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王都ラシクリウス編
10歳:「お父様の事情(4)」
 
 
「それで、いきなり結婚だなんて、どうしたんだ?」
「ん~、あ~……」
 
 
 お父様の両親の話をフェルにするかどうかを悩む。
 
 フェルは私の素性を知らないけど、私はフェルの名前をシズネさんから聞いている。
 話したところで、私の素性がバレるとは思わないし、フェルにならバレても問題はないと思うんだ。
 出会ったばかり相手を何でそこまで信頼しているのかと問われても、上手く言葉にはできないけど。
 
 あ、そうか……私がフェルを気にしている原因の1つがわかったような気がする。
 
 前世の私が育った施設にもフェルやペートのような子たちがいた。
 小さくして大人になることを選ばざるを得なかったような、そんな子たちだ。
 だから、私は彼らのことが気になっているのだろう。
 
 いわゆる――昔の自分を見ているようで、ってヤツだ。
 
 すごくしっくり来た。が、ひとまずこの思いは横においておこう。
 フェルに気軽に話せる内容でもないし。
 
 
 さて、フェルは結婚について小難しい言葉を並べていたが、結局のところ、仕事の契約と同じような感覚なのだろうか? それが貴族らしいってことなのか?
 なんというか、理屈としては分からなくないけど。
 
 
「話してみろ。力になれそうなら力を貸すぞ。ユーリと私は友達だろう?」
「ぷっ……」
「む? ボクは何かおかしなことを言ったか?」
 
 
 私が静かに黙っていたせいで、かなり深刻な話題だと思ったようだ。気づいたら、フェルがすごく真面目な顔をしてこっちを見つめていた。
 この間から思っていたけど、けっこう友達っていうのに拘るよな。ちょっと可愛いとか思ってしまう。
 
 
「そうだね……フェルに聞いてもらおうかな」
「ああ、聞くから話せ」
 
 
 フェルにうながされるまま、私はお父様の両親の話からリックを養子の件まで、個人名ではなく私との関係性を代名詞に、自分の価値観や考え方を交えつつ、ざっくりと説明する。
 
 
「ユーリは貴族の生まれだったのか……」
「いや、今の話を聞いての感想がまずソレって、どうよ?」
「すまない。少し意外な気がしてな。よく考えれば魔術を習うには、それだけ余裕がある家でないと無理だったか……」
「まぁ、うちは両親とも庶民的だから、その影響もあるかもね。それで他には?」
 
 
 魔術は誰に習ったわけじゃないけど……。それを指摘すると色々と面倒な説明が必要になるため、あえてフェルの勘違いを否定しなかった。
 
 
「そうだな……ボクとしては、そのお祖父様の件とやらで、少なくとも誰かが不幸にはなったようには思えないけどな。もちろん、産みのお祖母様が若くして亡くなったことは別として、な。
 それにユーリも言っていたが……お父様とお祖父様の間で、何かがあったのか、何もなかったせいなのか、そこが分からない」
「やっぱ、そこに行き着くかぁ……」
「しかし、ユーリの髪と瞳は父親譲りなのか。ボクのとは“正反対の美しい色”だな」
 
 
 ん?
 
 
「あのさ、訊くけど……フェルから見た私の髪と瞳の色って、“何色”なの?」
「は? 両方とも黒だろう? だから、ボクの白とは正反対だと……」
 
「……それって、見間違えとかではなくて?」
「そんなハッキリした色を見間違えるわけないだろう? それとも、もっと詩的に艶めく宵闇のような色だ、とでも言えばいいのか?」
 
 
 どういうことだ?
 仮説として、フェルの言う黒と私が知っている黒は別物とか?
 
 
「えっと、フェルが言う黒っていうのは、こんな色?」
「それ以外に黒があるのか? もちろん、同じ色でも少しの違いで呼び名が異なる事があるというのは知っているが……」
 
 
 丁度履いていたズボンの布が黒だったので、つまんで見せてみたが、私と同じ色をフェルはきちんと黒だと認識してるようだ。
 そもそも私の髪と瞳が同じ色と言った時点で変か?
 私の髪は淡いシルバーブロンドだし、瞳の色は青だ。
 
 
 …………と、ここでもう一つの仮説が生まれた。
 
 もしかして、フェルには前世の私の姿が重なって見えて……いる、とか?
 
 
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