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裏切りの少年と、暗黒の少女の運命――。

作者:RN
 2017年12月31日。
 行方不明だった少年、泉条一が歌空島へ帰ってきた。
 泉条一は自分が作り上げた超能力集団(グループ)を自らの手で壊滅させ、
 全世界宛にメッセージを送る。

――宣戦布告。

 泉条一は、世界を相手にたった一人で喧嘩を売った。
 一緒に笑い合った友を捨て、
 幾度も共に戦い抜いた仲間を捨て、
 愛し愛された家族を捨てた。

 長年の間、求めいた絆で結ばれた者たち。
 超能力と出逢ってからの二年間で、漸く得たのだ、

――確固な絆を。

 だが捨てた。
 大切な宝物を護るために、世界の敵でいることを決意した。
 目を瞑る泉条一は思い出す。
 救えなかった少女と、救えるはずの少女の事を。
 瞼の裏に思い浮かべる。
 過去の失敗と、望む未来へのステップを。

『俺、全てを受け止めるから』

 瞼の裏側に灼きついた台詞。
 昨日の自分と、今日の自分を嫌っていた少女から貰った。
 ただ嫌いだから拒絶するのではない。
 嫌いだから拒むのではない。
 それは間違っている。
 受け入れないと理解できない事もある。
 それから好き嫌いを決めるのだ。

『進むべき道がないなら……俺が作る』

 常に示された答えへと進んでいた少年から貰った台詞。
 自分で何かを決めれなくて。
 他人ばかりを頼ってきた。
 それしか自分の道が無いと信じて。
 違う。それは間違いだった。
 自分が進む道という未来は、自分で決められる。
 そして未来は一つではない。
 内なる可能性を信じれば人は何処にでも行ける。

『もし君が宝物を見つけたら、それを誰よりも眩しくて明るく輝かせてね』

 一度だけしか会ったことはないけれど、彼女の一言で今の自分はここに居る。
 世界を教えてくれた不思議な少女。
 こうして抗えるのも彼女のお陰だ。
 認められない。たったそれだけで世界から拒絶された女の子。
 強すぎる力を持つが普通の人なのに。
 人は彼女を嫌い。
 世界は彼女を妨げ。

――故に存在は認められない。拒絶された少女。

 退路は決まっていた。

――死。

 そんな理不尽な人生……運命なんてないじゃないか。
 泉条一は思った。否、今も思っている。
 彼女はまだ生きているのだから、運命を捩じ曲げて新しい未来を創ればいいと。

 暗闇の中、立ち上がる。
 大事な家族の未来を勝ちとるため……全ての罪を背負うために。

「……ジョウ、来たぞ」

 自分にしか聞こえない心の声。
 耳を澄ませると幾つかの足音が聞こえる。
 足が地を駆けて出る音色で、誰かわかった。
 だから条一は、全てが本当に終わる前に、感謝をする、

――みんな、ありがとう。

 まだ8年しか生きていないけど、これが自分の最初の最後の人生。
 楽しくて、
 悲しくて、
 嬉しくて、
 切なくて、
 笑えて、
 泣ける――俺の物語。
 みんなと一緒にいられたから輝けた俺だけのトゥルーストーリー。

「パパ!」
「父さん!」
「条一くん……」
「パパ……」

 唯希、悠太、藍華と理知の呼びに閉じていた瞳をゆっくりと開く。
 ”泉条一だった少年”はフッと笑い後ろを振り向く。
 視界に入ったのは、自分を倒すためにやって来た小さな勇者たち。
 よく此処まで辿り着いたね、大好きな仲間(かぞく)たち。
 でも――ごめん。

「やあ、よく来たね。元アップルファミリーのみんな」

 ”泉条一だった少年”は言う、

「戦おう――新しい物語を迎えるために」

 世界を相手にたった一人で喧嘩を売った少年、泉条一。
 彼を止めるために立ち上がった唯希、悠太、藍華。
 死の運命を背負う少女、理知。

 絆で結ばれた家族は、対立する。
 全ては神を倒すため!

