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ウチと彼女の約束事  作者: 畦道テツ
第十話 『トラウマさんさようなら』
157/206

第十話 001

○夏と音葉の回想・路地裏~歩道~船津登山道歩道橋(3月下旬・夕)

   ――曇り空。

   ポツリ、ポツリと地面に雨が落ちてくる。

   路地裏の突き当たりに立つ音葉(中2)。私服姿。

   ふちメガネを掛け、髪は肩の前で二つ結び。

   ――音葉の手前で道をふさぐナンパ男。(男20代)

ナンパ男「ほらー、グズグズしてるから降ってきたじゃんよ!?」

 「(腕を掴んで)早く一緒に雨宿りしに行こうよー!?」

音葉「(泣きながら)い、嫌です、離してください……」

ナンパ男「泣き止んでくれないと一緒に楽しめないじゃんよ? ねっ!?」

 「ちょっと遊ぼうって言っただけなんだから――」

夏「や、やめてあげなよ!!」

   と、ナンパ男の後ろに立つ夏(中2)。

   ふちメガネにジャージ姿。バツの髪ゴムなし。

   スポーツバッグを肩に掛け、赤い折り畳み傘をさしている。

ナンパ男「(振り返って)んあ?」

音葉「た、助けて……」

ナンパ男「(近づいて)なになにー? キミも一緒に遊びたいのー?」

 「僕は大歓迎じゃん――」

夏「やめてあげなって言ってるんだから!!」

   ――傘を手放し、バッグを抱えてナンパ男に体当たり。

ナンパ男「よふぉっ!?」

   と、吹っ飛び倒れる。

夏「(手を取って)早く、こっち!!」

音葉「えっ……」

   ――夏、傘を拾って走り出す。

   傘をさしながら歩道を走る夏、その後ろに音葉。

   × × ×

   高さ5mの歩道橋を駆け上がる。

   歩道橋には『船津登山道歩道橋』の文字。

   ――歩道橋の真中で息を切らして立ち止まる2人。

音葉「(泣きながら)あ、ありがとう……」

   と、夏の背中を見て。

夏「(涙をこらえて)な、泣いちゃダメなんだ!!」

   振り向いて傘を押し付ける夏。

音葉「えっ……?」

   と、受け取って。

夏「(震え声で)強いと思っている相手に弱みを見せたら、そこで優越感を与えちゃう!!」

 「(鼻水を垂らして泣きながら)私は泣かない!! どんなにいじめられても!! どんなに怖くても!!」

 「私は……私は……!!」

   と、歩道橋の手すりから身を乗り出し、景色を見つめる。

夏「――ハッ!!」

   ドクン!! と一瞬景色が二重になる。

   ――その場にへたり込む夏。

夏「あ……れ?」

   × × ×

   ――雨が上がり、雲間から夕日がさす。

音葉「(しゃがんで)分かった……。私、もう泣かないよ?」

   と、折り畳んだ傘を返して。

夏「(受け取って)え……?」

音葉「もう泣かない」

   と、メガネを取って微笑む。

   ――夕日に包まれる2人。

   夏と音葉の回想おわり。

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