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プロローグ
??歳:「暗い水の中での温もり」
 
 
 温かい…………。
 
 
 オレは確かトラックにぶつかりそうになって…………、と、そこまで考え、その後の記憶がないことに気づく。
 
 
 意識はあるが、まるで夢を見ているかのようにボンヤリと考えが上手くまとまらない。
 
 
 手足も顔も上手く動かすことはできない。事故のせいだろうか。
 
 辺りは暗く、身体は温かな液体に包まれている。
 
 
 
 
 以前、ネットワークのテクノロジー系ニュースで見た有機ナノマシンカプセル治療という単語が思い浮かぶ。
 
 特殊な液体が入ったカプセルに医療用有機ナノマシンを散布させて、患者を細胞レベルで治療する技術だ。
 
 つまり、オレはそれほどの重体なのだ。
 トラックに追突されたのだから、命があっただけでも儲けモノだろう。
 
 
 
 
 ここまで考えがまとまるまでに、苦労をした。
 
 苦労というのは、少し意味が違うかもしれない。
 今のオレには、自分自身について、ボンヤリと想像をめぐらせることしかできない。
 そのボンヤリと想像することでさえ、とても時間が掛かるようなのだ。
 
 
 
 
『Oooo……Ooo…………OOOoOOOooo……』
 
 
 
 
 時折、カプセルの外側から人の声や歌などが聞こえてくる。
 
 
 聴覚自体が上手く働いていないのか、正確に聞こえているわけではなく、なんとなく、オレに語りかけているような、そんな気がしているだけかもしれない。
 
 
 
 
 すごく穏やかな気持ちだ……。
 
 
 オレの身体を包む温かな液体は、ゆっくりと揺れる。
 
 
 それがまた、オレを穏やかな気持ちにさせ、意識が夢と(うつつ)を行ったり来たりする。
 
 
 もしかすると、誘眠作用がある薬品が液体に混ぜられている可能性があった。
 それくらい寝ても寝ても寝たりない。
 
 
 オレは、身体を治すのが最優先だと考え、眠気に身を委ねて、できるだけ身体を楽にしていた。
 もっとも考えることと寝ること以外、何もできそうにはなかったが……。
 
 
 
 
 そして、オレは、突然押し出されるような流れに巻き込まれ、カプセルから追い出された。
 
 鈍い痛みとヒヤリとした外気を感じ、思わず……、
 
 
「ほぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ…………」
 
 
 漏らした声は、上手く言葉にならなかった。
 
 
0


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