----

「なあ父さん、もうやめて下さい。これ以上、誰かが傷つくところは見たくないんです」
「みんなボロボロなんだよ……いっぱい傷付いて苦しい思いをした。悲しくて涙を流して……みんなさ辛いんだ。お願いだよ……パパ止めて」

 悠太と唯希は家族(チーム)のリーダだった男を見据える。
 戦いを続けても酷い思いをする人が増えるだけ。
 それにこのまま続行したらジョウは確実に……。
 悪い結末(バットエンド)は嫌だ。
 可能性は低くても、皆が笑い幸せな結末を目指す。
 自分たちの言葉で今までの泉条一に戻る奇跡を信じて言った。
 だが、泉条一だった少年は二人をあざ笑うかのように口元をニヤリと歪ませ、

――で?

 悠太と唯希は、背筋に氷片をあてられた気分になる。
 泉条一だった少年の表情から、彼の考えを読み取り思う。
 目の前に立つ少年は、本当に自分たちの父親(リーダー)だった少年と同一人物なのかと。
 自分たちが知る泉条一は自己を犠牲にしてでも困っている人たちに無条件で手を差し伸べる優しい人だった。
 信じたくない現実(いま)に歯を食いしばる。

「あなた達……少し離れて」

 藍華は泉条一だった少年を見詰めながら家族(チーム)へ静かに告げる、

「あの人の相手は、私一人でやるわ」
「え? ママ……冗談だよね?」
「ちょっと待ってよ、姉さん、一人で戦うって本気ですか?」

 家族(なかま)からの反対。
 それもそのはず……二人でさえ彼と戦うことに今でも躊躇っているのだ。
 藍華は特に、あの頃の条一のことが……。

「私に仲間(かぞく)を殺させる気?」

 揺らがない覚悟。
 真っ直ぐな決意。
 全力で戦うことを示す言葉。藍華が持つ力は、通り名の如く死神。
 軽い一振りで簡単に命を奪える、闇の象徴。

「もう一度言うわ、邪魔……退()いて」

――発動、願うは力。

 鍵となす言葉を呟く。
 ポケットから取り出した一枚の切符。
 主の想いに答え、光りに包まれながら姿を紙片から大鎌へと変えてゆく。
 藍華の両手に握られたのは、自身の身長の二倍はあるガラスの様に透明で綺麗な大鎌。

「倒すわ」
「その言葉、待っていた」

――具現、描くは心。

 彼女へ返事を返ししつつ、右手に握る一枚の切符を手放す。
 使い手の意思に支配され、真っ白な切符は空中で闇に飲み込まれる。
 現れたのは左手の甲の部分から生えた、鉤爪状の五つの波動で波動で作られた刃。

「さあ、戦おう」

 二人は、真っ直ぐにお互いの視線を交差させた。
 全てを断ち切る大鎌(かま)を構え――。
 全てを受け入れる矛盾(やいば)を相手に向ける――。

「……っ!」
「っ!」

 同時に二人は地を蹴り宙を駆ける。
 刹那、彼らは正面に互いを捉えた。

――衝撃っ!――

 激しく鬩ぎ合う鎌と刃。
 軋みから生まれる余波を受けて、世界は悲鳴を上げる。

 断ち切る事しか知らない少女と、受け容れる事しか知らない少年。
 矛盾する二人の戦いが始まる――。

 神を倒すためにっ!

--------------------------

 二人の武器は真正面から激突した。
 断ち切る為に造られた大鎌と、受け容れる為に造られた刃。
 聞くまでもなく勝負は歴然。
 もちろん、断ち切る大鎌が圧倒的だ。
 だが、大鎌は粉々に砕け散る。

「っ?」

 不自然に壊れた大鎌に、一瞬だけ条一は呆然となり、ゾクリと背中を悪寒が走る。
 チッと舌打ちが出た。刃で切り裂いた藍華に手応えを感じなかったからだ。
 直後、煙のように消える。

 嵌められた! あの武器は攻撃用ではなく、精神へ感応する、鎌の形をした爆弾。

 ぶつかって直ぐに本人は念堂能力で脚力を強化して離脱。
 自分の精神へテレパシーを使い偽装イメージを送る、自ら不可視となり幻を残す。
 触れた相手を(なか)から破壊する戦術こそが藍華の十八番だ。

 だが、

「甘いな」
「うっ……!」

――衝撃――

 瞬間、条一は藍華の背後へ回り込み左手から生えた刃を上段から放つ。
 直感と気配で危機を感じた藍華は確認もせずに前へと身を倒す。

――発動。

 無色の片道切符は主の想いに答え、姿を変える。
 藍華の両手に現れたのは小型な二つの鎌。
 駆けると同時に、条一へテレパシーで偽装された視覚イメージを送る。
 100の藍華。今、条一の目には自分が100人いるはず。
 今度こそ――、斬るっ!

