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異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー 作者:バイブルさん

9章 DTの後継者候補!

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224話 ソードダンスコミュニティ創設秘話 前編

 長くなったので前編、後編に分けさせて貰います。
 雄一がソードダンスから出た頃は月が一番高くなっていた。

 宿に帰ってくると食堂は閉めたようで、薄暗い明りに照らされた店内に入っていく。

 中に入るとカウンターで茶色の液体をウィスキーグラスを揺らしながら飲むエイビスの姿があった。

 入ってきた雄一に気付いたエイビスが自分の席の隣を叩きながら手招きして声をかけてくる。

「お帰りなさい。思ったより、時間がかかったようですね」
「まあな、思ったより面倒な事になりそうだ」

 渋い顔をする雄一だが、本当にこんな時間まで待っていたエイビスを無視する気にもなれずに素直に隣に腰をかける。

 素直に座った雄一に笑みを浮かべると陶器できた入れ物から普通のグラスに茶色の液体を入れ始める。

「俺は酒は飲まないぞ」
「大丈夫ですよ。これは紅茶を作り置きしておいて貰った物。冷めてますが喉を乾かせて帰ってくると思って作って貰っておきました」

 グラスを受け取り、ウィスキーグラスに入っている物を見つめていると微笑を浮かべるエイビスが揺らしてみせる。

「これは、お酒ですよ。私はザルで飲んでも酔わないから勿体無いと思わなくないのですが、味が好きでしてね」

 雄一の死角からビンに入った酒を引っ張り出して、少し照れた笑みを浮かべる。

 飲んでも酔わない辺りがエイビスらしくて呆れるように嘆息するとグラスに入った紅茶を一気に煽る。
 煽ると自分が思ってたより、喉を乾かせていた事に気付く。

 手酌でもう一杯入れ、グラスに口を付けたところでエイビスが話しかける。

「依頼された『精霊の揺り籠』についての話はどこまでお聞きになられました? 土の精霊が幽閉されているという話ぐらいまでですか?」

 口を付けていたグラスをカウンターに戻すと憮然とした表情を雄一は浮かべる。

「お前、実はこっそり覗いてたんじゃないか?」
「いえいえ、断片的な情報を繋いで、考えられる可能性で一番高そうな事を口にしただけですよ。勿論、他の方になら確信のない事を口にしませんが、その辺りを汲んでくれると信じてるユウイチ殿にだけ特別です」

 本当に嬉しそうに笑みを浮かべるエイビスを気持ち悪そうに視線を切る雄一。

 吐き捨てるように、「お前の特別と言われても気持ち悪いだけだ」と雄一に言われるがエイビスは更に笑みを深める。

「それで、ノースランド殿とはどの様なお話をされたのですか?」

 そう聞いてくるエイビスの声を聞きながら、雄一は唇を湿らすようにグラスに口を付けると数時間前の出来事を思い出しながら口を開いた。







「で、ザガンで1番と言われるコミュニティを空中分解させる状況を屁とも思わない行動に出ている理由を聞こうか?」

 雄一の裏拳一発でのされたノースランドの息子達を連れて部屋から逃げるように出ていく雄一と同じ異世界人の2人を見送りながら問う。

 すると、ノースランドが口を開く前に昨日から置き物かと疑いを持っていた歴戦の猛者の雰囲気を纏く老人が口を開く。

「順番が違う。『精霊の揺り籠』の攻略の為にコミュニティを弱体化してしまってるのではない。『精霊の揺り籠』を攻略する日の為に旦那様と奥様がコミュニティを立ち上げられたのだ」
「どういう意味だ?」

