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影響力

永禄十年(1567年) 十月中旬   越前国敦賀郡曙町  氣比神宮  気比雪乃




自室で花を活けていると父、気比憲直が慌てた様子でやってきました。

「如何なされたのです、父上。そのように慌てて」

私が冷やかしても父は取り合おうとしません。

「もう直ぐ大膳大夫様がお見えになる。今先触れが有った」

「まあ」

大膳大夫様が?


「書院にておもてなしする。そなたは大膳大夫様に御茶をお出しせよ」

「焙じ茶で宜しゅうございますか?」

「うむ、大膳大夫様は殊の外焙じ茶を好まれると聞いている。それで良い。その後は次の間に居なさい」

「はい」

次の間? 話を聞いているようにという事かしら。確かめる前に父は部屋を出て行ってしまいました。


最近父は時々私にお客様との御話しを聞かせます。そして如何思ったかと訊ねてくるのです。氣比神宮大宮司としての御自身の判断の材料にされるようですが未だ十五にもならない私の意見が父の判断に影響を与えるのかと思うと少なからず負担に感じます。何度かそれを訴えましたが父は気にするなというだけで取り合ってくれません。それに会う殿方は皆詰まらぬ方ばかり。ついつい私の意見は辛辣になりがちです。でも今日のお相手は大膳大夫様……。


会ってみたい、話を聞いてみたいと思います。これまでにも大膳大夫様は此処を二度訪れています。でも父は私に自室に居るようにと命じ会わせる事は有りませんでした。気性激しく恐ろしいお方、でも新しい物、珍しい物をお好みになり勤王の志、将軍家への忠義の心の篤いお方とも聞いています。一体どんな御方なのか。


大膳大夫様がお見えになられたのはそれから小半刻も過ぎた頃でした。およそ百人程の御家来衆を連れてお見えになったようです。書院には父と大膳大夫様、そしてお供の方が一人。三人分の御茶を用意して向かいました。

「突然の御越し、驚きましてございまする」

父の言葉に大膳大夫様が御笑いになる声が聞こえました。


「許されよ、大宮司殿。戦続きで最近は碌に領内を見る事が出来ぬ。ようやく暇が出来たのでな、若狭から越前を見て回ろうと思ったのだ。ここへはその途中で寄らせて貰った」

「それはそれは、では既に若狭は」

「うむ、見てきた」

領内の見回り? そういえば(まつりごと)にも熱心な方だとか。


「失礼致しまする。御茶を御持ちしました」

襖を開け部屋に入ると若い殿方が父と向かい合っていました。ごく普通の容貌の方、取り立てて目立つところの無い方です。この方が大膳大夫様? ちょっと拍子抜けしました。その後ろには御家来の方、こちらは未だ若いけれど目が鋭くて俊敏そうな感じがします。多分護衛役、でもこちらが大膳大夫様と聞いたら納得してしまいそうな感じがしました。


「娘にございます」

「雪乃と申しまする」

「これは御手数をお掛けする。朽木大膳大夫基綱にござる」

私が名乗ると大膳大夫様が丁寧に応えてくれました。大膳大夫様、御家来の方、父の順で御茶を出すと御家来の方が直ぐに一口飲み、茶碗を大膳大夫様と替えようとしました。毒見? 初めて見ました、本当に有るなんて!


「それには及ばぬ」

「しかし」

「案ずるな、気比神宮は俺の敵ではない。大宮司殿が俺を殺す事は無い。小十郎、その方も偶には肩の力を抜いて茶を楽しめ。御息女の折角の御心遣いぞ、無にするな」

「はっ」

大膳大夫様が御家来の方を窘められ、そして私を見ました。


「お許しくだされよ。大膳大夫、有り難く頂戴致す」

大膳大夫様が御茶をゆっくりと飲みます。

「申し訳ありませぬ、本来ならこちらから毒見を致すべきところ、気が利きませず……」

「いや、こちらこそ不調法を致した」

父と大膳大夫様が互いに謝罪しています。世評で言われるような気性の激しい方には見えませんでした。一礼して部屋を出て次の間に控えます。


「しかし宜しいのでございますか? 大和の足利義秋様は大膳大夫様を頼みにしておられましょう。このような時期に若狭から越前への見回り、義秋様に知られては後々面倒な事になりませぬか?」

