空は快晴、
強い日差しは季節の感覚を麻痺させる
海風は頬に心地よく、ウミネコの鳴き声が寂しさを温和させてくれる
文句の付け所の無い絶好のロケーション
平和な冬木の町を象徴するかのような港はしかし………
もはや一つの戦争が起こりかねない状態へと至っていた。
「ってめっちゃ増えてるぅ〜〜〜!?
意気消沈するランサー、相変わらずハイなテンションの赤い人、子供たちに囲まれて愉しそうな金ピカ。
それと―――
「くっ、まさかダブルアーチャーに釣りで押されるとは、シロウ、こうなればエクスカリバーを使います!」
「お〜い桜、何でさっきからワカメしか釣れないわけ? もし魚を一匹でも釣れなかったら夕飯は抜きなんだからな」
「が、頑張ってください兄さん、私、昨日から何も食べてないので、くうくうおなかがなります」
「皆に負けるわけにいかないからね、さあ、狂いなさいバーサーカー」
「■■■■■■■ーーーーーーー!!!!」
え〜と、順々に答えましょうか。
まずセイバー、エクスカリバー絶対に駄目! 海が干上がる!
それとワカメ! じゃなくて慎二、ワカメしか釣れないのはお前の生まれながらの呪いみたいなやつだから諦めろ
それよりも間桐家の食生活はどうなっているんだろう? 何故か最近桜は家に来ていないようだが
そしてイリヤとバーサーカーさん、あんた等何してんのぉーーーーー!?
「うおー、すげー! ギルー、人が凄いたくさんいるぞ! 大会でも始まるのか!? がんばれギルー!」
「ギルギルー、あそこの物凄い大きい人って本物かな?」
「ねぇ、隣りの兄ちゃんの竿、よく見るとワカメで出来てるよ、あれでワカメが釣れるなんてすげー、でもやっぱりギルの竿の方が金ピカでかっこいいなー」
「ぎるー、今月のガン○ンどこー?」
「すごーい、あの大きい人海の中に潜ってるー、ねえギル、あの大きい人にサカナ投げていい?」
子供たちがはしゃぐ中我等がヒーローギルガメッシュは笑顔で答える。
「はっはっは、騒々しいぞ雑種ども。周りのオケラどもに迷惑であろう。
それはともかく、ジロウ、この程度の人数で驚く事は無い、所詮勝者は我一人。
ミミ、人生ときには、見るもの全てが真実でないと知れ、我は怒らぬがあれにはあまりツッコムでないぞ。
イマヒサ、あそこのワカメは所詮ワカメ、その名の通りワカメで出来ているからワカメしか釣れぬのは必然であろう、だが嗜好はよし。これでガリガリさんを好きなだけ買ってくるがよい。
カンタ、ガン○ンは我が読み終わるまで待て。
コウタ、あれは狂人故な、下手に手を出せばこの漁港の魚が全て消え去るやも知れぬ、決して手を出すでないぞ!」
はーいと子供たちは皆元気よく頷く、みんなの英雄王は子供に好かれるスキルでもあるのだろうか?
「バーサーカー! 何をしてるの、そんなんじゃ魚が逃げちゃうじゃない! もっと力強く狂いなさい、そうすればきっとバーサーカーより大きくて背中から水を噴出す魚が釣れる筈よ」
「■■■■■■■ーーーーーー!!!!」
海の中に入って斧剣を振り回している鉛色の巨体に激しく動揺し恐怖したが、なるほど、イリヤはバーサーカーを使って魚を釣るらしい、うんうん釣りを楽しむのは良い事だぞイリヤ、バーサーカーにも少しは遊びという概念があったようだ――――ってそんな訳あるかぁーーー!!
