忘れ物
「大儲けだな。5日間で500万の儲けか。」愉快そうに副社長から亜美に電話があった。
「運が良かっただけです。これに懲りて今まで通り地道に営業してまいります。」亜美は、これを機会に業務の拡大を言い出される前に言いました。
亜美の元に債権回収の話が持ち込まれてからの5日間は、春人との5日間でした。
「こんにちは」インターン越しには髪の毛をさっぱりとした春人が立っていたのは、半年を過ぎた頃だった。
「あ、ハル。今ロックを解除するね」まゆは急いでマンションの入口のオートロックを解除し玄関を飛び出していきました。
エレベーターを降りてくる春人を見つけたまゆは、大きく両手を振りました。
春人は軽く会釈をしてまゆに近づいてきました。
まゆは久しぶりにみる春人にドアの前で抱きつきました。
春人は、持っていた菓子折りを両手で頭の上に持ち上げて大声で笑いました。
それを見ていた亜美は、こんなに大きな声で笑う人なのだと嬉しくなりました。
「どうしていたの?」あれ以来まったく連絡のない春人に紅茶を出しながらまゆは尋ねました。
「あの後、改めて司法書士事務所を開設するのにバタバタしてたんですよ。今度は、僕が社長で社長が副社長になりました。」
「また、お二人で仕事を始めたのですね。」亜美は嬉しそうに紅茶のカップを手にとって言いました。
「本当は事務所の方にご挨拶に行かなくちゃ行けないんですけど、忘れ物も届けたかったもので。」
「忘れ物?」まゆが不思議そうに家の中を見回しました。
「はい。」春人は意を決して言いました。
亜美は、春人から見つめられ、声が出ませんでした
「亜美さん、憶えていますか?<まゆさんが結婚すれば>って言ったのを。」
「ええ、なんとなく・・・・・」
暫く沈黙が続きました。
「言ったよ。ママはハルの気持ちしだいだって言っていたよ」
「ひえ」亜美は素っ頓狂な声で驚いた。確かに気持ちはそうだったかもいれないが興奮していたので良く憶えていませんでした。
「そうは、言っていませんよ。」春人はまゆのイタズラに笑いました。
「<僕にも都合がある>って言ったのですよ。」春人は真顔に戻り言いました。
「そんなことを言ったのですか。すいません、取り乱していたもので。」
「その答えをずっと言いたくて仕方がなかったのです。ずっとずっと。」
亜美もまゆも春人が言い出した突飛な話に息を飲んで聞き入りました。
暫くの沈黙が続き
「さっき頂いたケーキを出しましょうか」沈黙に耐え切れず亜美が言いました。
「いいえ、忘れ物を言ったらすぐに帰りますから。」春人は、席を立とうとする亜美を制止しました。
「僕の都合は全て解決しました。結婚して下さい。」
春人は、力強く言うと立ち上がり深く頭を下げました。そして、すばやく頭を上げると急いで玄関に向かいドアに手をかけました。
そして振り向いて
「答えはいりません。言い忘れたことを言いたかっただけですから。」そう言ってエレベーターを待つのも恥ずかしいらしく非常階段を走って降りていきました。
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