一揆が鎮定されれば織田、徳川の連合軍が朽木に協力する可能性も出て来る。そうなれば国人衆は動かぬ。我らにも到底勝ち目は無い……。決断の先延ばしは敗北でしかない。溜息が出た。
「何か気にかかる事でも?」
「……三好の事」
「朽木は共通の敵、動いてくれましょう。戦は仕掛けずとも近江に圧力をかけてくれればかなりの兵を京に足止め出来る筈」
「そうならないかもしれませぬ」
隼人正が訝しげな表情をした。
「三好との間が思わしくないのです」
「どういう事にござる」
「紀州」
隼人正が“紀州”と呟いた。どうやら分からぬようじゃ。
「畠山との戦いに勝ち三好が紀州の西半分に勢力を伸ばしました。だがその地は我ら真宗の教えを信じる者が多い地でも有るのです」
「……つまり紀伊を巡って本願寺と三好家で争いが生じかねぬと?」
隼人正の声が掠れていた。
「そこまでは言いませぬが三好が気にかけているのは間違いないところ。御上人様からの文にも懸念が記されていました。豊前守殿も気にかけています」
「豊前守殿? 下間殿までが? しかし朽木は……」
「隼人正殿、良く御聞きなされ」
「……」
「亡くなられた義輝様が最も信頼されたのが朽木でありました。その所為で三好と朽木はここ十年以上敵対関係に有ります。ですが朽木と三好が戦ったのは一度だけです。畠山とはしばしば戦った三好が朽木との戦は避けております。そして朽木が三好を義輝様を弑したと非難したとは聞きませぬ」
隼人正の顔が強張った。
「まさか……」
「分かりませぬ。ですが三好は京を支配下に置き朽木は京に強い繋がりを持ちます。両家の関係がどのようなものか、本当の所は見えませぬ」
蒼白、隼人正の顔は強張ったまま蒼白になっていた。
「今、三好と本願寺は協力関係に有ります。隼人正殿は御存じないやもしれませぬが三好と本願寺は昔戦になった事が有るのです。かれこれ四十年程前になりましょう。その折本願寺は三好豊前守、安宅摂津守兄弟の父、筑前守元長殿を自害に追い込みました。凄絶な最後であったと聞いています」
「……」
「お分かり頂けましたか、隼人正殿。三好にとって朽木は敵かもしれませぬ。だが三好が本願寺を恨んでいないと言えましょうか? そして朽木と本願寺は不倶戴天の仲、三好が朽木をどのような眼で見ているか。朽木が三好をどのような眼で見ているか……」
隼人正がごくりと喉を鳴らした。
「……三好は当てにならぬと」
「いえ、当てには出来ぬと思った方が良いと考えています。その上で如何するか……。御上人様からは戦を何時起こすかは自由に決めて良いと御許しを得ていますがどうにも踏ん切りが付きませぬ。余りにも分が悪い」
「……皆を集めましょう」
「皆を?」
驚いて訊き返すと隼人正が頷いた。
「戦は早い方が良い、その事を話し皆が同意したならそのまま軍議へ」
「軍議ですか」
隼人正が厳しい表情で愚僧を見ている。確かに時を潰しては勝算が薄くなる。……待っていたのかもしれない、誰かが背を押してくれるのを。
「戻れませぬよ」
「戦とはそういうものにござる」
「……そうですね、皆を呼びましょう」
隼人正が一礼して立ち上がった。皆を呼びに行くのだろう。戦の時が近付きつつあると思った。
永禄十三年(1570年) 三月上旬 近江国高島郡安井川村 清水山城 朽木基綱
暦の間、塩津浜城でも清水山城でも俺の執務室はそう呼ばれている。理由はカレンダーの様なものが置かれている所為だがこのカレンダー、今では評定の間にもあるし各奉行の御用部屋、いわば執務室にも有る。それどころか綾ママ、小夜、雪乃、鈴の部屋にもある。要するに清水山城の彼方此方に有る、便利なのだ。その内これを作って売り出すかとも考えている。しかしこの時代は太陰暦だからな、閏月とか有って面倒なのだ。如何した物か。