「………イリヤは釣りってどういう風にやるか知ってるのか?」
「うん♪ 当たりまえでしょ、え〜と確か、海の中に潜って貝みたいなのを取る事でしょ? あれ……でもあれっておばあさんがやる遊びじゃなかったっけ?」
「それは海女さんだ! 釣りってのは釣り竿を持って海の中に垂らして魚が喰い付いたら引っ張り上げるのが釣りだ、今イリヤがバーサーカーに命令してやらしているのは釣りじゃなくて海破壊ってやつだ」
え〜と頬を膨らませるイリヤ、現実を捉えたのなら早くバーサーカーにやめるように命令してくれ、なんだかバーサーカー自身早くやめたいような目で俺を見ているのは気のせいか、やや足が震えている。
「――でも、やり方が間違っているだけで、ようは魚を取っちゃえばいいんでしょ? なら簡単よ、バーサーカー! 背中から水を噴出すおっきな魚を捕まえなさい!」
「■■■■■■■ーーーーー!!!!?」
何でそうなるーーーー!?
しかしバーサーカー、さすがにそれは厳しいのか首を大きく横に振って否定した。
そうだろう、多分イリヤが言っているのはクジラの事だ、クジラとは哺乳類の中でもトップを誇る巨大な生物だ、いくら巨大なバーサーカーでも、まあ不可能とは思えないが捕まえるのは厳しいだろう、しかもクジラはもっと遥か先の海まで進まないといないし!
「うぅ……なによー、わたしに逆らうって言うの? バーサーカーのバカぁ!! もう知らないんだから!!」
「■■■■■■■ーーーーー!!???」
遂には泣き出してしまった、そうしてバーサーカーに怒りをぶつけて何処かに走り去ってしまったイリヤ、バーサーカーもさすがに予想外だったのか、海からジャンプして上がって陸に上がり、ドシンドシンと大地を震わせながらイリヤを追いかけていった。
バーサーカーが上がった時に水飛沫がまるで津波のように俺やまわりの釣りバカ軍団に直撃したのは言うまでも無い、俺のすぐ近くにいた赤い奴は離れたが。
それはそうとさすがに心配だ、イリヤにショックを与えたのなら後で誤ろう、うん、あくまで後でだ、今ならバーサーカーが励ましているだろうし、俺が下手に行っても首だけになって生き人形になってもおかしくはないだろう。
「ふん、嘆かわしいな、衛宮士郎、いたいけなイリヤを泣かせて更には謝罪にも行かないとは、貴様それでも衛宮士郎か!」
怒声の如き罵声を放つ俺の隣りの赤い人、どうでも良いがお前さっきまで逃げてただろ! アーチャーは最新型のリールを投影しては自分のモノのように操り釣りまくっていた! いや、まあ別にどうでも良いのだが、バケツの中のイナダやサバの大群は何だろうか? まさかこいつが一人で釣ったと言うのか!?
「ふっ、驚く事はない、現在の戦況はランサー19匹、ギルガメッシュが24匹、そしてオレは26匹だ、はて? よく数えてみると何故か20匹しかいないのは気のせいか? と、27匹目(?)フィィィィイッシュ!」
やけにノリノリな赤い人、おや? そういえば遠坂は何処だろう? まあこういう場所にはよく見かけないが、ここまで人が集まっているのなら興味半分で来ると思うが。
「っと、そういえば凛の奴、屋敷の中で変な宝箱の中に入って遊んでいたな、何だか嫌な予感がしたんであえて開けなかったが、今頃どうしていることか」
遠坂の奴またゼルレッチの第二魔法で作られた宝箱に閉じ込められたのか!?
今頃は例のステッキでおかしな事になってない事を祈ろう、って言うかアーチャー。あえて開けろよ!!
「シロウ、魚がまったく釣れません、どうした事でしょう!?」
どうしたもこうしたもセイバーの釣り運が無いのだろう、勝負にこだわるセイバーはそれが許せないのか、いつの間にか甲冑を身に纏っている、まずい、戦闘モードだ!!