「構わぬ。越前、加賀が落ち着かねば西へ兵を向ける等出来ぬ事だ。その事は前回の戦いで義秋様も分かっている筈」

大膳大夫様の声は淡々としていました。


「当分は北に専念する。明年は雪が融ければ関東管領殿と協力して越中、能登に出兵する。もっとも大宮司殿は既に御存じであろうな」

「上杉様が今年は越山されない事は存じております。明年は越中への出兵をお考えだという事も」

越後には氣比神宮の社領が有ります。そこからは上杉氏の動向が大宮司である父に送られてくるのです。


かつては氣比神宮の社領は加賀、越中にも有りましたが両国が一向一揆の国になった時に社領は奪われました。越前に有った社領も一向一揆に奪われましたが越前、加賀が朽木家の支配する国になると大膳大夫様が返して下さいました。もっとも記録に残っており氣比神宮の社領であると確認出来たものだけです。それでも父は感謝しています。


「義秋様の事は心配いらぬ。年内には従五位下左馬頭に叙位、任官される。これで立場は義栄様と五分。少しは義秋様も落ち着くであろう」

「それは……」

「多少銭を使った。先日の勝利も有る、朝廷も無視出来なくなったという事よ」

大膳大夫様が低く含み笑いを漏らしました。怖いです、無視出来なくなったとは誰の事でしょう。義秋様? それとも大膳大夫様? 同じ部屋に居ないのに大膳大夫様の凄味をひしひしと感じました。父の声は聞こえません。多分父は圧倒されているのだと思います。


先日の戦いで大膳大夫様は三好軍と戦い完勝しました。三好軍が敗れる等本当に久しぶりの事です。皆が驚いたと思います。でもそれで終わりでは有りませんでした。裏切った六角氏を滅ぼし甲賀郡を除く南近江を占領したのです。さらに越前に攻め込んだ加賀、越中の一向一揆勢を木の芽峠で根切りにすると逆に加賀に攻め込み加賀を一向一揆から奪いました。余りの凄まじさに皆が懼れています。義秋様が従五位下左馬頭に叙位、任官されるのも(つづ)めて言えば後ろに居る大膳大夫様を朝廷が懼れたという事でしょう。


「それにしても妙な状況でございます。義秋様は大和、義栄様は堺、御二方とも京に入る事無く睨みあっておられる」

義秋様は三好豊前守、安宅摂津守に阻まれ京に進めません。義栄様は近江の大膳大夫様を懼れて京に入れずにいるともっぱらの噂です。大膳大夫様がその気になれば五万を越える大軍が京に雪崩込(なだれこ)むのです。


「義栄様が堺に留まっておられるのは病の所為だ」

「まさか、真でございますか?」

「俺を懼れて等と詰まらぬ噂を流して必死に隠しているが背中に腫物(はれもの)が出来た。京に上がらぬのは病が篤いか、病である事を公家共に知られるのを懼れての事であろう。病と知られては将軍宣下など有り得ぬからな」

「なんと……」


驚きました。義栄様が病? 何時の間にそんな重大事を探り出したのでしょう。朽木の忍び、八門衆は凄腕の者が揃っていると聞きますが本当に凄い。

「……その事、義秋様は」

「知らぬ、少なくとも俺は教えておらん。知ればまた煩く騒ぐからな」

シンとしました。部屋からは音が聞こえて来ません。多分父は言葉を失っているのだと思います。大膳大夫様が今度はクスクスと御笑いになりました。


「……若狭は如何でございました?」

「小浜の湊に船が入る様になった。領民達は皆喜んでいるが賑わっているとはとても言えぬ。武田が治めていた頃の混乱が未だに尾を引いておるわ。あの小さな若狭で何とも愚かな諍いを際限も無く続けたものよ」

