木ノ葉学園 (3)
スポットライトを浴びたヴォーカルの手毬は、
タイトなスカートとかがめば丸見えな胸の開いた黒い皮製の衣装を身につけていた。
いつもは四本に結んでいる髪の毛も、そのまま肩まで垂らしている。
そんなに広くはない室内に、演奏の爆音と彼女のシャウトがめいいっぱいこだまする。
一番後ろで眺めていた鹿丸も、釘付けになっていた。
思考が何もかも吹っ飛ぶようなそのエネルギーの爆発。
何もかも突き抜け、どこまでも発散される絶大なパワー。
まるで手毬というブラックホールに飲み込まれていくような錯覚さえ覚えた。
会場の観客が、皆立ったまま体を揺さぶって一体となってうごめいている。
これでまだメジャーデビューをしていないという方が信じられなかった。
インディーズなのに、カラオケに配信されてあるくらいなのだから、
結構有名なのかもしれなかったが、既にプロ顔負けであった。
-----そして、鹿丸はうすうす感じていた。
手毬が、ギターの男と目を合わせて微笑む度に、自分の胸が痛み出すのを…。
突然、誰かが乱入してきたことに鹿丸は気づく。
入ってきたのは、ガラの悪いあの不良グループだった。
「あいつら…!!」
鹿丸も蝶治もその場にすっくと立ち上がり、身構えた。
「おらおら、どけどけーいっ!! オレ様たちのお通りだーっ!!」
一昔前に流行したかのようなリーゼントの不良たちは、堂々と真ん中を、
ステージに向かって進んでいく。
観客が悲鳴を上げて横に広がった。
鳴門が腕を捲り上げて喧嘩体勢に入っていたが、桜が止めに入っている。
しかし不良たちは、鳴門を見てはいなかった。
まっすぐにステージの方を見据えている。
「…あいつら、手毬を狙っているのか!?」
そう言うや否や、鹿丸は駆け出しステージの上に上がった。
そしてかばうように、手毬を自分の背後に送る。
手毬といい感じに見えたギターマンは、そそくさと隠れたのか既にいなかった。
鹿丸と不良たちの目が重なり合う。
と、その時------
「エル・オー・ヴィー・イー・ウィンドコール手毬!!」
突如男たちが声援をかけ始めた。
「!?」
何が起きたのかわからず、鹿丸も会場の皆も一斉に変な顔をしている。
「おめーらも叫べ!! 全ては姐御のおんために!!」
団長らしき中心の男が、会場の客たちに向かって言い放った。
「-----どういうことだ? あ、姐御…?」
鹿丸は顔を引きつらせている。
すると、ステージに立つ手毬が、マイクを手に説明し出す。
「…実はこいつらは私の可愛い後輩だ。今日は応援に来てくれたようだ」
「うお-------っ!! 姐御-------っ!!
オレたちは、姐御が例え地の果てまで転校したとしても、
どこまでもついて行きますぜーっ!!
そおれっ、エル・オー・ヴィー・イー・ウィンドコール手毬!!」
「L・O・V・E・風を呼ぶ手毬っ!!」
「親衛隊かっつーの。…帰ろ」
ついて行けなくなった鹿丸は、ステージから颯爽と飛び降りた。
志乃は昆虫採集部、牙は盲導犬・介助犬養成部、
日向は弓道部と空手部、桜はテニス部、
蝶治は料理部(食べ専門)と相撲部、亥野は華道部とお色気研究部だった。
亥野の場合は、ジャ●ーズのおっかけとブログに今は熱中しているらしい。
喧嘩っ早い番長の鳴門は、ヨーヨー部所属。
番長らしく(?)ヨーヨーで敵をやっつける。
つい最近、意外に積極的な日向に告白され、デートもしていた。
桜が、どこと無く落ち着かなかったような気もする。
たいくつな授業を抜け出して、屋上で鹿丸は仰向けになって空を見上げていた。
季節は2月。
とは言え、今日は太陽も出ていてとても暖かい。
さっき蝶治が、料理部のチョコレートの失敗作を山ほどもらって食べていた。
持ち込んだサングラスをかけたまま、鹿丸は次第に寝息を立て始める。
「この不良! こんな時間に何をしている!」
「…あ?」
睡眠を邪魔され、不機嫌な顔でサングラスをはずす。
エメラルドの手毬の瞳が、自分の目に飛び込む。
セーラー服姿の彼女のスカートが、風になびいている。
鹿丸は上半身だけ起き上がらせた。
「かったるい授業なんかめんどくせーんだよ。そういうアンタこそ何してんだ?」