「くっそー、何でワカメがこんなに釣れるんだよ、それもこれも全部あのランサーの所為じゃないか、あいつが僕の愛用してた釣り竿さえ取らなければ、今頃はサバやタコが取り放題だったんだぞ!!」
そういえばランサーが使っている釣り竿って慎二のだっけ、でも慎二、お前じゃいくら頑張ってもタコは無理だと思うぞ、ワカメ以外の生物を釣る慎二なんて慎二じゃない。
「うう……先輩、もう限界です。さっきからくうくうおなかがなります」
気持ちは判るぞ桜、だからって何故赤と黒のストライプの衣装を着ている! 明らかにヤバイオーラが吹き出てますけどーーーって桜、お前の影が赤いアーチャーのバケツに大量にいる魚を一匹一匹食っているぞ、というか。
お前か、アーチャーの魚を勝手に食ってたの。
食べるのは油断している金ピカで充分だよ。
「ギルギルーあっちの赤いのにまけてるよー」
「ぎるー、ガン○ンまだー?」
「ギルー、あっちでたそがれてるお兄ちゃんには勝ってるね」
「ふははははははは!! 贋作に遅れを取るのは屈辱極まりないが、まずは狂犬を倒した、残るは贋作を追い抜くのみ! セイバー、我を応援しろ! そしてカンタ、ガン○ンはいま少し待て」
誇り高く高笑いをする英雄王。ガン○ンくらい早く読め。
「……………俺の楽園………」
ランサー、ドンマイ……
ランサーがやけに可哀想だが、少しこの状況はいただけないな、このままだとオチがまったく見つからないじゃないか。一旦少し場を静めないと、さてどうしたものか………と、その時。
「皆の者、少し待て!!!!」
突如、何処からとも無く響いた男の声、皆が一斉に釣りを止め、声の方を振り向いた、その場所は俺の背後にいた、俺も恐る恐る後ろを振り向き、この戦争状態を止めた英雄を―――見た!!
「フー、フー、フー、はむ、ほ……ふむ、はふ、は……フー、フー、ふむほむ!」
何故そこにあるのか、高級レストランに置いてありそうなテーブルクロスの敷かれたテーブルの上で、物凄い形相で物凄い息遣いで、かつかつと蓮華を動かす、そんな音を立てて麻婆豆腐を食べる一人の男!
「ふー、ふー、ふー、……皆の者、ここはまず私の提案を聞くと良い」
麻婆豆腐と言えばこの男、聖杯戦争の管理役にしてFate本編のラスボス率ナンバーワンのこの男、言峰神父だー。
―――――――
―――――
――――
―――
――
―
何で生きてるのアンタ!?
この場の全員が思ったのは言うまでもない、だがそんな疑問もどうとは思わないのがこの作者の思想、ギャグコメディーの掟、Fateの醍醐味!(?)
言峰が麻婆豆腐を高速で食べ終わると、何食わぬ顔でこの場にいる全員に告げる。
「…さて、さすがにこの荒れ模様は些か見過ごせないな、いわんや、聖杯戦争が終わったとは言え、やはりサーヴァントたちの戦闘意欲は衰えず、か
よかろう、そこまで言うのならば、この私が宣言してやろう、今ここに、第一次フィッシング戦争を開幕する!」
『な、何だって―!?』
―――いや皆、別にそう驚く事も無いのでは、とは言っても俺も驚いたが、まあとにかくこの状況をまとめるには相応しく、そして的確な判断だ言峰。
「説明しよう、今から二人一組のペアを作り、一時間以内により多くの魚を釣ったペアが一位と、至って簡単なゲームだ、じゃなくて戦争だ。ちなみにペアは私が今いるメンバーを見て平等に考えてみた」
なんと手際の良い神父だろうか。さすがだぜ麻婆神父、伊達にラスボスやってないな。
ちなみにペアは確かに平等だ、何故か俺も入っているが、俺はセイバーとペアを組むようだ、そして慎二は桜と、金ピカことギルガメッシュはアーチャーとだ、そして楽園を失ったランサーは人数が足りないのか、何故か言峰とペアを組む事になった。