声しか聞こえません、でも口調からは怒りと侮蔑を感じました。


「でも楽しい発見も有った。若狭は古くから瑪瑙細工が盛んだったようだ。戦乱で職人も減ってしまったが朽木が庇護して昔の様に盛んにしたいと思っている。京の公家達、裕福な商人達が欲しがるだろう。それに漆器、紙、塩、俵物だな、漆器は朽木塗に負けぬ良い物を作って欲しいものだ」

今度は楽しそうな御声です。大膳大夫様は領内の特産物の振興に熱心だと聞きましたが本当のようです。


「そうなれば小浜の湊を目指して船が参りましょう。敦賀にとっても良い事と存じます」

「小浜が敦賀の競争相手になるやもしれぬぞ。それでも良いかな?」

大膳大夫様が朗らかに笑いながら父をからかいました。楽しそうです、父は多分苦笑しているでしょう。


「そうそう、大宮司殿は劔神社(つるぎじんじゃ)を御存じかな?」

「勿論でございます。氣比神宮に次ぐ越前国二宮でございます。それが何か?」

「尾張の織田家の氏神なのだそうだ。織田殿から御配慮願いたいと文が来た。美濃攻めも順調に進みだしたからな、氏神の事を思い出したのだろう。一向一揆の馬鹿共が打ち壊していなければ良いのだが。見に行かねばならん」

「神社が織田に有りますので織田明神とも呼ばれております。織田様もその地名から名を取られたのでありましょう。そう言えば織田は焼き物の盛んな所でございます」


「焼き物? 茶碗か。それは良い事を聞いた。訪ねるのが楽しみな事よ。……大宮司殿、馳走になった。名残惜しいがこの辺りで御暇しよう」

「大したもてなしも出来ず御容赦を願いまする」

「いや十分にもてなして貰った。御息女にも礼を言っておいて貰いたい。美味い茶であったと」


大膳大夫様が席を立つ前に自室に戻りました。父がこの部屋に来る筈です、その前に自分の考えを纏めないと。暫くして父が来ました。

「雪乃、そなたは大膳大夫様を如何見た」

「世評とは全く違う御方と思います」

「違うか」

「はい、大膳大夫様は足利義秋様の忠臣では有りません。気性の激しい御方というのも信じられません。周囲からはそのように見えるのでございましょうが」

父が大きく二度頷きました。


「朽木家はこれから如何なる?」

「分かりませぬ。ですが気になる事が有ります」

「……それは何だ?」

「大膳大夫様は若狭の武田様を蔑んでおられました。そのような大膳大夫様にとって義栄様、義秋様の争いが如何見えたと父上は思われますか?」

父が眉を寄せて考え込んでいます。


「大膳大夫様は叡山を滅ぼした御方なのです。そして一向一揆勢を根切りにした御方でも有ります。何をお考えなのかは分かりません。ですが自らの進む道を遮る者を排除する事に躊躇う事は無いでしょう。例えそれが何者であろうとも……」