暦の間には執務に必要な物が揃っているんだがそれとは全く関係の無い物も有る。壺だ、大きな壺が二つ有る。何故暦の間に壺が有るかと言うと俺の部屋に置くと竹若丸が壊しかねないからだ。子供らには暦の間と評定の間には入ってはならんと言ってある。ここなら壊される心配は無い。
二つの壺は良く似ている。一つは織田焼、もう一つは珠洲焼。織田焼は越前、珠洲焼は能登だが製造法は一緒だ。釉薬を塗らずに焼く。不思議なんだよな、越前と能登、その間の加賀には焼き物は無い。製造法が一緒だから元は一つで何処かで分かれたんだと思うんだが加賀には良い土が無かったのかな。それとも海を使って技術者が移動したのか。珠洲焼は能登半島の最北端で作られている、想像してみると楽しい。
家臣達は俺の事を焼き物好き、壺好きと笑っている。その通りだ、殖産興業の為、などと言うつもりはない。仕事で疲れた時はこの壺を見るとホッとする。なんとも素朴な感じがして良い。壺を磨くと更に愛おしさが増す、楽しいんだ。今も磨いているが楽しい。そんな俺が皆は可笑しいらしい。連中だって俺から分けて貰って喜んでいるんだけどな。御倉奉行の荒川平九郎は御用部屋に置いて時々磨いているし農方奉行の長沼新三郎は公務で越前に行ったときに織田焼の茶碗を買い求めている。朽木家はちょっとした焼き物ブームだ。織田も珠洲も大儲けだ。
能登は少しずつ落ち着いてきた。随分と混乱したからな、税を下げ関を廃止した事で大分暮らし易くなったようだ。殖産奉行の宮川又兵衛は雪が融けたら能登に行くと言っている。何か売れるものは無いか探すと言っているが狙いは海の魚を食いに行く事だろう、或いはカニか。琵琶湖の鮒寿司は食い飽きたと言っていたからな。こいつは結構グルメなのだ。
俺は紙に記して記録しておけと言っている。いずれグルメ旅行記として出版すればそれだけで観光客が来るだろう。それだって立派な殖産興業だ。朽木は関が無い、旅行し易い。観光ビジネスで地方の活性化だ。父親の新次郎は不満そうだが本人はその気になっている。宮川又兵衛は日本初のグルメ旅行者として記憶されるだろう。日本史にも名前が載るに違いない。頑張れ、応援するぞ。
族滅したと思われていた温井と三宅の生き残りが居た。両家とも娘が一人ずつだ。能登が安定してようやく名乗り出てきた。俺が信用出来るか疑っていたらしい。歳は温井の娘が八歳、三宅の娘が六歳。それぞれ家臣に匿われていた。この二人、父親が兄弟なので従姉妹になる。鈴も含めて綾ママに養育を頼んでいるがいずれは婿を取らせて家を再興させてやろうと考えている。婿を探してやらないといかん。……俺、父親みたいだな。
能登が落ち着き若狭、越前、加賀も落ち着いている。南近江も徐々に掌握出来てきたと思う。伊勢を除けば朽木領内は安定していると言って良い。だが問題が無いわけじゃない。越前、加賀は一向一揆の支配下に入ったため他宗の寺や神社が軒並み打ち壊された。一向一揆って排他的なんだよ、なんでも壊してしまう。そして一向一揆の寺は俺が叩き潰した。というわけで越前、加賀は極端な寺不足、神社不足に陥っている。
つまりだ、領民達が葬式やお参りをするのも簡単に出来ないという事だ。こいつは問題が有る。俺が寺嫌いだから不便な思いをするなどと思われてはかなわん。ということで今朽木家は本願寺系列以外の仏教、神社を越前、加賀に誘致、或いは再建している。特に越前、加賀は白山信仰があるから加賀の白山比咩神社、越前の平泉寺白山神社を率先して再建した。
寺の方は曹洞宗、臨済宗、それと浄土真宗でも本願寺と敵対する宗派に協力を頼んだ。勿論叔父の尭慧、仏光寺経範も協力してくれた。皆に朽木仮名目録に従い一切政治的な活動はしないと誓って貰った。評定の度に裁可と印判状を造るので大変だ。次の評定でも同じだろう。越前と加賀は建築ブームだ。大工とか佐官が近隣の国からやってきている。そのまま居ついてくれないかな。