「待て言峰、なぜ我が贋作と組まねばならん! 我は一人で充分だ、どうしてもと言うのならカンタやミミとペアを組む!」
子供好きな英雄王はアーチャーと組むのが嫌ならしい、まあ確かにギルさんはアーチャーにトドメをさされたからなー。
「ふん、オレもお断りだな、傲慢な英雄王と組むなど、これならば一人でやった方がマシだ」
「何だと? 我を傲慢と呼ぶか贋作! セイバールートでは雑種に無駄な入れ知恵をして狂人に討たれた分際で!」
「あれを馬鹿にするか? 確かにあれはセイバールート唯一の活躍だがな、あの場面を侮辱するなよ英雄王、そういうお前は桜ルートで油断して退場したではないか」
「ぐぅ、あれは……まあ我の失態だ―――とにかく! 言峰変更を要求する!!」
嫌な言い争いだ、どうでも良いがアーチャーの方はカッコイイ塵ざまだが、それに対し英雄王のはなんだあの体たらくは、桜には悪いが、どうせなら宝具の全てを出し切ってでも倒せ。
まあとにかく、一度決めた事を言峰がそう簡単に覆すわけ――――
「……判った、そこまで言うのなら、ギルガメッシュはセイバーと組め、アーチャーは衛宮士郎と組め」
「「なっ!?」」
驚きの声は俺とセイバーだ、セイバーが本気で困り怒った表情をする。
「何故だ言峰綺礼!? 何故私がギルガメッシュと組まねばならない! 既にシロウと組むと決まったのでは!?」
「そうだ言峰! 何でよりにもよってアーチャーと組まなきゃいけない!?」
「それはこちらのセリフだ、言峰、こんな理想しか追い求めぬ偽善者と組まねばならん!?」
「いいや! いいや良いぞ言峰!! 我は貴様の考えたぺアに賛成だ、褒美に後に黄金の湯船を提供してやろう!」
「なあ言峰、どうでもいいがなんで俺がお前と組まなきゃならねぇんだ?」
「ふん、一応は貴様のマスターだからな、先程カレンからマスターの権利を譲ってもらったのだ」
「あっそうかい、どうでも良いが、俺はあんまりやる気は無いぜ、やりたきゃ一人でやってな」
俺たちの反論を(金ピカは大賛成だが)完全無視し、ランサーと何やら話していた。
「ふむ、それでも良いが、いいのかランサー? このフィッシング戦争に優勝すれば、この楽園とやらをお前一人だけにしか使わせないが」
「なっ―――――!?」
その言葉にランサーの表情が変わった、あの表情はゲイボルクを構えて投げるか突くか、その直前の表情、いつ懐からゲイボルクが飛び出してくるか判らないぜ! とにかく先程まで死に体のようだったランサーの表情に活力が戻ったのは言うまでもない、そして。
「いいぜ! その提案に乗ろうじゃねぇか! なら始めよう、とっとと始めよう! あの貧窮王子とコピー野郎、それにセイバーの小僧と大食い王と、ワカメと怖い嬢ちゃんをぶっ倒すぜ!!」
「ふむ……では、これで準備は良いかな?」
『良くない!!』「さっさと始めろ雑種どもー、ゆくぞセイバー、我等の愛を見せる時ー」
俺たち三人と喜ぶ英雄王が騒ぐ中、間桐の仲良し兄妹は。
「くすくす、兄さん、あれほど言ったでしょう? 私の部屋には入らないでって」
「え……いや、あれはほら、兄ちゃんたまには桜の部屋を掃除したいなーって出来心で、ほら、いつもお前には迷惑かけたし、だから別にやましい事はしてないはずですのーーーー!!」
「でも、だからってどうして私が部屋に入った時、私の日記帳を見てたのかしら?」
「え―――あ、あれはほら、たまたま掃除している時に出てきて、ちょっと興味があったらか……」
「なら何で掃除道具が一つもなかったのかしら? ねぇ、ワカメ」
「ヒィィィィーーーーー!!!! うわぁぁぁん衛宮ーーー! 桜が僕を兄さんって呼ばなくなったーーー!! って影が、影が迫ってますーーー!!」