 雄一の質問に老人が答えようとして口を開く前にノースランドが声をあげる。

 ノースランドの言葉を受けた老人が一礼すると少し後ろに下がる。

「爺、その後は俺が説明する。あれは20年前、コミュニティという立派なモノがまだないザガンで俺と嫁のシーナの2人で組んで冒険者をしてた頃の話だ」

 ノースランドは遠い目をすると当時の事を語り出した。


▼▼


 当時、街の治安もあってないような無法地帯のような場所がザガンだったようだ。

 そんなザガンで依頼達成度100%と言われるコンビが後に結婚するノースランドとシーナという20歳にもならない冒険者コンビだった。

 無法地帯と呼ばれる街で、ならず者達の冒険者にも一目置かれる存在であったが、このコンビには致命的な欠点が存在した。

 2人とも魔法の適正がなかった。

 少なくとも戦闘利用できるレベルの魔法の行使ができなかったのだ。

 事前に魔法が必要そうな依頼は避ける事で難を乗り越えてきたが、注目を浴びる頻度が高まるにつれて、それを避けている事に気付かれ出した。

 能力が落ちた訳でもなく、苦手分野があるというだけで周りの視線が小馬鹿にするような空気が生まれ、悔しさから歯を食い縛る日々が始まった。

 そんな悔しい思いをして過ごして、しばらくした時、2人は1人の少女と出会った。



「何をしてるんだ?」

 冒険者ギルドで右往左往する、みすぼらしいローブを纏い、杖を両手で握る10歳を超えたばかりの少女にノースランドが声をかけた。

 酷く頼りない雰囲気を醸し出す少女は強面のノースランドにビクついて逃げようとするが踏み止まると、こわごわとノースランドとその隣にいるシーナを見つめる。

 普段なら、こんな弱肉強食の世界の冒険者ギルドに弱者代表のようなヤツが居ても無視するノースランドであったが、何故か声をかけた。

 かけたノースランドの戸惑った雰囲気に気付いたシーナが間に入る。

「アンタが他人に声をかけるのって珍しいわね。まあ、いいわ。それで、お嬢ちゃん、こんな所で何してるの? 只の気紛れだから、言ってごらん。取って食ったりしないから」

 肩を竦めながら苦笑いするシーナと戸惑いが隠せないノースランドを交互に見る少女は恐る恐る話しかけてくる。

「き、今日、冒険者登録したのですが……誰かとパーティを組んで欲しいと思って話しかけようとしても、聞く前に「どっかいけ」と追い払われて……」

 そう言いながら声を小さくしていく少女を2人は見つめて、そう言った奴らの言い分ももっともだと嘆息する。

 どう見ても、連れて行っても足手纏いにしか見えない小柄な体型で荷物1つまともに運べるように見えない。

「まあ、そう言う奴等の気持ちも分からなくはないわね……」
「で、でも、これでも私はお爺様に魔法を使う訓練を10年近く受けてきました。力はなくても戦えます!」

 魔法という言葉がノースランド達の琴線に触れる。

 お互いの顔を見合わせる2人。

 黙っていたノースランドが口を開く。

「では、この辺りであるゴブリンの集落の壊滅を一緒に受けてやる。そこでどの程度できるか見て、程々にできると思えば、俺が他のパーティに声をかけてやろう。だが……」
「は、はい! それで構いません。使えないと思ったら、それまでと縁を切って貰って構いませんので、よろしくお願いします!」

