女として
「どうでしたか?」昼前に春人から会社に電話がかかってきました。
亜美は平静を装って尋ねましたが、朝から春人が元妻とどこで、どんな話をしているのか気になって何度も腕時計を見たり、窓から春人を探したりしていたのです。
「はい、少し考えさせて欲しいと言われました。また明日電話をしてみます。とりあえず今日は自分のアパートに戻ります。必ず明日はそちらにお伺いします。」
「そうですか。」亜美はなんと言っていいのか分からずに適当に返事をしました。頭の中は、二人の話している風景。
「すいませんが、もし時間があれば家に寄ってまゆの様子を見てもらえませんか?」亜美は、少しでも春人との関係を特別なもの、所長と客と言うだけの関係でないもの。そんな時間を長引かせたくて頼んでしまいました。
「はい、分かりました。今から様子を見てきます。」春人の声が少し嬉しそうに聞こえた気がしたのは、亜美の願望だけではありません。
「所長、今月も貸付、返済とも予算を少し越えそうですよ。」ぼんやりと切ったばかりの受話器を見つめる亜美に、杉田は嬉しそうに報告しました。
「良かったわ、ありがとう。」亜美は所長の顔に戻って優しく礼をいいました。
「あと一日、決着がつくのかしら?」
所長としての自分。
女としての自分。
その間にいる今の自分。
そんなことを考えながら、カレンダーを見つめていました。
「具合はどうですか?」退屈してソファーにゴロゴロするまゆに春人は尋ねました。
「奥さんとは逢ったの?」まゆは春人の質問に答えずに、ぶっきらぼう聞きました。
「離婚しているから妻ではありませんが会いました。」
「ママは上手くいくんじゃないかって言ってたけど・・・・?」まゆは亜美が作ったクッションをお腹の上でもてあそびながら言いました。
「そうですね。まだ分かりません。」
「元の奥さんは綺麗でしたか?また、好きになった?」
「どうでしょう」
春人は、曖昧な笑顔で答えました。
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