いつの間にか慎二に不条理デッドエンドが発動していたが、そんな事は関係なしに、第一次フィッシング戦争が幕を開けた。
開始10分、早くも先制するはランサー&言峰ペアは今10匹目を釣り上げていた。
「はっはっは! どうだ? 俺様の力、思い知ったか!!」
「ふむ、もう10匹目か、しかも釣り上げているのはランサーばかり、これは力の差がついたか、まだ他のペアは一匹二匹と少ないようだな」
ランサーの猛攻にセイバー&金ピカペアと俺とアーチャーペアはかなり焦っていた、え? 桜と慎二? ああ、あの二人は仲良くじゃれあっているよ、仲が良いのは美しいかな、桜の影が慎二の体を持ち上げている。
「くそ、ランサーめ、ここでに来て遂に本領を発揮したか! どうした衛宮士郎!? 貴様の力はその程度か!?」
「そういうお前こそなんだよ、さっきまで面白いように釣れてたじゃないか、所詮最新型のリールもお前の投影じゃ旧型にまで落ちるってか?」
「ほう、そういうおまえこそオレと同型機を投影しておいて何を言う、所詮、無謀な理想を追い求めるが故の行動だろうが、それが命取りだぞ衛宮士郎!」
「―――っ、うるさい、少し黙ってろ!」
「ふん、言い返せなくて逆ギレか、まったく、お前の親の顔が見てみたいものだ」
あんたも知ってるだろうが。
「っと、そんな事を言っている間に、3匹目フィィィィイッシュ!!」
「な、何でアンタだけさっきから釣れているんだ、同じリールなのに」
「無様だな、これが技量の差だ、これがアングラーたるオレの力だ――――さあ、衛宮士郎」
「なんだよ」
「――――――ついて来れるか?」
「アングラーの道にか!? ついて行けるか! ってか追い抜きたくもないしついて行きたくもない!」
そんな名言の一つを言っても、何が悲しくてアングラーの称号を得なければ行けないのだ――はっ!?
まてまて、こいつの未来がアングラーなら、俺もいつかこんな釣り好きになっちまうのか!?
認めない、認めるわけにいかない、絶対にこいつは認めないぞ! 俺は、俺を信じて突き進むから!
「ぬぅ、何を勘違いしているのか知らんが、お前もかなりの釣り好きに見えるがな」
「う、うるさい、つべこべ言わずに釣り続けるぞ!」
そして俺たちから離れる事数メートル、子供たちに囲まれながら不機嫌そうに釣りを続けるセイバーと満足そうなギルガメッシュ。
「ギルー、そっちの姉ちゃん不機嫌じゃない?」
「ぎるー、先にガン○ン読んでるねー」
「ギルギルー、まだあんまり釣れないねー」
「はっはっは、馬鹿を言う出ないぞコウタ、セイバーは上機嫌ではないか
コウタ、我より先にガン○ンを読む気か! だがその度胸は良し、コウタの英雄王を恐れぬ心に免じて許してやろう、さあ読め!
ミミ、たまには大逆転をするのも美しいであろう、見ておれ、これからセイバーと共に魚の山を作ってやろう」
子供たちに応援されるたびに上機嫌になる英雄王、対する騎士王は不機嫌オーラ全開、何だか頭のクセ毛が小さく見えるのは気のせいだろうか?
「まったく、何故私が英雄王とペアを組まねば――」
「わははは、恥ずかしがるなセイバー、勝利の暁にはズワイガニを一匹授けよう」
「な……あのカニの中でも頂点に君臨するあのズワイガニをですか!? わ、判りました英雄王、ここは一時手を組みましょう!」
「良きかな良きかな、では行くぞセイバー、贋作コンビと狂犬と言峰を倒すぞ―――む? ところでセイバー、どうした? そのアホ毛は、おまえのチャームポイントが落ちかけているぞ、よし、我が直してやろう!」
あろう事かセイバーのクセ毛を触ろうとする命知らず、もちろんただで触られるセイバーではなかった、すでに先程から甲冑を着ていて、今度はいつの間にか構えていた不可視の剣から眩い光が噴出す。
「む、むむむむむむむ?
