家
「私の言った通りになったわね」まゆは面白そうにリビングから、ソファーに座る二人に言いました。
「何が?」亜美が振り返って尋ねました。
「私、ハルと一緒に暮らすって言ったでしょう。」
「まだ暮らしてないよ。」春人は否定しました。
春人と亜美は、お互いに仕事の後の僅かな時間や、週末のほとんどの時間を二人で過ごしました。
特に何をするでもなく春人のアパートやホテル、時にはあみのマンションで抱き合い話をしました。魂が離れていた300年の空白を埋めるように。
結婚に拘ることもなく。
そんな関係が2年続きました。
「来週には私はパリに行きます。そうしたらハルは、ちゃんとママと結婚して、ここに引っ越してきてね。」
大学を卒業したまゆは、パリの画廊で働くことを決めたのです。
大学時代に何度もパリを訪れ画廊の女主人を口説き落として働かせて貰うことになったのです。将来は、自分でアトリエと画廊を作り自分で作家を発掘するのが夢なのです。
そのためには、本物を見てパリのやり方を学びたかったのです。
「結婚は、しないわ。一緒にも暮らさない。このままでいいわ」亜美は微笑みながらいいました。
春人となら、一緒に暮らしても煩わしさを感じることは無いだろうと思いましたが、まゆのことを考えると今のままが一番良い気がしたのです。今まで、まゆと二人で生きてきたという想いが、自分だけ違う人生を歩む気にはさせなかったのです。
「ママ、私はハルと暮らすと言ったのよ。私が帰ってきた時には三人で暮らしたいの。ママとハルが暮らす家に帰ってきたいの。」まゆは、亜美の気持ちを見透かすように言いました。
「僕も三人で暮らしたい。亜美と暮らす家でまゆちゃんを待っていたい。」珍しく母娘の会話に春人が入ってきました。
「亜美とまゆちゃんが良ければ郊外に家を買いたいんだ。古いけど感じのいい家が僕の事務所の傍で売りに出されているんだ。そこなら、まゆちゃんのアトリエも作れると思うんだ。」
「3人で暮らそう」
春人は、ニッコリ微笑んで言いました。
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