 勢い良く頭を下げ、肩で揃えられた金髪が少女の表情を隠すが目を瞑って口を真一文字にしているのが想像できた。

「ノース、たまには慈善事業も悪くないわ。付き合ってあげるわ」

 ノースランドはシーナに頷いて見せると2人を連れだってカウンターで依頼を受けるとザガンを後にした。



 割と近い所にゴブリンの集落があり、到着すると物影に隠れながら作戦会議を始める。

「いつも通りに俺が一気に狩れるだけ狩って機先を取る」
「どうされるのですか?」

 そう質問する少女にノースランドは背中に背負う数々の剣を指差し、腰にあるナイフを抜いて空中に浮かせると操ってみせる。

「剣を操って、不意打ちからゴブリンの浮足立ちを狙う」

 それを聞いた少女が一瞬考えるようにすると頷く。

「その役目、私にさせて貰えませんか?」

 真剣な視線をノースランドにぶつける。

 少女の視線を受けたノースランドはシーナを視線を向ける。

「いいんじゃない? 失敗しても多少手間が増えるだけだし。その覚悟をして連れてきたんでしょ?」

 パートナーの同意を得れたノースランドは、少女に一任する事にした。

 魔法を使う方法に切り替えたが近くに寄るまでは同じで身を顰めながら近づく。

 ゴブリンの顔が視認できる距離までくるとノースランドは少女の瞳を見つめる。

 見つめられた少女は、精神集中するように呟き始める。

 そして、目を見開いた少女が叫ぶ。

「エクスプロージョン!」

 ゴブリンの集落の入り口に火の玉が生まれたと思ったら急激に膨らみ、突然爆発する。

 見えてる一帯のゴブリンは勿論、建物も吹っ飛んで更地になっているのをノースランドとシーナは目を丸くする。

「成功しました! 攻め込みましょう!」

 意気込む少女の勢いに頷かされる形になった2人は先頭を駆け出す。

 シーナは特攻し、ノースランドは少女を護衛するように剣を周りに浮かせながら走る。

 集落に突っ込むと思ったより、数の多い集落だったようでゴブリンキングまでに立ち塞がるゴブリンが多過ぎて足が止まる。

「ちぃ! これは時間がかかるかもね。ゴブリンキングを仕留められたら、一発なんだけど……」

 そう、ぼやくシーナに少女が声を大にして伝える。

「任せてください。道は私が作ります。ノースランドさん、魔法を使う間、無防備になる私の護衛をお願いします」

 先程までオドオドしてた少女とは思えない視線に頷かされるノースランド。

 すぐに手を翳して、口を高速で動かす少女がしばらくすると動かしていた口を止める。

 一瞬、目を瞑り、見開くと叫ぶ。

「ライトニング!」

 翳した手から一直線にゴブリンキングに襲いかかるように飛ぶ。

 その進行方向にいたゴブリン達を黒コゲにしていき、勢いが弱まった雷をゴブリンキングが手近にあった斧を投げつける事で難を逃れる。

「シーナさん、道は作りました!」
「でかしたっ!」

 雄叫びをあげるシーナが剣に白いオーラを纏わせて特攻を始める。

 開かれた道を塞ごうとするゴブリンを薙ぎ払い、跳躍してゴブリンキングに迫る。

 構える槍をないモノのような気にもしないで振り抜くと槍の柄と共にゴブリンキングの首を一刀両断した。

 この後は統率者を失ったゴブリンは、枯れ木を刈るような相手のノースランドとシーナに短時間で狩られる。

 狩り終えたノースランドとシーナが少女の下にやってくると安堵の表情を浮かべたと同時にペタリとお尻から地面に付けて座り込んでしまう。

「す、すいません。初めての実践で無事に終わったと思ったら、腰が抜けてしまって……わ、私、不合格でしょうか?」

 不安そうにノースランドを見つめる少女の視線に戸惑う様子を見せるのを隣で見ていたシーナが悪戯っ子のような笑みで見つめる。

 そして、無駄な肉が付いてない脇腹を肘で突っつく。

 突っつかれてそちらを見つめると瞳を見ただけで何を考えてるか理解したノースランドは溜息を吐く。

 伊達に長い付き合い、幼馴染をしてきていないノースランドは少女に手を差し出す。

「ここに魔法使いを探してたパーティがある。どうだろうか?」
「えっ?」

 ノースランドの行動と言動に混乱する少女に笑みを浮かべるシーナが口を挟む。

「この女の扱いも碌に知らない馬鹿が、お嬢ちゃん、良かったら一緒にパーティ組みませんか? って言ってるのよ」
「えっ、えっ!」

 わたわたする少女は、いいのかな? と戸惑うようにおずおずと手を差し出し始める。

 手が近づいてくるが、後一歩というところで尻込みする少女の小さな手を無骨なノースランドの手が一気に距離を縮めて力強く掴む。

 掴まれた手を見て、驚いた顔をして顔を赤くして慌てる少女にノースランドは問う。

「名を聞こう」
「の、ノンです。これから、よろしくお願いします!」

 照れながら、笑みを弾けさせる少女、ノンはこうして、ノースランド達とパーティを組んだ。


▼▼


「それが俺達とノンとの出会いだった」
「良い話だとは思うが、それと今回の話とどう繋がる?」

 ノースランドに問う雄一を一度見つめると目を瞑る。

 少し話し疲れたというより、悔恨の思いを吐き出す心労のような疲れを滲ませるノースランドは雄一に慌てるな、と告げる。

「少しぐらい、おっさんの昔語りを聞くぐらいの時間は割いてくれてもいいだろう? 本題はここからだ」

 雄一も無意味とは思ってなかったが、異世界転移者がいるという事で神経が尖っていた事を認識してしまい、バツ悪い気持ちにさせられる。

 そして、再び、ノースランドは遠い過去を見つめるように口を開き始めた。
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