いや待てセイバー、何故エクスカリバーの準備をしておる? な、待てセイバー、何か我が気に障ることでも」
「死ね! ギルガメッシュ!!」
「―――――約束された」
「おお、少し待て、天の鎖よ、我を助け―――」
「勝利の剣――――!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!」
眩い閃光が線となって放たれた、哀れギルガメッシュはエクスカリバーをモロに喰らい、海の藻屑となった、海を大きく抉った光りの惨劇は、あろうことかセイバー&ギルガメペアに幸運を呼び込んだ。
海が抉れ、空から海の雨が降り注ぐ、それと同時に魚の雨まで降ってきたではないか。それにセイバーは風王結界で魚をバケツの中に叩き込んだ――あれってこんな使い方でしたっけ。
「ぐぅ―――おのれセイバー、我にエクスカリバーを放つとは、万死に値するぞ!!」
なんと、ギルガメッシュは何とか生きていた!
海の中から上がってきた英雄王は子供たちに声援を送られながらも立ち上がった、足がふら付いているぞ。
「まあ良い、まずは雑種どもを蹴散らす、もはや勝敗は目に見えているがな、感謝しろ贋作ども、この英雄王がそなた等に引導を渡してやろう、我を倒す愚かな自身があるのなら、特と見せろ贋作の惨めな力を。今の戦況はセイバーのおかげで我たちの魚の数は100を超えた、この我たちを倒すほどの自身をまだ見せるなら」
ボロボロの体で俺とアーチャーに向いて、宣戦布告をする。
「―――これの三倍の数の魚を持ってこい!!」
「どうでも良いですがギルガメッシュ、三倍も持ってこられると、あと三発エクスカリバーを放たなければ勝てませんよ」
「くぅ、その程度心得ておるわ!! さあどうする贋作、それとも諦めたか? それもまた良し、残る敵はランサーと言峰のみだ!」
諦める? なんでさ、まだ俺たちが諦めたなど、どっちも言っていないはずだ。
良いだろう、英雄王、そこまで言うのなら見せてやろう、俺たち、ダブル投影の実力を!!
「ふん、仕方が無い、一時的にだが、本気で力を合わせるぞ、士郎!」
「判っているよ、いくぞ、アーチャー!」
お互い釣り竿を持ち、目を合わせてお互いのやるべき事を確認する。
もはや準備は整った、相容れぬ二人のエミヤ、その二人が今始めて共闘を得た!
『――――体は釣り竿で出来ている』
『――――I am the bone of my phishing』
「ぬぅ!?」
ギルガメッシュが動揺する、同じくセイバーも焦る。
『――――この体は、無限の釣り竿で出来ていた!!』
『――――My whole life was “unlimited phishing works』
「むっ!? これは!?」
「な、なんだぁ!?」
ランサーと言峰も動揺する中、俺たち二人は呪文の詠唱を終えた、刹那、炎が俺たちの周りを走ると、世界は一変した。
生物など存在しない世界、あるのは大地に突き刺さった釣り竿のみ。
固有結界―――
これが、衛宮士郎とアーチャーこと英霊エミヤにのみ許された魔術、禁呪中の大禁呪
その名を―――
『無限の竿製』
釣り竿の丘に呼び込まれたセイバー&ギルガメッシュ、そしてランサー&言峰。
俺たち二人は悠然と竿の丘の中心に立ち、敵を睨む。
「これは――固有結界!? これが貴様らの能力か!!」
ギルガメッシュが叫ぶ、隣りに身構えていたセイバーも厳しい表情をして俺たちと対峙する。
「く、ここまでして勝利を勝ち取りたいのですか!? シロウ! アーチャー!」
そしてもはや蚊帳の外となってしまったランサーと言峰は。
「わー、凄いぜ言峰、どうでもいいけどよ、早く出してくれねぇかな?」
「ふむ、竿の丘なのは判ったが、果たしてどうやって釣りをするのだ?」
俺とアーチャーは真剣そのものだ、ギルガメッシュとセイバーを睨み、アーチャーが言う。
「答えは得た、大丈夫だよセイバー、俺も君もいずれ救われるさ」
「どうでも良いですがアーチャー、釣りは何処でするのですか?」
「――――――ッ!?」
「いくぞ英雄王――――釣り竿の貯蔵は充分か」
「ハーハッハッハ!! 笑止、この我を超える気か雑種! 贋作が原典に勝てると思っているのか!!」
もう何が何だかわかりません、そんな表情で事の成り行きを見守るランサーと言峰、そんな中、二人はそれぞれ、ぼそっと呟いた。
「……俺の楽園は………」
「……何故か、勝負の趣旨が変わっていないか?」
もはや釣りなど関係なしの本気の聖杯戦争がはじまろうとする中、ギルガメッシュの手にはいつの間にか士郎とアーチャーでは投影不可能の最強の剣が構えられていた!
