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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕 が含まれています。

幸せな最期

作者:桜まくら
残夢のクローバーの方がなかなか進められなくて気分転換に書いてみたものです。

更新してないのにこんなの書いちゃってすみません!

必ずまた更新するので待っていてください…待ってくれている方がいたらの話ですが…
 左胸に突き立った、初めて味わうナイフの鋭い冷たさに、私はどこか安堵に似たものを感じた。

 幸い心臓には達していないようだがこの分ではいずれ、出血多量でこの世とはお別れすることになるだろう。お気に入りの真っ白なスニーカーはすでに見違えるほど鮮やかな真紅に染まっていた。


「あなたが…悪いんだから……私のせいじゃ……」


 こうなる事がずっと夢だった。こうなる事をずっと望んでいた。脳裏に焼きつくほどに目の前と同じこの光景を、何度も空想していた。


「全部…ッ!全部あなたが…!」


 言葉に乗せてぶつけられる、強い感情。怒り、憎しみ、苦しみ。そしてきっとそこには悲しさもあるのかもしれない。いや、あって欲しいと言った方が正しいか。

 彼女が今どのような気持ちでいるのか、知りたくないといえば嘘になる。恐らく確実と言っていいくらいに私への悪感情がそこには散乱していることだろう。

 だがしかし、私はこの期に及んで、彼女の胸の奥底には私に対する『愛』がまだ、暗闇の中に紛れ、欠片くらいは存在しているのではないかと…惨めたらしくも、そう期待していた。

 でも、それを確かめるすべは、時間は、もう私には残されていない。


「……んで…!…ど……し…て…!」


 彼女は私に、何かを訴え続ける。きっと聞いていて心地よい内容ではないだろうけれど、声すら段々拾えなくなっていくこの耳を少しだけ怨めしく思う。


 体の機能が徐々に停止する。そんな非日常な
 感覚を、非日常な場面で私は体感していた。

 失われていく感覚を体感するとは、少しばかり矛盾しているだろうか…



 生が奪われてなくなってしまうことに、未練でもなく、名残惜しさでもなく、ただ少しの寂しさを感じていた。死ぬことが嫌なのではない。きっと、彼女にもう会えなくなることがたぶん、悲しいのだと思う。



 だから、最後の力を振り絞り、せめて愛しい彼女を抱きしめようとした。声が出せなくなってしまった代わりの、別れの挨拶のようなものだ。



 だが…抱きしめるための腕どころか、足を使って立ち上がることすらもはや私にはできなかった。気力などほとんどないようなものであったが、こればかりは根性なんかでどうにかなる問題でもない。


 気づけば目も霞んでしまっていて、目の前にいる彼女の美しい顔を窺うことは二度と望めなくなっていた。それに連れて瞼が少しずつ降りてくる。





 憧れていた理想の死に方は、どうやらもうすぐ叶ってくれるようである。


 決して「幸せだった」なんて声を大にして言えるような人生ではなかったけれど、こんな幸せな最期を迎えられるのなら今まで生きてきた甲斐も十分にあるというものだ。



 もう…思い残すことは何もない。


 そう、何もないはずなのだ。





 しかし、何故だろう。

 閉じた瞼の隙間から、熱いものが大量に溢れてくる。これは一体なんなのだろう。今私は何を思っているのだろうか。



 自分のことなのに、よく分からなかった。


 だからだろうか、これで本当に良いのかと、ふいにそのような考えが頭を過った。

 何かやり残してしまったことは……

 何か言い残してしまったことは……


 何か忘れてしまっていることは………





 ああ、そうか。

 そうだ。一つ、たった一つ、彼女に分かっていて欲しいことがあった。覚えていて欲しいことがあった。


 でも、それをどうすれば彼女は知ることができるだろうか。私にできることなどもうないにも等しいというのに…

 どうすればいい…

 何かないか、私にできることは……


 このままでは未練が残ってしまう。



 このまま終わってしまうのは、思い描いていた「死」ではない。幸せな最期ではない。






 だから、切れてしまった思考回路を最後に一度だけ繋ぎなおして、方法を。



 なけなしの力を今度こそ本当に振り絞って、私のやるべきことを。



 散らかった部屋の中を漁るように、手探りで…やっとの思いで、






 ようやく見つけ出した。

 



 呼吸の仕方すらも忘れてしまったが、息を吐くこと……それを空っぽの頭の中を探して、なんとか思い出して。


 声はもう出ないけど、吐き出す息とともに、ありきたりで、シンプルで、純粋で……真っ直ぐではないかもしれないが伝えておきたい最後の言葉。


 彼女と出会えた喜びと、彼女と一緒にいられた嬉しさと、彼女に恋をした、その時の気持ち、それら全部を…『全て』を詰め込んで、








「愛してる」と、ただその一言を、








 呟くよりも、囁くよりも小さな音で、

 耳の良い動物すらも聞き取れないかもしれない…それは小さな音量で、

 愛する人に殺された、一人の女は、

 幸せそうな笑顔を浮かべ、そんな歪な愛を彼女の心に置いていった。






 ああ、彼女は今、どんな顔をしていたのだろうか。
こうなってしまった経緯とか、話の脈絡?は書かれていませんがそこら辺は適当に想像していただければと思います…



残夢のクローバー必ずまた再開するからもう少しだけ待ってて!!!!!!!!!!本当にごめんなさい!!!!!

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