【 脱出 】 〜 迷宮 〜
迷路をさ迷う内、テマリとはぐれてしまったシカマルは、
あてもなく走り続け、名を呼び、扉を開けてはあの微笑みを探すが、
一向にその姿を見かけることはできなかった。
「ったく、どこ行っちまったんだあいつ……」
額にはうっすらと汗が浮き出ていた。
探せば探すほど、どんどん離れて行っている気もする。
益々迷宮入りしている気もする。
そんな時、ある扉を通り過ぎるが、何故か妙な気配を感じた。
無性に気になって数歩引き返すと、その扉をゆっくりと開ける。
薄暗いその部屋の中には、人影があった。
「!!」
一人は、成長しているが自分と同期の、里を抜けいなくなって久しいあの男。
もう一人は----
「テマリッ!?」
両手首ごと身体を壁際に押し付けられたテマリの首筋に、サスケが舌を這わせていた。
叫んだシカマルは、部屋の中に無断で入り込んでサスケの肩を掴む。
「何やってんだお前!!」
無表情の男が振り返りシカマルと目を合わせるが、余裕のある笑みを浮かべてサスケは口にした。
「今いいところだ、邪魔をするな」
「な……」
「この女はオレに気がある」
「!?」
テマリは反対方向を向いていたが、その顔は赤い。
微かに見えた瞳は、心なしか潤んでいるようにも見受けられた。
「初めて木ノ葉で会った時から気づいていた」
「……そう…なのか……?」
それをテマリに向けて言うシカマルだったが、
テマリはうつむいて耳まで赤く染めていた。
「あ……、まぁ、その…、否定は…しな…い」
ようやくテマリが顔をこちら側に向けると、見たこともない恥かしそうな表情でうっとりしていた。
シカマルの固唾が喉を降下していく。
サスケを明らかに意識しているその頬、瞳、息遣い、声、動作、そして何よりもその目、
何もかもが自分には見せないものばかりだった。
シカマルの背筋がスッと伸びた。
「ああ、そうかよ。邪魔して悪かったな」
感情のこもらない棒読みの言葉で告げて、背を向けたシカマルはその場を去って行く。
それに気づいたテマリは狼狽し、
「ま、待てシカ……あうっ!」
再びサスケに迫られたテマリの声が響く。
それを尻目に扉を閉めかけたシカマルだったが------
「----んなわけねーだろ!! ここで去ったら、オレのプライドもポリシーも許さねーんだよ」
「!?」
部屋に戻ると、サスケからテマリを強引に引き剥がす。
そしてテマリの腕を掴んで自分の方に引き寄せると、
「こいつは返してもらうぜ」
そう言って彼女の手を掴んだまま部屋を出て行く。
だがその足は、開かれた扉の向こう側で立ち止まった。
「時にサスケ、お前はもう里には戻らねーんだろ? 別にオレは呼び戻しに来たわけじゃねーけど、
お前がどこにいようとそれは個人の勝手だ。だが、いつまでもここにいたきゃそうすればいい」
かつての同僚に、サスケがフッと笑う。
「そういうお前も、迷宮を抜け出せずにいるのではないか? 別の迷宮をな」
「……?」
シカマルの切れ長の目が、一段と細く鋭くなる。
サスケがテマリを、覇気のない虚ろな目で見下ろしていた。
「とんだ茶番につき合わされた。さっさと出て行け」
「ああ、言われなくても出て行ってやるぜ」
パタン……
扉は閉ざされた。
サスケも気づいていたらしい。
シカマルがモヤモヤした感情のまま、どうしていいのかわからずにいる意識のもどかしさを------
迷路のような廊下を、シカマルは無言で早歩きで進んで行く。
その手には、しっかりとテマリの腕が握られていた。
「ちょっと痛いって!!」
テマリが苦情を漏らすが、彼がその手を緩めることはしなかった。
「いい加減離せっ!!」
「駄目だ。アンタはすぐに迷子になる」
「年下のお前が言うな!!」
「年寄りでも迷子にはなる」
「年寄り臭いお前に、年寄り扱いされたくもない!!」
そこでようやくシカマルが立ち止まって、腕を握る手の力を緩めた。
バッと勢い良くその手を払いのけるテマリ。
よほど強く握り締めていたのか、テマリの腕には赤い手の跡がくっきりと付いていた。
テマリはそれをさすっている……シカマルの顔を睨みながら。
一方のシカマルは、益々不機嫌に目を細めていた。
テマリは気づいていないようだが、彼女の首筋や胸元にもはっきりと赤い跡が浮かんでいる。
それが気に食わなかったシカマルは、テマリが自分の腕に気を取られているのをいいことに、
サスケがしたのと同様の手口でテマリの両手首を掴み、無理矢理壁際へと押し付けた。
「何す----」
「んな所にまで付けられやがって」
白い胸元よりも下の深い谷間にまで、赤い斑点が散らされていた。
シカマルの言っている意味を理解したテマリは、瞬時に顔を赤らめる。
「く…、口にはされていない!!」
「そうかよ。じゃあオレがもらっとく」
「!!」
テマリの唇は、シカマルの熱い唇によってふさがれてしまった。
もがいて手を放そうとするも、意外な力に外すことは敵わない。
自分を逃がそうとしないその握力にテマリは悶えたが、
やがて意表を突いて、突如、唇が解放された。
「----はあっはぁ……、急に何をっ!!」
「この辺で許してやる。オレの気もこれで済んだ。本当はまだ足りねーんだが……」
時々意外な強引さを垣間見せる少年が、ニヤッと微笑んで言う。
呆然となる少女は、そこでハッとした。
「----何だ、お前ひょっとして……、私を好きなのか?」
「!!」
息を飲み込んだシカマルが、急にしどろもどろになる。
「いや、その、何と言うか……あー……」
立場が逆転したのが嬉しいのか、今度はテマリが余裕たっぷりな表情で微笑んだ。
「確かにあいつはタイプだったが、それまでのことだ。
キスはその……、お前の方が良かった……かもしれない」
シカマルの目が見開かれる。
「誤解のないようにもう一度言っとくが、あいつと口は付けてないからな!」
「……なぁ、頼みがあんだけど」
「な、何だ?」
「オレもそこにしていいか?」
「そこ……? 何を……あっ!!」
シカマルの熱っぽい唇が、テマリの胸の谷間を深く吸い上げた。
「ごちそうさん」
「おおおお前!! まだはやいっ!!」
「それじゃあ、夜になったらいいのか?」
「そういう意味じゃない!! これだから男って奴は!!」
「また男だ女だ言うのか……って、言っていたのは誰だっけ?」
テマリの切れのあるパンチが飛んでくるが、シカマルは笑いながらうまくよけた。
「逃げるな!! 一発殴らせろっ!!」
「やだね。アンタのパンチをまともに食らったら、再起不能になりそうだ」
「お望みの通りそうさせてやるから殴らせろ!!」
二人は迷路の中を、さ迷いながらも駆け抜けて行った。
その先には、光が眩しく二人を導いている。
その後、無事に二人は迷宮を脱出できたのだが、
サスケが言う別の迷宮をシカマルが抜け出せたのかは、謎のまま----
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
単に三角関係にしてみたかっただけ。
サスケ、あまりいる意味なし(笑)。
|