「……何者であろうともか」

「はい」

父が大きく息を吐きました。


「そなた、大膳大夫様の元に行くか?」

「宜しいのですか?」

思わず父をまじまじと見てしまいました。

「父を侮るでない。そなたが如何いう娘かは十分に分かっておる。行きたいのであろう?」


「はい。大膳大夫様をもっと傍で見たいと思います。何をお考えなのか、何処へ行こうとされているのか」

「困った娘よ」

「申し訳ありませぬ」

父がまた大きく息を吐き私は声を上げて笑ってしまいました。




永禄十年(1567年) 十月中旬   摂津国島上郡原村  芥川山城 三好長逸




堺から芥川山城に戻ると三好豊前守実休が訪ねて来ていた。倅の久介が相手をしていたようだ。二人とも笑みが有る、楽しい話をしていたのだろう。

「大叔父上、留守中御邪魔をしておりますぞ」

「堺の事が気になられたかな」

「いささか」

二人の顔から笑みが消えた。家臣達に聞かせたくない、人払いをして自室にと二人を誘った。自室に入り腰を下ろすと直ぐに豊前守が口を開いた。余程に気になっていたようだ。


「大叔父上、義栄様の御容態は」

「余り良くない。背中に出来た腫物が以前より大きくなっているらしい。痛みもかなり有る様だ。仰向けに寝る事が出来ぬとか」

二人の顔が曇った。

「御本人は大した事は無いと仰られているがかなり憔悴しておいでだ。京への移動は難しかろう。今しばらくは堺で御療養頂いた方が良い」


「大叔父上、来月だが大和の義秋様が従五位下左馬頭に叙位、任官される事が決まった」

「そうか」

「父上、朽木に上手くしてやられました」

「そうではない、久介。負けた所為よ。山科で勝っていれば朽木が動いてもどうにもならぬ」

豊前守と久介が口惜しげな顔をした。


山科の戦いで我らは朽木に敗れた。朽木は北陸の事が不安だったのだろう、追撃は左程の事は無く直ぐに引き上げた。そのため我らが受けた損害も大きいとは言えぬ。大和の松永弾正忠、河内、紀伊の畠山も結局は我らの前に身動きは出来ぬ状況にある。義秋の上洛は失敗、敗北する前と表面上は何も変わらぬ。


だがあの敗北が周囲に与えた影響は決して小さくは無い。これまで朽木の財力は誰もが認めていたが軍事力はそれほどでもなかった。力を付けつつは有るが我らに勝てるとは朝廷も思っていなかった筈だ。だが今回、我らが京を支配しているにもかかわらず朝廷は義秋に叙位、任官を行う事を決めた。朝廷は明らかに朽木を懼れ始めた。このまま我らの味方をしていた場合、朽木が上洛すればどうなるかを懼れたのだ。少しずつではあるが朽木の影響力が強まりつつある。


「大叔父上、本願寺の顕如が助けて欲しいと言ってきている」

「越中の事かな?」

「そうだ。このままでは来春、上杉と朽木に攻め潰されかねぬと悲鳴を上げている」

「父上、本願寺は北条、武田を動かして上杉の兵を足止めしようとしております。我らにも朽木の兵力を足止めして欲しいと」

思わず溜息が出た。

「どうにもなるまい」

儂の言葉に豊前守と久介が顔を顰めた。


「朽木は五万の兵を動かせる。三万を近江に置かれれば我らは何も出来ぬ。そして北条、武田も昔とは違う。武田は三十万石にも満たぬ身代、北条も伊豆、相模に南武蔵、西下総の一部を有するだけだ。上杉の全ての兵を引き付ける事は出来ぬ。兵力は少なくなろうが朽木、上杉の兵を合わせれば越中を蹂躙するには十分であろう」

二人の顔が益々渋いものになった。


「大叔父上、本願寺は越中と能登を連合させようとしている」

「我らと本願寺、能登の畠山、北条、武田、一色。連合して朽木、上杉、織田に対抗するのです」

「上手く行くとは思えぬな。……そのような顔をするな久介、儂は反対しているのではない。期待するなと言っておる」

「……」


「豊前守殿。朽木が北に行くなら我らはその隙に畠山を潰すべきではないかな。本願寺を使って雑賀衆をこちらに付ければ畠山に大きな打撃を与える事が出来よう」

「なるほど」

豊前守が頷いた。


「近江方面に出すのは一万程で良かろう。その上で一隊を用いて松永を牽制しつつ残りの軍で畠山を攻撃する。畠山を潰せば河内、紀伊が我らの物となる。潰せずとも大きな打撃を与えれば畠山は紀伊に逼塞せざるを得ぬ。大和の義秋を震え上がらせる事が出来よう」

