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異世界で双子の娘の父親になった16歳DT-女神に魔法使いにされそうですー 作者:バイブルさん

4章 DT、表舞台に立つ

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110話 嬉しくない出会いをしてしまったようです

 夜の帳は降り、店は閉まっていき、歓楽街だけがにぎやかな時間になった頃、誰もいなくなった噴水広場に冒険者達が50名程集まっていた。
 そこに居る者は誰一人、口を開かずに前方にいる白髪のエルフの少年とカチューシャをする少女とローブを纏う少女を見つめる。

 その3人はまだ駆け出しと言って良い少年少女であるが実力は折り紙つきではあるが指揮経験はないのが見て取れたがベテラン冒険者ですら文句を付ける様子もない。
 なぜなら、自分達が信用する男が全権を託して任せた少年少女。
 きっと、何もできずに終わらないと信じている為である。

 少年少女も借り物の信頼とは分かっていても、自分よりヘタすると3倍は生きてる人達から信頼を預かると思って、緊張していた。

 緊張を紛らわせるかのように、ローブの少女が隣の白髪の少年に愚痴を零す。

「あ―あ、テツ君がいらない事をユウイチさんに言うから、大変な事になっちゃった。テツ君、責任取ってくれるよね?」
「ちょっと、待ってください。あれはホーラ姉さんとポプリさんが僕に文句言ってこいと足蹴にした内容じゃないですか。確かに僕も同じように思ったから言いに行きましたけど」

 ポプリに泣きつくように手をワナワナとさせるテツから目を反らして、「そうだったっけ?」と嘯く。

 そんな2人に溜息を洩らすカチューシャの少女、ホーラが苛立たしげに呟く。

「アンタら、状況考えて遊びな。どういう経緯であれ、アタイ達は今、責任者でアタイ達がうろたえたら士気に関わるさ」

 そう言われた2人、テツは「ごめんなさい」と素直に謝り、ポプリは知らないフリを通す。

 再び、溜息を吐いたホーラはテツに作戦の概要を語る上での手書きの地図を配るように指示する。

 テツは慌てて、脇に挟んでいた紙束を10名に1枚の割合で配っていく。

 配って戻ってきたテツの脇腹をポプリが肘打ちして説明を促す。

「え―、作戦の概要を伝えます。事前にある程度は話してありますが、確認の為と思い、もう一度お聞きください」

 廻りを見渡すが誰一人として文句を言おうとする者や面倒そうにする者はいない。
 テツは生唾を飲み込むと口を開く。

「まずは地図をご覧になってください。廃薬工場には西、南、東に1か所ずつの出入り口があります。南門が正面入り口のメインになります。次に西が王都方面と搬入口になっているようで南門よりはやや小さい造りです。東は森の奥に行くだけの場所の為か勝手口のような小さな物になってます」

 そこまで言うと確認を兼ねた冒険者達の顔を見渡すが、困ってる様子の者はいないと分かり続ける。

「そこで、僕達3人が正面の南門から奇襲を派手にかけます。勿論、迎撃に出てくる者もいるでしょうが、大半は持てる物だけ持って逃げる者のほうが多いかと思います。そこで……」

 テツがホーラを見つめると頷かれ、説明を引き継ぐ。

「逃げ出す輩は当然のように東西に逃げる者が多いはず、しかも西は逃げやすく王都方面となる為、激しい戦いになると思われるので30名を配置するさ。東は勝手口のようなドアがあるだけなので10名。ここで重要なのが東は倒す事より足止めがメインと考えて欲しいさ。うまく通路の狭さを利用してくれる事を祈るさ。正面のアタイ達と一緒に行動する10名はアタイ達が討ち洩らした者の殲滅、できれば捕縛を頼むさ」
「正面に配置される方は無闇に前に出ないでね。私は派手さを意識した魔法を連発するから巻き込まれる恐れがあるのに前に出るのはテツ君だけでいいから」

 ポプリの言葉にギョッとしたテツがポプリに縋るようにする。

「ちょっと待ってください。なんで僕は平気に巻き込んで打つ気満々なんですかっ!」
「酷い事言わないでよね? テツ君なら無事と信じての作戦だって事前に言ったでしょ」

 テツは、「言ってない、言ってない」と涙目で首を振るのをポプリは「あれぇ?」と惚ける。

 テツ達からすれば日常的にある光景であるが、それを見て、冒険者達は笑みを浮かべる。いくら覚悟もあり、実力もある冒険者達とはいえ、緊張から肩に力が入っていた事は否めない。

 それを見ていたホーラは、「結果オーライではあるけど……」と呟きながら、未だに頑張って、「もうちょっと頑張って僕を巻き込まないようにしましょうよ、ねっ?」と交渉するテツとポプリの頭に拳骨を入れていく。