 体ごと横にスピンをして斬撃の勢いを高める。
 藍華はその勢いを利用して、その場で立ち尽くす条一に鎌を振り――。

――噴射のように血が周りへ吹き出す。

「ママ……っ!」
「と、父さんが……」

 そう……背中から斬られた藍華の血が、だ。
 唯希と悠太の二人の声は届かない。
 驚きで何も入らなかった。

「っ……う、うそでしょ……?」

 痛みで崩れるように座ってしまった藍華は目の前の出来事に目を見張る。

――有り得ない。

「ごめんね……藍華さん。でも、それじゃ、俺らを倒せない」

 目の前で自分を斬ろうとした藍華を静かに前から見据えながら言った。
 だけど彼女の瞳に映っているのは、”この条一”ではない。

「お前ぬ対戦相手は、全”泉条一”だと言う事を忘れては困る」


 後ろから藍華を斬った、もう一人の人格。
 体を得て二人の人間に別れたのだ。

 彼女に睨まれているがもう一人の条一は構わず告げる、

「僕たちは世界と戦う存在だ。故に神同等ぬ力を持つと思え。借り物ぬ力に負けるほど僕たちは弱くないぞ?」

 その言葉に藍華は歯を食いしばる――分かってるわよ、そんな事くらい。
 超能力は大まかに分けると2種類ある。
 一つ、神から用意された共通(コモン)
 一つ、自分の魂を描いた個別(パーソナル)

 色で例えるのならば、
 共通(コモン)は、既存する全ての色を使え、色と色を組み合わせる事が出来る。
 対して個別(パーソナル)は、存在しない新しい色を一つ生み出す。使用者は、その一つの色しか使えない。

 多色(コモン)の藍華と、一色(パーソナル)の条一。
 どちらが有利なのか言うまでもなく歴然。

 多色(コモン)の藍華だ。

 この戦いもそう。藍華は有利に有利に戦える。
 手数が豊富なのだから。
 ただ……条一が”異常”なだけで。

 彼らを相手に私が勝てるはずがない――。

 作り出した色でルールを作り、世界を生み出す勢いで力にした。
 勝算なんて初めから――、

「もしかして俺と番人、二人を相手に戦うなんて無理――って思ってる?」

 ピクリと藍華の肩が震えた。
 前に立つ条一に視線を向ける――全てを見透かすような目で自分を見詰める。

「ねえ、藍華さん。何でここに来たの? 何で一人で戦おうと思ったの?」

 藍華の心に槍のように次から次へと刺さる言葉。

「……大好きな人達を守るため、だよね」
「……!」

 そうだ――負けるつもりで来たのではない。
 勝利の二文字を掴み取るために戦う。
 みんなの平和と幸せを届けたいから。

 まだ全力すら出していないのに、諦めたら駄目だ。
 藍華は拳を握りしめ、立ち上がる――。

「礼は言わない」
「うん」

 何で敵である自分を励ます言葉をかけたのだろうか。
 二人に分離してから、昔の条一たちに戻ったみたいな感じだ。

 でも――二人の条一から戦意を感じる。
 つまりまだ戦いは終わらない。

「ここから私も本気で行くわ――」
「漸く死神ぬ本領が見れると言うことか」

 フッ笑い番人は条一の隣に立つ。

「よく見てなさい、死神の力を――」

 全てを断ち切る事しか知らない少女は、神が導こうとする真理を知った。
――手に入れたのは漆黒と暗黒の力。

 全てを受け容れる事しか知らない少年は、神を拒絶し自分の世界を創り上げた。
――手に入れたのは未来を変える術。

 矛盾する二人の少年少女は、何処に向かうのか――。

「また繰り返す……運命の輪から抜けれない」

 理知――全ての鍵を握るのは、彼らの子供。

 物語は今――繰り返された。

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