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人を殺すモノ
作:安達 奇妙丸


部屋の隅で、背後を壁で守るようにして、サキはベッドに座っていた。
プレーヤーからは最近流行りの邦楽が流れている。既にこの音量で音楽をかけるのは迷惑になる時間であるが、サキはがたがたと震えるばかりで一向に音楽を消す気配はない。


ふーっ、ふーっ、ふーっ……


部屋中に響く音楽だが、サキには自分の呼吸音がはっきりと聞こえる。
携帯電話が、異様に白くなった手で握られている。それは力の入れすぎか、恐怖のせいか。


ぴりん


刹那、手中の携帯電話が鳴る。どうやら友人のマイからの着信のようだ。

「サ、サキ!助けてぇ……」

荒い呼吸をしながら必死に訴えるマイ。しかし、助けを請う友人の声に対してサキはただ冷や汗を流すしかなかった。

「あ、あぁ……来る。廊下を歩いて……どうしようどうしよう……」

がちゃり、という音は扉を開けた音だろうか。

「ひ、ひ……やめてやめてやめ…………」

通話の終了を示す機械音を聞きながら、サキは呟く。
「何で、何でなのよう……」

数時間前から五人の女友達から同じような電話がかかってくる身の上なら、そう呟くのも無理はない。
彼女達は何かにすがりたくて電話してくるのであろうが、何の力にもなれないサキにとっては恐怖を助長するだけでしかなかった。

「あんな事したからだ。冗談のつもりだったのに!五人とも、死んだ?あの時はあたしを入れて七人いたから、あとはあたしとユウコちゃんだけだ……」

恐怖で萎縮し、痛みすら感じ始めた頭が最悪の結末を導き出す。

「次は、あたしだ……」

遂に涙を流し始める。サキは部屋に嗚咽の音を漏らす。
どこかに逃げようか。いや、逃げて、だから何なのだ。
「あれ」から逃げ続けるなんてできっこない――


――しん


遂に邦楽が流れ終わり、余韻を残すことなく静寂が訪れる。それはこのうえなく不気味で、不吉だった。

「う……」

予感がする。
「あれ」が、来るのだ。
家中の音を網羅出来るほど、聴覚が研ぎ澄まされていくのがわかった。


ぴりりん


また携帯電話が鳴る。同じ音量の筈が今度は大きく感じられ、サキはびくっと体を揺らす。画面を見れば、メールであった。


3/3 03:14
From:ユウコちゃん
Sub:(non title)
今霊能者の人に連絡がついて、聖水の作り方を教えてもらったよ。材料はなんとかなるから、早く作った方が良いよ。他の五人にも送っておくから。


「……聖水?」

一緒に送られてきたレシピを見ると、家にあるもので作れそうな内容だった。
慌ててサキはベッドから降りる。うまく足が動かずに這って移動する。

「死にたく無い。死にたく無いよ……」

部屋を出て、サキは這ったまま台所に向かって――



急遽開かれた。全校集会。校長が沈痛な面持ちで語る。

「命とは何にも代えられないもっとも価値のあるものです。皆さんは絶対に命を粗末にしないでください。……では、自殺という悲しい行為で命を落とした吉村サキさんに、全員で黙祷しましょう……」



「アハハハ。ねぇ、あんなになると思った?」

「まさか!あそこまでとは思わなかったわよ。というか、私ってば女優になれる?」

「アハハハハ。それは調子に乗りすぎよ、マイ。」

「フフフ。でもユウコ、あなたあんな事考えるなんて怖いわねぇ。」

「あら。だってみんなサキには死んで欲しいって言ってたじゃない。」

「確かにね。でもホント見事にあの娘飲んだわね。聖水だっけ?アハハハ。まさか聖水を飲んで死ぬなんて思わなかったでしょうねぇ……」


茜色の光に染められた放課後の教室。
花が添えられた席を囲んで、六人の女は笑い合う……


この作品は私の処女作です。今後の作品の参考のために皆様のご意見をお待ちしております。













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