「ゆくぞ雑種! 王たる我の力を見せるのは不愉快だが、致し方ない、エア! おまえの力を見せる時!」
「―――はっ!? しまった、釣り竿ばっかで剣がない! ってなんで戦う気満々なんだあんたはー!」
「愚かだな衛宮士郎、よりにもよって釣り竿の丘など作りおって、純粋に釣りを楽しめばよいのに」
そう言うアンタも一緒になって呪文詠唱してたろ。
っとそれよりも黄金のサーヴァントがあの宝具を俺目掛けて放とうとしています!
『――――天地乖離す』
「ぬ、シロウ!」
セイバーが叫ぶ。さて、俺も何か武器を――って何でこんな世界を作っちまった俺とアーチャー!
デッドエンドが発動しそうな中、ギルガメッシュは放つ。
「開闢の星――――!!」
まずい、明らかに破滅の光が俺に放たれた、だが、俺の目の前に一人の男、アーチャーが背を向けて仁王立ちし、俺に首だけを向け―――
「――――ついて来れるか?」
「アンタ馬鹿でしょ!!」
そして二人とも死に直面した――その時、破滅の空間断裂攻撃が一本の鞘によって防がれた。
『全て遠き理想郷―――!!』
あらゆる干渉を遮断する無敵の守りは、エアによる空間断裂さえも防ぎきる!
「おのれぇ――その程度の小細工でーーーー!!」
鞘で防ぎながら、セイバーの手には黄金の剣が構えられていた。
『――――約束された』
「セイバーァァァァァァァァーーーーーーー!!!!!」
『勝利の剣――――!!』
黄金の光がギルガメッシュをに直撃した、さながらセイバールートの最後を思い浮かべるが、はてはて、こういう結果になってしまった過程の道順を思い出すとなんともばからしい、何故釣り勝負が普通の戦いに?
「ふん、さすがセイバー、鞘さえあれば彼女は無敵だな」
カッコよく言っているとこなんだが、その両手に大量に持った釣り竿は何だ。
「―――シロウ、貴方を、愛しています」
いつからそっちのルートに入ったんだ!? って消える気かセイバー!
「答えは得た。大丈夫だよ遠坂。オレも、これから頑張っていくから」
あのーアーチャーさん、成仏するのは勝手ですけど、この場に遠坂はいませんよ。
釣り勝負など忘れてしまった俺たちを遠くから眺める、失った楽園の王者ランサーと麻婆豆腐の言峰神父は――
「………何だ、このオチは」
「―――俺の楽園はどうなるぅぅぅぅ―――!!」
―――その頃、港では。
「うわー、ギルたちが消えたよー何処にいっちゃったんだろうー?」
「ねぇねぇ、あの大きな影はなんだろう? ワカメのお兄ちゃんが死にそうだよー」
「って言うか死んでるんじゃない? どうでも良いけどガン○ン面白いなー」
「すごーい、マジックだマジック!」
「がんばれワカメ―! 負けるなワカメ―!」
「くすくす、兄さん、さようなら」
「ひぃぃぃぃぃ!! 誰かーーーー!!??」
ランサーの楽園は、今日も波乱続きでした―――。
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