挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

記憶の旅(仮)

作者:もじ
「暑い……」


 車窓を眺めながら、私はそう呟いた。視界に映る渓流が如何に涼しげでも暑いものは暑い。
冷房くらい搭載しておきなさいと心の中で田舎の鉄道会社にクレームを入れながら、私は右手の平で顔を扇ぐ。
(全く涼しくならない……)
余計暑くなるだけな事に気付いた私は、大人しく右手の平を膝の上に置き暫くぼーっと景色を眺めた。


「婆ちゃん、元気かな……」


 私は唯一の肉親である祖母に思いを馳せる。祖母、婆ちゃんに最後に会ったのは四年前、小学校卒業式の日だ。
両親を早くに亡くした私は父方の実家に引き取られた。祖父は父の子供の頃に病死しており、婆ちゃんは女手一つで父を育てた。その父を亡くした婆ちゃんに自分が引き取られ、さらに厄介をかける事に対し幼心にも申し訳なさを感じた。


「ごめんなさい……」


 私と婆ちゃんの会話は、私のその一言から始まった。
(お父さん達には悪いけど、婆ちゃんと二人で暮らしてた時が一番幸せだったなぁ)
婆ちゃんはいつもにこにこしながら畑仕事をしていた。始め、私が婆ちゃんに気を使っていた頃、ただただ優しい笑顔を見せてくれた。
私が両親を亡くしたように、婆ちゃんも息子を亡くしている。婆ちゃんも辛いはずなのに、私のためにずっと笑顔でいてくれた。
婆ちゃんとの暮らしは決して裕福ではなかった。両親と都会にいた頃と比べ婆ちゃんのうちには何もないし、学校の友達にバカにされる事も多かった。それでも、幸せだった。


「早く、会いたいな……」


「……しもし、もしもーし」


 そう声をかけられき、私はうたた寝してしまっていた事に気付いた。もしかしてもう終電だったりして……そう思い慌てて時間を確認する。
(何だ、まだ二時じゃない)
嫌な汗をかき、一瞬だけだが涼しさを感じる。それはさておき、終電を知らせられる以外で私が誰かに話しかけられる理由は何だろうと思案するものの、全く適当なものが浮かばない。


「……何か、御用ですか?」


 仕方なく、その解答を求め声の主に話しかけた。見た感じ私より少し年上、茶髪にピアスのよく似合うイケメンさんだ。背中に背負っているのは楽器だろうか?


「ごめんね、気持ち良さそうにお昼寝してるところ、起こしちゃって」


気持ちよさそうに?私の今の姿を見て本当にそう思うのだろうか、彼は。どう見ても寝汗だらけのびちゃびちゃなワンピースを着た女が寝苦しそうにしている姿だっただろうに。
そんな姿を見られたのか……。


「いえ、別に。それより……」


「ああ、そうだね。よかったら、向かいに座ってもいいかな?」


 質問の意味がわからない。四人向かい合わせ座席は他にも沢山開いているだろうに……。
というより、私以外に乗客なんていないじゃないか。


「嫌です」


「え?」


 私の答えに、茶髪は呆気にとられている。恐らく彼のようなモテるであろう人種は、女が自分の誘いを断るという可能性を考えた事がないのだろう。


「あの……そう言わずにさ、仲良くしようよ、ね?」


 何故か必死に喰い下がる茶髪。一人が寂しければスマホで何かしてればいいのに。別に私だって意地悪で茶髪を遠ざけているわけじゃない。
一応、理由があるのだ。


「嫌です。あなたがここに座るなら、私は他の席に移ります」


「何でそこまで……」


(何故ってそれは)
 私が、男性恐怖症だから。そしてその原因を作ったのは、私を婆ちゃんから引き取った人達。
婆ちゃんの元では中学に通えない私は、小学校や役所の勧めでとある名家に引き取られる事になった。私は婆ちゃんと離れたくない反面、これ以上婆ちゃんの負担になりたくないと誘いを承諾した。
小学校の卒業式の日、婆ちゃんのいつでも帰っておいでという言葉に背中を押され、私は現在の保護者である夙川院家に引き取られる。
 そして夙川院家で私は、今現在通う全寮制の女子高に通うまでの三年間、ずっと性的虐待を受けてきた。
そのため、私は男の人が駄目なのだ。
(最も、こんな話初対面の人にしないけどね)
何か適当にやり過ごそう。


「私といると、呪われるから」

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