第29話 溶岩
―第1グループ―
セトは、リーフの指導のもと、未だに修行をしている。ルナとノアもストレッチが終わったらしく、今度は魔導の練習を始めた。
『ルナ、これだけは言わせてもらう。お前のコントロール、パワーは申し分ない。ただ、持久力をつけようぜ?』
「はぁ、はぁ……、持久、力?」
『マラソンだマラソン! ほら、行け!』
2人は、その辺をぐるぐる回り始めた。ノアは、後ろについて背中を押してあげたり、波動を放ったりし、ルナに手助けをしてやった。
『もっと、走れるだろう?』
「私が、じきゅ、りょく、無いの……知ってる、だろ!」
『えー? 聞こえんなぁ?』
「もう、おまえ死ねっ!」
ルナはノアに波動を放った。その結果、ノアは石に当たって気絶寸前。途切れ途切れに笑いながら呼吸をし、セトたちのほうにむかった。
「ふう。随分がんばってるようだなぁ、セト?」
「あったりまえです! 私だけ遅れてるみたいで嫌なんで。ぜーったいに、負けませんよっ!」
「いや、」
ルナはそこで言葉を止め、目を閉じ、耳をすませた。地響きがはっきりと聞こえる。セトとリーフ、そして石に張り付いていたノアも、その異変に気がついたようだった。
「地面がないている―――?」
『いや、正確に言うと、黒炎山だ』
ノアの発言の直後、大きな爆発音が聞こえた。黒炎山から、溶岩が流れ出しているのが見えた。このままぼーっとしていると、みんなおだぶつになってしまう。
『まずいです……みなさん、飛びましょう!』
ルナはすんなり雲を出し、のった。セトもたこをだし、とび上がった。守護霊たちは何も無しで飛べるので、苦労することはなかった。
「あつっ! あついですよここ!」
『作業開始ですー!』
「ど、どうやって!」
『う〜ん……?』
セトは、溶岩は一度体験したことがあるが、何度体験しても馴れるということはなく、あついだけであった。ふと、セトはいい考えが浮かんだ。
たこに、この溶岩を食べてもらおう、と。
「さぁ、たこ! 全部食べてください!」
『せッ、セトちゃん! 無茶ですよ!』
「大丈夫です。ここは、信じてみません?」
たこの興奮は止まらない。あの、赤く高温の溶岩を見て、息が荒くなっている。これ全部食べていいの!? と言わんばかりであった。
たこは、溶岩にだんだん近づいていく。勿論、背中にセトを乗せて。
「え……? ちょ、ま、私を下ろしてから行ってくださいっ!」
セトの言うことも、今のたこには聞こえていない。そんな様子を見ていられなかったルナは、セトの手を引っ張り、救助した。たこにはそんなの関係ないようで、目を輝かせて溶岩へと進む。
「ぶしゅ―……!! しゅぅぅぅぅ!」
たこはやけどしないのだろうか、と不安そうに思ったり、おいしそうに食べるなぁ、と嬉しそうに見てみたり。まぁ、簡単に言えば『どっちの思いも五分五分』であった。
(大変そうだな。ちょっと、手伝ってやろうかな)
セトは、さすがに量が多すぎるかとおもい、水を出して作業を手伝おうとした。
『いいこと考えました! 溶岩を水で固めて、杖にしまっておいて、たこが食べたいときにいつでもあげられるんじゃないですか!?』
「リーちゃん、その考えいい!」
早速、作業に取り掛かった。セト以外は水を溶岩へかけている。セトは、たこの保護者として溶岩をしまっておくことになった。
「これでいいだろ。セト、今から私たちが」
『魔法をかけま〜す☆』
『この溶岩が杖に収納しているときにあつくならないように、だ』
ルナ、ノア、そしてリーフは、変な呪文をごにょごにょ言っている。声が小さくてごにょごにょしているのではない。セトには理解不能だったのだ。
「……すごい」
溶岩は見る見るうちに固まっていく。セトは杖の先端部分を開けて、溶岩をしまいこもうとした。しかし、全くと言っても良いほど入れ方が分からなかった。
『ああ、入れるにはですね、ん〜、自分で呪文決めちゃってください!』
「え゛!」
突然に言われて、どんな呪文が思いつくだろうか。セトは全く分からなかった。
『じゃ、時間無いので、私が決めた呪文を言ってもらいますよ』
「それは、後から変更できるんですか?」
『ええ。今は急ぎなんで。では、こう言って下さい。
タベタイナ オコメダイスキ タベタイナ』
その変な呪文に、しばらく思考が止まったセト。
「な、なんなんですかっ! そんな変な呪文は!」
『まぁまぁ、急いでくださいよ。はい、せーのっ!』
「う……(もうしょうがない!)タベタイナ オコメダイスキ タベタイナ!」
すると、その変な呪文からは想像できないようなことが起こった。溶岩がセトの杖に収まっていく。
『全部、入りました! たこ、ちょっとあげる』
杖の先端部分を開けて、溶岩を少したこにかけた。たこは飛び跳ねて喜ぶ。セトはその様子を見て、私は幸せだ、と思った。
―――今は。 |