雑賀衆をこちらの味方に出来れば鉄砲の数でも朽木に負ける事は無い。問題は大筒だが……。




永禄十年(1567年) 十一月上旬   近江伊香郡塩津浜  塩津浜城  朽木基綱




「主、畠山左衛門佐、修理大夫は国主として能登に戻りたいと考えておりまする」

「それで?」

「はっ、大膳大夫様の御力にて奸臣長九郎左衛門尉続連、遊佐美作守続光を取り除いて頂きたいと」

勝手な事を言っているな。家臣達も面白く無さそうな顔をしている。俺も面白く無い、若狭から越前を視察して帰ってきたらこれだ。


「飯川殿」

「はっ」

「お話の趣は分かった。家臣達と相談したい。暫らく別室にてお待ち頂きたい」

「はっ、なにとぞ宜しく御検討願いまする」

能登畠山家の重臣飯川若狭守光誠が頭を下げると近習の案内で部屋を出て行った。


「皆、如何思うか?」

渋面を作っている家臣達を見回した。朽木長門守、田沢又兵衛、宮川又兵衛、荒川平九郎、守山弥兵衛、長沼新三郎、蒲生下野守、真田弾正忠、黒野重蔵、明智十兵衛、竹中半兵衛、沼田上野之助。


「大和の義秋様の御依頼ともなれば無碍には出来ませんな」

「それにしても余計な事を」

そう、全く余計な事だ。朽木、上杉で越中、能登、飛騨を攻め取る。どうも義秋はそれが面白く無いらしい。自分の上洛よりも領地拡大を優先したとでも考えた様だ。


丁度能登を家臣達に追放された畠山左衛門佐義続、修理大夫義綱親子が義秋の元に助けを求めて来ていた。或いは俺を動かそうとして義秋に接近したのかもしれん。義秋は北陸を攻めるなら畠山親子を能登の国主に戻せと言ってきた。そして能登畠山家の重臣、飯川若狭守光誠が頭を下げて頼んでいる。


「面白く無いのよ。朽木が勢力を伸ばすのがな。足利の悪い癖が出た」

「しかし、三好を京から追い出すには殿の御力が大きくなければどうにもなりますまい」

「叔父上、残念だが義秋様はそうは思っておらぬ。朽木は今のままでも十分三好に勝てると思ったのであろう。先の戦で勝ったからな。これ以上力を付けられては後々足利のためにならぬ、そんなところよ。京で義輝様の御傍に仕えた叔父上ならお分かりであろう」

長門守の叔父が辛そうな顔をした。まさか足利が朽木を押さえにかかるとは思わなかったのだろう。


「朽木と上杉が越中を攻めれば一向一揆は能登、飛騨に逃げるのは見えている。それを許しては何時まで経っても北陸から一向一揆の勢力を取り除く事は出来ぬ、そう思ったのだがな」

皆が頷いた。単純な領土欲ではないのだ。朽木と一向一揆は相容れない仲だ。どちらかが潰れるまで戦うだろう。義秋はその辺りが分かっていない。


「殿、御断りなされては如何? 今なら義秋様も御不満には思われてもそれ以上は何も出来ますまい。殿を怒らせては上洛など夢物語にございます」

蒲生下野守が平然とした口調で断れと勧めてきた。流石、大国六角の元重臣だな。義秋なんて眼中に無い。


蒲生下野守定秀。輝頼に疎まれて隠居していたが悶々としていたんだろうな。俺が呼び出したら直ぐに出仕してくれた。お互いにちゃんと話し合った。過去は過去として掘り返さない。今後は俺の相談役として働く。輝頼とは違うって言って喜んでいたな。六角の旧臣達も安心している。敵対していた蒲生下野守でさえ重用されている。朽木家は安心して仕えられるってな。


「しかし、河内、紀伊を領する畠山家が如何思うか。後々殿が上洛を考えられた時、敵に回られては面倒でございます。或いはですが義秋様もその辺りをお考えなのかもしれませぬ」

なるほど、そういう考えも有るか。荒川平九郎、良い所に気付いたな。家臣達にも頷いている人間が居る。しかし能登畠山と紀伊畠山、仲が良いのかな? 誰か分かる奴は居るか?




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