ミカエル 地上へ
いつものように、人間界に送る魂の選択をしていた私のもとに使者が訪れました。いわゆる天使という方です。天使と言えば優しい羽の生えた子供を想像されるでしょうが、これも形としては気体です。ただし、天使ともなると気体輝きがある。まるで、太陽に透かした水蒸気のごとく眩い光を纏っておられる。
「ごきげんよう、送り役のミカエルさん」
「どうも、」私は、急に名前を言われてびっくりした。
「今日は、主よりの伝言を伝えにまいりました。」天使は微笑をたたえながら私に近づいてまいりました。
「実は、魂の数が少し増え気味なので、300年前にふたつに分けた魂をひとつにして欲しいとの、ことなんです。」
「でも、なんで私にその使命が?」
「ミカエルさん、最近、魂をふたつに分けませんでした?主はなんでも知っていますよ。」
「いえ、それは・・・」
「いやいや、良いですよ。主は全てをお許しになっていますから。ただ、分けたことがある方が、くっつけるのが良いだろう。そういうことでございます。」天使は、先ほどの微笑みの中に少し皮肉なものを含みつつおっしゃいました。
「かしこまりました。しかし、どのように?」
「とりあえず、臨時のアクマと言うことで人間界に行ってもらい、なんとかふたつの魂を結びつけて頂きたい。どんな苦を与えるかはお任せします。」
「臨時のアクマですか?臨時の天使ということにはなりませんか?」
「人間界には天使は行けませんよ。天国の途中に迎えに行くまでです。」
「え?人間界に天使はいないのですか?でも、キューピットは?」
「あー、キューピットね。あれは、恋と呼ばれる苦を専門にしてるアクマですよ。天使は恋なんて、苦しみは与えません。ただし、キューピットの結んだ恋は永遠に離れることが出来ない。ある意味では最高の苦かも知れませんね。」天使は、少し悲しげに説明をしてくれました。
「なにしろ、これがふたつの魂の経歴書と、臨時アクマ証ですから、無くさないようにしてくださいね。」天使は、ふたつのファイルと、古ぼけた布に「臨時」と描かれた布切れを私に手渡しました。
「それで、私はいつ行けば?」私はファイルを小脇に抱え、布切れを無くさないように握り締めて聞きました。
「今すぐですよ。行きかたは分かりますよね、送る役なんだから。私は他にも伝言を届けなきゃいけないところもあるので行きますから、後はよろしくお願いしますね。」
私は、書類と布切れを手に人間界への入り口めがけて飛び込みました。
|