Salida del sol −サンライズ−
気づけば空が白んでいた。
一斉に眠りから醒めた森の小鳥たちも、ここ彼処から歌い始める。
早朝の緑の匂いと、ピンと張りつめた空気の新鮮さに、テマリは深く息を吸い込んだ。
「もうすぐ森を抜けるぜ」
目の前を行く夜色の髪を一本に結わえた少年が、振り向きざまに言った。
昨日の夕方に木ノ葉に到着する予定だったが、途中、あろうことか道に迷ってしまった。
もう何度も通っているはずの道程なのに、どうやらどこかの忍が仕掛けた時空の歪みに巻き込まれてしまったようだ。
目の前で先導する彼が来てくれなければ、今頃自分はきっと、ここにはいなかっただろう……。
◇◇◇
到着予定時刻を過ぎても現れない砂の使者に、火影により迎えに行くよう命じられたシカマルは、
国境付近の森の中で、テマリが虚ろな目でさ迷っているのを見つけた。
懐中電灯を片手に肩を掴んで名を呼べば、ハッと我に返ったテマリがキョトンとしている。
「……何故お前がここにいる? 木ノ葉はまだ先だろう?」
一種の幻術に入り込んでいたことをまるで自覚していないテマリだったが、
心配して駆けつけたシカマルはホッと安堵する。
「あんまり遅いんで迎えに来たんだよ。ったく、心配したじゃねぇか。
…どこも怪我してねぇか?」
一応確かめるべく、手にした電灯でテマリの全身を照らす。
眩しさに目を細めたテマリも、怪訝な目つきで反論する。
「何で懐中電灯なんか持って……今、何刻だ!?」
テマリは辺りを見回し、自分が闇に覆われていることに気が付いた。
「----もうじき夜が明ける頃だよ」
「夕方には着くはずだった。私は一体……」
「ま、とにかく無事で良かった。使者さんにもしものことがあれば、責任の取り様がねぇ」
「お前に責任を取ってもらう必要はない。これは任務なのだから旅の途中で何かあっても木ノ葉は勿論、
お前に一切の責任を負わせることはないから安心しろ」
「----それじゃオレがオレを許せねぇよ」
「相変わらず変なところで責任感を感じる奴だな」
こんな真夜中に森の中を捜しに来ること自体、無謀な行動だった。
忍とは言え、夜は危険すぎる。
余程のことがない限り、普通ならば夜が明けてから向かわせるのが普通だろう。
だがシカマルは、きっと朝を待たずに来てくれただろう。
今と同じように……。
シカマルはきびすを返して歩き出した。
それでもなかなか歩き出そうとしないテマリにシカマルは、
「はやく付いて来いって。暗闇ん中じゃ何も見えねぇだろ。置いてくぞ」
遠回しに彼女のことを呼ぶが、益々顔を引きつらせたテマリは、大仰に歩幅を取って歩き出す。
「私は長旅でクタクタなんだ! もっとお前は、他里の使者を案内人らしく丁重にもてなす努力をすることだな」
「へいへい、それはどうもすみませんね……他里のわがままな使者さん」
「何ぃ? お前は年上の言うことを素直に受け止める耳も持つべきだな!」
「……めんどくせぇ」
「またそれか! めんどくさいなら来るな! 案内役も降りちまえ!」
「……めんどくせぇ」
テマリが呆れて閉口する。
でも本当は知っていた。
口ではそう言っても本心はその逆で、彼なりに色々思考しているのだと言うことを。
呆れつつも、気づいたら追い越されてしまった、広くなったその背中をテマリは見つめた。
少年はこれから先、もっともっと成長していくのだろう…肉体的にも精神的にも。
そしていつかは、立派な木ノ葉を担う忍の代表としてその将来を約束されるのだろう。
行く末には、愛する伴侶と共に-----
◇◇◇
どれくらい歩いて来ただろうか。
気づけば空が白んでいた。
一斉に眠りから醒めた森の小鳥たちも、ここ彼処から歌い始める。
早朝の緑の匂いと、ピンと冴えた空気の新鮮さに、テマリは深く息を吸い込んだ。
「もうすぐ森を抜けるぜ」
目の前を行く闇色の髪を一本に結わえた少年が、振り向きざまに言った。
すると、木々の隙間から太陽光線が放射し出し、同時に開けた場所に出た。