「いい加減にするさ。指揮官が緩み過ぎでは話にならないさ」

 ホーラに殴られたテツはシュンとし、ポプリは自分は悪くないとばかりに頬を膨らませて明後日の方向を見つめる。

「作戦について分からない者が居れば、今、聞いて欲しいさ。ないなら、手元の地図を燃やして」

 そういうと各自のグループで目を交わし合い、頷き合うと地図を生活魔法の火を使い燃やしていく。

 全部、燃やすのを確認したホーラがテツを見つめて頷く。

「では、作戦開始です」

 テツの掛け声と共に冒険者50名、テツ達を先頭に廃薬工場を目指して出発した。



 廃薬工場に到着したテツ達は、各自の持ち場に散り始める。

 それから10分ほどすると東西ともに松明の火で合図があったと連絡を受けたテツ達は一緒にいる冒険者達に伝える。

「僕達が暴れ出したら前に出てきて僕達を抜けていく人達をお願いします」

 頷いてくる冒険者達を確認したテツは、ホーラとポプリに頷いてみせると相棒のツーハンデッドソードを抜いて肩に担いで正門を目指して歩き始める。

 見張りに立つ者達がテツ達の存在に気付き、騒ごうとしたところを門番していた者は駆け寄ったテツが斬り捨て、見張り台に居る者はホーラがスリングと投げナイフで沈黙させる。
 辺りが静かになるが中の者達にはまだ悟られてないと判断してホーラはポプリに頷いてみせると、ポプリは集中を始める。

 ポプリの上空に凶悪なまでに大きくなった火球を建物の入り口目掛けて放つと爆音と共に土煙が立ち込める。

 閉じられていた門は開かれ、寝静まってた工場はハチの巣を突いたような騒ぎで怒号が聞こえる。

「何が起こってるっ!」
「襲撃だ、すぐに持てるモノを持って脱出をしろ」

 などと叫ぶ声が聞こえた。

 3人は顔を見合わせると突入を始める。

 迎撃に出てくる者をテツは薙ぎ払うようにして建物を囲むようにしてある壁に叩きつけるを繰り返していく。ホーラは工場の窓から弓や魔法を使おうとしている者に投げナイフやパチンコで沈黙させていく。

「建物の中だから安全と思ってたら大間違いなんだからねっ!」

 先程の火球よりは小さなものを複数作ると工場の建物の中へと飛ばすポプリ。

 全弾入るのを確認したポプリが、「バースト!」と呟くと工場の中から爆発と悲鳴が響き渡る。
 調子に乗ったポプリが入り口目掛けて、でっかい火球を打ち込み、入口は火の海と化す。

「馬鹿ポプリ、アタイ達も中に入れないし、視界が防がれて何も見えないさっ」

 そうホーラに言われたポプリが我に返って、やってしまったという顔をするが自分は悪くないとホーラと喧嘩を始める。

 テツは駄目元と思いつつ、喧嘩の仲裁をしようと思った瞬間、自分の心の警鐘がマックスで響き渡るのを感じて、咄嗟に火の海と化した方向を向いてツーハンデッドソードを構える。

 構えて間もなく、火の海を切り裂くようにして飛び込んでくる黒い影がテツに斬りかかってくる。

「くっ……」

 テツは剣2本を同時に叩きつけられて、思わず、膝が着きそうになる。

 ポプリと喧嘩してたホーラであったが、先に我に返り、黒い塊にパチンコを放つとテツから飛びのき、火の海をバックに2本の剣を持ちながら、自然体で3人を見つめてくる。

 緑の髪を無造作に伸ばして手入れもしてないようで前髪が目にかかり顔全体が分かりにくい。体つきから男でテツ達よりも年上の13~4歳に見える。
 テツと良く似た軽装をしているが色が逆の真っ黒であった。
 前髪の隙間から見える瞳が金色に爛々と輝かせながら、見下すように3人を悪態を吐く。

「嫌々よ、視察に来させられたと思ったら、放火というサプライズで歓迎とか勘弁なんだよ。返礼はお前達の命を狩るでいいよな?」

 口を三日月形に歪ませると再びテツに斬りかかるが、今度は来ると分かっていたので、力負けせずに払いのける。
 払いのけた先にホーラが投げナイフの十本投げをする。だが、避けられるがたいした反応を見せずに後ろに飛んで少年と距離を取る。
 距離を取るとポプリが少年を囲むように炎の壁を生むが少年は出来かけの所を飛び込んでダメージを最小限にする。

「ちっ、クソッタレ。そこらの雑魚とは違うみたいだな……負けるとは思わねぇけど、こんな下らない視察で怪我したら馬鹿だから、今日のところはこれぐらいで勘弁してやら」

 そういうと壁へと走り出すとそのまま壁を走るようにして昇って森へと消えていった。

 パチンコで追撃をしようと思っていたホーラであるが、狙いを付ける前に乗り越えられて手を下ろす。

「今の奴は、何だったさ」
「魔法が発動する瞬間が分かるみたいに動き出してたからやりにくいっ!」

 ホーラとポプリは苛立ちを隠さずに、緑髪の少年が走り去った方向を見ながら悪態を吐く。

 テツも同じようにそちらを見つめ続けているが、若干、顔色が悪かった。

「あの時、反射的に身構えてなかったら初手で僕は死んでいた」

 背中に冷たい汗を流し、パチパチと燃える音と共に東西の門の辺りから勝鬨を上げる冒険者の声を聞きながらテツは少年が消えた森を見つめ続けた。


 この少年とテツは、ここで初めて出会う。

 この少年と出会いはこれから何度となく剣を交えて戦う運命である事をテツは、この時は知るよしもなかった。
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