「私か? 私は…、風にあたりに来ただけだ。文句あるか?」
「…別にねーよ」
寝転がったまま鹿丸は微笑む。
鹿丸は、筆記さえすれば、学年トップにもなれる頭脳の持ち主なのだが、
やる気が起きないとビリにさえなったりもする呆れる程の怠惰な人間だった。
「そういやアンタ、帰国子女なんだって?」
「正確に言えば私はハーフだ。外国暮らしが長かった。
名前は砂野手毬だが、ミドルネームがあってウィンドコールと言う」
「だからこの前そう呼ばれていたのか…。しかも姐御って…」
「ああ、私は砂高校の女番長だったからな。あいつらをも牛耳っていた」
手毬も得意げに微笑む。
「…ヤンキーかよ。で、カラオケに現れて暴れたのは何の意味があったんだ?」
「ああ、あれは、お前らの腕を一度見てみたかったんだ。私は弱い男は嫌いだ。
半ば強引なくらいがちょうどいい」
「…こえー女。アンタの場合は、風を呼ぶっつーより、まるで嵐だな」
「ついでに言うと、我愛羅のミドルネームはサンド(砂)ウィッチマンで、
もう一人の弟の勘九郎は、パペット(傀儡)マペットだ」
「----冗談だろ?」
誰が聞いても、嘘臭いそのネーミングを信じるわけもなく。
「実は私は漫才部希望だ。断然、ハリセンでツッコミタイプだな。
お前ボケ役するか?」
「やんねーよ。つーか、やる気満々だなアンタ…。
そういや聞きたいんだが、砂高校って確か、女子はワンピースだったよなぁ?
アンタ、ブレザー着てなかったか?」
「あれはコスプレだ。中学まで外国にいた私は、日本の文化を吸収しようと常に懸命なんだ」
「…余計な文化まで吸収すんなよ」
額に手を当てながら呆れた。
だが仁王立ちの手毬は、
「知ってるか? 外国では、男が女にチョコなんかを渡すんだ」
話を突然切り替える。
今日は、2月14日のバレンタインデーだった。
学校中が騒がしく、男子も女子もどこか期待と不安を胸に、
ぎこちない雰囲気があった。
鹿丸も幾つかチョコをもらってはいたのだが、ほとんどが義理だろう。
「ああ、知ってる。でもここは日本だ」
「向こうでも私はモテモテだったんだぞ? 向こうはマセガキも多いから手も早いしな」
「へぇ…。でもここは日本だ」
「知ってる」
「----でもオレは、こうやるんだぜ?」
チョイチョイと指で彼女を手招くと、「何だ?」と言って手毬が近づく。
すると突然、手毬の腕を掴んでグイッと自分の方に引き寄せた。
鹿丸の胸の中に仰向けに倒れこんだ手毬は、彼の唇によって強引に塞がれてしまった。
「お、おまえっ、油断も隙もないなっ!!」
手毬が真っ赤になりながらわめく。
「半ば強引なくらいがちょうどいいんだろ?」
「……まぁ、すぐに助けに来たその心意気に免じて、許してやるか」
「じゃ、もう一回」
「調子に乗るな!」
手毬が慌てて起き上がって離れた。
そんな年上の彼女が、とても子供っぽく可愛いらしく見えてしまう。
「今度将棋でもやろうぜ」
鹿丸はそう誘ってみるが、
「-----それよりも、新作のメイド服を見てくれ。猫耳なんてのもあるぞ」
「そりゃ別に…、見てやっても…いーけどよ…」
そんな彼女の姿を想像すると、何だか将棋以上に興味が沸いてきてしまった。
「見たいんだろう?」
「----おう。ちゃんとサービス付けろよ」
「何考えてんだ、このスケベ」
二人は目が合い、思わず噴き出し笑い合った。
「こらーお前らー!! 授業サボってそこで何してるー!?」
「やべっ!! 明日馬だ!! 手毬、こっち来い!!」
鹿丸は手毬の手を取って、走り出す。
二人の笑い声が、いつまでも空高くこだましていた。
−終わり−
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・・・青春だなオイー!?
無理矢理シカテマに持って行った感じ?
まぁ、シカテマをがっつり愛でる場ということで。
くふv
でも、ハーフで女番長でバンド・ヴォーカルでコスプレイヤーって・・・どうよ?
あ、もうひとつ漫才部・・・?
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