初めて通る道だった。
丘に差し掛かれば、眼科に広がる風光明媚な山紫水明の山河、
そして、山の合間より顔を覗かせた太陽が眩しくテマリの頬を照らし出す。
「綺麗……」
美しい光景だった。
朝の陽射しが、テマリの髪の毛を更に眩しく照らし、横目でシカマルはそれを見ていた。
そして不意に両手を目の前に差し出すと、太陽の光を手の平に受け止める素振りをシカマルは見せ、
テマリは謎な行動の少年を一瞥した。
「何をしている?」
「充電だよ。太陽のエネルギーをもらって、今日も一日元気に頑張るのさ。
……何だよ?」
らしくないシカマルのセリフに、テマリは吹き出してしまった。
めんどくせぇが口癖のその口から、元気に頑張るなどと言う言葉が妙におかしくて。
つられたテマリも、自分の両手を太陽の方に向けて広げてみる。
「あったけぇだろ?」
「ああ…。まるで…、心の中にも染み込んで行くようね……」
口調もどこか柔らげなテマリは目を閉じていた。
リラックスをして和む彼女の心が、自分にも開いている、そんな気がした。
「右手をそのままこっち向けて」
「…右手?」
テマリはシカマルの言う通りに、目の前に出していた右手を横へ持って行く。
すると、シカマルの左の手の平と触れ合った。
「こうすれば、もっとあったかくなる」
「……」
重なり合う互いの手の平。
それを通して、熱が温もりがジワジワと伝わってくる。
太陽の熱なのかシカマルの体温なのかはわからなかったが、テマリは自分よりも大きな手を一度見てから、
再び目を閉じて、そして言った。
「私もいつかは砂の上忍と結婚し、砂を埋もれさせないよう里を守って行かねばならない。
お前もお前で木ノ葉を枯らせることのないよう、大切な人と巡り合えたら、
手を離さずにしっかり握って守って生きて行くんだぞ。めんどくさいなどと言わずに---- 」
そこまで言うとテマリは、接触するシカマルの手から離れようとするが、シカマルの指がテマリの指の間に滑り込んで、
右手をギュッと強く握り返してきた。
それは一瞬の出来事だった----
その後、シカマルはすぐにその手を離し、両手を頭の後ろで組んでプイッと背を向けてしまった。
「……めんどくせぇな」
一言漏らしたその声が、どこか物憂げだがどこか恥かしそうに、テマリの耳には聞こえていた。
----何…だったんだ、今のは……?
何故か訊くことができずに、テマリは右手を左手でそっと触れた。
胸の奥が何かにギュッと掴まれた、そんな気もしている。
シカマルが振り向くと、彼の大人びていてもまだあどけなさが残る微笑みが向けられていた。
----その顔が、私は結構気に入っているんだ……。
そう感じたテマリは、今度は自分の方からシカマルの手に触れると、その手を掴んで再び歩き始める。
「さ、行くぞ」
「お、おう……」
シカマルの声は上ずっていたが、さっきよりもしっかりとテマリの手を握りしめていた。
……木ノ葉に着くまで、繋いだ彼女の手を離そうとはしなかった。
◇◇◇ Final ◇◇◇
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忍なんで忍術で明かりを点けたり、松明で捜しに来るかなと思いましたが、
懐中電灯がシカマルらしいかなと思いましてん・・・。
「めんどくせぇしな」 By,シカ〇
Salida del sol ・・・スペイン語で「日の出」の意。
Final ・・・スペイン語で「終わり」の意。
(Puesta del sol ・・・スペイン語で「日の入り」の意)
昔、某外国人歌手のスペイン語の歌を暗記して歌ったなぁ〜。
発音が日本語とどこか似てるんだよね。
最初タイトルを『朝日スーパー到来』にしようとしたことは内緒だ。←なってねぇ
ビールの美味い季節に 乾杯〜
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