でも坊主とかって油断がならないんだ。御爺の葬式も尭慧の叔父が自分達でやりたいなんて言い出した。なんで浄土真宗で葬式やるんだよ。朽木家はな、曹洞宗なんだ。代々朽木の興聖寺が菩提所だ。御爺もそこに眠るし俺もそこに眠る。朽木の者としてな。いかん、壺はもっと丁寧に扱わないと。
曹洞宗は良いんだ。穏やかで攻撃的じゃないから。政治的な動きも無い。地方の武家に人気が有るのも安心感が有るからだ。興聖寺は越前、加賀でも協力してくれている。これからも大事にしないと。臨済宗は南近江の永源寺が協力してくれた。俺に協力する事で関係を強化したいんだろう。望むところだ、南近江の国人衆も喜ぶはずだ。
問題は伊勢だ、伊勢の状況は相変わらず良くない。願証寺は積極的に北伊勢の国人衆に使者を送っている。そして本願寺から長島への援助も相当なものだ。長島には本願寺の武将だけではなく美濃一色氏の遺臣が結構加わっている。本願寺からは下間豊前守頼旦、下間讃岐守頼成。一色家からは長井隼人正道利、日根野備中守弘就。そしてここに伊勢の国人衆が加わるのだろう。信長の三河一向一揆の制圧が終わればそこの残党も加わるに違いない。厄介な相手だ、壺を磨いていても溜息が出る。
長島の厄介なところ、いや伊勢の厄介なところは公界が多すぎる事だ。公界と言うのは大名や国人領主がかける税を免除されたり、主従制に反する事などの罪から免れたりする事、これは無縁と呼ばれているんだがこの無縁が保障される場所を指す。伊勢で言えば大湊、山田、宇治、桑名、松坂だ。いずれも伊勢国内での有力都市と言って良い。そしてこの公界と長島が親密な関係を結んでいる。
彼らを長島と結びつけた物、それは何か? 簡単だ、利だ。史実でもこの世界でも本願寺は長島を非常に積極的に支援している。俺はこの世界に来るまでは長島の価値というのは信長の足元に有って本拠地の尾張、美濃、伊勢に対して圧力をかける事、信長の足を引っ張る事だと思っていた。だが違う、それでは軍事的な価値だけしか見ていない。長島の持つ経済的な価値を見落としている。
長島の持つ経済的な価値、それは木曽三川といわれる木曽川、長良川、揖斐川が集まる事に有る。この時代には高速道路も鉄道も無い、飛行機も無い。代わりになる物が川と船だ。木曽三川は中部日本においては物流の大動脈なのだ。転生前の俺はここを見落としていた。その大動脈が長島に集まる。長島に集まった物はそこから積み替えられて海に出る。行先は東なら三河、遠江、駿河。西なら伊勢、紀伊、和泉、摂津だ。
もう分かったと思う。木曽三川が高速道路なら長島は物資の集積港なのだ。大湊、山田、宇治、桑名、松坂等が長島と密接な関係を結ぶのは当たり前だ。そしてその関係は紀伊半島をぐるっと回って雑賀、本願寺に続いている。雑賀にとっても本願寺にとっても大事な物流の線だ。本願寺が長島の維持に必死になるのも当然だし防衛戦に雑賀が参加するのも当たり前だ。
長島と大湊、山田、宇治、桑名、松坂等の関係を切らない限り長島への補給が途切れる事は無い。その為にはこいつらの公界としての権利を取り上げる事が必要だ。そして朽木の支配下に置く。そうでなければ伊勢における朽木の統治権が確立されない。
伊勢長島の一向一揆は厄介ではある。だが朽木の統治権を確立するためにはチャンスだと思う事だ。一向一揆制圧を理由にそれに協力する伊勢国内の公界を潰す。そして伊勢南部に力を持つ北畠一族を文字通り抹殺する。そうする事で伊勢における朽木の統治権は確立される筈だ。……でもなあ、溜息が出るわ。壺を磨こう。